光インターコネクトとは
読み: ひかりいんたーこねくと Optical Interconnect 半導体の用語
光インターコネクトは、データセンターのサーバーやスイッチ、半導体の間を、銅配線でなく光ファイバーと光信号でつなぐ技術を指す。電気信号を光に変える部品をスイッチICのすぐ隣に置く方式 (CPO) では、米エヌビディアは2026年6月、このスイッチを量産中だと発表した。
Postation 編集部 ・ 2026年10月14日 更新
なぜ光でつなぐのか — 電気配線は長いほど信号が弱まり、補正に電力を食う
データセンターのスイッチは、電気信号を光に変えて光ファイバーで送る。これまでは、装置の前面に差し込んで使う着脱式の光トランシーバーが変換を担ってきた。通信を中継するスイッチの中心となる半導体 (スイッチIC) から前面の光トランシーバーまでは、プリント基板上の電気配線でつなぐ。
米エヌビディアは公式ブログで、この方式の弱点を2つの数字で示している。1つは信号の損失だ。毎秒200ギガビットの信号を送る場合、電気配線を通る間に信号が最大22デシベル弱まる。弱まった信号を補正する半導体 (DSP) などの部品が必要になり、その分だけ消費電力が増える。もう1つは消費電力で、光トランシーバーは光の接続1口 (ポート) あたり30ワットに達することが多いという。
光に変える部品をスイッチICのすぐ隣に置けば、電気配線は短くなる。エヌビディアによると、この方式 (CPO) では損失が約4デシベルに縮まり、消費電力は1ポートあたり9ワットまで下がる。
一方で、エヌビディアがGPU72基を1つのラックに収めたAIサーバー「GB200 NVL72」(2024年発表) は、ラックの中のGPU同士を銅ケーブルでつなぐ。ラックの背面には5,000本を超える銅ケーブルが通り、各GPUはほかのすべてのGPUと毎秒1.8テラバイトで通信できる。同社は、運用を簡単にするために銅ケーブルを使ったと説明している。
CPOとLPOの違い — 光に変える場所と、DSPの有無
光インターコネクトの方式は、電気信号を光に変える場所と、信号を補正する半導体 (DSP) を使うかどうかで分かれる。
| 方式 | 光に変える場所 | DSPの有無 | 標準化と各社の説明 |
|---|---|---|---|
| 光トランシーバー (従来型) | 装置の前面 | あり (内蔵) | 消費電力は1ポートあたり30ワットになることが多い (エヌビディア) |
| LPO (DSPを省いた光トランシーバー) | 装置の前面 | なし (省く) | 業界団体のLPO MSAは、光トランシーバーからDSPを省いて消費電力を減らす方式と定義。光インターネットワーキング・フォーラム (OIF) は2025年9月、光部品の側でDSPを不要にするLPO向けの電気インターフェースの仕様を公表した |
| CPO (光部品をスイッチICと同じパッケージに載せる方式) | スイッチICのすぐ隣 | 不要 (エヌビディアの製品の場合) | OIFは2023年4月、業界初のCPOの標準として、毎秒3.2テラビットのモジュールの仕様を発表。消費電力は1ポートあたり9ワットまで下がる (エヌビディア) |
(出所: エヌビディアの公式ブログと製品ページ、OIFの発表、LPO MSAの公式サイト)
LPOは、装置の前面に差し込む光トランシーバーの形を保ったまま、DSPを省いて消費電力を減らす。CPOは、光に変える部品 (光エンジン) をスイッチICのすぐ隣に置き、電気配線そのものを短くする。古河電気工業は2022年の発表で、CPOについて装置内の電気配線の一部を光に置き換える構造だと説明し、消費電力を30%以上減らせると見込んだ。
エヌビディアのCPOスイッチ — 2025年に発表、2026年に量産
エヌビディアは2025年3月、シリコンフォトニクス (光の回路を作る技術) をスイッチに組み込んだ「Spectrum-X Photonics」と「Quantum-X Photonics」を発表した。同社は発表時、従来の方式と比べてレーザーの数を4分の1に減らし、電力効率を3.5倍、ネットワークの信頼性を10倍に高めるとした。シリコンフォトニクスの企業群として挙げた11社の中に、住友電気工業が入っていた。
同社は2026年1月の公式ブログで、毎秒1.6テラビットのポート1つあたりの消費電力が光トランシーバーの5分の1になると説明した。2025年3月の3.5倍は電力効率、2026年1月の5分の1はポートあたりの消費電力で、測るものが違う。2026年6月に台北で開いた開発者会議「GTC台北」では、従来の光トランシーバーを使うネットワークと比べて電力効率が5倍になるとした。3つの数字は比べる範囲と相手が違い、そのまま並べて比べることはできない。
同社はこの発表会で、イーサネット向けの「Spectrum-X Ethernet Photonics」が量産に入ったと明らかにした。製造の分担は次の通りである。
| 会社 | 担当 |
|---|---|
| 台湾積体電路製造 (TSMC) | シリコンフォトニクスの製造 |
| SPIL | パッケージング、組み立て、検査 |
| TFC | レーザーモジュール |
| フォックスコン | システムの組み立て |
(出所: エヌビディアの発表と公式ブログ)
発表の内容と名前が挙がった企業の顔ぶれは、エヌビディアの光部品の供給網を検証した記事で詳しく扱った。
光電融合・IOWNとの違い — 技術、実装方式、構想の違い
光インターコネクトは、装置や半導体の間を光でつなぐこと全般を指す言葉で、似た言葉とは意味する範囲が違う。CPOは部品の実装方式の名前である。光電融合は、NTTが「電気信号を扱う回路と光信号を扱う回路を融合する技術」と説明する技術である。NTTイノベーティブデバイスは、CPOのスイッチを光電融合スイッチと呼んでいる。IOWNは、光電融合などの技術を使って通信網とコンピューターの消費電力や遅延を減らす、NTTの次世代通信基盤の構想である。NTTは、遅延を200分の1、伝送容量を125倍、電力効率を100倍にする目標を掲げている。
NTTは光電融合の部品 (光電融合デバイス) を作る会社として、2023年6月にNTTイノベーティブデバイスを設立した。NTTイノベーティブデバイスが2025年10月の説明会で示した資料によると、光でつなぐ部分を段階的に広げ、最後はチップの中のダイ同士まで光でつなぐ計画だ。
| 世代 | 光でつなぐ範囲 | 商用化の目標時期 |
|---|---|---|
| PEC-2 | ボード (基板) 同士 | 2025〜2026年 |
| PEC-3 | 半導体パッケージ同士 | 2028年 |
| PEC-4 | チップの中のダイ (チップレット) 同士 | 2032年 |
(出所: NTTイノベーティブデバイスの説明会資料、2025年10月6日、8ページのロードマップ。同じ資料の19ページはPEC-3をチップ同士の光接続とも書いている)
NTTイノベーティブデバイスによると、PEC-2を使う光電融合スイッチは毎秒102.4テラビットのデータを扱える。資料の図では、光トランシーバーを使う場合と比べ、スイッチ単体の消費電力をおよそ半分にするとしている。同社はブロードコム、アクトンと組み、2026年第4四半期にCPOスイッチの商用サンプルを出す予定だ。レーザーなどの材料となるリン化インジウムは、用語解説「リン化インジウムとは」で取り上げた。
光インターコネクトと日本企業 — 光ファイバー、外部光源、光電融合
日本でも電線メーカーや通信会社が、データセンター向けの光部品の増産や光電融合の開発を打ち出している。
| 社名 | 発表・開示の内容 |
|---|---|
| フジクラ | 2026年4〜6月期の情報通信部門は、データセンター向けの需要拡大で光部品を中心に伸び、売上高は前年同期比83.9%増の2,644億円、営業利益は2.9倍の980億円。米国以外の新しいデータセンター案件で光部品の大量受注もあった |
| 古河電気工業 | 2022年3月、CPO向けに、パッケージの外からレーザー光を送り込む光源 (外部光源) を世界で初めて開発したと発表。2025年12月には、高出力のレーザーチップの生産に380億円を投じ、2028年の生産能力を2025年度の5倍以上に引き上げると発表した。CPO向けの外部光源での採用を見込む |
| 住友電気工業 | エヌビディアが2025年3月にCPOスイッチを発表した際、シリコンフォトニクスの企業群の1社として名前が挙がった |
| NTT | NTTイノベーティブデバイスが光電融合デバイスを開発・製造する。2026年第4四半期にCPOスイッチの商用サンプルを出す予定 |
(出所: フジクラの決算短信、古河電気工業の発表、エヌビディアの発表、NTTイノベーティブデバイスの説明会資料。フジクラの2.9倍は188.3%増から当サイトが換算)
CPO・NPO (半導体の近くにソケットで光部品を取り付ける方式)・LPOの3方式を同じ基準で比べた解説は「CPO・NPO・LPO」の記事に、光源や光電融合に関わる日本企業の一覧は「光電融合の産業地図」の記事にまとめた。ラックの中でGPU同士を銅ケーブルでつなぐ仕組み (NVLink) は、NVL72の記事で扱った。
光インターコネクトのよくある質問
光インターコネクトとは簡単に言うと何か
データセンターのサーバーやスイッチ、半導体などの間を、銅配線ではなく光ファイバーでつなぎ、光信号でデータを送る技術を指す。電気配線は長くなるほど信号が弱まり、補正に電力がかかるため、電気信号を光に変える部品を半導体のすぐ隣に置く技術の開発が進んでいる。
CPOとLPOの違いは
LPOは、装置の前面に差し込む光トランシーバーの形はそのままに、信号を補正する半導体 (DSP) を省いて消費電力を減らす方式である。CPOは、電気信号を光に変える部品 (光エンジン) をスイッチICのすぐ隣に置き、電気配線そのものを短くする方式である。
ラックの中のGPU同士も光でつながっているか
エヌビディアのGB200 NVL72は、ラックの中のGPU同士を銅ケーブルでつないでいる。ラックの背面には5,000本を超える銅ケーブルが通る。同社は、運用を簡単にするために銅ケーブルを使ったと説明している。
光インターコネクトに関わる日本企業は
データセンター向け光部品の販売が伸びているフジクラ、CPO向けの外部光源を開発した古河電気工業、エヌビディアのCPOスイッチの発表でシリコンフォトニクスの企業群に名前が挙がった住友電気工業、光電融合デバイスを開発するNTTなどがある。
出典: エヌビディア 公式ブログ「CPOでAI工場を拡張し、電力効率を高める」(2025年8月18日)、エヌビディア シリコンフォトニクスの製品ページ (2026年10月14日に確認)、エヌビディア 発表資料「CPOを採用したスイッチ『Spectrum-X Photonics』『Quantum-X Photonics』」(2025年3月18日)、エヌビディア 公式ブログ「電力効率の高いAI工場を『Spectrum-X Ethernet Photonics』で拡張」(2026年1月6日)、エヌビディア 公式ブログ「台北の開発者会議GTCでの発表まとめ」(2026年6月1日)、エヌビディア 公式ブログ「GB200 NVL72の学習と推論」(2024年3月18日)、エヌビディア 公式ブログ「GB200 NVL72の設計をオープン・コンピュート・プロジェクトに提供」(2024年10月15日)、光インターネットワーキング・フォーラム 発表資料「毎秒3.2テラビットのCPOモジュールの標準仕様」(2023年4月5日)、光インターネットワーキング・フォーラム 発表資料「LPO向け電気インターフェースの標準仕様」(2025年9月23日)、LPOの業界団体 (LPO MSA) 公式サイト (2026年10月14日に確認)、NTT 公式マガジン「光電融合デバイスの記者会見」(2023年)、NTT「IOWNの機能と特性」(2026年10月14日に確認)、NTTイノベーティブデバイス 説明会資料 (2025年10月6日)、古河電気工業 発表資料「CPO向けの外部光源を開発」(2022年3月7日)、古河電気工業 発表資料「高出力のレーザーチップへの投資」(2025年12月17日)、フジクラ 2027年3月期第1四半期決算短信 (2026年8月7日)
3段で深く知る — 基礎・高級・投資家視点
1行の定義から、体系解説の該当箇所へそのまま降りられる。抜粋は体系解説でこの語が出てくる箇所から引いた。続きはリンク先にある。
CPO・NPO・LPOを1つの物差しで読む ― 光をGPUの隣へ寄せる競争の全体像
800ギガビット級の光部品は、信号処理の頭脳を載せた従来型で16ワット前後、チップのすぐ隣まで寄せた一体型なら4〜5ワットまで下がる。データセンター1棟に数十万個が載る部品の話であり、この電力差が2026年の設備投資の行き先を決めつつある。 CPO、NPO、LPO。AIデータセンターの記事に頻出するこの3つの略語は、初めて見る人には暗号にしか見えない。だが仕組みは、家庭の通信環境の進化とそっくりである。電話線の信号を光回線に替えた瞬間、家のネットは桁違いに速くなった。同じことをデータセンターの内部、それもGPUのすぐ隣でやろうというのが「光電融合」であり、3つの略語の違いは、光に変換する装置をチップへどこまで「寄せるか」という距離の違いにすぎない。この1本の物差しさえ持てば、エヌビディアの新型スイッチも、NTTのIOWN構想も、同じ地図の上に置いて読める。 最初に、4つの言葉を「とは」の形…
第III部 設計する ④ 基盤構成 (アーキテクチャ)
チップの中身は、論理・記憶・つなぎ・電力の4つの部品でできている。それぞれにどんな選択肢があり、なぜその1つが選ばれるのかを見る。 4.1 論理回路の作り分け — 判断を取るか、数を取るか CPUは判断に投資する。1つの演算核あたり数億個の素子が、次に何をするかを決める回路に使われる。 GPUは判断をまとめる。32本の流れを1つの命令で同時に動かし、同じ計算を別のデータへ一斉に当てる。 専用回路 (ASIC) は判断を捨てる。命令の読み出しも解読も分岐の予測も持たず、積和演算器を格子に並べるだけにする。 行列の掛け算の効率は、この順でおよそ 1対30対300 になる。 4.2 記憶の階層 — 演算器は待っている時間の方が長い 記憶の壁: CPUは1ナノ秒で1命令を実行できるが、主記憶から読み出すには100ナノ秒かかる。 そのままでは時間の99%が待ち時間になるため、手元に小さく速い記憶を何…
エヌビディアの光電融合イーサネットが量産に入った、名指しされたのは台湾2社と中国1社だった
エヌビディアが光電融合イーサネットの量産開始を公表した。製造に挙がったのはTSMC、封止のSPIL、レーザー部品のTFCで、米中摩擦のさなかに中国企業が名を連ねた。日本側ではフジクラの営業利益が4年で4.9倍になった。 エヌビディアは2026年8月、Spectrum-Xイーサネット・フォトニクスが量産に入ったと映像で公表した。レーザーの数は4分の1、電力は5分の1、障害と障害のあいだの平均時間は10倍という3つの数字が添えられている。発表の中身と数字の出所を検証し、需要が実額へ変わる日本側を有価証券報告書で確かめる。本稿の円換算は2026年8月7日の為替(1ドル=157.54円、セントルイス連邦準備銀行の公表値)による概算である。売買の推奨や評価は示さない。 名指しされたのは台湾2社と中国1社である 量産開始の公表で、エヌビディアは製造の相手を具体的に挙げた。シリコンフォトニクスの製造をT…
関連する用語
🧰 ツール・特集の入口
一次データで動く 14 本 — 銘柄の絞り込み・供給網・比較・一次データの台帳・解説・規制レンズ (すべて無料)