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NANDとは

読み: なんど NAND Flash Memory 半導体の用語

NAND (NAND型フラッシュメモリー) は、電源を切ってもデータが消えない不揮発性のメモリーで、スマートフォンをはじめ多くの電子機器に使われる。データを記憶するセルを直列につなぐ構造のため、高い密度で並べることができ、容量を増やしやすい。1987年に東芝が発表した技術で、現在はセルを縦に300層以上積み重ねる段階に入った。

Postation 編集部 ・ 2026年10月14日 更新

NANDの仕組み — セルを直列につなぎ、電子の出し入れで記憶する

キオクシアによると、NANDは、セルの中で絶縁体に囲まれた膜 (電荷蓄積膜) に電子を出し入れしてデータを記憶する。電子は電源を切っても膜にとどまるため、データが消えない。

NANDの特徴はセルのつなぎ方にある。キオクシアによると、NAND型はセルを直列につなぐため、セルを並列につなぐNOR型 (フラッシュメモリーのもう一つの方式) より高い密度で配置でき、容量を増やしやすい。一方のNOR型は、任意の場所のデータを直接読み出す操作 (ランダムアクセス) や高速な読み出しに向く。

1つのセルに何ビットを記憶させるかでも種類が分かれる。1ビットはSLC、2ビットはMLC、3ビットはTLC、4ビットはQLCと呼ぶ。1つのセルにNビットを記憶すると、読み分ける電圧の段階 (しきい値電圧の分布) は2のN乗段階になる。キオクシアによると、MLCは4段階、TLCは8段階、QLCは16段階になる。

種類1セルのビット数読み分ける電圧の段階数
SLC1ビット2段階
MLC2ビット4段階
TLC3ビット8段階
QLC4ビット16段階

(出所: キオクシアの用語集と技術解説「多値化技術とは」。SLCの2段階は2の1乗から当サイトが計算)

左はNAND型とNOR型のセルのつなぎ方の模式図。NAND型はセルを直列に、NOR型は並列につなぐ。右はキオクシアの3次元NANDの積層数の推移で、2015年の48層から2026年に試作品を出荷した332層まで
左はセルのつなぎ方の模式図で、実物の配置や数とは異なる。右はキオクシアが公表した積層数の推移。

NANDの誕生 — 1987年に東芝の舛岡氏らが国際会議で発表

キオクシアによると、東芝は1984年に「フラッシュ」と名付けたメモリーを発表し、1987年にNAND型のフラッシュメモリーを発明した。発明したのは、当時東芝に在籍していた舛岡富士雄氏 (現東北大学名誉教授) である。舛岡氏らは同年、半導体素子の国際学会、国際電子デバイス会議 (IEDM) で論文を発表した。論文では、NAND型の構造にすれば、1ビットあたりのセル面積を、同じ設計ルールで作る従来構造の4メガビットのEPROM (データを消去して書き換えられる読み出し専用メモリー) より30%小さくできることを示した。

最初の製品は1991年の4メガビット品だった。その後の進歩の一つが、1つのセルに記憶するビット数を増やす「多値化」である。東芝は2001年、1セルに2ビットを記憶するNAND型の1ギガビット品を世界で初めて製品化し、2007年には1セル4ビットのQLC (16ギガビット) を発表した。

3次元NAND — 平面の微細化から積層数の競争へ

容量を増やす手段は長らく、セルを小さくする微細化だった。キオクシアによると、同社は平面型のNANDで回路線幅15ナノメートルの製品まで微細化を進めた。だがセル同士が近づくと意図しない電流が流れ、1つのセルにためられる電子の数も減って、データが不安定になった。そこでセルを縦に積む発想が生まれた。ただ、平面型のNANDを1層ずつ積み重ねる方法では、層を増やすたびに製造の手間が増え、費用がかさむ。

この課題を解決するため、東芝は2007年、3次元の製造技術「BiCS FLASH」の基本構想を学会で発表した。板状の電極と絶縁体を交互に積み重ね、上から垂直に多数の穴を一括で開けて、穴の中に膜と電極を埋め込んでセルを作る方式だ。

キオクシアの技術解説によると、同社は2015年に48層の3次元NANDを製品化し、2018年に96層、2020年に112層、2022年に162層と積層数を増やしてきた。2023年3月には、キオクシアが米ウエスタンデジタルと共同で218層の第8世代品を発表した。この世代では、セルを制御する回路 (CMOS回路) を作ったウエハーと、セルを作ったウエハーを別々に製造して貼り合わせる「CBA」と呼ぶ製法を採用した。2025年2月には、当時ウエスタンデジタルの子会社だった米サンディスクと共同で、332層の第10世代品を発表した。データの入出力速度は毎秒4.8ギガビットで、第8世代より33%速い。ビット密度は59%高まったとするが、何と比べたかは示していない。キオクシアは2026年7月に第10世代の試作品の出荷を始めた。量産は北上工場 (岩手県北上市) の第2製造棟で手がける計画だ。

積層数の公表の仕方は会社によって違う。各社が発表資料で示した数字は次の通り。

会社世代・製品積層数公表された性能発表時期
キオクシア・サンディスク第10世代 1テラビット TLC332層入出力速度 毎秒4.8ギガビット (第8世代比33%向上)、ビット密度59%向上2025年2月 (試作品の出荷は2026年7月)
SKハイニックス1テラビット TLC321層データ転送速度12%向上、読み出し性能13%向上2024年11月 (量産開始)
サムスン電子第9世代 1テラビット TLC発表資料に記載なし入出力速度 最大毎秒3.2ギガビット、ビット密度 約50%向上2024年4月 (量産開始)
マイクロン第9世代 (G9) TLC発表資料に記載なしデータ転送速度 毎秒3.6ギガバイト2024年7月 (量産開始)

(出所: 各社の発表資料。SKハイニックスとサムスン電子の向上率は各社の前世代との比較。キオクシアとサンディスクのビット密度59%は、発表資料に比較の相手の記載がない。マイクロンの値は単位がギガバイトで、ほかの社のギガビットの値とはそのまま比べられない。サムスン電子とマイクロンは積層数を発表資料で明らかにしていないため、報道の数値は載せていない)

NANDとNOR・DRAMの違い — 容量のNAND、読み出しのNOR、速さのDRAM

NAND型はNOR型と同じフラッシュメモリーの一種で、DRAMとは仕組みが異なる。DRAMは電源を切るとデータが消える揮発性のメモリーで、フラッシュメモリーよりはるかに速く読み書きできる。速さを取るか、電源を切ってもデータが残ることを取るかで使い分ける。

種類電源を切るとセルのつなぎ方主な特徴
NAND型フラッシュデータが残る直列セルを密に並べられ、大容量にしやすい
NOR型フラッシュデータが残る並列ランダムアクセスと高速の読み出し
DRAMデータが消える(比較の対象外)フラッシュメモリーよりはるかに速い読み書き

(出所: キオクシアの用語集)

DRAMの仕組みは「DRAMとは」で、そのチップを縦に積んでGPUのそばに置く広帯域メモリー (HBM) は「HBMとは」で説明している。主なメモリーメーカーの比較は、半導体技術の体系解説の「メモリー各社の比較」にまとめた。

NANDと日本企業 — 四日市と北上の工場、エッチング装置、成膜材料

サンディスクの年次報告書によると、同社とキオクシアは合弁会社を通じて日本の8拠点を運営しており、6拠点が三重県四日市市、2拠点が岩手県北上市にある。サンディスクのフラッシュメモリーのウエハーは、すべてこの合弁で作られる。サンディスクは合弁各社に49.9%を出資する。キオクシアが持つ工場の生産能力のうち、約80%が合弁会社の分にあたる。共同で開発した技術は両社で共有している。キオクシアの持ち株会社であるキオクシアホールディングスは2024年12月、東証プライム市場に上場した。

サムスン電子は、層が増えるほど多くの層を貫く高度なエッチング技術が必要になると説明する。JX金属も、微細な構造に薄い膜を作れる材料の必要が高まっているとしている。日本の製造装置や材料のメーカーは、NAND向けの技術開発や売上高を公表している。主な例は次の通り。

社名分野主な発表・開示
東京エレクトロンエッチング装置400層を超える3次元NANDに向け、セルを作るための縦穴 (メモリーチャネルホール) を開ける低温エッチング技術を開発。深さ10マイクロメートルの穴を33分で加工できる (2023年6月の発表)
JX金属成膜材料3次元NAND向けの成膜材料であるモリブデン化合物を、東邦チタニウムの茅ケ崎工場 (神奈川県茅ケ崎市) で製造。JX金属の茨城事業所にも量産ラインを設け、出荷を始めた (2026年3月の発表)
KOKUSAI ELECTRIC製造装置NAND向け装置の売上高を分けて開示。2026年3月期は前期比90%増 (2026年5月の決算説明資料)

(出所: サンディスクの年次報告書、キオクシアホールディングスの適時開示、各社の発表資料と決算資料)

配線材料がタングステンからモリブデンに切り替わる理由は、3次元NANDの配線材料の記事で扱った。四日市と北上で作るNANDをGPUのそばで使うサンディスクの構想は、同社の試算を検証した記事で取り上げた。中国の長江存儲科技 (YMTC) については、同社の上場準備を取り上げた記事にまとめた。

NANDのよくある質問

NANDとDRAMの違いは

NANDは電源を切ってもデータが残る不揮発性のメモリーで、セルを直列につなぐため容量を増やしやすい。DRAMは電源を切るとデータが消える揮発性のメモリーで、NANDなどのフラッシュメモリーよりはるかに速く読み書きできる。

NAND型フラッシュメモリーを発明したのは

キオクシアによると、当時東芝に在籍していた舛岡富士雄氏が1987年に発明した。同年、舛岡氏らが国際電子デバイス会議 (IEDM) で論文を発表した。最初の製品は1991年の4メガビット品である。

3次元NANDの積層数はどこまで増えたか

キオクシアとサンディスクは2025年2月に332層の第10世代品を発表し、キオクシアは2026年7月に試作品の出荷を始めた。韓国SKハイニックスは2024年11月に321層品の量産を始めた。韓国サムスン電子と米マイクロン・テクノロジーは、発表資料で積層数を明らかにしていない。

NANDに関わる日本企業は

NANDを生産するキオクシアのほか、3次元NANDの低温エッチング技術を開発した東京エレクトロン、成膜材料のモリブデン化合物を作るJX金属、NAND向けの製造装置を手がけるKOKUSAI ELECTRICがある。

出典: キオクシア「『記憶の技術』はどこから来てどこへ向かうのか」(2026年10月14日に確認)、キオクシア「技術開発ヒストリー」(2026年10月14日に確認)、キオクシア「用語集」(2026年10月14日に確認)、キオクシア「NAND型フラッシュメモリとは」(2026年10月14日に確認)、キオクシア「多値化技術とは」(2026年10月14日に確認)、キオクシア「BiCS FLASHとは」(2026年10月14日に確認)、舛岡富士雄ほか「NAND構造のセルを用いた新しい超高密度EPROMとフラッシュEEPROM」国際電子デバイス会議 (1987年)、キオクシア欧州法人 発表資料「第8世代の3次元フラッシュメモリー」(2023年3月31日)、サンディスク 発表資料「キオクシアと共同で次世代の3次元フラッシュメモリー技術を公表」(2025年2月19日)、キオクシア 発表資料「第10世代の試作品の出荷開始」(2026年7月3日)、サムスン電子 発表資料「第9世代V-NANDの量産開始」(2024年4月23日)、SKハイニックス 発表資料「321層のNANDの量産開始」(2024年11月21日)、マイクロン 発表資料「第9世代のNANDの量産開始」(2024年7月30日)、サンディスク 年次報告書 (2026年8月17日提出)、キオクシアとサンディスク 共同発表「北上工場第2製造棟の稼働」(2025年9月30日)、キオクシアホールディングス 適時開示「東京証券取引所プライム市場への上場のお知らせ」(2024年12月18日)、東京エレクトロン 発表資料「3次元NAND向けの低温エッチング技術」(2023年6月9日)、JX金属 発表資料「3次元NAND向けモリブデン化合物の量産」英語版 (2026年3月6日)、KOKUSAI ELECTRIC 2026年3月期決算説明資料 (2026年5月13日)

3段で深く知る — 基礎・高級・投資家視点

1行の定義から、体系解説の該当箇所へそのまま降りられる。抜粋は体系解説でこの語が出てくる箇所から引いた。続きはリンク先にある。

基礎知識篇 まず押さえる仕組み

第I部 物質と分類 ② 半導体の分類 — 微細化競争は4分類のうち1つだけの話

報道が扱う「2nm」「微細化」はデジタル半導体に限った競争である。市場も日本の強みも残り3分類に大きく分布しており、 この区別を持たないまま産業を語ると、投資判断も政策評価も的を外す。 2.1 用途による4分類 — 微細化が効くのはどこか パワー半導体と光半導体では、微細化が性能向上につながらない。求められるのは耐圧・放熱・光を出す能力であり、 いずれも材料と実装で決まる。日本勢が世界上位を保っているのがこの2分類であることは偶然ではなく、 露光装置の世代競争から切り離された領域だからである。 逆に言えば、先端露光装置を持てない国が現実的に狙える出口もここにある。 2.2 機能による6分類 — 半導体は世界に対して何をしているか 2.3 素子数で世代を呼んだ時代と、呼べなくなった現在 素子数による呼称は超々大規模集積回路で止まった。以後は製造寸法で世代を呼ぶ習慣に移り、 その寸法の呼び名も…

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高級知識篇 一段深い原理

第IV部 物理の限界 ⑦ 性能と制約

電力の式、ムーアの法則のどこが生きてどこが終わったか、そして歩留まりの式。この3つが半導体の採算を決めている。 7.1 電力の式 — 消費電力は何で決まるか 7.2 ムーアの法則 — 何が成立し、何が終わったか 7.3 歩留まり — 面積が増えるほど良品率は指数で落ちる (マーフィーの式) %

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投資者視点篇 投資家がこの語で見る点

第V部 産業と勢力図 ⑨ 主要企業の比較 — 工程ごとに誰が立っているか

受託製造・メモリー・装置と材料・設計専業・詰まっている場所の5つの角度で比べる。比較ツールの8つの型と行き来できる。 9.1 受託製造 (ファウンドリー) の比較 9.2 メモリー各社の比較 9.3 装置と材料 — 日本の持ち分が最も厚い層 JSRのEUV用感光材は、日本の持ち分が最も厚い場所である。世界のEUVの工程はこの材料を通る。 官民ファンドがJSRを9,000億円で買い取り上場廃止としたのは (2023年)、この位置づけによる。 ディスコは後工程で円板を切り分ける装置で世界の8割を占め、置き換えられる装置が他にない。 信越化学 + SUMCO でシリコンウエハ世界 60% を寡占。 9.4 設計専業 (ファブレス) の比較 9.5 先端の世代が7ナノで止まる理由 — 4つそろわないと進めない 先端の世代は設計まではできても、製造の段で止まる。理由は輸出規制だけではない。 露光装置…

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出典・注記: Postation 編集部の書き下ろし (2026-09-03)

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