HBMとは
読み: えいちびーえむ High Bandwidth Memory 半導体の用語
HBM (High Bandwidth Memory、広帯域メモリー) は、DRAMのチップを何層にも縦に積み、シリコン貫通電極 (TSV) でつないだメモリーである。GPUなど演算を担う半導体のすぐ隣に置き、1,024本 (HBM4では2,048本) のデータ線で結ぶ。1本あたりの速さよりも、データ線の本数でデータ転送速度を稼ぐ点が、ほかのメモリーとの大きな違いだ。
Postation 編集部 ・ 2026年10月13日 更新
HBMの構造 — DRAMを積み、演算用の半導体の隣に置く
HBMは、パソコンやサーバーの主記憶と同じ種類のメモリーであるDRAMのチップでできている。違うのはチップの積み方と置き場所だ。DRAMのチップを8層、12層、16層などと縦に積み重ね、多くの製品では最も下に「ベースダイ」と呼ぶ制御用のロジックチップを置く。チップ同士は、上下に貫くシリコン貫通電極 (TSV) と、マイクロバンプと呼ぶ微小な突起状の電極でつなぐ。米マイクロン・テクノロジーは、数千のTSVとマイクロバンプでチップ同士をつなぐと説明している。
HBMは、GPUなど演算用の半導体と並べて、インターポーザと呼ぶ中間基板の上に載せ、1つのパッケージに収める。マイクロンは、このインターポーザにシリコン製のものを使うと説明している。台湾積体電路製造 (TSMC) のCoWoSは、GPUとHBMをこの形で1つのパッケージにまとめる実装技術の1つである。
層を増やせば容量は増えるが、厚みが増す。韓国SKハイニックスは2024年9月、12層のHBM3Eの量産を始めたと発表した。8層品と同じ厚さに収めるため、DRAMのチップを従来より40%薄くしたという。容量は3GBのチップ12枚で36GBとなり、それまでのHBM3Eで最大だった24GB (3GBのチップ8枚) を上回った。
なぜ「広帯域」なのか — 速さよりもデータ線の本数で稼ぐ
メモリーのデータ転送速度 (帯域幅) は、データ線の本数と1本あたりの速さの掛け算で決まる。HBMは本数を極端に増やした。半導体の業界標準を定めるJEDEC (ジェデック) の規格では、一度にやり取りできるデータの幅は、HBM2が1,024ビット、HBM4が2,048ビットだ。HBM3も、チャネルの数と1チャネルの幅から計算すると1,024ビットになる。幅1ビットがデータ線1本にあたり、命令やクロックを送る線はこれとは別にある。
ほかのメモリーと比べると差は大きい。画像処理向けのGDDR6は、JEDECの規格でチップ1個が16ビットのチャネルを2つ持ち、幅は合わせて32ビットだ。マイクロンによると、HBMの1,024ビットは標準的なDDR5のモジュールの16倍の幅にあたる。
HBM3はデータ線1本あたり最大毎秒6.4ギガビットで、1,024本分を合計してバイトに換算すると、1個 (積み重ねた1組で、スタックと呼ぶ) あたり毎秒約819ギガバイトになる。JEDECが発表した値と一致する。HBM4は2,048本がそれぞれ最大毎秒8ギガビットで、合計は最大で毎秒約2テラバイトになる。
JEDECは、HBMが演算用のチップと近接し、幅の広い接続でつながることで、高速化と低消費電力を両立すると説明している。
HBM2・HBM3・HBM3E・HBM4の違い — データの幅を2倍にしたHBM4
SKハイニックスは、2013年に世界で初めてHBMを発売したとしている。HBMはその後、HBM2、HBM2E、HBM3、HBM3E、HBM4と世代を重ねてきた。下の表は、HBM2・HBM3・HBM4はJEDECの規格の値、HBM3EはSKハイニックスの製品の値を示す。
| 世代 | 出所 | データの幅 | 1本あたりの速さ (毎秒) | 1スタックあたりの転送速度 (毎秒) | 積層数 | 容量 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| HBM2 | JEDEC 2016年1月 | 1,024ビット | 約2ギガビット (計算) | 最大256GB | 2・4・8層 | 最大8GB |
| HBM3 | JEDEC 2022年1月 | 1,024ビット (計算) | 最大6.4ギガビット | 最大819GB | 4・8・12層 | 4〜64GB (64GBは将来の16層) |
| HBM3E | SKハイニックスの12層品 2024年9月 | 1,024ビット | 9.6ギガビット | 約1.2TB (計算) | 12層 | 36GB |
| HBM4 | JEDEC 2025年4月 | 2,048ビット | 最大8ギガビット | 最大2TB | 4・8・12・16層 | 最大64GB |
(出所: JEDECの発表文と規格のページ、SKハイニックスの発表文。HBM2の1本あたりの速さは毎秒256GBと1,024ビットから、HBM3のデータの幅はチャネル16個と1チャネル64ビットから当サイトが計算。HBM3Eのデータの幅は、HBM4の入出力端子2,048本が前世代の2倍とするSKハイニックスの発表から当サイトが計算。HBM3Eの転送速度は、データの幅1,024ビットと1本あたり毎秒9.6ギガビットから当サイトが計算)
JEDECによると、HBM4では独立したチャネルの数がHBM3の16から32に倍増し、データの幅は2,048ビットになった。HBM3向けの制御回路との互換性も保っている。
製品の速さは、規格の上限を上回り始めている。SKハイニックスは2025年9月、HBM4の開発を完了し量産の準備を整えたと発表した。データ線1本あたりの速さは毎秒10ギガビット超で、2025年4月に公表されたJEDECの規格の上限 (毎秒8ギガビット) を上回るとした。マイクロンは2025年6月にHBM4の12層品 (36GB) のサンプル出荷を発表した。2026年10月時点の製品ページでは、1本あたり毎秒11ギガビット超、1スタックあたり毎秒2.8テラバイト超とし、HBM4の12層品 (36GB) を量産しているとしている。
HBMとDRAM・GDDRの違い — 中身は同じDRAM、違うのは積み方とデータの幅
HBMはDRAMの一種で、記憶の仕組みはパソコンの主記憶と変わらない。違うのは、チップの積み方、演算用の半導体との距離、データの幅である。
| 種類 | 形 | データの幅 |
|---|---|---|
| HBM | DRAMのチップを縦に積み、演算用の半導体と同じパッケージに収める | 1スタックで1,024ビット、HBM4は2,048ビット |
| GDDR6 | 1個ずつのチップ | チップ1個で32ビット (16ビットのチャネルを2つ) |
| DDR5 | チップを並べたモジュール | 標準的なモジュールでHBMの16分の1 (マイクロンの比較) |
(出所: JEDECの規格のページ、マイクロンの製品ページ)
容量を増やす方法は、積む層を増やすか、1枚のチップの容量を上げるかである。JEDECのHBM4の規格は、1枚32ギガビットのチップを16層積んで最大64GBとしている。DRAMそのものの仕組みはDRAMの用語解説で、演算用の半導体がメモリーからの読み出しを待つ構造は体系解説の基盤構成 (アーキテクチャ) の章で取り上げた。
HBMと日本企業 — 積層の材料、封止の装置、検査の装置
HBMはSKハイニックスやマイクロンなどのメモリー大手が生産する。日本の材料メーカーや製造装置メーカーも、HBM向けの製品やHBMに関わる需要を開示している。各社が自ら開示した内容は次のとおり。
| 社名 | 製品 | 各社の開示 |
|---|---|---|
| レゾナック | 積層用の材料 | 絶縁接着フィルム (NCF) は、HBMのチップを接続しながら多段に積むのに使う。2024年3月、NCFと放熱シート (TIM) の2品の生産能力を従来の3.5〜5倍に広げると発表。投資額は2品の合計で約150億円 |
| TOWA | 樹脂で封止する装置 | 圧縮成形装置の1機種を、HBMやチップレットなどの先端パッケージに最適とする。2026年8月の決算説明資料では、事業環境としてHBMを中心とした先端パッケージ向けの投資は続いているとした |
| アドバンテスト | 検査の装置 | HBMをメモリー用テスターの成長のけん引役と位置づける。HBM4やHBM4Eへの世代交代と、積層数の多いHBMの広がりが、テスターの需要拡大につながると見込む (2025年7月の決算説明会の質疑応答) |
(出所: 各社の発表文、製品ページ、決算資料)
精密加工装置のディスコは、2026年7月の決算短信で、先端ロジックやHBMなどの高性能半導体向けの需要が高い水準で推移したと記した。自社の装置とHBMの関係には触れていない。
ベースダイの製法と接合方式の変化は、半導体の学会ホットチップスでのHBMの発表を検証した記事で取り上げた。顧客ごとのHBM需要の見通しは、2028年のHBM需要の記事で扱った。HBMとCoWoS、基板がAIサーバーの供給をどう制約するかは、AI半導体の供給制約の記事で扱った。
HBMのよくある質問
HBMとは何の略か
High Bandwidth Memoryの略で、日本語では広帯域メモリーと呼ぶ。DRAMのチップを縦に積み、演算用の半導体の隣に置いて、多数のデータ線でつなぐメモリーである。
HBMとDRAMの違いは
HBMもDRAMの一種で、記憶の仕組みはパソコンなどの主記憶に使うDRAMと同じである。違いはチップの積み方とデータの幅で、HBMはDRAMのチップを縦に積み、1スタックあたり1,024ビット (HBM4は2,048ビット) の幅で演算用の半導体とつなぐ。マイクロンは、この幅を標準的なDDR5のモジュールの16倍と説明している。
HBM3EとHBM4の違いは
HBM4はデータの幅を1,024ビットから2,048ビットに広げた。1スタックあたりのデータ転送速度は、SKハイニックスのHBM3Eが毎秒約1.2テラバイト (データ線1本あたり毎秒9.6ギガビットから当サイトが計算) で、HBM4はJEDECの規格の上限で毎秒2テラバイトとなる。SKハイニックスやマイクロンは、規格の上限を上回る速さの製品を発表している。
HBMに関わる日本企業は
HBMのチップを積むための接着フィルムを手がけるレゾナック、樹脂で封止する圧縮成形装置のTOWA、検査装置のアドバンテストが、自社の開示でHBMとの関わりを説明している。
出典: JEDEC 発表文「HBM規格の改訂 (JESD235A)」(2016年1月12日)、JEDEC 発表文「HBM3規格 (JESD238)」(2022年1月27日)、JEDEC 発表文「HBM4規格 (JESD270-4)」(2025年4月16日)、JEDEC 規格のページ「HBM4 (JESD270-4)」(2026年10月13日に確認)、JEDEC 規格のページ「GDDR6 (JESD250D)」(2026年10月13日に確認)、SKハイニックス 発表文「12層のHBM3Eの量産開始」(2024年9月26日)、SKハイニックス 発表文「HBM4の開発完了と量産の準備」(2025年9月12日)、マイクロン 発表文「HBM4のサンプルを主要顧客に出荷」(2025年6月10日)、マイクロン HBMの製品ページ (2026年10月13日に確認)、マイクロン HBM4の製品ページ (2026年10月13日に確認)、レゾナック 発表文「AI半導体向け材料の生産能力を拡大」(2024年3月29日)、TOWA 圧縮成形装置の製品ページ (2026年10月13日に確認)、TOWA 2027年3月期第1四半期決算説明資料 (2026年8月6日)、アドバンテスト 2026年3月期第1四半期決算説明会の質疑応答要旨 (2025年7月29日)、ディスコ 2027年3月期第1四半期決算短信 (2026年7月23日)
3段で深く知る — 基礎・高級・投資家視点
1行の定義から、体系解説の該当箇所へそのまま降りられる。抜粋は体系解説でこの語が出てくる箇所から引いた。続きはリンク先にある。
第III部 設計する ④ 基盤構成 (アーキテクチャ)
…外付けの高帯域記憶 (HBM) から重みを読み出して演算核へ配る構造で、記憶の帯域が上限を決める場面が多い。この点は6.5で数式にする。 TPUはさらに1段専用化した。演算の中心は積和演算器を格子に並べたシストリックアレイで、重みを片側から、活性値をもう片側から流し込むと、途中の和が隣の演算器へ波のように伝わる。途中結果を記憶へ書き戻さないため、GPUで最も電力を食う「記憶との往復」が構造上減る。どの演算器がいつ何を受け取るかはコンパイラが事前に全部決め、実行時に機械が予定を組み替えることはない。グーグルが自社の学習と推論のために設計し、2025年11月に公開した第7世代 TPU7x (アイアンウッド) は1個あたり高帯域記憶192GB・毎秒7.37TB、8ビット浮動小数で4,614テラFLOPS、9,216個までを1系統の接続網で束ねる。 NPUは同じ積和演算器の配列を、電力1桁ワットの…
第I部 基礎 ① 計算資源とは何か — AIの能力は演算の堆積である
…掛け算1万問なら博士8人に圧勝する 本当の主役はメモリ帯域: H100のHBM3は3.35TB/秒。CPUの数百GB/秒とは桁が違う 行列積専用回路 (Tensor Core) で、さらに1桁上の実効性能を出す ソフトウェア資産 CUDA が15年分蓄積し、他社チップへの乗換障壁になっている 商流も特殊である。GPUは「買う」以外に秒・分・時間・月単位で借りる市場が確立しており、 NVIDIAは自社でクラウドを持たずとも、賃貸市場全体の元締めとしてほぼ全事業者に供給する立場にある。 利用者から見れば、計算資源は電気やガスと同じ従量課金の公共財的商品へと姿を変えつつある。 1.4 なぜ計算資源は足りないのか — 2本の指数曲線の傾きの差 「半導体は2年で2倍 (ムーアの法則) に良くなるのに、なぜ足りない?」への答えは単純で、需要側の指数の傾きが供給側より急だからである。 深層学習ブーム以降…
誰も「何を測ったか」を書いていない ― サムスンHBM4の歩留まり80%を分解する
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出典・注記: HBM4からベースダイはロジックプロセス製造へ
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