住友金属鉱山のファラデー回転子(グラノプト製の磁気光学単結晶膜) Faraday Rotator (Bi-substituted Rare-earth Iron Garnet, GRANOPT)
光アイソレーターの中で、レーザーに戻る反射光を止めるための磁気光学材料。ビスマス置換希土類鉄ガーネットの単結晶膜で、厚さは0.1〜0.5ミリ。住友金属鉱山51%、三菱ガス化学49%の合弁会社グラノプトが秋田県能代市で造る。グラノプトは生成AIによる光通信の需要増を受け、2027年度中に生産能力を2025年度の3倍にすると2026年6月に決めた。価格は公表されていない。
詳細解説
- 製品
- ビスマス (Bi) 置換希土類鉄ガーネットの単結晶膜。磁界をかけると光の偏光の向きが回る性質 (ファラデー効果) を使い、光を一方向だけ通す光アイソレーターや、光の出口を切り替える光サーキュレーターに組み込まれる smm.co.jp
- 造る会社
- 株式会社グラノプト (秋田県能代市、2005年4月設立、資本金1億5,000万円)。出資比率は住友金属鉱山51%、三菱ガス化学49%。2017年6月、住友金属鉱山が三菱ガス化学から株式の一部を譲り受け、グラノプトは持分法適用会社から住友金属鉱山の連結子会社になった smm.co.jp
- 使われる場所
- グラノプトは、携帯電話の基地局、データセンター、各国を結ぶ海底ケーブルなどで使われると説明する granopt.jp
- AIとのつながり
- 住友金属鉱山は2026年6月22日、グラノプトがファラデー回転子の生産能力を2027年度中に2025年度比で3倍にすると決めたと発表した。理由に、生成AIやクラウドの普及による光通信の重要性の高まりを挙げた smm.co.jp
- 事業の位置づけ
- 住友金属鉱山は統合報告書2026で、高度情報通信分野のファラデー回転子を「攻める事業」とし、AI・データセンターの増設に伴う増産投資を計画どおり進めていると記した smm.co.jp
- 業績への寄与
- 2026年8月の業績予想の修正で、住友金属鉱山はファラデー回転子と粉体材料がAI・データセンター向けの需要に支えられて増益になる見通しを示した smm.co.jp
- 評価
- グラノプトは2020年、経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」(2020年版、素材・化学部門24社) に選ばれた smm.co.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| グラノプト本社工場 (第1工場) | 秋田県能代市扇田字扇渕4番地4 | ファラデー回転子の製造。2005年10月に操業を始めた。設備の帳簿価額と人員は、第1・第2工場を合わせた会社全体の値を金額の欄に示す | granopt.jp | |
| グラノプト第2工場 | 秋田県能代市扇田字扇渕4番地12 (能代工業団地、第1工場の北隣) | 敷地1万1,586平方メートル、延べ床面積6,706平方メートルの2階建て。2023年7月に竣工し、2024年度に稼働した。生産能力を3倍に増やす計画は、この工場の既存ラインの稼働率と生産効率を上げて進める | smm.co.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 液相エピタキシャル (LPE) 法
- 液相エピタキシャル (LPE) 法は、溶かした原料から基板の上に単結晶の膜を成長させる方法の総称。グラノプトはこの方法で厚さ0.1〜0.5ミリの膜を造る granopt.jp
- 戻り光を止める仕組み
- ファラデー回転子は偏光の向きを回す。光アイソレーターの中で偏光子と組み合わせ、半導体レーザー (LD) の反射光を遮って、信号の減衰とレーザーの劣化を防ぐ smm.co.jp
- 品種
- 温度特性を重視した GTD、長い波長 (Lバンド) 向けの GLB、飽和磁界が小さい GSF、磁石が要らない GMF の4品種 granopt.jp
- 種結晶
- 住友金属鉱山グループはファラデー回転子の種結晶として、置換型ガドリニウムガリウムガーネット (SGGG) の基板を直径4インチと3インチで販売している smm.co.jp
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 膜厚 | 0.100〜0.500ミリ | granopt.jp |
| 45度回転品の厚さ (代表値) | 波長1550ナノメートルで GTD 0.450ミリ、GLB 0.390ミリ、GSF 0.475ミリ、GMF 0.420ミリ | granopt.jp |
| 挿入損失 | 波長1310〜1550ナノメートルで0.05〜0.10デシベル、1590ナノメートルで0.15〜0.20デシベル | granopt.jp |
| キュリー温度 | GTD・GLB 300度、GSF 250度、GMF 230度 | granopt.jp |
| 飽和磁界 (1ミリ角) | GTD 700エルステッド、GLB 800エルステッド、GSF 200エルステッド。GMF は保磁力500エルステッドで磁石が要らない | granopt.jp |
| 販売の形 | チップで売る場合は2ミリ角以下が基本で、ほかの寸法も注文に応じる | granopt.jp |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 種結晶の基板 | 置換型ガドリニウムガリウムガーネット (SGGG) 基板 SGGG の販売窓口は SMMプレシジョン (秋田県能代市) |
公表されていない | — | 住友金属鉱山はSGGG基板をファラデー回転子の種結晶として販売する。グラノプトがどこから調達するかは公表されていない A | |
| 原料 (ビスマス・希土類・鉄の酸化物など) | 公表されていない | 公表されていない | — | グラノプトは2026年度の方針で、関係会社と連携して資材・原料の安定調達体制を築くとしている。調達先の社名は公表されていない A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1種結晶置換型ガドリニウムガリウムガーネット (SGGG) の単結晶をチョクラルスキー法で育て、基板に切り出して研磨する企業: 住友金属鉱山グループ (SMMプレシジョンが販売)
- 2単結晶膜LPE 法で単結晶膜を育て、ファラデー回転子に加工して検査する企業: グラノプト
- 3光アイソレーターグラノプトのファラデー回転子を主な部材に、SMMプレシジョンが光通信用の光アイソレーターを造って売る (2017年6月時点の住友金属鉱山の説明)企業: SMMプレシジョン
- 4販売先主な取引先国は中国、東南アジア諸国、北米、欧州など約15か国。中国では深圳の販売子会社 (2019年11月設立) が売る企業: グラノプト
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1膜の育成LPE 法でビスマス置換希土類鉄ガーネットの単結晶膜を育てる設備・企業: グラノプト第1工場・第2工場
- 2検査第2工場に光学特性を調べる検査装置を置く設備・企業: グラノプト第2工場
- 3増産2026年度は第1・第2工場を併用する体制を築き、設備の自動化に経営資源を集中して増産を進める設備・企業: グラノプト
💴 販売価格と補助金
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 全品種 | 公表されていない (見積もり) | 2026年11月6日 | granopt.jp |
| 項目 | 額 (円) | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| smm.co.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 直販 | グラノプトの問い合わせ窓口で受け付け、技術資料 (No.G006) は問い合わせの内容に合わせて送る | granopt.jp |
| 中国の販売子会社 | 格藍光学材料貿易 (深圳) 有限公司がファラデー回転子を販売する | granopt.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 品質保証 | グラノプトは2026年度の品質方針で、工程内の品質管理の強化、長期信頼性データの体系化、顧客との技術対話を掲げる。保証の年限は公表されていない | granopt.jp |
| 安全データシート | 品種ごとの安全データシート (GTD・GLB、GSF、GMF など) を公開している | granopt.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 中国・東南アジア・北米・欧州など約15か国 | 日本で造って輸出する。輸出管理の規制の対象かどうかは公表されていない | granopt.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | デバイス材料の売上高 (住友金属鉱山の開示区分、ファラデー回転子を含む) | 333億3,900万 | 円 | 前期は321億8,000万円。デバイス材料は2026年3月期に旧パッケージ材料と結晶材料を組み替えた区分で、統合報告書2026は銅ポリイミド基板・プリント配線板・LT・LN 基板・SiCkrest もこの区分の製品に挙げる。ファラデー回転子だけの売上高は公表されていない | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
| 2026年4〜6月 | 機能性材料のうちデバイス材料とその他の売上高 (部門間取引の消去を含む) | 238億 | 円 | 前年同期は153億円 | smm.co.jp |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 生産能力の目標 | 2027年度中に2025年度比で3倍 (グラノプトが2026年6月に決定、住友金属鉱山が6月22日に発表) | smm.co.jp | |
| グラノプトの設備の帳簿価額 | 48億6,400万円 (2026年3月末、有価証券報告書の「本社工場」の行。第1・第2工場の内訳は公表されていない) | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| グラノプトの従業員 (有価証券報告書) | 就業人員49人、ほかに臨時従業員52人 (2026年3月末) | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| グラノプトの社員数 (会社発表) | 183人 (2025年7月23日時点)。有価証券報告書の就業人員との数え方の違いは公表されていない | granopt.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
ファラデー回転子は住友金属鉱山が単独で持つ事業ではなく、三菱ガス化学との合弁会社グラノプトが造る。光トランシーバーが増えるほど戻り光を止める部品が要るため、グラノプトは2026年に生産能力を3倍にすると決めた。2025年度の能力を基準に、2027年度中に3倍にする計画だ。デバイス材料などの売上高は2026年4〜6月に238億円と、前年同期の153億円から増えた。ただしこの区分には配線板や LT・LN 基板、SiCkrest も含まれ、ファラデー回転子だけの伸びは区分の数字からは分からない。グラノプトの主な取引先国は中国・東南アジア・北米・欧州など約15か国で、中国には販売子会社を置く。住友金属鉱山の全社の利益は金属価格で大きく動く。機能性材料の税引前利益は2027年3月期に100億円の予想だ。
公表されていないこと
- ファラデー回転子だけの売上高・生産量・生産能力の実数は公表されていない
- 販売先の光部品メーカーの社名は公表されていない
- 種結晶と原料の調達先は公表されていない
- グラノプトの人員は有価証券報告書 (49人) と会社発表 (183人) で数え方が異なり、その違いは公表されていない
出所
- 住友金属鉱山 ファラデー回転子の製品ページ (2026-11-06)
- グラノプト 製品情報 (2026-11-06)
- グラノプト 会社概要・2026年度方針 (2026-11-06)
- ファラデーローテータの生産能力を3倍に増強 (2026-06-22)
- 株式会社グラノプト新工場竣工のお知らせ (2023-07-31)
- 株式会社グラノプトの株式の一部譲り受けについて (2017-06-28)
- グラノプト、新グローバルニッチトップ企業100選に選定 (2020-07-07)
- 住友金属鉱山 有価証券報告書 2026年3月期 (2026-06-24)
- 住友金属鉱山 統合報告書2026 (2026-07-31)
- 2027年3月期第1四半期決算 カンファレンスコール資料 (2026-08-10)
- 2027年3月期第1四半期決算 質疑応答 (要旨) (2026-08-10)
- 住友金属鉱山 SGGG の製品ページ (2026-11-06)
出所との照合日: 2026年11月6日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
住友金属鉱山 のほかの製品
🧰 ツール・特集の入口
一次データで動く 14 本 — 銘柄の絞り込み・供給網・比較・一次データの台帳・解説・規制レンズ (すべて無料)