住友金属鉱山のSiCkrest(サイクレスト、貼り合わせ炭化ケイ素基板) SiCkrest Bonded SiC Substrate
パワー半導体用の炭化ケイ素 (SiC) 基板。低抵抗の多結晶SiCの支持基板に、高品質な単結晶SiCを薄く貼り合わせる。単結晶の基板1枚から50枚以上を造れる。鹿児島県伊佐市の大口工場で8インチの量産ラインを立ち上げ、2026年度に量産品の納入を始めた。2026年9月には12インチ品のサンプルを出荷した。価格は公表されていない。
詳細解説
- 製品
- 貼り合わせ炭化ケイ素 (SiC) 基板「SiCkrest」(サイクレスト)。低抵抗の多結晶SiCの支持基板の上に高品質な単結晶層を薄く貼り合わせ、単結晶の特性を保ちながら基板全体の電気抵抗を下げ、通電による劣化を抑える smm.co.jp
- 経緯
- 住友金属鉱山は2017年10月、加賀電子の子会社サイコックスの株式51%を取得し、合弁会社にした (契約は10月2日、実行は10月30日の予定と発表) smm.co.jp
- 吸収合併
- サイコックスは後に住友金属鉱山の完全子会社となり、2025年4月1日に住友金属鉱山に吸収合併された disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 6インチ品
- サイコックスは2017年から6インチの量産実証ラインを構築し、一部の顧客に販売した (2022年7月の発表) smm.co.jp
- 6インチ品の採用
- 2025年度には SiCkrest の特性を生かしたデバイスの量産が新たに始まった smm.co.jp
- 8インチ品
- 2022年7月に開発ライン、2024年9月に量産ラインの構築を決めた。2024年9月に顧客認定に向けたサンプル出荷を始め、2025年度に量産ラインの立ち上げを完了した。大手半導体メーカーから認定を取得し、2026年度から量産品を納入している smm.co.jp
- 12インチ品
- 2026年9月18日、12インチ (300ミリ) 品の開発に成功し、半導体メーカーにサンプルを出荷したと発表した。貼り合わせ方式の12インチSiC基板として世界初 (会社調べ) smm.co.jp
- 採用例
- 2025年12月、新電元工業が新たに開発しサンプル出荷を始めた金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ (MOSFET) に採用された smm.co.jp
- 供給できる口径
- 8インチと6インチを供給できる (製品ページ) smm.co.jp
- AI分野との関係
- 住友金属鉱山はSiCの主な用途を電気自動車などの駆動制御と説明する。データセンターの電源への採用は発表されていない smm.co.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 大口工場 (旧サイコックス大口工場) | 鹿児島県伊佐市 (完全子会社の大口電子の敷地内) | 8インチの開発ライン (2022年7月決定) と量産ライン (2024年9月決定) を置く。6インチ品を造る拠点は公表されていない | smm.co.jp | |
| 大口電子本社工場 | 鹿児島県伊佐市 | 大口電子の機能性材料の製造設備 (LT・LN 基板など)。2026年3月末の帳簿価額40億8,000万円、従業員358人 (ほかに臨時従業員15人)。SiCkrest のラインは住友金属鉱山の資産で、この値に含まれるかは公表されていない | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| 大口電子 (人員の配置転換) | 鹿児島県伊佐市 | 大口電子の LT・LN 基板の生産を2026年度末までに北海道の住鉱国富電子へ集約し、その人員を同じ敷地での SiCkrest の8インチ品の量産に配置転換する | smm.co.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 貼り合わせ
- 独自の接合技術でウエハーを2層にする。希少で高価な単結晶基板1枚から50枚以上の貼り合わせ基板を造れる smm.co.jp
- 特性
- 単結晶の特性を保ったまま基板全体の低抵抗化と高強度化を実現し、バイポーラ劣化 (通電で結晶の欠陥が広がり特性が落ちる現象) の抑制やスイッチング特性の向上も特長とする (会社の説明) smm.co.jp
- デバイス工程
- 住友金属鉱山と加賀電子は2017年10月、この基板を使ったデバイスは単結晶だけの基板と同じ製造工程で作れ、同等の特性が得られると説明した smm.co.jp
- エネルギー
- 単結晶SiCは製造に多くのエネルギーを使う。単結晶を繰り返し使う貼り合わせ基板は、エネルギー消費を抑えて供給量を増やせるとする smm.co.jp
- 一貫生産
- 住友金属鉱山は原料から基板製造までの一貫生産体制を持つと説明する。支持基板の多結晶SiCも自社で造り、外部にも売る smm.co.jp
主要諸元
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 単結晶SiC基板 (貼り合わせる薄い層を取り出す元の基板) | 公表されていない | 公表されていない | — | 会社の発表に単結晶の調達先の記載がない A | |
| 多結晶SiC支持基板 | 多結晶SiC | 住友金属鉱山 | 5713 | 日本 公表されていない |
住友金属鉱山は中期経営計画で貼り合わせの支持基板になる多結晶SiCの拡販を掲げ、原料から基板までの一貫生産と説明する A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1支持基板多結晶SiCを造る企業: 住友金属鉱山
- 2貼り合わせ単結晶層を多結晶の支持基板に貼り合わせる企業: 住友金属鉱山 (大口工場)
- 3技術供与貼り合わせ技術を他社にライセンス供与し、供与先に多結晶SiC支持基板を供給する計画を示した。供与先の社名は公表されていない企業: 公表されていない
- 4デバイスパワー半導体メーカーが MOSFET などを造る。公表された採用先は新電元工業企業: 新電元工業 (東証6844)
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 18インチ量産ライン2024年9月に構築を決め、2025年度に立ち上げを完了した。住友金属鉱山は2025年度下期に貼り合わせ基板の月産能力を6インチ換算で1万枚超にする計画を示していた設備・企業: 住友金属鉱山 大口工場
- 2設備投資2026年3月期の材料セグメントの設備投資270億1,200万円にはSiC基板の量産ライン建設が含まれる。2027年3月期は電池材料とSiC基板を中心に224億円を計画する設備・企業: 住友金属鉱山
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 6インチ・8インチ | 公表されていない (見積もり) | 2026年11月6日 | smm.co.jp |
🛒 購入方法
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 顧客認定 | 顧客ごとに認定を取る。大手半導体メーカーの8インチ認定に続き、他の顧客の認定取得を進める。保証の年限は公表されていない | smm.co.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 公表されていない | 仕向け地の内訳と、輸出管理の規制の対象かどうかは公表されていない | smm.co.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | SiC基板事業の売上高 | 公表されていない | 製品別の売上高は開示されていない | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 減損損失 (2026年3月期・連結) | 材料セグメントで25億8,900万円。主因はSiC基板事業で、製品需要の立ち上がりの遅れや予想販売価格の下落から、有形固定資産の帳簿価額166億1,600万円を回収可能価額149億9,000万円まで減額した (差額16億2,600万円) | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| 月産能力の計画 | 6インチ換算で1万枚超 (2025年度下期、2024年9月の発表) | smm.co.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
SiCkrest は量産の段階に入ったが、収益はまだ見えていない。8インチ品は2026年度に大手半導体メーカーへの納入が始まり、12インチ品のサンプルも出した。一方、2026年3月期に住友金属鉱山は材料セグメントで25億8,900万円の減損損失を計上し、主因はSiC基板事業だった。SiC基板事業の有形固定資産は、帳簿価額166億1,600万円から149億9,000万円に減額された。理由は需要の立ち上がりの遅れと予想販売価格の下落で、電気自動車向けの需要が伸びていないと住友金属鉱山自身も記す。住友金属鉱山が挙げる打ち手は、他の顧客からの8インチ品の認定取得、ライセンス供与と多結晶の販売、12インチ品の実用化だ。月産1万枚超の能力をどこまで使えているか (稼働率) は開示されていない。AI分野から見ると、SiCkrest はデータセンターの光通信や電子部品の材料とは別の事業で、主な用途は電気自動車の駆動制御だ。
公表されていないこと
- SiCkrest の売上高と稼働率は公表されていない
- 8インチ品を納入する大手半導体メーカーの社名は公表されていない
- ライセンス供与先の社名と単結晶SiCの調達先は公表されていない
- 月産1万枚超 (6インチ換算) の計画が達成されたかは公表されていない
- 6インチ品を造る拠点は公表されていない
出所
- 住友金属鉱山 SiCkrest の製品ページ (2026-11-06)
- SiCkrest、世界初の12インチ基板開発に成功 (2026-09-18)
- SiCkrest、新電元工業社のパワー半導体に採用 (2025-12-22)
- パワー半導体材料SiC基板の8インチ量産ライン構築を決定 (2024-09-27)
- 8インチ貼り合わせSiC基板開発ラインの新設を決定 (2022-07-22)
- SiC基板開発会社の株式譲渡契約締結および合弁契約締結について (2017-10-03)
- 住友金属鉱山 有価証券報告書 2026年3月期 (2026-06-24)
- 住友金属鉱山 統合報告書2026 (2026-07-31)
出所との照合日: 2026年11月6日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
住友金属鉱山 のほかの製品
🧰 ツール・特集の入口
一次データで動く 14 本 — 銘柄の絞り込み・供給網・比較・一次データの台帳・解説・規制レンズ (すべて無料)