蓄電事業 体系解説 — 蓄電技術の全体図と学ぶ順番
この体系解説は、蓄電を「電気を使う時間をずらし、送電網の需給と周波数を支える技術」として扱い、その技術が事業のどの制約に効くかまでを5つの層で整理します。
実データで確かめる — 蓄電事業データベース
5つの層の全体図
上から下へ、問題設定 (L0) から事業の制約 (L4) へ積み上がります。線は「前提 → その知識点」、破線の箱は本文がまだ無い知識点 (未稿)、最下段は L4 の先にある事業と制度の本編です。箱を押すと、その知識点を説明している節へ移ります。
3つの学習経路 — 着手点
着手点はこの3本だけです。ほかの読み方は、この3本からの分岐として扱います。各ページの冒頭に、そのページが経路の何歩目かを出しています。
初回90分
- 全体図で5つの層を見る
- 昼に余り夕方に足りない電気 L0
- 系統用蓄電池とは L0
- 出力と容量 L1
- 持続時間 L1
- 往復効率 L1
- 方式×時間スケールを1枚で見る
- 関心のある方式を1つ開く: リン酸鉄リチウムイオン電池 ナトリウム硫黄電池 レドックスフロー電池 揚水発電 水素による貯蔵
完了の条件 「蓄電は何を、どの時間スケールで、どの方式で解決するか」を4文で言える。
1歩目を開く →システム理解
- 出力と容量 L1
- 電池・変換装置・制御 L3
- 電気が通る5つの層 L3
- 電池管理装置 (BMS) L3
- 変換装置 (PCS) L3
- エネルギー管理システム (EMS) L3
- 変圧器・受変電設備 L3
- 劣化 L1
- 保安の規制 L3
- 火災の実例 L3
- 送電網への接続 L4
- 運用とアグリゲーター L4
完了の条件 1つの蓄電所を構成要素に分解し、各要素の失敗が事業にどう出るか言える。
1歩目を開く →方式比較
- 比較の軸を先に固定する
- リン酸鉄リチウムイオン電池 L2
- 三元系リチウムイオン電池 L2
- ナトリウム硫黄電池 L2
- レドックスフロー電池 L2
- 揚水発電 L2
- 水素による貯蔵 L2
- 方式と持続時間の要件 L2
- 同じ軸の表に戻って2つを並べる
完了の条件 2つの方式を同じ軸で比較し、どちらのページに戻ればよいか言える。
1歩目を開く →方式 × 時間スケール
どの方式が、どの時間の長さに向くか。セルの文言は本文の記載で、本文に無いものは「—」、方式としての説明が無いものは「未稿」です。
| 系統 | 方式 | 短周期・高出力 応答・周波数・変動の吸収 | 数時間 日内のシフト・市場取引の中核 | 長時間・長期間 日をまたぐ・季節・燃料化 |
|---|---|---|---|---|
| 電気化学 | リン酸鉄リチウムイオン (LFP) | 2時間型は調整力向き | 得意な持続時間2〜6時間。系統用の主流 | — |
| 電気化学 | 三元系リチウムイオン (NMC) | 得意な持続時間1〜4時間 | 得意な持続時間1〜4時間 (電気自動車向けが中心) | — |
| 電気化学 | ナトリウム硫黄 (NAS) | — | 得意な持続時間6時間以上。定格出力の6時間分の容量 | — |
| 電気化学 | レドックスフロー | — | 得意な持続時間6時間以上 | 10時間以上の充放電が可能 |
| 機械 | 揚水発電 | 起動に1〜10分、出力の調整は数秒。2022年度は三次調整力の約定量の59% | 持続時間5〜14時間 (平均7.9時間) | — |
| 化学 (水素など) | 水素による貯蔵 | — | — | 長期の貯蔵に向く。放電時間が前提により20〜45時間より長くなると最も安い |
対象外: 熱による貯蔵 (蓄熱) (熱) — この体系解説は、送電網から電気を受けて送電網へ電気を戻す設備を対象にする。熱による貯蔵は本文で扱わず、対象外とした。 (2026-10-03 決定)
方式比較の軸 — 2つの方式を同じ軸で並べる
比べる前に軸を固定します。軸の名前を押すとその量を説明している知識点へ、方式の名前を押すとその方式の節へ移ります。本文に書かれていない欄は「本文に記載なし」とし、推測で埋めていません。
| 比較の軸 | LFP | 三元系 | NAS | レドックスフロー | 揚水 | 水素 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 持続時間 | 2〜6時間 | 1〜4時間 | 6時間以上 | 6時間以上 (10時間以上も可能) | 5〜14時間 (平均7.9時間) | 長期の貯蔵に向く。放電時間が前提により20〜45時間より長くなると最も安い |
| 応答 | 1秒未満 (国の検討会の表のリチウムイオン電池の値。PCS と EMS で決まる) | 1秒未満 (同) | 速い。PCS と EMS で決まる (国の表に数値なし) | 速い。PCS と EMS で決まる (同) | 起動に1〜10分、出力の調整は数秒。発電とくみ上げの切り替えに10〜15分かかる | 水電解装置は需給調整市場の要件を満たす応答性能が確認されている |
| 往復効率 | 高い | 本文に記載なし | 約300度の保温に電力が要る | 低め | 70〜85% | 21〜27% (ガスタービン複合発電)・30〜50% (燃料電池) |
| 立地の制約 | 本文に記載なし | 小さく軽い | 本文に記載なし | 設置面積が大きい | 上部と下部の2つの調整池が要り、開発に時間がかかる | 大規模な貯蔵には、地下の岩塩層につくる空洞が最も適している |
| 劣化・寿命 | 充放電の回数と深さで劣化 | 本文に記載なし | 期待寿命20年 (7,300サイクル) | 回数で劣化しにくい。20年を超える寿命 | 稼働年数40〜60年 | 寿命30年 |
| 安全 | 熱暴走を起こしにくい | LFP より熱に弱い | 約300度の高温で動かす | 燃えにくい | 機械式は火災の危険性が低い | 拡散しやすく漏れやすい。火がつきやすい |
| 拡張の単位 | 容量を増やすと費用がほぼ比例して増える | 本文に記載なし | 本文に記載なし | タンクを大きくすれば容量だけを増やせる | 電力量は上部の調整池の水量と落差、出力は水車と発電機で決まる | 水電解装置 (入力) と発電設備 (出力) の規模を別々に決められる |
出所: 中級の章の電池の種類・揚水・水素の節、上級の章の長時間の蓄電池の節 (経済産業省 資料6 が引いた NEDO の調査)。揚水と水素の値の出所は中級の章の各節の表にある。
知識点の索引 — 層別 55件
L0 なぜ蓄電か
L1 何を貯め、何を出すか
L2 どの方式か
L3 どうシステムになるか
L4 事業のどの制約に効くか
L4 の先 — 事業・制度の本編
ページの一覧
各ページは1つの問いに答える学習の単位です。上の2つが技術、下の4つが L4 の先の事業と制度の本編です。
系統用蓄電池は何を解決し、何を貯めて何を出すのか?
系統用蓄電池とは — 知識点 9
このページを開く →蓄電所はどんな方式と部品で組まれ、どこで単体の性能がシステムの性能に変わるのか?
設備の構成と系統接続 — 知識点 20
このページを開く →4つの収入と費用を、収支の1本の式にどう入れるのか?
ビジネスモデルと収支 — 知識点 9
このページを開く →日本ではどこに、誰が、どれだけ参入しているのか?
日本市場と参入企業の戦略 — 知識点 5
このページを開く →先に普及した米国とG7で、収入と事業の形はどう変わったのか?
米国とG7の蓄電事業 — 知識点 6
このページを開く →投資する前に、何をどの順で確かめるのか?
投資する前に学ぶこと — 知識点 4
このページを開く →補足: 日本の現在地 — 申込みは19,114万kW、つながったのは84万kW
系統用蓄電池は、参入の申込みが実際の稼働を大きく上回る段階にあります。接続検討の受付は2年で約5倍になり、国は保証金の引き上げや申込み数の上限で、事業化の見込みが薄い案件を減らしにかかっています。収入の側でも、需給調整市場の上限価格は2026年3月と9月の2度の引き下げで、19.51円からほぼ半分の10円になりました。
出所: 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ (2026年8月6日)、電力広域的運営推進機関の約定結果、環境共創イニシアチブの交付決定、電力安定供給ワーキンググループ (2026年7月14日)。説明は 申込みと連系の差・送電網への接続・長期脱炭素電源オークション・初期費用・需給調整市場の節。
🧮 収支シミュレーター — 出力・容量・値差を動かして回収年数と IRR を見る
系統用蓄電所1か所の収支を、卸電力の裁定・需給調整市場・容量市場・長期脱炭素電源オークションの4つの収入で組み立てます。 初期値は公表資料の水準から置いた目安で、根拠は下の「初期値の根拠」に書いています。税・借入れ・保険を含まない税引前・全額自己資金の概算で、投資判断の代わりにはなりません。入力はブラウザーの中だけで計算します。
1年目の収入の内訳
年ごとの手残りと累計
棒 = 各年の手残り (緑は黒字、赤は赤字)。線 = 初期費用を引いた累計で、横線 (0) を上に抜けた年が回収の年。横軸は運転開始からの年数。
感応度 — 前提を1つだけ動かしたときの IRR
| 動かす前提 | −30% | −15% | 現在 | +15% | +30% |
|---|
式: 卸の裁定 = 放電量 × 売値 − (放電量 ÷ 往復効率) × 買値。放電量 = 容量 × 年間サイクル数 × (1 − 劣化率)t−1。需給調整 = 出力kW × 単価。容量市場 = 出力kW × 約定単価 × 調整係数。 長期オークション型は固定収入 + 市場収入 × (1 − 還付率)。運転維持費 = 出力kW × 単価 + 市場収入 × 運用委託料率。IRR は各年の手残りの現在価値の合計が初期費用と等しくなる割引率。
初期値の根拠 (出所と時点)
- システム単価 6.8万円/kWh: 国の補助事業での2024年度の実績 (工事費込み、蓄電システム5.4万円+工事費1.4万円)。受変電設備と系統連系の費用は含まれないため「その他の初期費用」に仮の値を置いた。出所は定置用蓄電システム普及拡大検討会 (2025年3月)。
- 売値15.1円・買値7.0円: 2025年度のシステムプライスで、日ごとの高い8コマの平均と安い8コマの平均の差が8.10円。平均価格11.06円の上下に振り分けた。エリア別の値差は上級の章の表にある。
- 年間290サイクル・往復効率90%・劣化1%/年・運転維持費5,000円/kW・年・事業期間20年: 同検討会の収益性試算の前提 (1日1サイクル、充放電深度80%)。託送料金・発電側課金・保険・税は含めていない。託送料金と発電側課金の目安は上級の章の「託送料金と発電側課金」の節にある (北海道の高圧・損失率10%・特別措置ありで出力1kWあたり月234.63円、年約2,800円)。
- 需給調整市場 13,700円/kW・年: 2025年度の一次調整力の平均約3.9円/ΔkW・30分を、年間17,520コマの2割で約定したと仮定した値 (3.9 × 17,520 × 0.2)。上限価格は2026年9月に10円へ下がっており、感応度で下げて確かめること。出力の大きい設備ほど約定する割合は下がりうるので、50MWの型ではこの値を下げて試すとよい。
- 容量市場 8,348円/kW・年: 同検討会の試算が置いた容量市場の収入。蓄電池の調整係数は未取得のため100%としている。2029年度の約定価格はエリア別に12,388〜15,112円。
- 長期オークションの落札単価 45,000円/kW・年: 個別の約定価格は非公表。第4回の蓄電池の上限価格70,675〜74,417円を下回る仮の値。還付率90%は制度の「約9割」による。落札した容量は容量市場から控除されるため、この型では容量市場を0にしている。
- 運用委託料10%: 公表例は運用益の5%や10%前後。各社の契約で異なる。
- 「卸の裁定だけ」の型は、国の検討会の試算 (建設費6万円/kWhで20年の IRR がマイナス0.7%) と向きをそろえて確かめるための型。当サイトの初期値は2025年度の全国の値差8.10円と運転維持費5,000円/kW・年を置くため、IRR は国の試算より低く出る。国の試算の値差の前提は本ページでは扱っていない。
この解説の作り方と確かさ
数字はすべて、官庁・市場の運営者・送配電会社・企業が自ら公表した資料から取っています。民間の指数や報道による値は、その旨を本文に書いています。編集部が自分で計算した値は、計算の方法を各節の注記に示しています。
🔬 編集部が一次データで確かめたこと
- 日本卸電力取引所の公式CSV (2025年度・年間17,520コマ) から、エリア別の「夕方 − 日中」の差と4時間の値差を計算し、年度平均が資源エネルギー庁の資料の値と一致することを確かめた。 (卸電力の裁定)
- 長期脱炭素電源オークション第3回の約定結果と落札電源の一覧から蓄電池の区分を方式別に分け、リチウムイオン以外 (9件・70.0万kW) がリチウムイオン (10件・55.1万kW) を上回ったことを数えた。募集上限が蓄電池だけの枠ではなく揚水と組み合わせた区分だったことも、要綱で確かめて記載を訂正した。 (長時間の蓄電池と入札)
- 北海道電力ネットワークの約款と託送料金の単価表 (2026年9月11日) から、蓄電所の特別措置 (附則3) を使う場合と使わない場合の基本料金を、出力1kW あたりで試算した。 (託送料金と発電側課金)
- 環境共創イニシアチブの交付決定82件を円単位で足し、合計を907.6億円とした (年度別の億円の値を足すと、丸めで907.7億円になる)。 (初期費用と運転費)
- 米エネルギー情報局の発電設備の月次調査 (Form EIA-860M) の原票を集計し、系統用蓄電池が2020年末の1.5GW から2025年末の43.6GW へ増えたことを数えた。 (米国の導入量)
- 収支シミュレーターの初期値は国の検討会の試算の前提をそろえて置いた。「卸の裁定だけ」の型は国の試算より IRR が低く出るため、前提の違いを根拠の欄に書き、数字を国の試算に合わせにいかなかった。 (収支シミュレーター)
📚 一次資料 51件の内訳
- 国の審議会・官庁: 13件
- 市場の運営者: 11件
- 送配電会社の約款と単価表: 7件
- 海外の官庁・市場運営者: 8件
- 企業の発表: 12件
全件の一覧はこのページの末尾にあり、各章では節ごとの出所を表の下に示しています。
🗓 更新と訂正の記録
- 2026-10-03 5か所を訂正した。需給調整市場の上限価格の下がり方を「1年半で19.51円から10円」から「2026年3月に15円、9月に10円と半年で2度」に (章の失敗の型と総覧の日本の現在地の2か所)、容量市場の連続3時間を「蓄電池の基本の条件」から「安定電源として参加するときの条件」に、蓄電池の応答を「指令から1秒以内」から国の検討会の表の「1秒未満 (リチウムイオン電池)」に改めた。水素による貯蔵の節には、系統の電気をためて戻す設備が長期オークションの長期エネルギー貯蔵システムの区分に入ることを加えた。電力システムの50の技術のページを別に公開した。
- 2026-10-03 未稿だった方式を整理した。揚水発電と水素による貯蔵の節を一次資料から中級の章に加え、比較の軸の表に2列を足した。熱による貯蔵は、送電網から電気を受けて送電網へ戻す設備という対象の範囲から外し、対象外と明記した。
- 2026-10-03 学ぶ順に組み直した。技術を5つの層 (なぜ蓄電か・何を貯めて何を出すか・どの方式か・どうシステムになるか・事業のどの制約に効くか) に分け、知識点の台帳から全体図・3つの学習経路・方式と時間スケールの表・索引を描く。各ページに現在地・引き継ぎ・問い・掴む点・全体への戻り・次に開く理由を置いた。監査は docs/storage-technology-audit.md。
- 2026-09-28 長時間の蓄電池の節の出典を毎週確かめる仕組みを入れ、一次資料と照合した。
- 2026-09-27 上級の章に長時間の蓄電池と長期オークション第3回・第4回の節を加えた。第3回の募集上限を「蓄電池だけの枠」と書いていた誤りを、「揚水と組み合わせた2区分」に訂正した。
- 2026-09-26 上級の章に託送料金と発電側課金の節を加えた (北海道電力ネットワークの2026年11月の改定)。
- 2026-09-19 総覧と6章、収支シミュレーターを公開した。
公開 2026-09-19。一次資料との照合 2026-10-03。
🏢 運営と問い合わせ
執筆と照合は Postation 編集部。制作の方針は編集方針、誤りの扱いは訂正の方針、運営者は運営者情報に載せています。誤りに気づいたらお問い合わせ窓口へお知らせください。確かめたうえで本文を直し、上の記録に残します。
補足: 用語辞典 — 33語
VPP、グリッドフォーミング、高電圧直流送電など、蓄電池の周りにある電力システムの技術は電力システムの50の技術にまとめています。
補足: よくある質問
系統用蓄電池とは何ですか?
電力会社の送電網・配電網に単独でつなぐ大型の蓄電池です。電気が安い時間に網から買って充電し、高い時間に売って放電するほか、周波数を保つ調整力や、将来の供給力を提供して対価を得ます。2022年の電気事業法の改正で、1万kWを超える系統用蓄電池からの放電は発電事業に位置づけられました。
蓄電事業はどうやって収益を得るのですか?
入口は4つです。卸電力市場での値差 (裁定)、需給調整市場での待機の対価、容量市場での供給力の対価、そして新設の設備に原則20年の固定収入を与える長期脱炭素電源オークションです。1つの設備でこれらを時間帯ごとに組み合わせます。国の検討会の試算では、建設費が1kWhあたり6万円で値差だけを取る場合、20年の IRR はマイナス0.7%でした。
kW と kWh の違いは何ですか?
kW は一度に出し入れできる電気の勢い (出力)、kWh はためておける電気の量 (容量) です。容量を出力で割ると持続時間になり、2MW・8MWhなら4時間型です。電池の値段は容量に、調整力と容量市場の収入は出力に比例します。
日本の系統用蓄電池はどのくらい導入されていますか?
2026年3月末で、送電網につながった系統用蓄電池 (高圧以上) は約84万kWです。一方で接続検討の受付は約19,114万kW、契約申込みは約3,527万kWあり、申込みと実際の連系の間に大きな差があります。国は2030年の導入見通しを累計約14.1〜23.8GWhとしています。
長期脱炭素電源オークションとは何ですか?
脱炭素電源の新設に対し、固定費の水準の容量収入を原則20年間与える入札で、電力広域的運営推進機関が実施します。蓄電池は第1回 (2023年度) に109.2万kW、第2回に137.0万kW、第3回に125.1万kWが落札されました。他の市場で得た収入の約9割は還付します。第3回からは6時間以上の運転継続と、電池セルの製造国を1か国30%未満とする制限が入り、募集の区分がリチウムイオンとそれ以外に分かれました。第3回はリチウムイオン以外が9件・70.0万kWと、リチウムイオンの10件・55.1万kWを上回りました。第4回 (2026年度) はリチウムイオンで国の認定を受けたメーカーのセルを使う案件を先に落札し、製造国の30%制限はリチウムイオン以外だけにかけます。
蓄電事業の初期費用はいくらですか?
国の補助事業での実績は、工事費込みで2022年度が1kWhあたり6.0万円、2023年度7.6万円、2024年度6.8万円 (蓄電システム5.4万円+工事費1.4万円) でした。受変電設備や系統連系の費用は別にかかります。補助金を使わない海外製の案件では2〜4万円の水準もあると資料は記しています。
蓄電事業のリスクは何ですか?
公的資料が挙げるのは、需給調整市場の単価低下と募集量の削減、値差と市場の見通しの立てにくさ、系統の制約による充電・放電の制限、電池の劣化、火災、そして近隣の騒音問題です。需給調整市場の一次・二次①の上限価格は、19.51円から15円、2026年9月に10円へ下がりました。
アグリゲーターとは何ですか?
複数の発電設備や蓄電池を束ね、市場での売り買いと需給の管理を担う事業者です。法律上は特定卸供給事業者といい、届出制で、2026年9月時点の届出は172者です。蓄電所を持つ事業者の多くは、毎日の充放電の計画と市場への応札をアグリゲーターに委託しています。
米国の蓄電事業から何を学べますか?
米国の系統用蓄電池は2020年末の1.5GWから2025年末に43.6GWへ増えましたが、カリフォルニアの1kWあたりの市場収益は2022年の年103ドルから2024年に53ドルへ下がりました。調整力の市場が先に飽和し、裁定の値幅も蓄電池自身が縮めます。事業者は固定料金の契約や最低保証で収入の下限を固め、それを担保に融資を受けています。
系統用蓄電池に託送料金はかかりますか?
かかります。充電の側には電気を使う側の託送料金がかかり、払うのは託送の契約者 (多くは充電の電気を供給する小売電気事業者) で、電気料金を通じて蓄電所に転嫁されます。放電の側は発電側課金の対象です。北海道電力ネットワークの約款 (2026年11月1日実施) では、蓄電池は発電設備と同じ「発電設備等」に入り、放電した電力量の料金は免除されます。基本料金は充電側の契約電力を差し引いた分にかかるので、充電と放電の出力が同じなら、特別措置を使わない限り発電側課金はほぼかかりません。契約者が申し出る特別措置 (附則3) を使うと、充電の料金の対象は失われる電気の分だけになります。当サイトの解釈では、その分、出力の大半に発電側課金の基本料金 (1kWあたり月137.50円) がかかります。当サイトの試算では、高圧で損失率10%の場合、基本料金は出力1kWあたり月183.26円から234.63円になります。増える額は51.37円で、適用がない場合 (842.60円から1,108.80円、266.20円増) の約5分の1ですが、上昇率は28.0%で、適用がない場合の31.6%に近い値です。
補助金はありますか?
国の系統用蓄電システムの導入支援 (環境共創イニシアチブが執行) は、令和4年度補正から令和7年度までに82件・907.6億円の交付を決定しました。令和7年度補正の補助率は、リチウムイオン電池で出力1,000kW以上30,000kW未満が3分の1以内、30,000kW以上が2分の1以内です。東京都にも対象経費の3分の2以内・上限20億円の助成があります。
一次資料
- 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ 第12回 資料2 (系統用蓄電池の接続状況、2026年8月6日)
- 同 資料1-1 (再生可能エネルギーの出力制御の実績)
- 資源エネルギー庁「系統用蓄電池の現状と課題」(2024年5月29日)
- 定置用蓄電システム普及拡大検討会 とりまとめ (2025年3月7日、システム価格と収益性の試算)
- 電力安定供給ワーキンググループ 第4回 資料6 (需給調整市場の上限価格、2026年7月14日)
- 電力需給調整力取引所 2025年度の取引実績 (2026年6月18日)
- 電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークション 約定結果 (応札年度2025年度、2026年5月13日)
- 電力広域的運営推進機関 容量市場 メインオークションの結果
- 日本卸電力取引所 スポット市場の取引結果 (年度別CSV)
- 環境共創イニシアチブ 系統用蓄電システム等導入支援事業 (令和7年度補正の公募要領)
- 消防庁 対象火気設備等の省令の改正 (蓄電池設備、2023年5月31日公布・2024年1月1日施行)
- 資源エネルギー庁 特定卸供給事業者の一覧
- 米エネルギー情報局 Form EIA-860M (発電設備の月次調査)
- カリフォルニア独立系統運用機関 市場監視部門 2024 Special Report on Battery Storage
- ポトマック・エコノミクス 2025 State of the Market Report for ERCOT
- テルナ 蓄電容量調達の初回入札の結果 (2025年10月1日)
- 連邦ネットワーク庁 SMARD 蓄電池の接続申請の状況 (2026年8月20日)
- 国際エネルギー機関 Batteries and Secure Energy Transitions (2024年4月)
- 電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークション 約定結果 別紙 落札電源一覧 (応札年度2025年度、2026年5月13日)
- 電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークションの制度詳細について (応札年度2025年度、2025年9月)
- 電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークション 募集要綱 (応札年度2025年度、2025年9月3日)
- 電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークション 募集要綱 (応札年度2026年度、2026年9月2日)
- 電力広域的運営推進機関 同 募集要綱 (案) (2026年7月21日)
- 経済産業省 資料6 定置用蓄電システムの現状と課題 (2025年3月12日)
- 日本ガイシ NAS電池の製造及び販売活動終了に関するお知らせ (2025年10月31日)
- 住友電気工業 レドックスフロー2MWシステムを追加 (2026年9月7日)
- GSユアサ 蓄電池に係る供給確保計画の認定 (2026年2月18日)
- パワーエックス Made in Japan
- Bison energy 第3回長期脱炭素電源オークション 2件落札のお知らせ (2026年5月14日)
- ヘキサ・エネルギーサービス 会社概要
- ポーラースター・エナジー 第3回長期脱炭素電源オークションで選定 (2026年6月9日)
- 資源エネルギー庁 電力安定供給ワーキンググループ 第6回 参考資料2 (2026年8月31日、上限価格の算定)
- 電力広域的運営推進機関 長期脱炭素電源オークション 制度詳細説明会資料 (2026年9月)
- 住友電気工業 中期経営計画2028
- 電力広域的運営推進機関 2026年度供給計画の取りまとめ (2026年3月、揚水の設備容量)
- 資源エネルギー庁 大活躍する「揚水発電」の役割とは? (2023年11月7日)
- 資源エネルギー庁 電力・ガス基本政策小委員会 資料6 今後の調整力の確保の在り方について (2023年6月27日)
- 資源エネルギー庁 長期脱炭素電源オークション 制度検討作業部会 資料3-3 (2025年5月28日)
- 東京電力リニューアブルパワー 揚水発電の課題と本勉強会への期待 (経済産業省 将来の電力需給に関する在り方勉強会 第2回、2023年6月13日)
- 北海道電力 京極発電所について (2014年10月1日)
- 国際エネルギー機関 再生可能エネルギーの季節・年ごとの変動への対応 (2023年4月、英語)
- 国際エネルギー機関 水素の未来 (2019年6月、英語)
- 再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議 水素基本戦略 (2023年6月6日)
- NEDO 調査の仕様書 (2026年3月、水電解装置の需給調整市場への応動)
- 北海道電力ネットワーク「託送供給等に係る収入の見通しの変更承認について」(2026年9月4日)
- 北海道電力ネットワーク「託送供給等約款の変更届出について (託送料金の見直し)」(2026年9月11日)
- 同 別紙1 託送供給等約款の変更届出の概要について
- 同 別紙2 託送料金単価表
- 北海道電力ネットワーク 託送供給等約款 (令和8年11月1日実施)
- 北海道電力「託送料金の見直しに伴う電気料金の見直しについて」(2026年9月25日) と添付資料
- 電力・ガス取引監視等委員会 発電側課金の導入について 中間とりまとめ 概要 (蓄電池の電力量料金の免除と対象電力の算定)
本ページは制度と市場の説明で、特定の事業や銘柄への投資を勧めるものではありません。民間の指数と報道による値は、その旨を本文に記しています。
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