蓄電事業 体系解説 / 上級

蓄電事業のビジネスモデル — 3つの市場と長期オークション、収支の組み立て

卸電力の裁定、需給調整市場、容量市場、長期脱炭素電源オークション。4つの収入を制度の数字で読み、市場連動型と固定収入型の2つの事業の形、初期費用と運転維持費、融資が付く条件までを収支の式に落とします。

一次資料との照合: 2026-10-20。制度と市場の数値は出所を各節の末尾に示します。
全体図でこのページの位置を見る (強調が、このページで扱う知識点)
L0なぜ蓄電か L1何を貯め、何を出すか L2どの方式か L3どうシステムになるか L4事業のどの制約に効くか L4 の先事業・制度の本編 kp.l0.why-storage 昼に余り夕方に足りない電気 — なぜ送電網に蓄電池が要るのか なぜ蓄電か kp.l0.curtailment 出力制御 — 余った電気はどうなっているのか 出力制御 kp.l0.frequency 周波数と調整力 — なぜ速く出し入れする設備が要るのか 周波数と調整力 kp.l0.grid-battery 系統用蓄電池とは — 系統用蓄電池は家庭用・産業用と何が違うのか 系統用蓄電池 kp.l1.power-vs-energy 出力と容量 — 同じ蓄電池でも kW と kWh は何が違うのか kW と kWh kp.l1.duration 持続時間 — 何時間型かはどう決まるのか 持続時間 kp.l1.round-trip 往復効率 — 充電した電気はすべて取り出せるのか 往復効率 kp.l1.response 応答の速さ — 指令にどれだけ速く応じられるのか 応答の速さ kp.l1.degradation 劣化 — 電池はどう傷み、何が劣化を早めるのか 劣化 kp.l2.axes 方式比較の軸 — 方式は何の軸で比べるのか 比較の軸 kp.l2.lfp リン酸鉄リチウムイオン電池 — なぜ LFP が系統用の主流なのか LFP kp.l2.nmc 三元系リチウムイオン電池 — 三元系は系統用でどう使われるのか 三元系 kp.l2.nas ナトリウム硫黄電池 — NAS 電池はどこに向き、いまどうなっているのか NAS kp.l2.redox-flow レドックスフロー電池 — レドックスフローは何が違うのか レドックスフロー kp.l2.pumped-hydro 揚水発電 — 揚水発電は蓄電池とどこが違うのか 揚水 kp.l2.hydrogen 水素による貯蔵 — 季節をまたぐ貯蔵はどうするのか 水素 kp.l2.duration-fit 方式と持続時間の要件 — 制度は電池の選び方をどう動かしているのか 方式と制度 kp.l3.three-parts 電池・変換装置・制御 — 蓄電所は何でできているのか 3つの部品 kp.l3.five-layers 電気が通る5つの層 — 電気は電池から送電網までどこを通るのか 5つの層 kp.l3.bms 電池管理装置 (BMS) — セルの電圧と温度は誰が見張るのか BMS kp.l3.pcs 変換装置 (PCS) — 出力と応答の速さは何で決まるのか PCS kp.l3.ems エネルギー管理システム (EMS) — いつ充電し、いつ放電するかは誰が決めるのか EMS kp.l3.substation 変圧器・受変電設備 — 送電網と電圧をどう合わせるのか 受変電 kp.l3.safety-regulation 保安の規制 — 安全のための規制は何があるのか 保安規制 kp.l3.fire 火災の実例 — 蓄電設備の火災は実際に起きているのか 火災 kp.l4.grid-connection 送電網への接続 — つなぐまでに何が要り、どれだけかかるのか 系統接続 kp.l4.charge-capacity 充電も系統の容量を使う — 充電の側にも送電網の制約はあるのか 充電の容量 kp.l4.cyber-requirement 系統連系のセキュリティ要件 (JC-STAR★1) — 送電網につなぐ機器に、どんなセキュリティ認証が要るのか セキュリティ認証 kp.l4.operation 運用とアグリゲーター — 毎日の運用は誰が担い、何が収入を左右するのか 運用 kp.l4.siting-noise 立地と近隣 — 置き場所で何が問題になるのか 立地と騒音 kp.l4.revenue-entry 収入の4つの入口 — 技術のどの性質が、どの収入につながるのか 収入の入口 収入と収支 日本の市場 米国とG7 投資の実務 収支シミュレーター
引き継ぎ

前のページの結論: 方式が持続時間と寿命を、5層の構成が効率と稼働率を、接続と保安が工期と立地を決める。

ほかのページから来た場合 (2)
このページの問い

4つの収入と費用を、収支の1本の式にどう入れるのか?

掴む点
  1. 収支の式は1本で、どの項を固めるかが事業の形を分ける。
  2. 需給調整市場の上限価格は19.51円から15円、10円へ下がった。
  3. 長期オークションは20年の固定収入と引き換えに、他の市場の収入の約9割を返す。

読み終えたら次に答える問い: 日本ではどこに、誰が、どれだけ参入しているのか (経路の次)

このページの知識点: L4収支の式L4卸電力の裁定L4卸電力の直近の値差L4需給調整市場L4容量市場L4長期脱炭素電源オークションL4長時間の蓄電池と入札L4事業の形L41か所の月間売上高L4初期費用と運転費L4託送料金と発電側課金

収支の式は1本で、どの項を固めるかが事業の形を分ける

L4 収支の式 収支はどう組み立てるのか kp.biz.equation 全体図で見る
年間の手残り = 卸電力の裁定 (kWh × 値差) + 需給調整市場 (kW × 待機の単価) + 容量市場 (kW × 約定価格 × 調整係数) + 長期オークションの固定収入 − 他市場収入の還付 − 運転維持費 − 運用委託料

蓄電事業の収入は、容量 (kWh) に比例する項と、出力 (kW) に比例する項に分かれます。値差で稼ぐ裁定は容量に、待機と供給力への対価は出力に比例します。初期費用の大半を占める電池は容量に比例して高くなるので、出力に比例する収入が厚いほど短時間型が、値差と長時間の要件が効くほど長時間型が有利になります。国の検討会の試算は、この式の最初の項だけでは事業にならないことを示しました。建設費が1kWhあたり6万円で値差だけを取ると、20年の IRR はマイナス0.7%です。

以下、4つの項を順に制度の数字で見ます。自分の前提で計算するには収支シミュレーターを使ってください。

① 卸電力の裁定 — 4時間の値差は全国で7〜11円

L4 卸電力の裁定 値差でいくら稼げるのか kp.biz.arbitrage 全体図で見る

日本卸電力取引所のスポット市場は、翌日の電気を30分単位の48コマで取引します。下限は1kWhあたり0.01円で、太陽光が余る昼にこの下限に張り付くコマが出ます。4時間型の蓄電池が1日1回、安い4時間に充電して高い4時間に放電したときに取れる値差を、2025年度の全コマから計算したのが次の表です。

エリア年度平均0.01円以下のコマ数夕方 − 日中4時間値差
システムプライス11.062696.138.10
北海道11.704737.8310.77
東北11.395017.269.46
東京12.451054.777.25
中部11.361795.328.26
関西10.652815.298.66
中国10.213696.098.54
四国8.858095.658.66
九州9.819837.049.44

2025年度 (2025年4月〜2026年3月)。単位は円/kWh、「0.01円以下」は年間17,520コマのうちの数。夕方−日中 = 16〜21時の平均 − 9〜15時の平均。4時間値差 = 日ごとの高い8コマの平均 − 安い8コマの平均を年度で平均。日本卸電力取引所の公式CSVから当サイトが計算し、年度平均が資源エネルギー庁の資料の値と一致することを確かめた。九州の4時間値差は2023年度10.85円、2024年度11.13円。

値差が大きいのは、再エネが多く連系線が細い北海道・東北・九州です。ただし値差の全額が手元に残るわけではありません。往復効率が90%なら、放電1kWhのために1.11kWhを買うので、買値が7円のとき損失分だけで約0.8円が消えます。託送料金や再エネ賦課金 (充放電の損失分に課される) も差し引きます。米国の先行例では、同じ地域に蓄電池が増えるほど昼の安値が上がり、値差は縮みました (米国とG7の章)。

卸電力の直近の値差 — 11月4日受渡の蓄電池の卸売は9エリア平均で1日約10万円

L4 卸電力の直近の値差 直近の受渡日の値差で、蓄電池は卸売でいくら稼げるのか kp.biz.spot-daily 全体図で見る

上の表は1年間の平均です。ここでは、日本卸電力取引所が公表したスポット市場の直近の受渡日 (11月4日) の48コマを、エリアごとに集計しました。出力2MW・容量8MWh の蓄電池が、その日に安い時間に充電して高い時間に放電した場合の卸売の粗利も付けています。数字は公式の取引結果から毎日自動で計算し直します。

26.60円システムプライスの1日平均 (1kWh あたり)最高 37.18円 (16:30)・最安 10.19円 (12:00)
中部 32.88円1日平均が最も高いエリア最も安いのは四国の 15.30円
約10万円蓄電池の卸売の粗利 (9エリア平均・1日)4時間値差は9エリア平均で 17.83円
約336万円11月の推計 (9エリア平均)11月1日〜11月4日の累計 約45万円 (4日分) を30日に換算
0円 10円 20円 30円 40円 0:00 6:00 12:00 18:00 23:30
システムプライス中部 (最も高い)四国 (最も安い) 単位は1kWh あたりの円、30分ごとの約定価格

エリア別の3時間ごとの平均価格 (11月4日受渡)

エリア0〜3時3〜6時6〜9時9〜12時12〜15時15〜18時18〜21時21〜24時
システム24.9427.5927.6314.4321.0435.2533.9227.97
北海道26.7226.5419.589.9312.8734.8037.0631.79
東北26.7329.3518.838.3412.0936.4837.0631.79
東京29.0729.3530.8329.3830.6136.4837.0631.79
中部31.0631.5931.6829.4633.7737.3135.7832.41
北陸10.9316.9813.9618.9517.6029.0423.6919.74
関西10.9311.9513.9618.9517.6029.0423.6919.74
中国10.9311.9512.5210.0310.6026.0123.6919.00
四国10.9311.9512.5210.0310.6026.0123.6916.68
九州10.9311.9512.5210.0310.6026.0123.6919.00

単位は1kWh あたりの円。3時間 (6コマ) の単純平均。色が濃いほど高い。

エリア別の値差と、出力2MW・容量8MWh の蓄電池の卸売の粗利

エリア1日平均最高 (時刻)最安 (時刻)4時間値差蓄電池 1日11月の累計11月の推計
北海道 24.91 39.50
20:00
9.93
8:00・8:30・9:00ほか7コマ
27.59 約15万円 約59万円 約443万円
東北 25.08 39.50
20:00
8.03
12:00
29.25 約17万円 約66万円 約493万円
東京 31.82 39.50
20:00
28.63
12:00
8.54 約3万円 約32万円 約238万円
中部 32.88 37.61
16:00
28.63
12:00
7.93 約3万円 約48万円 約359万円
北陸 18.86 37.60
16:30
8.55
12:00
18.58 約11万円 約48万円 約358万円
関西 18.23 37.60
16:30
8.55
12:00
17.89 約11万円 約48万円 約358万円
中国 15.59 30.71
16:30
8.55
12:00
16.91 約10万円 約35万円 約262万円
四国 15.30 30.71
16:30
8.55
12:00
16.91 約10万円 約34万円 約254万円
九州 15.59 30.71
16:30
8.55
12:00
16.91 約10万円 約35万円 約262万円
9エリア平均———17.83約10万円約45万円約336万円

価格の単位は1kWh あたりの円。4時間値差は、高い8コマの平均から安い8コマの平均を引いた値 (上の年度の表と同じ定義)。出力2MW・容量8MWhの蓄電池が1日1回、安い時間に充電して高い時間に放電した場合の卸売の粗利。充放電深度80% (1日に充電する量は6.4MWh)・往復効率90%・1コマ (30分) の充電と放電はそれぞれ最大1MWh、充電を終えてから放電する。託送料金・再エネ賦課金・取引手数料・電池の劣化は含まない。11月の累計は1日から受渡日まで (4日分) の合計、推計はその1日平均に30日を掛けた値。

直近7日の受渡日の推移

受渡日システムプライスの1日平均蓄電池の卸売の粗利 (9エリア平均)
11月4日26.60円約10万円
11月3日21.37円約12万円
11月2日30.09円約11万円
11月1日17.20円約13万円
10月31日18.37円約10万円
10月30日31.72円約8万円
10月29日26.71円約13万円

この試算は卸売の値差だけです。蓄電所の収入の柱になっている需給調整市場は、電力需給調整力取引所が公開データの商用利用に事前の契約を求めているため、日々の落札価格を載せていません。需給調整市場の仕組みと上限価格の推移は次の節、決算から計算した1か所の売上高は売上高の実績の節にあります。同じ出力を卸売と需給調整市場の両方に出すことはできないので、2つの収入は単純には足せません。

日本卸電力取引所 (JEPX) のスポット市場取引結果 (公式CSV) から当サイトが計算。出所: 日本卸電力取引所 スポット市場取引結果。最終計算 2026-11-03T12:40+09:00。

② 需給調整市場 — 初期の高値は、上限価格の引き下げで縮んでいる

需給調整市場は、送配電事業者が周波数と需給のずれを直す調整力を調達する市場です。対価は、指令に応じて出力を増減できる幅 (ΔkW) を30分間空けて待つことに払われます。応答の速さで5つの商品に分かれ、蓄電池は最も速い一次調整力と二次調整力①を得意とします。

商品応動時間継続時間取引開始上限価格 (円/ΔkW・30分)蓄電池との相性
一次調整力10秒以内5分以上2024年度10円 (2026年9月〜。15円から引き下げ)蓄電池が最も得意。指令を待たず周波数の変化に自動で応じる
二次調整力①5分以内30分2024年度10円 (同上)中央の指令に追従。蓄電池の応札が多い
二次調整力②5分以内30分2024年度7.21円経済的な出力配分の指令に追従
三次調整力①15分以内30分2022年度7.21円需要予測の誤差に対応
三次調整力②60分以内30分2021年度設定なし再エネの予測誤差に対応。前日に調達
19.51 → 15 → 10円一次・二次①の上限価格2026年3月に15円、9月に10円。競争が改善しなければ7.21円まで下げる方針
3σ → 1σ一次・二次①の募集量2026年3月の前日取引化と同時に削減
約3.9円一次調整力の平均 (2025年度)二次①は2.8円、三次①は2〜3円
約6割一次調整力の不足率 (2025年度)2024年度は約8割。応札が増えて下がった

2024年度に一次調整力の取引が始まった当初は、募集量の約8割が集まらず、上限に近い価格でも約定しました。蓄電池の事業計画の多くはこの時期の単価を前提にしましたが、制度は3つの方向で変わりました。2026年3月14日から週間取引が前日取引 (スポット市場の後、30分コマ) になり、募集量が減り、上限価格が2回下がっています。審議会の資料は、14円を超える約定が量では約3%なのに調達費用の約17%を占め、その高値帯に蓄電池が多いと指摘しました。調整力の費用は託送料金を通じて電気の利用者が負担するので、高値が続けば制度の側が動きます。

出所: 電力安定供給ワーキンググループ 第1回 資料8・第4回 資料6、電力需給調整力取引所 2024年度・2025年度の取引実績。

③ 容量市場 — 4年後の供給力を約束し、kW に対価を受け取る

L4 容量市場 容量市場では何に対価が払われるのか kp.biz.capacity 全体図で見る

容量市場は、4年後に電気を供給できる能力を電力広域的運営推進機関が入札で確保する市場です。蓄電池は、期待容量が1,000kW以上で、1日1回以上・連続3時間以上の運転ができれば、安定電源として参加するのが基本です。約束した時間に動けなければ減額されます。2029年度向けの入札では蓄電池の応札が169万kW (全体の1.0%) に増えました。2027年度向けは8万kWでした。

実需給年度北海道東京中部北陸〜四国九州
2024年度14,13714,13714,13714,13714,137
2025年度5,2423,4953,4953,4955,242
2026年度8,7495,8345,8325,8328,748
2027年度13,2879,5557,8237,63811,457
2028年度14,81214,81210,2808,78513,177
2029年度14,97215,11112,38812,38815,112

メインオークションのエリア別約定価格 (円/kW・年)。出所: 電力広域的運営推進機関。2029年度の指標価格は10,075円。蓄電池の調整係数 (運転継続時間に応じて評価を割り引く係数) の具体値は本ページでは扱っていません。

価格は年度で3,495円から15,111円まで動いており、20年の収支の柱にするには振れが大きい収入です。運転開始から最初の受渡年度までは収入がないことにも注意が要ります。

④ 長期脱炭素電源オークション — 20年の固定収入と引き換えに、市場収入の約9割を返す

L4 長期脱炭素電源オークション 20年の固定収入はどんな条件で得られるのか kp.biz.ltda 全体図で見る

新設の脱炭素電源に、固定費の水準の容量収入を原則20年間与える入札です。応札した価格がそのまま約定価格になります。蓄電池にとっては、市場の変動から切り離された返済の原資になるので、大型案件の融資の前提として使われています。引き換えに、卸電力や需給調整市場で得た収入の約9割 (領域によって95%・90%・85%) を事後に還付します。落札した容量は容量市場のメインオークションから控除されます。

回蓄電池などの募集枠蓄電池の応札蓄電池の落札落札率要件上限価格 (円/kW・年)
第1回 (2023年度)蓄電池・揚水で100万kW455.9万kW30件・109.2万kW24%1万kW以上・3時間以上55,308〜74,690円
第2回 (2024年度)3〜6時間75万kW・6時間以上75万kW695.6万kW27件・137.0万kW20%3万kW以上・3時間以上56,545〜93,883円
第3回 (2025年度)既設の揚水とリチウムイオンで40万kW・新設の揚水とそれ以外とLDESで40万kW273.1万kW19件・125.1万kW46%3万kW以上・6時間以上76,205〜80,657円
第4回 (2026年度)リチウムイオン40万kW・それ以外40万kW・揚水とLDESで40万kW応札は2027年1月、結果は翌年度に公表——3万kW以上・6時間以上70,675〜74,417円 (要綱のエリア別の表は71,140〜74,906円)

出所: 電力広域的運営推進機関の約定結果と募集要綱。落札件数は落札電源の一覧から当サイトが数えた。個別案件の約定価格は公表されていない。

回を追うごとに要件は厳しくなりました。最低容量は1万kWから3万kWへ、運転継続時間は3時間から6時間へ上がり、第3回からは電池セルの製造国を1か国30%未満とする制限と、制御機器のセキュリティ認証 (JC-STAR★1) が加わりました。資源エネルギー庁は、電池の値下がりを見込んで実現が難しい金額で応札し、下がらなければ違約金を払って退出する案件があると記し、違約金の引き上げを検討するとしています。落札案件の一覧は長期オークションの落札と補助金で確かめられます。

長時間の蓄電池 — 第3回はリチウムイオン以外が多く落札し、第4回は電池の作り手を見る

L4 長時間の蓄電池と入札 リチウムイオン以外の電池はどこで落札されたのか kp.biz.ldes-auction 全体図で見る

長期脱炭素電源オークションの第3回 (応札年度2025年度、2026年5月13日公表) では、電源種が「蓄電池 (リチウムイオン蓄電池以外の蓄電池)」の落札が9件・699,658kWとなり、「蓄電池 (リチウムイオン蓄電池)」の10件・551,469kWを上回りました。この回から、蓄電池は1日1回以上、連続6時間以上の運転継続 (年平均) ができるものに限られています。落札電源の一覧の列は事業者名・案件名・電源種・落札容量で、電池の方式やメーカーは書かれていません。

電源種募集の区分応札落札件数落札率
蓄電池 (リチウムイオン)区分A152.5万kW55.1万kW (551,469kW)1036%
蓄電池 (リチウムイオン以外)区分B120.6万kW70.0万kW (699,658kW)958%
揚水 (新設、京極3号)区分B18.6万kW18.6万kW1100%
揚水 (リプレースなど、塩原2号)区分A63.2万kW26.8万kW142%

出所: 電力広域的運営推進機関 約定結果 (本体 p10・p14) と別紙の落札電源一覧。件数と kW は別紙の各行を当サイトが足した。落札容量は調整係数を掛けた後の kW で、設備容量ではない。区分A = 既設の揚水とリチウムイオン (上限40万kW)、区分B = 新設の揚水とリチウムイオン以外と長期エネルギー貯蔵システム (上限40万kW)。

なぜ上限の40万kWを超えて落札されたのか

第3回の蓄電池の枠は、蓄電池だけの枠ではありませんでした。既設の揚水とリチウムイオンで合計40万kW、新設の揚水とリチウムイオン以外と長期エネルギー貯蔵システムで合計40万kWです。脱炭素電源全体の落札は426.1万kWで、募集量の500万kWに届きませんでした。この場合、揚水・蓄電池などの区分は「募集上限の2倍」を跨ぐ電源まで落札できると募集要綱で決まっており、区分Aは81.9万kW、区分Bは88.6万kW (リチウムイオン以外70.0万kW、揚水の新設18.6万kW) になりました。他の区分から枠を回したのではありません。個別の約定価格と、落札した電源のセルの製造国は公表されていません。

リチウムイオン以外の9件を落札したのは誰か

事業者案件落札 kW背後の企業 (公表資料で確かめた範囲)
合同会社蓄電所3号Battery116号系統用蓄電所141,527Bison energy のグループ会社 (同社の発表。2件とも6時間で、合計の初期設備容量は2GWh)
合同会社蓄電所3号Battery23号系統用蓄電所140,098同上
Stonepeak Kingdom Holdings 合同会社Kingdom-395,582米ストーンピークとシンガポールの CHC の共同事業
合同会社ZEUSZEUS-A75,165確かめられず (法人番号公表サイトに同名の合同会社が8件あり、落札一覧に法人番号が無いため特定できない)
合同会社ZEUSZEUS-B74,163確かめられず
ヘキサ・エネルギーサービス合同会社HC25中国第一蓄電システム46,927米投資会社 I Squared Capital のグループ (同社の会社概要)
Stonepeak Kingdom Holdings 合同会社Kingdom-645,931米ストーンピークと CHC の共同事業
ヘキサ・エネルギーサービス合同会社HC25東北第二蓄電システム43,543I Squared Capital のグループ
合同会社蓄電所1号蓄電所3号36,722ポーラースター・エナジー (2026年6月9日の同社の発表で100%子会社。鹿児島県、契約容量36.7MW・蓄電容量240MWh・非リチウム系・6時間。電池のメーカーは書いていない)
合計9件699,658

9件とも、電池の方式とメーカーは事業者の発表にも書かれていません。業界誌の PVeye (2026年6月号) は匿名の開発関係者の話として、住友電気工業製のレドックスフロー電池だと報じていますが、一次資料では確かめられません。手がかりになるのはセルの製造国の制限です。第3回はリチウムイオン以外の区分でも、日本を除く1国・地域のセルの落札容量を区分の全落札の30%未満に抑えるため、1か国の上限は約21万kWになります。Bison energy のグループの2件は合計28.2万kWなので、2件がともに同じ外国のセルを使うことはできません。9件の多くが日本製のセルであれば、報道の内容と矛盾しません。

国産の長時間型は1つ減った

経済産業省は2025年3月12日の資料6で、ナトリウム硫黄 (NAS) 電池とレドックスフロー電池を長時間の充放電を特徴とする蓄電池に挙げ、「既に商用化されており日本企業が先行し強みを持つ領域」と書きました。長時間のエネルギー貯蔵 (LDES) は資源の調達リスクが低く、「長時間率においてLIBと比較してコストが低い傾向」にあるとも記していますが、同じ頁にコストを比べる数字は載っていません。

項目NAS 電池レドックスフロー電池
コスト (米ドル/kWh)350〜900350〜900
容量・寿命定格出力の6時間分の容量、期待寿命20年 (7,300サイクル)10時間以上の充放電が可能、20年を超える寿命
導入実績実用化は日本ガイシのみ。世界で約250か所・4,900MWh日本では住友電工が牽引。世界で約36か所・162MWh

出所: 経済産業省 資料6 (2025年3月12日) が引いた NEDO の調査 (2021年3月)。比較対象のリチウムイオン電池 (三元系) は400〜600米ドル/kWh。

メーカー電池2026年9月時点の動き
住友電気工業レドックスフロー2026年9月7日、V40シリーズに出力2MW・容量12MWh の構成を追加した。長期脱炭素電源オークションや経済産業省の系統用蓄電池導入支援事業などで「多数の採用実績」があり、応札価格の抑制にも寄与すると説明。件数・顧客・回は書いていない。決算説明会・中期経営計画2028・有価証券報告書・第1四半期の資料にも受注の容量や件数は無く、中期経営計画は「レドックスフロー電池の大型案件獲得」を掲げるだけ。経済産業省の補助金で採択された3件 (合計26MWh) はオークションとは別の枠
日本ガイシナトリウム硫黄 (NAS)2025年10月31日に製造・販売の終了と新規受注をしない方針を決めた。新規製造は行わず、最終出荷は2027年1月ごろの予定。特別損失は約180億円
GSユアサリチウムイオン (定置用)2026年2月18日、定置用リチウムイオン電池の開発・量産投資が「蓄電池に係る供給確保計画」に認定された。電池から制御システムまで国産化し、2028年10月から年2GWh を供給。事業総額は約703億円、助成は最大約248億円
パワーエックスリン酸鉄リチウムイオン (LFP)国内で蓄電システムを組み立てるが、セルやモジュールは中国などのパートナーから調達し、現状は売上上位の中国のセルメーカーから買っていると説明している

日本ガイシは2025年10月31日に NAS 電池の製造・販売の終了を決め、新規製造は行わない方針です。最終出荷は2027年1月ごろの予定で、第3回の応札 (2026年1月) の時点で新規受注はしていませんでした。住友電気工業は2026年9月7日、レドックスフロー電池 V40シリーズに出力2MW・容量12MWh の構成を加えました。12MWh を2MW で割ると6時間で、長期オークションの運転継続時間の要件と同じ長さです。同社はこのシリーズについて、長期オークションなどで「多数の採用実績」があるとしていますが、件数や案件名は示していません。

第4回は、リチウムイオンでも電池の作り手を見る

第4回 (応札年度2026年度) の募集要綱は2026年9月2日に確定しました。蓄電池の枠は揚水・長期エネルギー貯蔵システムから切り離され、リチウムイオン40万kW、リチウムイオン以外40万kWの別の区分になりました。応札は2027年1月19〜26日です。

項目第3回 (2025年度)第4回 (2026年度)
募集上限の区分既設の揚水とリチウムイオンで40万kW、新設の揚水とリチウムイオン以外と LDES で40万kWリチウムイオン40万kW、リチウムイオン以外40万kW、揚水と LDES で40万kW
上限を超える落札脱炭素電源の募集量500万kWに届かないとき、上限の2倍を跨ぐ電源まで落札できる蓄電池の2区分は上限を跨ぐ電源まで。2倍までの超過はなくなった
セル製造国30%制限リチウムイオンとリチウムイオン以外の両方。日本を除く1国・地域の落札容量を区分の全落札の30%未満にリチウムイオン以外だけ
リチウムイオンの選び方特になし経済安全保障推進法の蓄電池の供給確保計画の認定を受けたメーカーが、自ら保有する製造拠点で作ったセルを使う「認定付き」を先に落札する。OEM は含まない
登録する項目蓄電池は種類を問わずセルの製造国・地域リチウムイオンは認定の有無、リチウムイオン以外はセルの製造国・地域
運転継続時間・最低容量1日1回以上連続6時間以上 (年平均)、3万kW以上同じ
上限価格 (円/kW・年)76,205〜80,65770,675〜74,417 (本表)。エリア別の表は71,140〜74,906で、要綱の中で食い違う。蓄電池は揚水 (リプレース等) と同じ列の値で、調整係数 (6時間・2035年度) を掛けると本表は67,478円、エリア別の表は67,921円にそろい、算定の基準が約0.66%違う。中国・四国の欄はどちらの基準でも説明できない。国の審議会の資料 (6月23日・7月14日・8月31日) と電力広域的運営推進機関の説明会資料 (9月24日) も同じ数字を並べたままで、正誤表は出ていない

出所: 電力広域的運営推進機関 募集要綱 (応札年度2025年度・2026年度) と制度詳細の資料。第4回の上限価格は要綱の本文と表の数字が食い違っており、どちらが正しいかは同機関の説明を待つ必要がある。

第4回の「認定付き」は、経済安全保障推進法に基づく蓄電池の供給確保計画の認定を受けたメーカーが、自ら保有する製造拠点でつくったセルを使うリチウムイオン蓄電池を指します。委託や OEM でつくったセルは含まれず、約定後にセルを変えるときも認定を受けた別のメーカーに限られます。認定付きをすべて判定した後、上限が埋まっていないときだけ、認定の無いリチウムイオンが落札される可能性があります。GSユアサは2026年2月に定置用リチウムイオン電池の計画の認定を受け、電池から制御システムまで国産化して2028年10月から年2GWh を供給するとしています。一方、パワーエックスは、セルやモジュールは中国などのパートナーから調達していると説明しています。

量では、系統用蓄電池の主流がリチウムイオンであることは変わりません。ただし6時間以上の長期オークションでは、国は方式ごとに枠を分け、リチウムイオン以外にはセルの製造国の上限を、リチウムイオンには国の認定を受けたセルの優先をかける形にルールを寄せています。NAS 電池は日本ガイシが新規製造をしないため、この枠に戻る見込みは小さいとみられます。第3回のリチウムイオン以外の70万kWがどのメーカーの電池かは公表資料で確かめられず、第4回の結果 (2027年度に公表予定) と、落札事業者や電池メーカーの今後の発表で確かめる必要があります。

事業の形は、市場連動型と固定収入型の間に並ぶ

形収入の固め方向く事業者日本の実例
市場連動型 (マーチャント)固めない。卸・需給調整・容量の3市場で毎日稼ぐ自社で市場取引の力を持つ電力・ガス。高圧2MW級を多数持つ事業者多奈川蓄電所は市場収入だけを返済の原資にする融資を受けた (発表では国内初)
補助金活用型初期費用を補助金で下げ、市場連動で回す早期に運転を始めたい事業者国の補助は82件・907.6億円。交付決定の前に発注できない
オフテイク型運用権を長期の固定料金で売る資金を出す側 (ファンド・外資・リース)。買う側は電力・ガス広原蓄電所は東京ガスとの20年契約を担保に融資を受けた
長期オークション型20年の固定収入。市場収入の約9割は還付3万kW以上・6時間以上を建てられる資金力のある事業者3回の合計で76件・371万kWが落札
運用受託型設備を持たず、他社の蓄電所の運用で手数料を得るアグリゲーター東京ガスの運用予定は107.6万kW。関西電力系の E-Flow など

融資が付いた案件は、返済の原資をどう示したか

案件規模返済の原資貸し手
広原蓄電所 (宮崎市)30MW・120MWh東京ガスが20年間、固定の利用対価を払って運用権を100%持つ契約を結び、その収入を返済の原資にした三菱UFJ銀行
多奈川蓄電所 (大阪府岬町)99MW・396MWh卸・需給調整・容量の各市場の収入だけを返済の原資にする形。発表では国内初三菱UFJ銀行 (2025年3月31日契約)
姫路蓄電所 (兵庫県)15MW・48MWh出光興産・レノバ・長瀬産業の共同事業。系統用では国内初のプロジェクトファイナンスと発表三井住友ファイナンス&リース (2023年8月)
高圧14か所の束全国14か所小さな蓄電所を束ねて1つの担保にし、市場収入だけで返す形の融資リコーリース (2026年4月に一部実行)

出所: 各社の発表資料。

出力2MW級の蓄電所の月間売上高は1か所約1,900万円、リミックスポイントは想定を2,000万円から1,500万円に引き下げ

L4 1か所の月間売上高 出力2MW級の蓄電所は月にいくら売り上げているのか kp.biz.actual-revenue 全体図で見る

市場連動型の蓄電所が実際にいくら売り上げているかは、運転を始めた蓄電所を持つ上場企業の決算から計算できます。東京証券取引所のプロ向け市場 TOKYO PRO Market に上場するエネルギーパワーは、出力1,979kW・容量8,226kWh の蓄電所を3か所持ち、主に需給調整市場に調整力を提供して収入を得ています。決算短信に載った系統用蓄電池事業の売上高を、蓄電所ごとの運転月数の合計 (延べ24か月) で割ると、2026年8月期の平均で1か所あたり月約1,912万円になります (当サイトの計算)。

約1,912万円1か所の月間売上高 (実績)エネルギーパワー 2026年8月期の平均
約2,442万 → 1,736万円上期から下期へ約3割減2025年9月〜26年2月 → 2026年3月〜8月
約2,000万 → 1,500万円リミックスポイントの想定 (1か所の月間)6〜8月の資料 → 10月19日の発表
約509万円当サイトの試算 (初期設定)出力2MW・4時間型の1年目
区分数字の種類期間・時点1か所の月間計算の方法
エネルギーパワー 上期決算の実績2025年9月〜26年2月 (朝来・丹波の2か所×3か月)約2,442万円系統用蓄電池事業の売上高1億4,652万円÷6
エネルギーパワー 下期決算の実績2026年3月〜8月 (和歌山を加えた3か所×6か月)約1,736万円(通期4億5,899万円−上期1億4,652万円)÷18=3億1,247万円÷18
エネルギーパワー 通期決算の実績2025年9月〜26年8月 (延べ24か月)約1,912万円4億5,899万円÷24
リミックスポイントの想定会社の想定2026年6月24日・8月14日・8月28日の資料約2,000万円「想定月間収益」約2,000万円 (8月19日の開示は玉名市の蓄電所の需給調整市場参入後の「月間の見込売上高」約2,000万円)
リミックスポイントの想定会社の想定2026年10月19日の発表約1,500万円稼働済施設1か所あたりの「月間見込売上高」約1,500万円
当サイトのシミュレーター当サイトの試算初期設定「高圧 2MW・4時間型」の1年目約509万円需給調整市場の収入を、2025年度の一次調整力の平均単価から当サイトが置いた値 (1kWあたり年13,700円、約定の割合2割と仮定) で計算した値

当サイトの計算。朝来・丹波は2025年12月、和歌山は2026年3月に商業運転を始めた。運転を始めた月も1か月と数えたため、実際の月間売上高はこれよりやや高い可能性がある。上期は中間決算短信の単体の数字、通期は連結決算の数字で、下期は通期から上期を差し引いて求めた。いずれも費用を差し引く前の売上高で、通期の系統用蓄電池事業のセグメント利益は1億4,017万円。 エネルギーパワーの3か所はいずれも出力1,979kW・容量8,226kWh。取得を発表した際の開示資料は「出力:8,226kWh 容量:1,979kW」と出力と容量の数字を逆に書いており、当サイトは単位 (kW と kWh) から判断した。リミックスポイントの想定は「出力約2MW / 容量約8MWh規模の施設の場合」。

1か所の月間売上高は上期から下期に約3割減りました。下期の始まった2026年3月には、需給調整市場の取引が前の週から前の日に移り、一次・二次①の募集量が減り、上限価格も1ΔkW・30分あたり15円に引き下げられています。エネルギーパワーも決算短信で「政府による需給調整市場の運用方針の厳格化等」に触れました。上期の数字が冬の3か月 (2025年12月〜26年2月) だけであることや、和歌山の運転開始の3月を丸1か月と数えたことも、上期と下期の差に影響します。上限価格は9月に10円へさらに引き下げられましたが、10円になってからの期間は下期の数字に含まれていません。

リミックスポイントは10月19日の発表で、稼働中の蓄電所1か所の月間売上高の見込み (「月間見込売上高」) を約1,500万円とし、それまで示していた約2,000万円から引き下げました。同社は6月24日と8月の資料で、稼働中の施設1か所あたりの「想定月間収益」を約2,000万円とし、8月19日の開示では玉名市の蓄電所について、需給調整市場に参入した後の「月間の見込売上高」を、同じ注記を付けて約2,000万円としていました。8月の約2,000万円には「需給調整市場参入後」という条件が付いていますが、10月19日の約1,500万円は「稼働済施設」とだけ書かれています。どの数字にも、市場の取引価格をもとにした同社の試算や、運用を任せる事業者 (アグリゲーター) の実績などを踏まえた想定だとの注記があり、引き下げた理由は示されていません。同社が自社で保有する蓄電所 (開発中を含む) は6月23日時点の7か所から10月19日に12か所に増え、2029年3月期までに48か所を開発して、うち25か所を自社で保有する計画です。

シミュレーターの初期値との差の大半は、需給調整市場の収入にある

当サイトの収支シミュレーターの初期設定「高圧 2MW・4時間型」で1年目の売上高を計算すると、年約6,108万円、月にならすと約509万円で、実績の4分の1強にとどまります。差の大半は、需給調整市場の収入の見込み方から生じています。初期値は、2025年度の一次調整力の平均単価から約定の割合を2割と仮定して当サイトが置いた1kWあたり年13,700円ですが、エネルギーパワーの実績から卸電力市場での値差収入を差し引いて逆算すると、1kWあたり年約10.6万円になります (容量市場の収入は無いものとし、出力を2,000kWとした当サイトの概算)。シミュレーターに「決算の実績から逆算」の設定を加えました。上限価格が10円に下がった後の収入は、需給調整市場の1kWあたりの値を下げて試算してください。

両社の蓄電所は設備台帳で、両社の開示資料はリミックスポイントとエネルギーパワーの企業ページで確かめられます。

費用 — システムは1kWhあたり6〜8万円、その外に連系と運転維持の費用がある

6.0 → 7.6 → 6.8万円1kWhあたりのシステム価格 (工事費込み)国の補助事業の実績。2022・2023・2024年度 (2024年度は見積り)
4.1 / 0.6 / 0.7 / 1.42024年度の内訳 (万円/kWh)電池 / 変換装置 / その他 / 工事費
5,000円/kW・年運転維持費の目安長期オークションの上限価格を算定したモデルの値
建設費の5%廃止の費用国の検討会の試算の前提

この単価に、受変電設備、系統連系の工事費負担金、制御用の専用線は含まれていません。資料は、補助金を使わない海外製の案件には1kWhあたり2〜4万円の水準もあると記しています。運転を始めてからは、託送料金 (試算の前提は特別高圧の全国平均で月503.80円/kW と 0.88円/kWh)、発電側課金 (月75.13円/kW)、充放電の損失分にかかる再エネ賦課金が毎年出ていきます。これらは当サイトのシミュレーターの運転維持費には入っていないので、上乗せして確かめてください。託送料金の単価は送配電会社ごとに違い、改定もされます。蓄電池への当て方は次の節で、北海道電力ネットワークの2026年11月の改定を例に説明します。

国の補助金の交付決定

年度件数交付決定額 (億円)
令和4年度補正15173.5
令和5年度324.5
令和6年度27346.5
令和7年度37363.2
合計82907.6

出所: 環境共創イニシアチブの交付決定の一覧を当サイトが集計 (合計は円単位で足してから丸めた値)。令和7年度補正の補助率は、リチウムイオン電池で出力1,000kW以上30,000kW未満が3分の1以内、30,000kW以上が2分の1以内。東京都には対象経費の3分の2以内・上限20億円の助成がある。

託送料金と発電側課金 — 北海道電力ネットワークの2026年11月の改定で読む

L4 託送料金と発電側課金 送電網の使用料はどうかかるのか kp.biz.takuso 全体図で見る

系統用蓄電池は、充電の側で電気を使う側の託送料金を負担し (払うのは託送の契約者で、電気料金を通じて蓄電所に転嫁されます)、放電の側では発電側課金の対象になります。どちらも送配電会社が国の承認を受けた収入の見通し (レベニューキャップ) を上限に単価を決めるので、見通しが変わると単価が変わります。北海道電力ネットワークは2026年9月4日に見通しの変更の承認を受け、9月11日に託送供給等約款の変更を届け出ました。新しい単価は11月1日から使われます。

1兆59億 → 1兆603億円2023〜2027年度の5年間の収入の見通し+544億円。2026年9月4日に経済産業相が申請どおり承認
2,018億 → 2,402億円新しい単価を使う期間の年平均2026年11月〜2028年3月。+384億円
165億円 (7%)発電側課金で賄う分 (年)需要側は2,237億円 (93%)
2026年11月1日新しい託送料金の実施日9月11日に約款の変更を届け出

値上げの理由 — 5年間で544億円増えた費用の内訳

項目5年間の増加 (億円)2026年11月〜2028年3月の年平均 (億円)
物価などの変動+337+238
金利の変動 (事業報酬)+125+88
制御不能費用 (見込みと実績の差)+58+41
制御不能費用 (約定・公募の結果)+24+17
合計+544+384

約定・公募の結果の24億円の内訳は、容量拠出金21億円、予備電源の費用3億円、ブラックスタート電源の確保費用は1億円未満の減少。四捨五入のため合計が合わない場合がある。 年2,402億円のうち、発電側課金で賄うのは165億円 (7%)。対象の費用は、発電側も受益すると考えられる上位の系統 (基幹系統と特別高圧系統の送電費・受電用変電費) の固定費です。

1kWhあたりの平均単価 (税抜)現行改定後差
需要側・低圧10.2312.12+1.89
需要側・高圧4.695.51+0.82
需要側・特別高圧2.703.08+0.38
発電側 (発電側課金)0.640.79+0.15

新旧の単価 — 標準の契約は基本料金だけが上がる

低圧・高圧・特別高圧の標準の契約は、契約の大きさにかかる基本料金だけが上がり、電力量料金は据え置かれます。電力量料金まで上がるのは、基本料金のない従量制の契約と発電側課金です。蓄電所の収支に直接効く行には印を付けました。

区分料金単位旧単価新単価上昇率
低圧電灯標準 基本料金 (実量契約)1kW・月295.90477.40+61.3%
低圧電灯標準 基本料金 (SB・主開閉器契約)1kVA・月236.50381.70+61.4%
低圧電灯標準 電力量料金1kWh8.248.24据え置き
低圧動力標準 基本料金 (実量契約)1kW・月664.401,006.50+51.5%
低圧動力標準 基本料金 (主開閉器契約)1kW・月398.20603.90+51.7%
低圧動力標準 電力量料金1kWh4.464.46据え置き
高圧🔋 高圧標準 基本料金1kW・月842.601,108.80+31.6%
高圧🔋 高圧標準 電力量料金1kWh2.282.28据え置き
特別高圧🔋 特別高圧標準 基本料金1kW・月515.90628.10+21.7%
特別高圧🔋 特別高圧標準 電力量料金1kWh1.021.02据え置き
従量 (基本料金なし)電灯従量1kWh13.0916.06+22.7%
従量 (基本料金なし)動力従量1kWh15.3520.96+36.5%
従量 (基本料金なし)高圧従量1kWh16.0920.45+27.1%
従量 (基本料金なし)特別高圧従量1kWh9.4811.32+19.4%
予備送電高圧 予備送電サービスA1kW・月103.40136.40+31.9%
予備送電高圧 予備送電サービスB1kW・月121.00159.50+31.8%
予備送電特別高圧 予備送電サービスA1kW・月110.00133.10+21.0%
予備送電特別高圧 予備送電サービスB1kW・月138.60167.20+20.6%
発電側課金🔋 系統連系受電サービス 基本料金 (本土)1kW・月110.00137.50+25.0%
発電側課金系統連系受電サービス 基本料金 (離島)1kW・月102.30127.60+24.7%
発電側課金🔋 系統連系受電サービス 電力量料金1kWh0.350.43+22.9%
発電側課金系統設備効率化割引A-1 (差し引く単価)1kW・月59.4073.70+24.1%
発電側課金系統設備効率化割引B-1 (差し引く単価)1kW・月42.9053.90+25.6%

出所: 北海道電力ネットワーク 別紙2 託送料金単価表 (2026年9月11日)。消費税等相当額を含む。臨時接続送電サービスの電力量料金 (電灯9.06円・動力5.35円・高圧2.73円・特別高圧1.23円) は据え置きで、基本料金は標準の料金率を電灯で10%、それ以外で20%割り増したもの。割引A-2・A-3は標準電圧100,000ボルトを超えるかどうかで単価が違い、Aの対象になる変電所は約款の別表2が定める。低圧の電灯は家庭など、動力は工場のモーターなど。 🔋 は系統用蓄電池の収支に直接効く行。

約款は蓄電池をどう扱うか

条文定め蓄電所への影響
定義(51)・本則22条(2)ハ(ホ)発電者の「発電設備および蓄電池」をまとめて「発電設備等」と呼ぶ。揚水発電設備等は「揚水発電設備または蓄電池」を指す蓄電池は名指しで、発電所と同じ枠に入る
本則22条(3)イ (発電側課金の基本料金)系統連系受電課金対象電力1kWにつき月137円50銭。その月にまったく発電または放電しない場合は半額放電しない月も半額はかかる
本則22条(3)ロ (発電側課金の電力量料金)1kWhにつき0円43銭蓄電池の放電分は附則15(5)で免除
本則22条(2)イ(ロ) (基本料金の対象)同時最大受電電力から、同じ地点の接続送電サービス契約電力を差し引いた値。零を下回れば零充電と放電が同じ出力なら差し引きゼロで、発電側の基本料金はかからない
本則22条(2)ハ(ホ)附則3の適用を受けている場合は、損失率を掛けた後の接続供給課金対象電力1kWを契約電力1kWとみなして差し引く附則3を使うと差し引く電力が小さくなり、出力の大半が発電側の基本料金の対象に回る (当サイトの解釈。監視等委員会の資料の算定の考え方と整合する)
附則15(5)揚水発電設備等が発電または放電した電気の電力量には、発電側課金の電力量料金を受け取らない系統用の蓄電所は放電の電力量料金がかからない。発電所に併設した蓄電池は扱いが違う。ただし書きは、併設先の発電設備 (送配電会社が買い取る固定価格買取の再エネを除く) が附則15(4)イの範囲に入らない場合、協議で定めた方法で算定した電力量に料金をかける。また書きは、2024年3月末までに認定などを受け本来は発電側課金が免除される再エネ発電所 (市場取引等で売るもの) に併設した蓄電池が、送配電網から充電した電気を放電する場合、蓄電池の分に基本料金 (割引の後) と契約超過金をかける
附則3 (揚水発電設備等への接続供給の特別措置)あらかじめ契約者から申し出があれば、接続供給課金対象電力 = 揚水最大電力等 × 揚水等損失率 + その他最大電力等、電力量も同じ形で損失率を掛ける充電の託送料金は失われる電気の分だけになる。条件は、ためた電気を敷地の外の利用者へ送ること、充電に使う電気とそれ以外を計量器などで区分できること、決めた手順で充放電を制御できること
本則19条(2)イ(イ) (契約電力)低圧の実量契約、または高圧で契約電力が500kW未満の場合、その月と前11か月の最大需要電力のうち大きい値。低圧は契約電流や主開閉器の契約も選べる ((ロ)・(ハ))工場やビルの蓄電池でピークを下げると、1年かけて基本料金が下がる

出所: 北海道電力ネットワーク 託送供給等約款 (令和8年11月1日実施)。附則3の申し出をするのは託送の契約者 (蓄電所に充電の電気を供給する小売電気事業者など) で、揚水等損失率は蓄電所ごとに毎年協議で決まる。発電側課金を払う義務は発電者 (蓄電所の事業者) にある。

試算 — 特別措置を受けても、上昇率はあまり下がらない

基本料金 (出力1kWあたり・月)値上げ前値上げ後増える額内訳
高圧・附則3の適用あり183.26円234.63円+51.37円 (+28.0%)充電側 0.1kW × 1,108.80円 + 発電側 0.9kW × 137.50円
高圧・適用なし842.60円1,108.80円+266.20円 (+31.6%)充電側 1kW。差し引きゼロで発電側はかからない
特別高圧・附則3の適用あり150.59円186.56円+35.97円 (+23.9%)充電側 0.1kW × 628.10円 + 発電側 0.9kW × 137.50円
特別高圧・適用なし515.90円628.10円+112.20円 (+21.7%)充電側 1kW。差し引きゼロで発電側はかからない

当サイトの試算。充電も放電も最大1kW、同時最大受電電力1kW、1発電バランシンググループ、所内の照明や空調など充電以外の電気なし、系統設備効率化割引なし。附則3の適用ありは本則22条(2)ハ(ホ) の当サイトの解釈による。揚水等損失率は送配電会社と契約者が蓄電所ごとに毎年協議して決め、約款にも単価表にも値は載っていない。損失率が1ポイント上がるごとに、高圧の増える額は約2.4円大きくなる (20%なら75.24円)。電力量料金は、充電側の単価が据え置きで放電分は免除されるため変わらない。低圧で受電する蓄電所は含めていない。

特別措置 (附則3) を受けた高圧の蓄電所は、増える額が月51.37円で、受けない場合の266.20円の約5分の1にとどまります。ただし上昇率は28.0%で、受けない場合の31.6%に近く、特別高圧では受けたほうが高くなります (23.9%対21.7%)。増える額が小さいのは、もともとの負担が小さいからです。当サイトの解釈では、附則3を使うと差し引く電力も損失分に縮むので (電力・ガス取引監視等委員会の資料の算定の考え方と整合します)、出力の9割に、1kWあたり月110円から137.50円に上がる発電側課金の基本料金がかかります。高圧で増える51.37円のうち、発電側課金の分は24.75円、充電側の分は26.62円です。附則3は申し出がなければ使えず、その場合は充電に高圧や特別高圧の基本料金が満額でかかります。

需要家の側 — ピークを下げる蓄電池の価値は上がる

北海道電力は9月25日、託送料金の変動分を低圧と高圧・特別高圧の電気料金に反映すると発表し、規制料金は経済産業相に届け出ました。約款19条(2)イ(イ)により、低圧の実量契約と契約電力500kW未満の高圧では、その月と前11か月の最大需要電力のうち大きいほうが契約電力になります。工場やビルの蓄電池で使用のピークを1kW下げたときに節約できる額は、基本料金の値上げの分だけ増えます。企業が実際に節約できる額は小売の料金で決まり、北海道電力の高圧電力と業務用電力ではどちらも年3,322.80円増えます。

項目見直し前見直し後
従量電灯B 基本料金 30A (1契約・月)1,254.00円1,716.30円
従量電灯B 基本料金 10A / 60A418.00円 / 2,508.00円572.10円 / 3,432.60円
従量電灯B 電力量料金 (120kWhまで / 120kWh超〜280kWh / 280kWh超)35.69 / 41.98 / 45.70円35.77 / 42.06 / 45.78円
モデル家庭 (30A・月230kWh)11,115円11,596円 (+481円・+4.3%)
高圧電力 (一般料金) 基本料金 (1kW・月、工場向け)2,880.20円3,157.10円
業務用電力 (一般料金) 基本料金 (1kW・月、ビル向け)2,693.20円2,970.10円
ピークを1kW下げたときの年間の節約 (高圧電力)34,562.40円37,885.20円 (+3,322.80円)
同 (業務用電力)32,318.40円35,641.20円 (+3,322.80円)
同 (小売電気事業者が払う託送料金の分・高圧500kW未満)10,111.20円13,305.60円 (+3,194.40円)

出所: 北海道電力「託送料金の見直しに伴う電気料金の見直しについて」と添付資料 (2026年9月25日)。従量電灯Bは規制料金、高圧電力と業務用電力は高圧の自由料金 (一般料金)。料金単価はいずれも消費税等相当額を含み、再生可能エネルギー発電促進賦課金と燃料費等調整額を含まない。モデル家庭の料金は賦課金を含み燃料費等調整額を含まない。節約の額は力率による割引や割増を考える前の値で、当サイトの計算。

この改定を記事で詳しく検証しました: 北海道電力ネットワークが11月に託送料金上げ、系統用蓄電池の負担増は特別措置で縮む。北海道の蓄電所は設備台帳で、北海道電力の開示は北海道電力の企業ページで確かめられます。

全体への戻り

技術の L4 の橋の先にある事業の本編。L1 の持続時間と L2 の方式は容量市場と長時間の蓄電池の節で、L4 の接続は託送料金の節で使った。

このページで掴んだこと: 収入は4つの入口の組み合わせで、市場連動と固定収入のどちらを固めるかで事業の形が決まる。

補足: 実データで確かめる

執筆と照合: Postation 編集部。公開 2026-09-19、一次資料との照合 2026-10-20。作り方・更新と訂正の記録は総覧の「この解説の作り方と確かさ」にあります。

本章は制度と市場の説明で、特定の事業や銘柄への投資を勧めるものではありません。制度は改正されます。事業の判断の前に、各節に示した一次資料の最新版をご確認ください。

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