米メンロー・ベンチャーズが11月3日に公表した調査で、米国企業がAPI経由でLLM(大規模言語モデル)に支払う金額で、米アンソロピックのシェアは55%に達した。米オープンAIと合わせると86%で、前回調査の67%から上がった。
APIは、企業が自社のシステムやアプリからAIモデルを呼び出して使う仕組みで、料金は使った分だけ払う。調査は2026年9月、米国企業で意思決定に関わる約400人を対象に実施した。シェアは、実際の業務でどの会社のモデルをどれだけ使っているかを尋ねた結果から推計した。メンロー・ベンチャーズはアンソロピックの出資者でもある。
NECは4月、日本企業として初めてアンソロピックのグローバルパートナーになった。日本経済新聞によると、NTT傘下のNTTデータグループはアンソロピック向けのデータセンターを大阪府に建設する計画だ。シェア首位のアンソロピックと、日本の大手企業も関係を深めている。
アンソロピックのシェアは年々上がり55%に、オープンAIと合わせて86%
メンロー・ベンチャーズは2023年から毎年、企業がLLMのAPIに支払う金額に占める各社のシェアを調べている。アンソロピックのシェアは2023年の12%から年々上昇し、2026年に55%となった。オープンAIは2023年に50%で首位だった。その後は下がったが、2026年は前年の27%から31%に持ち直した。
調査の時期は、今回が2026年9月、前回が2025年11月だった。このため、前年との差は1年足らずの間に生じたことになる。2025年までの数字は前回までの報告書と同じだが、2025年12月の報告書では使用量の割合として示していた。今回の報告書では、同じ数字を支払った金額の割合として示している。
2026年の残りの5%弱は、米xAIのGrokや、誰でも使えるオープンモデルだった。米メタのLlamaは2024年まで16%を占めていたが、今回は内訳から姿を消した。
NECが日本企業初のグローバルパートナーに、NTTデータは大阪にデータセンターと報道
アンソロピックは2025年10月、アジア太平洋地域で初めての拠点を東京に開設した。同社は当時、アジア太平洋の売上高が年換算で1年前の10倍を超えたと説明し、日本の顧客として楽天やパナソニック、野村総合研究所の名を挙げた。
NECは4月23日、アンソロピックとの提携を発表した。グループの社員約3万人にClaudeを導入し、金融や製造、自治体向けのAIを共同開発する。自社のサービスにもClaude OpusとClaude Codeを組み込む。野村総合研究所は国内で初めて、アマゾンの生成AIサービス「Amazon Bedrock」でアンソロピックのモデルを販売する認定を受けた。楽天グループは70以上の事業でClaudeを使っている。
アンソロピックと日本企業の関係は、データセンターにも広がりつつある。日本経済新聞は10月、NTT傘下のNTTデータグループがアンソロピック向けのデータセンターを大阪府南部の湾岸部に建設する方向で最終調整に入ったと報じた。同紙によると建設費は最大1兆円になる。ロイター通信は、受電容量が最大500メガワットになると伝えた。NTTデータグループとアンソロピックは、まだ計画を正式に発表していない。電力と立地の課題は別の記事で詳しく伝えた。
ソフトバンクグループは10月1日、オープンAIへの累計646億ドルの出資が完了したと発表した。出資比率は約13%になった。三菱UFJフィナンシャル・グループは1月からChatGPT Enterpriseの利用を順次拡大しており、全行員約3万5000人が使えるようにする。
アンソロピックはOpusでシェア拡大、プログラミング支援AIへの支払額は7.7倍
メンロー・ベンチャーズは、企業がモデルを選ぶ決め手は価格より性能だとみる。報告書によると、アンソロピックは上位モデルの「Opus」でシェアを伸ばした。Opusは長時間の作業やプログラムの作成を得意とする。100万トークンあたりの料金は、アンソロピックのOpus 5.5がオープンAIのGPT-6.1 SolやグーグルのGemini 4 Argonの2倍だ。トークンは、AIが処理する情報の単位だ。最上位モデルの料金は、アンソロピックの「Fable 5.1」とオープンAIの「GPT-6 Astra」がどちらも入力10ドル・出力50ドルだ。
| モデル | 会社 | 入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| Claude Fable 5.1 | アンソロピック | 10ドル | 50ドル |
| Claude Opus 5.5 | アンソロピック | 4ドル | 20ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | アンソロピック | 2ドル | 10ドル |
| GPT-6 Astra | オープンAI | 10ドル | 50ドル |
| GPT-6.1 Sol | オープンAI | 2ドル | 10ドル |
| Gemini 4 Argon | グーグル | 2ドル | 10ドル |
| Gemini 3.8 Flash | グーグル | 0.75ドル | 3.75ドル |
出所: 各社の料金表 (2026年11月4日に確認)。料金は100万トークンあたり。グーグルは12月1日にGemini 4 Argonを値上げする。入力は4ドル、出力は20ドルになる。Gemini 3.8 Flashも2027年1月1日に値上げする。入力は1.5ドル、出力は7.5ドルになる。
報告書によると、企業がAIアプリに支払う金額は、用途別ではプログラミング支援が最も多い。その額は340億ドルで、前年の7.7倍になった。このうち7割に当たる240億ドルを、アンソロピックの「Claude Code」とオープンAIの「Codex」が占めた。
アンソロピックが11月2日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した書類によると、2026年1〜9月の売上高は332億ドルだった。前年1年間の売上高46億ドルの7倍を超える。
報告書は、オープンAIが7月に「GPT-5.6」、9月に「GPT-6」を投入し、下半期にシェアを伸ばしたとみる。オープンAIの発表によると、同社は7月9日にGPT-5.6の「Sol」「Terra」「Luna」を公開した。「GPT-6」は1つのモデルではなく、複数のモデルの総称だ。同社は9月3日に最上位の「GPT-6 Astra」を、22日に「GPT-6 Sol」と「GPT-6 Luna」を公開した。
報告書の推計では、上位2社がクラウド大手に支払う金額は、米アマゾン・ドット・コムのAWS、米マイクロソフトのAzure、グーグル・クラウドの売上高の25%を超える。メンロー・ベンチャーズのパートナー、ディーディ・ダス氏は発表文で、企業がAIに支払う金額の7割近くを、最先端のAIを開発する大手が得ていると述べた。前年は5割だったという。この「7割近く」は、アンソロピック、オープンAI、グーグルの3社が得た1227億ドルを指す。企業がアプリを含めてAIに支払う金額は、年換算で1768億ドルに上る。3社の取り分はその69%に当たる。
グーグルのシェアは21%から9%に低下、安いFlash系に偏る
最もシェアを下げたのはグーグルで、21%から9%と半分以下になった。報告書によると、グーグルは2025年11月の「Gemini 3 Pro」で上位2社と肩を並べたが、その後は2社の主力モデルに後れを取った。企業がグーグルのAPIに支払う料金は、安い「Flash」系のモデルに偏っているという。
グーグルの発表によると、同社は2025年11月18日にGemini 3 Proの試用版を公開した。2026年3月9日に提供を終え、後継の「Gemini 3.1 Pro」に切り替えた。最上位の「Gemini 4 Argon」は10月13日に提供が始まったばかりで、9月の調査には反映されていない。
日本ではKDDIが3月、グーグルのGeminiを自社の大阪堺データセンターで動かす「Gemini on GDC」の試験提供を始めた。商用サービスは2027年の開始を目指す。
オープンモデルの割合、処理量では19%に増えても支出では4%
モデルを使う量が増えても、支出に占める割合が上がるとは限らない。報告書によると、企業が使ったトークンのうち、オープンモデルの割合は1年で11%から19%に増えた。一方、支出に占める割合は6%から4%に下がった。
オープンモデルの平均単価は1年で3分の1以下に下がった。報告書によると、企業は費用を抑えたい大量の処理に、オープンモデルを使っている。オープンモデルへの支出では、中国のKimi、DeepSeek、GLM、Qwenが合わせて89%を占めた。メタのLlamaは、オープンモデルへの支出の7%にとどまった。
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