NTTデータグループが米アンソロピック向けに大阪府南部の湾岸で計画するAIデータセンターは、受電容量が最大500メガワット(MW)、建設費が最大1兆円と報じられた。関西電力送配電が府内の1地点に早く送れる余力は、最大389MWだ。

日本経済新聞が2026年10月13日、複数の関係者の話として報じた。報道によると、NTT子会社のNTTデータグループとアンソロピックが最終調整に入っており、2026年度内に契約し、早ければ2028年に一部を稼働させることを目指す。実現すれば、アンソロピック向けのデータセンターとして日本で初めてとなり、総受電容量は国内最大級になるという。大阪府が10月9日に公表した資料によると、湾岸地区の送電網は「現状余力はほぼ無し」で、増強には8年程度かかる。本記事では、報道された数字を大阪府や関西電力送配電の公表資料、国内のほかの大型計画と照らし合わせた。

NTTとアンソロピックの大阪AIデータセンター、最大500MW・建設費最大1兆円と報道

報道された計画の中身は次のとおりだ。

区分報道の内容
協議する企業NTTデータグループ、米アンソロピック
建設予定地大阪府南部の湾岸地帯
建設費最大1兆円
総受電容量最大500MW
稼働早ければ2028年に一部
契約2026年度内(2027年3月末まで)
段階最終調整中(正式な契約や建設は未決定)

受電容量の500MWや2028年の一部稼働、契約の時期は、日経の英字媒体「日経アジア」の記事とテレビ東京の報道でも確認できる。朝日新聞も10月13日、関係者への取材として受電容量500MWと報じた。ただ、拠点を「アジア初」としており、日経の「日本初」とは表現が異なる。NTTデータグループとアンソロピックはいずれも日経の取材にコメントを控えた。親会社のNTTは14日午前10時の時点で、適時開示をしていない。NTTデータグループは2025年9月26日に上場廃止となっており、上場企業として関わるのは親会社のNTTだ。日経は14日、この案件がデータセンター分野でNTTにとって過去最大になると報じた。

最大1兆円は建設費だ。日経アジアは、画像処理半導体(GPU)を積んだ高性能のAIサーバーを大量に入れると、総投資額は数兆円になると伝えた。NTTとアンソロピックの費用の分担は明らかになっていない。大阪・夢洲で計画される統合型リゾート(IR)の初期投資額は約1兆5,130億円(2025年9月12日に国へ届け出た区域整備計画の変更)で、1兆円はその約66%に当たる。

500MWを24時間365日使い続けると、年間の電力量は43億8,000万キロワット時になる。関西電力管内の2025年度の需要電力量(1,337億キロワット時)の約3.3%、大阪府の2024年度の需要電力量(542億7,000万キロワット時)の約8.1%に当たる。関西電力管内の2025年夏の最大需要(8月5日、2,738万キロワット)と比べると、500MW(50万キロワット)は約1.8%だ。

電力広域的運営推進機関は2026年度の需要想定で、全国のデータセンターなどの新増設による最大需要を2026年度に64万キロワットと見込んだ。この1か所の50万キロワットはその8割近くに当たり、一部稼働を目指す2028年度の想定(166万キロワット)と比べても3割になる。いずれも500MWを全量使うと仮定した上限の試算で、実際の需要は稼働率や整備の進み具合で変わる。

国際エネルギー機関は2025年4月の報告で、世界のデータセンターの電力消費量が2024年の約4,150億キロワット時から2030年に約9,450億キロワット時へ2倍以上に増えると予測した。日本のデータセンターの電力消費量は、2024年に200億キロワット時未満と推計している。大阪の拠点を上限まで使い続けた場合の43億8,000万キロワット時は、この日本全体の数字の2割を超える。

大阪は秋田と並び国内最大のAIデータセンター計画、関西では3件が並ぶ

日経は国内の主な大型AIデータセンター計画を地図にまとめ、9件を挙げた。各社や自治体の公式発表で一つずつ確かめると、規模を示す数字の基準は計画ごとに異なる。

国内の主な大型AIデータセンター計画。最大は大阪(NTTデータグループ、検討中)と秋田の各500MW。関東に3件、関西に3件、北海道・秋田・鹿児島に各1件
国内の主な大型AIデータセンター計画。最大は大阪(NTTデータグループ、検討中)と秋田の各500MW。関東に3件、関西に3件、北海道・秋田・鹿児島に各1件

関西ではソフトバンクが250MW、英コルトが130MW、検討中のNTTデータグループが最大500MWと並ぶ。ソフトバンクはシャープの堺工場の跡地を使い、大阪府堺市に拠点を設ける。同社の発表では受電容量約150MWで2026年中の稼働を目指し、将来は250MW超に広げる。コルトの130MWは、香港の不動産大手ESRとの合弁で大阪府箕面市に建てる施設の敷地全体の値で、第1期は65MWだ。

関東では、JERAと米デルが千葉市で400MW(開発は英国の開発会社)、豪エアトランクが千葉県印西市で300MW(2021年に第1期が開業した拠点で、全体の計画が300MW超)、NTTデータグループが千葉県白井市で200MWを計画する。北海道苫小牧市ではソフトバンクが300MWを計画する。秋田市では新興企業が中心となって500MWを計画し、アラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドが出資を検討している(整備費は約2兆円と報じられた)。鹿児島県薩摩川内市では、台湾の投資会社が設立した会社が350MWを計画する。

9件を足すと2,930MWで、検討中のNTTデータグループの大阪を除くと2,430MWになる。ただし、NTTデータグループの白井市の200MWはサーバーなどIT機器向けの電力容量で、受電容量とは基準が違う。冷却などの電力が加わる分、受電容量はIT機器向けの容量より大きくなる。秋田と大阪の500MWは報道された値で、規模の正式な発表はない。同じ基準の合計ではないが、関西の3件は計880MWで、大阪の500MWは単独で残り2件の合計(380MW)を上回る。

今回の拠点は、NTTデータグループが2025年5月に発表した大阪府茨木市の「大阪北データセンター」(完成時のIT機器向け電力容量36MW、第1期18MWは2027年度下期に稼働予定)とは別になる。NTTは2026年4月、国内のデータセンターのIT機器向け電力容量を約300MWから2033年度に約1,000MWへ広げる計画を示した。NTTデータグループの海外のデータセンター事業は、2025年度の売上高が5,203億円(管理会計上の数値)で、同社は同事業への投資額を2026年度に5,050億円と、前年度の3,779億円から33.6%増やす計画だ。世界で提供している容量は約1,630MW(2026年3月末)で、2030年度に3,000MW超を目指す。銘柄ページのNTT(9432)とデータセンターの国内一覧に、関連する開示と施設をまとめている。

アンソロピックは東京に事務所、NECや日立と組み日本で法人向け事業を広げる

アンソロピックは米オープンAIの元研究者らが2021年に設立したAI開発企業で、対話型AI「Claude(クロード)」と、プログラミングを支援する「Claude Code(クロードコード)」を手がける。2025年10月29日にアジア太平洋で初めての拠点として東京に事務所を開いた。2026年4月23日にはNECとの戦略的協業を発表した。NECグループの約3万人がClaudeを使い、金融や製造、自治体向けのAIサービスを共同で開発する。5月18日には日立製作所とも提携し、日立グループの約29万人がClaudeなどを使えるようにする。会社の紹介はアンソロピックの企業ページにある。

アンソロピックは計算資源の確保に巨額を投じている。2025年11月には米国のAIインフラに500億ドルを投資すると発表した。2026年4月には米アマゾン・ドット・コムと、10年間で1,000億ドル超、最大5,000MW分の計算資源を確保する契約を結んだ。大阪の最大500MWは、アマゾンとの契約容量の10分の1に当たる。大阪の拠点が主にAIの学習と推論(利用者の問いに答える処理)のどちらを担うかは公表されていない。

NTTとアンソロピックは、大阪を候補地とした理由を明らかにしていない。大阪府の資料からは、通信と電力をめぐる大阪の条件がうかがえる。インターネットの通信事業者どうしをつなぐ相互接続点(IX)は、大阪では堂島地区に集まる。府の資料によると、2026年6月時点で主要な4つのIX(JPIX・JPNAP・BBIX・エクイニクス)を合算すると、大阪圏の接続拠点の数は東京圏の約64%に相当する。一方、実際の通信量は約35%、つながる事業者のネットワークの数は約37%にとどまる。府は、AIの推論やクラウドのように通信の需要を生む事業者を呼び込み、利用を増やしたい考えだ。

国際通信の海底ケーブルの陸揚げ局は、東京圏に4局(約20本)あるのに対し、大阪圏向けは三重県志摩市の1局(約12本)に集中している(本数は運用中と建設中を含む概数)。府は志摩以外の陸揚げ局の整備を検討し、東京圏と大阪圏を対象から外している国の補助事業(デジタルインフラ強靱化事業)の要件を見直すよう求めている。

NTTデータグループは2025年5月の大阪北データセンターの発表で、大阪が首都圏のバックアップ拠点から、大手クラウド事業者が集まる市場に育ったと説明していた。大阪府は2026年3月に「大阪デジタルインフラ協議会」の設置要綱を定め、4月28日に初会合を開いた。会長は府知事で、10月5日時点の会員は関西電力送配電、NTTグループの3社、ソフトバンクなど26社だ。府はデータセンターや電力、IX、海底ケーブルなどを一体的に整備し、首都圏の機能を補う副首都を目指す。ただ、府の構想がNTTとアンソロピックの立地の判断に影響したかは分かっていない。

大阪府の資料、湾岸の送電網は余力がほぼなく増強に8年程度

大阪府は10月9日の第2回協議会で、府内のデータセンターの集積地と立地を検討する地域を5つに分け、土地・通信・系統電力の条件を比べた。

大阪府の5地区の土地・通信・系統電力。③大阪湾岸は工場跡地があるが現状の余力はほぼ無く、増強に8年程度。⑤大阪南部は数百MW程度の余力があるが市街化調整区域で通信は不足
大阪府の5地区の土地・通信・系統電力。③大阪湾岸は工場跡地があるが現状の余力はほぼ無く、増強に8年程度。⑤大阪南部は数百MW程度の余力があるが市街化調整区域で通信は不足

③大阪湾岸は工場跡地に未利用地があり、府の地図は「工場跡地に大規模DCが立地」と注記する。ソフトバンクもシャープの堺工場跡地で、既存の建物や電力設備を生かしてAIデータセンターを整備している。一方、府の資料によると、送電網は「現状余力はほぼ無し」で、増強には8年程度かかり、増強後も「大幅な系統余力は生まれない」。府の地図で③は、大阪市南西部の住之江区側から堺市北部の沿岸にかけての範囲に描かれている。報道にある「大阪府南部の湾岸地帯」がこの範囲を指すのか、さらに南の泉州の沿岸を指すのかは確認できていない。

府が現状で数百MW程度の余力があると示したのは、5地区のうち⑤大阪南部だけだ。ただし、電力を供給できる区域は市街化調整区域(原則として開発を抑える地域)にあり、通信回線も「現状不足」だ。府は10月9日時点で、この地区にデータセンターの立地計画はないとしている。府の地図では、供給できる区域は富田林市の南部と、貝塚市・熊取町の内陸にある。

府が会員企業を対象に実施した書面調査(5月20日〜6月5日、14社が回答)では、立地の課題として「電力受電の確保(容量・工期)」が40点で最も高かった。点数は◎を3点、○を2点、△を1点として合計したもので、満点は42点だ。「建設・設備調達の制約」と「建設コスト・金利上昇」が各37点、「土地確保」が35点と続いた。府の資料によると、第2回の書面調査(回答14社)では10社が補助金や税の優遇などの財政的な支援を求めた。

関西電力送配電の府内11地点は合計1,012MW、最大の南河内でも389MW

関西電力(9503)の全額出資子会社の関西電力送配電は、変電所の周辺で大口の電力を早期に供給できる地点を地図で公表している。2026年8月時点で府内は11地点あり、最大は富田林市の南河内変電所周辺の389MW、次いで熊取町の泉南変電所周辺の193MW、大阪市淀川区の西三国変電所周辺の173MWの順だ。工期の目安は3〜5年だが、西三国など大阪市内の4地点は、工事の制約で工期によっては供給力が30MW未満に限られると注記されている。

大阪府内で早く送電できる11地点の供給余力。南河内389MW、泉南193MW、西三国173MWなど。計画の最大500MWを超える地点はない
大阪府内で早く送電できる11地点の供給余力。南河内389MW、泉南193MW、西三国173MWなど。計画の最大500MWを超える地点はない

11地点を合わせると1,012MWになる。府の資料が「数百MW程度」の余力があるとする⑤大阪南部は、地図の上では南河内と泉南の2地点(合計582MW)と重なる。どの地点も単独では500MWに届かず、湾岸の地点は1つもない。同社はこれとは別に、金剛など関西の13の変電所の周辺では、変圧器の増設など大規模な増強で工期5年以上をかければ、100〜300MW程度を確保できる可能性があるとしている。供給する電圧は7万7,000ボルトか27万5,000ボルトになる。公表された値で見る限り、最大500MWを1か所で受電するには、この上限も超える規模の増強か送電線の新設が必要になるとみられる。

日経アジアによると、送電網から500MWを受電するには時間がかかるため、当初は敷地内での発電や燃料電池などの代替策も検討するという。国内企業では、日立製作所が9月1日、米ブルーム・エナジーとデータセンター向けに燃料電池による自家発電で協業すると発表した。東京ガスの子会社の東京ガスエンジニアリングソリューションズは9月17日、フィンランドのバルチラと、送電網につながないデータセンターなどに向けた電源の共同技術評価の覚書を結んだ。同社は、送電網につながないデータセンターは国内に運用事例がないとしている(同社調べ、2025年12月)。2028年に一部を稼働させることと、最大500MWを受電できる設備を整えることは、時期の異なる別の課題だ。

総額数兆円の多くはサーバーに回り、府内への波及は地元の調達の比率で決まる

建設が始まれば、建築・土木の工事や、受変電・冷却・通信の設備で大型の発注が出る。稼働後も電力、通信、設備の保守、警備、機器の更新の需要が続く。ただ、投資の全額が府内の生産や所得になるわけではない。GPUやサーバーは多くを海外から調達するとみられ、データセンターは投資額の割に常駐する従業員が少ない。アンソロピックが2025年11月に発表した米国の500億ドルの投資でも、見込む雇用は常勤の約800人に対し、建設が約2,400人だ。アンソロピック専用の施設であれば、地元の企業や大学がその計算資源を直接使えるとは限らない。経済効果を見積もるには、建設・設備・IT機器の費用の内訳と、府内で調達する比率が要る。

大阪の計画は契約と稼働の時期が先に示され、送電網の増強が後から追う形になる。報道によると両社は2026年度内に契約を結ぶ見通しだが、建設地と電力の調達方法、関西電力送配電による送電網の増強の工程は公表されていない。500MWの拠点がどの規模で動き出すかは、送電網と自家発電をどう組み合わせるかで決まる。

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