生成AIを使ったことがある20歳以上の人は、総務省の調査で26.7%から52.2%に増えた。国立情報学研究所の最新モデルでも学習データに占める日本語は約3.6%で、日本海側の海底ケーブルは計画から4年たっても事業者が未定だ。
データセンターの規模は、今では延べ床面積やサーバーラックの数ではなく、受電容量 (電力会社から受け取れる電力の上限、単位はMWやGW) で語られる。生成AIの学習と推論には電力を大量に使う画像処理半導体 (GPU) が欠かせず、1施設で数十MWから数百MWを使う高密度の電力設計が求められるからだ。国内のAI向けデータセンターで「1.3GW」という規模を確保していくことは、日本が従来の「ITインフラの国」から、生成AIの頭脳を国内に置ける「AIインフラ大国」へ移るための、最低限でかつ重要な関門である。経済産業省が主導するクラウドプログラム (さくらインターネットやソフトバンクなどへの巨額の補助) は、まさにギガワット級の電力需要に耐える国内のAI基盤を急いで整えるためのものだ。
結論を先に示す。国内の「1.3GW級」は、今のAI向けの受電規模としては妥当な水準だが、米国の稼働中と計画中を合わせた規模とは桁が違い、日本が米国とGWの数で正面から競う構図にはならない。日本の役割は、国内のAI主権を支える最低限の計算基盤、米国の同盟圏におけるアジア側の信頼できる拠点、電力・半導体・通信を束ねた産業政策の3つである。中国との差は容量ではなく、誰のGPUを、どの国の法律の下で、どのデータに対して動かせるかにある。本稿は、総務省・日本銀行・内閣府・経済産業省・電力広域的運営推進機関 (広域機関)・国際エネルギー機関 (IEA)・各社の発表で数字を確かめ、使う側が急に伸びる一方で、電力・回線・計算機・日本語モデルという下支えの整備が数年単位で遅れている時間のずれを描く。
日本のAI基盤を5つの層に分けると、使う側の伸びに下の層の整備が追いついていない
AIの計算基盤は、下から順に「電力と送電網」「通信回線」「データセンターと計算機」「日本語モデル」「利用と海外への支払い」の5つの層に分けると全体が見渡せる。上の層ほど利用者に近く、変化が速い。下の層ほど工事と許認可に時間がかかる。データセンターの議論はおもに下の3層に集まりがちだが、日本がなぜ急がなければならないのかは、一番上の層の数字を並べると分かる。
一番上の層では、総務省の調査で生成AIを使ったことがある人の割合が、20歳以上で1年のうちに約2倍になった。海外のクラウドやソフトへの支払いを示すデジタル関連収支は、日本銀行の国際収支統計から記者が集計すると2025年に6兆7284億円の赤字である。一方、一番下の層では、千葉県の印西・白井地区だけで送電網への接続を待つ大規模需要が約40件あり、接続に最大約10年かかる事例もある。国が2022年に「3年程度で完成」と掲げた日本海側の海底ケーブルは、2026年9月になっても事業者が決まっていない。使う量は1年単位で増えるのに、それを国内で支える設備は数年から約10年単位でしか増えない。この時間差が、日本のAIデータセンターと日本語の大規模言語モデル (LLM) の開発に切迫感を与えている。
生成AIの利用は1年で約2倍になり、海外への支払いは6兆円台の赤字に達した
利用の伸びは急だ。総務省の令和7年版情報通信白書によると、生成AIを個人で使ったことがある人の割合は、2024年度の調査で日本26.7%、米国68.8%、ドイツ59.2%、中国81.2%だった。令和8年版の概要では、2025年度の調査で日本58.8%、米国75.6%、ドイツ75.6%、中国93.6%になった。2025年度の調査は対象に15〜19歳を加えており、20歳以上に限ると日本は52.2%で、前年度の26.7%の約2倍にあたる。2023年度の調査では9.1%だったから、2年で利用が一気に広がったことになる。業務で生成AIを使う企業の割合も、2025年度の調査で日本86.4%、米国90.9%、ドイツ91.6%、中国98.1%と、各国との差は縮まった。
使う量が増えるほど、海外への支払いも増える。経済産業省は2025年4月30日の「デジタル経済レポート」で、著作権等使用料・通信・コンピュータ・情報・専門経営コンサルティングの5項目をデジタル関連収支と定めた。日本銀行の国際収支統計からこの5項目を記者が集計すると、赤字は次のとおりである。
表1 デジタル関連収支の赤字 (日本銀行の国際収支統計から記者が集計)
| 年 | 5項目の赤字 | うち主要3項目 |
|---|---|---|
| 2023年 | 5兆9478億円 | 5兆7727億円 |
| 2024年 | 6兆8669億円 (+15.5%) | 6兆6753億円 (+15.6%) |
| 2025年 | 6兆7284億円 (-2.0%) | 6兆5958億円 (-1.2%) |
2025年の主要3項目の内訳は、コンピュータサービスが2兆2599億円、著作権等使用料が1兆8139億円、専門・経営コンサルティングが2兆5220億円の赤字で、残る通信と情報の2項目は合わせて1326億円の赤字だった (記者の計算)。2025年は前年をわずかに下回ったが、2026年1〜6月の5項目の赤字は3兆3616億円に達している。政府の資料 (2026年2月12日) は、赤字が2030年に原油の輸入額と同じ程度の約10兆円規模に広がるおそれがあるとした。経産省のレポートは、2035年に基本シナリオで約18兆円、悲観シナリオで約28兆円の赤字になると試算している。
投資の差はさらに大きい。スタンフォード大学の「AI Index 2026」によると、2025年の民間のAI投資は日本が11.1億ドル、米国が2,858.8億ドル、中国が124.1億ドルで、米国は日本の約257.5倍である (記者の計算)。同じ報告書で、2025年の注目されたAIモデルの数は米国59、中国35で、日本は図に載っていない。内閣府は2026年7月14日に改定した人工知能基本計画で「2025年までの間は、成長する各国との利用率や民間投資の差はむしろ拡大した」と認めた。基本計画の初版は2025年12月23日に閣議決定され、その土台となるAI法 (人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律) は2025年5月28日に成立し、6月4日に公布、9月1日に全面施行された。
日本語モデルの独自開発は増えたが、学習データに占める日本語は約3.6%にとどまる
国は計算資源への補助で日本語モデルの開発を後押ししてきた。経産省とNEDO (新エネルギー・産業技術総合開発機構) の「GENIAC」は2024年2月に始まり、基盤モデルの開発に必要な計算資源の利用料を補助する。採択は第1期10件、第2期20件、第3期24件 (応募43件)、第4期16件 (2026年6月4日発表) と続いた。日経クロステックによると、第3期は軽量なモデルや特定の業界に絞ったモデルが多い。汎用の巨大モデルで米国と正面から競うより、用途を絞って日本語と業務の精度を上げる方向に重心が移っている。
表2 国内の主な日本語モデル (各社の発表から作成)
| 開発元 | モデル | 作り方 | 規模・特徴 |
|---|---|---|---|
| NTT | tsuzumi 2 | 独自に一から学習 | 300億パラメータ (2025年10月20日提供開始) |
| SB Intuitions | Sarashina2-8x70B | 独自に一から学習 | 約4,600億パラメータ (2024年度に構築) |
| PFN | PLaMo 3.0 Prime | 独自に一から学習 | 256Kトークンを扱う (2026年6月22日提供開始) |
| 国立情報学研究所 | LLM-jp-4 | 独自に一から学習 | 学習データの日本語は約3.6% (2026年4月3日公開) |
| ストックマーク | 1,000億パラメータのモデル | 独自に一から学習 | 学習データは英語60%・日本語30%・コード10% |
| Sakana AI | Namazu | 海外の公開モデルに事後学習 | 2026年3月24日発表 |
| ELYZA | ELYZAのモデル群 | LlamaやQwenに追加学習 | KDDIの子会社 |
| 富士通 | Takane | CohereのCommand R+が土台 | 企業向け |
独自に一から学習したモデルでも、日本語のデータは少ない。国立情報学研究所の LLM-jp-4は、学習データの総計約19.5兆トークンのうち日本語が約7,000億トークン、英語が約17.8兆トークンで、日本語は約3.6%である (記者の計算)。ウェブ全体を集めるCommon Crawlの最新の集計でも、日本語は5.2484%で言語別の4位、英語は40.4526%だった。ストックマークのモデルは日本語を30%まで高めたが、それでも英語が60%を占める。質の高い日本語のデータが足りないことは、国も認めている。改定版の基本計画は「質の高い日本語データの整備・拡充」を掲げ、開かれた「AI主権」の確立を目標に置いた。自国の機密データや文化・言語に根ざしたモデルを、海外のサーバーに出さずに国内で処理する「データ主権」の動きは世界中で加速しており、日本はアジアでの手本になり得る。
性能の差も残る。日本語の総合的な性能を測る評価表「Nejumi」の2026年9月1日版を分析したQualitegによると、首位のモデルの得点は0.8720で、国産系で最も高いモデルは0.6914だった。この国産系の最上位は海外の公開モデルを土台にしたものとされる。LLM-jp-4は日本語の対話性能の評価でGPT-4oを上回ったと発表されたが、比べる相手は1世代前のモデルである。
大規模な開発は、計算機の量と資金に左右される。ソフトバンクは2024年5月、約1,500億円の設備投資と経産省の最大421億円の助成で、約1兆パラメータのLLMを目指すと発表した。子会社のSB Intuitionsは2024年度に約4,600億パラメータのモデルを作り、ソフトバンクのGPUは1万基を超え、計算能力は合計13.7EFLOPSに達した (2025年7月23日発表)。Sakana AIはシリーズBで約320億円 (2億ドル) を集め、企業価値は約4,320億円 (27億ドル)、累計の調達額は約660億円になった。PFNのPLaMo 3.0 Primeや富士通のTakaneのように、国内勢は政府や企業の業務に使える安全なモデルで勝負している。ただし国内の基盤モデルの市場は小さく、国内の計算需要の相当部分は米国のクラウドを通して満たされることになる。
政府自身も国産モデルの買い手になる。デジタル庁は2026年3月6日、政府職員向けの生成AI基盤「源内」で使う国産LLMとして、応募の中から7件を選んだと発表した。2026年8月頃から2027年3月まで試しに使い、2027年度から有償で調達する予定である。改定版の基本計画によると、源内は18万人の政府職員が使う。一方、海外勢は日本市場に深く入ってきた。ソフトバンクグループとOpenAIは2025年2月3日、ソフトバンクグループ側がOpenAIの製品に年間30億ドル (約4500億円) を支払い、合弁会社SB OpenAI Japanを設立することで合意した。Anthropicは2025年10月29日に東京のオフィスを正式に開いた。国内の企業が海外の高性能なモデルを使えば使うほど、表1の赤字は増える。行政や重要な産業のデータを国内で処理できる日本語モデルと計算基盤を急いで整えなければならない理由は、ここにある。
「1.3GW」は受電容量の数字で、GPUに回せる電力は2025年末で約300MWだった
数字は定義によって大きく変わり、混同すると戦略の判断を誤る。日本経済新聞は2026年9月5日、国内でデータセンターを運営する主要26社の新設計画を集計し、AI向けの規模が2030年代半ばまでに2025年末の4倍超になると報じた。26社のうち22社がAI向け拠点の拡充を計画しており、見出しは「8年で10兆円投資」だった。日経を引用した通信業界紙Telecompaperによると、主要26社のAI向けの受電容量は2025年末に1.1GWで、2033年に4.9GWになり、投資額は約600億ドルにのぼる。4.9GWは1.1GWの約4.5倍である (記者の計算)。「1.3GW」は、2025年末の1.1GWに2026年中の積み上げを加えた水準にあたる。
表3 日本のAIデータセンターの規模を示す数字 (各資料から作成)
| 物差し | 数字 | 意味と注意 |
|---|---|---|
| AI向けの受電容量 | 2025年末1.1GW、2033年4.9GW | 日経の主要26社調査。計画の集計で、全件が稼働する保証はない |
| 国内で必要な容量 | 2030年に4.2GW | ソフトバンクの試算。国内のAI処理需要の目安 |
| GPUに回せるIT電力 | 約300MW → 約600MW → 約800MW | インプレス (2025・2026・2027年末)。受電容量より小さい |
| DCの需要計上 | 64万kW → 328万kW → 661万kW | 広域機関 (2026・2030・2035年度)。DC単独の値 |
| DC全体のIT容量 | 2,365.8MVA → 4,499.6MVA | IDC Japan (2024・2029年末)。従来のクラウドを含む |
| AI専用の稼働容量 | 1GW → 2.6GW | ABIリサーチ (2026・2031年) |
受電容量は、GPUが実際に使える電力とは違う。インプレス総合研究所は2026年1月27日、GPUサーバーなどへの対応を明言したデータセンターの「IT供給電力」(サーバーなどのIT機器に回せる電力) を、2025年末約300MW、2026年末約600MW、2027年末約800MWと推計し、今後2年で2.6倍になるとした。冷却や予備の設備、稼働率を考えると、1.1GWの受電でも実際にAIの計算に使える電力は半分前後になり得る。2026年9月時点の実測値は公表されておらず、年末の見通しが約600MWである。国内のデータセンター全体では、AI専用だけでなく従来のクラウドも含めて、IDC Japanが2024年末のIT機器の電力容量を2,365.8MVA、2029年末を4,499.6MVAと予測しており、全体の規模は約2GW台にある。
系統の計画も同じ構図を示す。広域機関の2026年1月21日の需要想定によると、データセンターと半導体工場の新増設に伴う追加の最大需要 (個別計上値、単位は万kW) は、データセンターが2026年度64・2030年度328・2035年度661、半導体工場が19・92・101で、合計は83・420・762になる。約0.64GW・約3.28GW・約6.61GWという数字はデータセンター単独の値で、半導体工場を足すと約0.83GW・約4.20GW・約7.62GWになる。全国の最大需要電力に占める合計の割合は2026年度0.52%、2030年度2.59%、2035年度4.63%である。電力量でみると、データセンターの計上は2026年度48億kWh、2030年度243億kWh、2035年度494億kWhだ。広域機関は、データセンターの計上が2033年度までは前回の想定を下回り、その理由に事業者の工事の延期や遅れを挙げた。計画の数字は、すでに後ろにずれ始めている。
全国の計画のうち、ソフトバンク1社の分はどこまで確かめられるか。同社が公表している国内の拠点は、北海道苫小牧市が受電容量300MW超 (当初は50MW、2026年度の開業予定) で、海外の業界紙によると同社は将来1GWまで広げる可能性にも触れた。大阪府堺市の拠点は、2026年5月の中期経営計画でAI計算基盤向けの電力容量を140MW、計算能力を110EFLOPSとした。同社が2030年に必要と試算した4.2GWは、二次報道によれば同社自身の計画ではなく、国内のAI向けに必要なデータセンター容量である。ソフトバンクグループのGW級の計画は海外が中心で、米オハイオ州では子会社のSBエナジーが10GW級のデータセンターと9.2GW以上のガス火力発電を計画し (米エネルギー省、2026年3月)、フランスでは5GW (第1段階で2031年までに3.1GW) を整える。本稿の調べでは、ソフトバンク1社で国内に4GWを超える容量を整えるという公表資料は見つからなかった。
計算機そのものの規模も確かめておく。産業技術総合研究所のABCI 3.0は、エヌビディアのH200を6,128基載せ、2025年1月20日に一般の利用を始めた。ソフトバンクは2025年12月22日にGB200 NVL72の1,224基を稼働させ、将来は4,000基超、計算能力10.6EFLOPSに広げる計画だ。2026年6月のスーパーコンピューターの性能ランキング (TOP500) に載った日本のシステムは44件で、米国は161件だった。日本の最上位は理化学研究所の富岳の9位で、後継の富岳NEXTは2030年ごろの稼働を目指し、富岳の最大100倍程度の性能を掲げる。さくらインターネットは2026年7月28日にエヌビディアの次世代GPU (Rubin) への投資を決め、KDDIの大阪堺データセンターは2026年1月22日に稼働を始めた。
地方の巨大構想は、土地と系統の見取り図の段階にとどまるものが多い。いずれも国策の誘導先ではあるが、今の時点で契約済みのIT負荷ではない。富山県南砺市の構想は合計3.1GWで、GigaStream富山によると第1フェーズは400MW、市有地13.1haを使い、2028年の運用開始を目指す。秋田では日経によると整備費2兆円規模のAIデータセンターが2030年代早期の稼働を目指す。共同通信によると受電容量は最大500MWで、秋田市のエスツーと米ビットグリットが中心になり、アラブ首長国連邦のムバダラが資金の拠出を協議している。福岡を含む九州では、アジア・パシフィック・ランドが550MWの電力を確保済みで、1GWを管理下に置くとしている。東洋経済は2026年9月8日、資金の出し手や運営事業者が固まっていない案件が目立つと指摘し、規模ありきの計画に警鐘を鳴らした。
立地の偏りも大きい。国内データセンターの約85〜90%は東京・大阪圏に集中する。GigaStream富山の発表は約85%、総務省の「デジタルインフラ整備計画2030」は、およそ9割が東京圏・大阪圏にあるとしている。1.3GWの中身も、まだ首都圏と関西に偏っている。国内の主なデータセンターの所在はデータセンターの一覧で確かめられる。
今の位置を正確に言えば、日本はAI向けで受電1GW超の段階に入ったが、本格的に稼働しているIT負荷はまだ数百MW台で、2030年代前半に4〜5GWへ積み上げる計画の段階にある。
世界の電力消費で日本のデータセンターは約2%、2030年までの増加は米国の16分の1にとどまる
各国を比べるには、IEAの電力消費の数字が最もそろっている。IEAの「Energy and AI」(2025年4月10日) によると、世界のデータセンターの電力消費は2024年に約415TWhで、世界の電力消費の約1.5%だった。2030年には約945TWhと倍以上に増え、日本の現在の総電力消費をわずかに上回る。資源エネルギー庁の統計では、2024年度の日本の発電電力量は9,911億kWh (991.1TWh)、電力の最終消費は8,838億kWhで、945TWhは最終消費の約106.9%にあたる (記者の計算)。2024年の地域別の割合は米国45%、中国25%、欧州15%で、日本は残りに含まれる。日本の消費は20TWh未満で、国内の総消費の約2%である。
2030年までの増加の大半は米中が占める。米国が約240TWh (130%増)、中国が約175TWh (170%増)、欧州が45TWh超 (70%増) に対し、日本は約15TWh (80%増) で、米国の16分の1、絶対量で米中より1桁小さい。IEAが2026年4月16日に公表した「Key Questions on Energy and AI」の付表によると、2025年の世界のデータセンター消費は485TWhで、設備容量は世界が2025年114GW・2030年226GW、米国が52GW・100GW、中国が28GW・67GW、欧州が17GW・27GWになる。
表4 容量でみた世界の中の日本 (IEAほかから作成)
| 地域 | 今の規模 | 2030年前後の見通し | 性格 |
|---|---|---|---|
| 日本 | AI向け受電1.1〜1.3GW、DC全体で約2GW台 | 計画どおりならAI向け受電4.9GW (2033年) | アジアの信頼できる拠点と国内の主権。規模では第3極の候補だが、量で覇権を握る国ではない |
| 米国 | DC全体52GW (2025年)。大規模なAI拠点は1か所で1GWを超える設計が並ぶ | DC全体100GW。AI専用だけで数十GWの議論 | 学習と推論の本拠。1か所の拠点が日本の全国計画を上回る |
| 欧州 | DC全体17GW (2025年)。FLAPD (フランクフルト・ロンドン・アムステルダム・パリ・ダブリン) が中心で、新設は系統の制約で地方都市へ分散 | DC全体27GW。国ごとに数GW〜十数GWの計画 | 主権AIとEUのAI法による規制が同時に進む |
| 中国 | DC全体28GW (2025年)。公開の追跡データは過小評価になりやすいとの見方がある | DC全体67GW | 国家主導・国産チップ・電源の増設速度が最大の武器 |
民間の推計はもっと控えめだ。ABIリサーチは日本の稼働中のAI専用容量を2026年に1GW (設備容量全体の42%)、2031年に2.6GW (同51%) と見込み、日経の4.9GW (2033年、受電容量) より保守的である。どちらの数字も、米国の1つの拠点群より小さいという点は共通している。
米国では、1つの計画や1社の発注が日本の全国の数字に並ぶ。OpenAIの「スターゲート」は、同社とソフトバンクグループの2025年9月の発表で計画容量が約7GW、今後3年の投資が4000億ドル超に達した。メタのルイジアナ州の「ハイペリオン」は5GWの構想である。アマゾンは2025年11月24日、米政府機関向けだけで最大500億ドルを投じ、約1.3GWのAI・スーパーコンピューター向けの容量を加えると発表した。日本全国のAI向け受電容量とほぼ同じ規模を、米国では1社が政府向けの一部門で積み増している。世界のAI計画の追跡 (発表・建設中・稼働中) では米国だけで200GWを超える数字が並ぶ。調査会社Cleanviewの集計では、米国で計画中のデータセンターは2,106件・378,219MWにのぼる。テキサス州の送電網を運営するERCOTへの大口の接続申請は2026年8月に約474GWに達し、約9割がデータセンターだった (Utility Dive)。これらは土地や系統の仮押さえや重複した計画を含んで過大だが、日本の計画の4.9GWですら米国の1つの州にも届かないことははっきりしている。
日本のデータセンターは米国と量では競合せず、機能の一部で競い、多くは補完する
日本は米国の直接の競合ではなく、欠かせない補完の相手であり、アジアの最前線でもある。競合しない理由は3つある。第1に、最先端の基盤モデルの事前学習 (大量のデータで一からモデルを作る工程) は、電力単価・GPUの調達・資本市場・人材の厚みで米国が圧倒している。OpenAIのスターゲート、マイクロソフトのフェアウォーター、メタのハイペリオン級の拠点は、1か所で日本の全国計画を超える設計である。
第2に、米国のクラウド大手と投資会社は、日本をライバルの拠点ではなく自社のアジアの拠点として増設している。アマゾン傘下のAWSは2024年1月、2027年までに東京と大阪のクラウド基盤へ2兆2600億円を投じると発表し、マイクロソフトは2024年4月、2年間で29億ドルを日本のAIとクラウドの基盤に投じると表明した。オラクルは同じ月に10年で80億ドル超の投資を発表し、グーグルは10億ドルで日本と太平洋の島々や米ハワイを結ぶ海底ケーブル2本 (ProaとTaihei) を整えると発表した。マイクロソフトは2026年4月にも、2026〜2029年に100億ドルを投じる計画を示した。いずれも日本の電力網・通信網・政治の安定を借りて、アジア太平洋向けの計算基盤を築く動きだ。米投資会社ブラックストーンのグレイ社長は2026年6月23日の日経のインタビューで、今後3〜5年で300億ドル (約4兆8000億円) を日本のデータセンターに投じると述べた。同社傘下のエアトランクは2026年3月10日、日本の4か所の拠点で合計約530MWを見込むと発表しており、同社は日本で1GW超を検討していると英語の報道が伝えている。これは対立ではなく、米国企業の日本での展開である。ただし、これらの施設で動くのは主に海外企業のサービスで、その利用料は表1の赤字として国外に出ていく。
第3に、日本の資本は米国側にも出ている。米エネルギー省の2026年3月の資料によると、ソフトバンクグループ傘下のSBエナジーが米オハイオ州で進める10GWのデータセンター計画では、9.2GWの新しいガス火力発電に日本側の資金333億ドルが充てられる。計算の本丸を米国に置き、日本は接続点を押さえる構造である。
役割の分担も見えてくる。米国は世界最大の資金力で数万〜数十万基の最新GPUを並べ、巨大な基盤モデルの事前学習の中枢を担う。日本は、基盤モデルを日本語やアジアの言語、産業の用途に合わせる追加学習と、利用者の近くで素早く答えを返す推論 (学習済みのモデルを動かす処理) のアジアの中枢を担う。日本は北米とアジアを結ぶ要衝でもある。インターネットの通信量の99%は海底ケーブルを通り、総務省も令和5年版情報通信白書で、日本の国際通信の約99%が海底ケーブルに依存しているとする。日本は米国から東南アジアやインドへ向かう通信の最初の玄関口で、遅延の少ない通信の要になっている。
一方で、機能の一部では競い合う。1つ目は遅延の少ないアジア向けの推論で、日本・韓国・台湾・東南アジアの企業向けには、米国本土より東京・大阪・北海道の方が有利だ。ここでの競争は米国のデータセンター対日本のデータセンターではなく、米国クラウドの日本拠点対シンガポール・韓国・オーストラリアである。2つ目は政府・金融・医療・防衛など、米国本土に出せない、あるいは出したくないデータを扱う主権AIの需要だ。NTTは2026年4月、2033年度までに国内データセンターのIT電力容量を現在の3倍超の約1GWに引き上げる構想を示し、日経の英語版は同社の目標を2GWのデータセンター容量と伝えている (受電容量とIT電力の違いとみられる)。ソフトバンクの北海道苫小牧の拠点は再生可能エネルギーを使い、敷地70万平方メートル、受電容量は将来300MW超まで広がる見込みで、2026年度の開業を目指す。大阪府堺市の旧シャープ工場の拠点は、取得額約1,000億円、受電容量は稼働当初約150MW、将来250MW超とされ、2026年5月の決算資料では140MWと記された。どちらもこの層を狙う。3つ目は信頼性への上乗せ価格で、地震への備え・稼働率・運用の質・契約の順守には、単価が高くても金融や公共の顧客が対価を払う。
国の補助もこの流れを後押しする。経産省のクラウドプログラム (経済安全保障推進法に基づく計算基盤への助成) は、2024年4月にさくらインターネットへ約501億円、KDDIへ約102.4億円などを認め、この月の5件で最大725億円に達した。ソフトバンクには2024年5月に最大421億円を認めている。日本が計算の総量で米国を脅かすことはない。日本の勝ち筋は、米国の技術と製品の組み合わせを国内に引き込みつつ、中国に出せないデータをアジアで処理する拠点になることである。
対中国の強みは電源の量ではなく、先端GPUを合法に入れられることと契約の信頼にある
中国は、国家主導の強力な投資と安い電力を武器にする。国家発展改革委員会は2022年2月、全国を8つの計算拠点と10のデータセンター集積地に分ける「東数西算」を本格的に始めた。中国の本当の強みは電源の増設速度である。OpenAIは2025年10月27日に米政府へ出した意見書で、2024年に中国が429GWの電源を増やしたのに対し、米国は51GWだったと伝えた。電気料金でも日本は不利だ。資源エネルギー庁によると、2024年の産業用の電気料金は1kWhあたり日本が17.0セント、米国が8.2セントで、日本は米国の約2.07倍である (記者の計算)。日本が電源の量と速さで中国と競うのは現実的ではない。競うべきは、信頼できる計算である。
一方で、中国は先端GPUを自由に買えない。米商務省産業安全保障局は2022年10月7日に対中の先端半導体の輸出規制を始め、2023年10月17日に強化した。2025年1月の「AI拡散規則」では、日本は米国と18の同盟・友好国とともに規制がほぼない第1層に入ったが、同規則は2025年5月13日に撤回された。中国は国産のチップで穴を埋めているが、世代の差が残る。中国が最新のAIチップを手に入れにくいなか、日本はアジアの先端AI基盤で有利な地位を築ける。
表5 日本と中国の比較
| 項目 | 日本 | 中国 |
|---|---|---|
| 先端GPUの入手 | エヌビディアなどの最先端品を合法に導入できる (ソフトバンクの大量導入、シャープと鴻海による国内販売の開始) | 輸出規制で先端品が制約され、国産品で埋めるが世代の差が残る |
| データと法の信頼 | 法治・知的財産・契約・監査のしやすさ | 国境を越えるデータと国家によるアクセスへの懸念が、欧米の顧客にとって決定的な壁 |
| 同盟の網 | 日米同盟、日米豪印 (クアッド)、半導体の製造装置と材料の西側の供給網 | 巨大だが分断された生態系 |
| 主な顧客 | 日本に進出した外資、国内の大手、アジアの政府と金融機関 | 主に国内とグローバルサウス |
最先端の機器を国内で組み立てる動きも出てきた。シャープは2026年9月15日、鴻海精密工業と連携して国内向けにAIサーバーの受注を始めたと発表した。データセンターは「箱」ではなく、エヌビディアの基盤・電源・通信・保守の組み合わせであり、シャープの動きはその組み合わせを国内でそろえる一歩である。同じアジアの時間帯で、先端GPUと契約・監査の信頼を同時に提供できる場所は限られる。これが対中国での最大の国策上の価値である。
対G7では東アジア唯一の立地と「ワット・ビット連携」が強みで、電力価格と系統接続が弱みになる
日本のAIデータセンター戦略を米国・中国・欧州と比べると、構造上の強みと弱みは次のように整理できる。
表6 米国・中国・欧州と比べた日本の位置
| 比べる相手 | 強み・特徴 | 弱み・課題 | 日本から見た優位点 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 学習に有利な法制度、地政学的な安定、豊富な水、北海道などの寒冷地での冷却の効率 | 再生可能エネルギーの送電網整備の遅れ (系統接続待ち)、地震などの災害、電力コスト | 経産省の支援という国策と、柔軟な著作権法という法制度の強い後押し |
| 米国 | 圧倒的な民間資本、エヌビディアなどの先端半導体の設計拠点、巨大IT企業 | 送電網の老朽化、電力コストの高止まり、州ごとの環境規制の違い | 米国資本を国内に呼び込むことで、最新GPUを確保しやすい |
| 欧州 | 再生可能エネルギーの利用など環境規制の先進性、データ保護の厳格さ | 厳しいデータ規制 (GDPR) やAI法によるイノベーションの妨げ、深刻なエネルギー価格の高騰 | 日本の著作権法30条の4はAIの機械学習に世界で最も寛容で、開発拠点として有利 |
| 中国 | 国家主導のトップダウン投資 (東数西算)、非常に安い電力 | 米国の半導体輸出規制で最先端GPUが入手困難 | 中国が最新AIチップを使えないなか、アジアで先端AI基盤の有利な地位を築ける |
日本の最大の強みは、米国と同盟関係にあって米国の輸出規制の対象外で最先端GPUを調達できることと、AIの学習に寛容な法制度を両立している点にある。G7の中で日本だけが持つ強みは5つある。
東アジアで唯一のG7で、消費地に近い。ドイツ・英国・フランス・イタリア・カナダは欧州と北米の計算需要には強いが、東アジアの企業が本番で使う推論では、距離と時差で不利になる。日本は東京・大阪の金融と製造業の需要のすぐそばに計算基盤を置ける。
「ワット・ビット連携」を国の制度にした。2026年9月、経産省はGX戦略地域の第1弾として18地域を認定し、うちデータセンター集積型は9地域 (北海道の石狩と苫小牧、秋田、宮城、栃木、茨城、富山の南砺、香川、福岡の北九州圏、鹿児島の薩摩川内) となった。脱炭素電源の近くにGW級のデータセンターを計画的に置き、系統を先に整えるという狙いを明示しており、米英の市場主導とも中国の全土への指令とも違う第3の型である。
産業の川上を自前で持つ。半導体の製造装置と材料、光エレクトロニクス、冷却と電源の機器、建設会社の耐震施工、海底ケーブル、通信事業者 (NTTの光技術を使うIOWNとその全光ネットワークAPN) がそろうのは、G7では日本と米国くらいである。
電源の多様性を潜在的に持つ。北海道・東北の再生可能エネルギーと涼しい気候、秋田の洋上風力、九州や福井の原子力、臨海のコンビナートの既存の火力とLNGがある。カナダの水力やフランスの原子力ほど安い単一の電源ではないが、地域の分散と災害への強さではG7の中で独自の位置にある。政府は原子炉の建て替えの目標も改めて示した。
空押さえの是正と系統の先行整備に踏み出した。これまでは接続まで最大10年かかる事例があり、印西・白井だけでも連系待ちが約40件・申込容量の合計約2,500MWに達し、工事の総額が2,000億円を超える詰まりが見えていた。30MW以上の大規模需要への規律、GX地域での系統の先行整備、ウェルカムゾーンマップは、G7の中では後発だが方向は正しい。
一方で、G7と比べて見劣りする点も5つある。ここを直さなければ4.9GWは絵に描いた餅になる。電力価格が高く、AIの学習の限界費用で米中・北欧・カナダに負ける。系統の接続と地域内の送電が全体の速さを決め、計画のGWと稼働のGWの差の主な原因になっている。首都圏には土地・用水・騒音・災害の制約があり、地方への分散は欠かせないが、地方は通信の冗長性と人材が弱い。原子力の再稼働と新増設には、社会的な合意を含めてフランスより長い時間がかかる。国内の基盤モデルの市場が小さく、計算需要の相当部分は米国のクラウドを通ることになる。
G7の他の国も大型の計画を掲げる。英国では、民間の案件データベースをもとにしたComputer Weeklyの2026年9月8日の分析で、確定した計画が173件・14GW超に達した。カナダは水力を生かしてG7で2番目の規模に並ぶ計画の数字を掲げ、政府資料には計画中の案件が20GW超と記されたが、政府は大半が実現しないとの見方を示した (CP24、2026年7月8日)。フランスは原子力を持ち、ソフトバンクグループが2026年5月31日に国内で5GW、最大750億ユーロの投資を発表し、第1段階で2031年までに3.1GWを整える。日本の4.9GWはG7の中位の水準にある。差を埋めるのはGWの数ではなく、稼働の確実さとGPUの密度である。
著作権法30条の4の優位は学習の入り口に限られ、米国の判決はその差を縮めた
日本の著作権法30条の4は、AIの開発・学習の段階に非常に寛容で、開発者に有利な制度として世界で知られ、「AI学習免責」とも呼ばれる。同条は2018年の法改正で設けられ、2019年1月1日に施行された。米国やEUと比べた有利な点は3つある。日本語のデータが足りない国内の開発者にとって、この規定は数少ない追い風でもある。
第1に、商用か否かを問わず、原則として学習に使える。情報解析 (大量の情報から要素を取り出し、比較・分類などの解析をすること。30条の4第2号の括弧書きで定義) の目的であれば、営利目的でも権利者の許諾なく著作物を学習データとして使える。EUのDSM著作権指令のテキスト・データマイニングの例外では、非営利の学術研究目的なら比較的自由だが、商用目的では権利者が学習を拒む意思表示 (オプトアウト) をしていると使えない。権利者が「自分のデータをAIの学習に使わないで」とウェブサイトなどに機械可読の方法で明記していれば、開発者はそのデータを除く仕組みを作る必要がある。日本では、権利者がオプトアウトを明記していても、後で述べる「不当に害する場合」を除き、学習データとして集めて解析することは基本的に適法とされる。
第2に、米国のフェアユース (公正な利用) のような曖昧さがない。米国には学習に特化した条文がなく、著作権法107条のフェアユースを根拠に学習が行われている。フェアユースに当たるかどうかは、利用の目的・著作物の性質・利用した量・市場への影響の4要素から最終的に裁判所が個別に判断する。ニューヨーク・タイムズが2023年12月27日にマイクロソフトとOpenAIを提訴したように、巨額の訴訟の危険が常に伴い、企業にとって法的な予見可能性が低い。日本は「情報解析の用に供する場合」という行為そのものを、条文で明確に権利制限 (原則として許諾が要らない) の対象にしており、開発者は学習の行為自体は原則として適法だという安心感を持って開発を進められる。
第3に、「享受目的」かどうかの線引きがはっきりしている。文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月15日付でまとめた「AIと著作権に関する考え方について」は、30条の4の適用範囲をより明確にした。著作物に表現された思想や感情を自ら楽しむ「享受目的」があるかどうかが要点で、特定の画風や作家の作品だけを大量に学習させ、その作家に酷似した作品を意図的に生成させる目的が併存する場合は享受目的があり、30条の4は適用されず侵害になり得ると整理された。逆に、特定の作家の作品を出力させる目的ではなく、AIの言語能力や画像認識能力の基礎的な向上のために大量のデータを機械的に解析させる行為は、適法として保護される。
表7 AIの学習に著作物を使うときの日米欧の違い
| 比べる点 | 日本 | EU | 米国 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 著作権法30条の4 (2019年施行) | DSM著作権指令3条・4条 | 著作権法107条 (フェアユース) |
| 商用の学習 | 許諾なく可能 | 権利者が機械可読の方法で留保すれば不可 | 目的・性質・量・市場への影響を裁判所が判断 |
| 権利者の拒否 | 意思表示だけでは例外に当たらない | 留保の尊重をAI法53条1項(c)が義務づけ | 個別の訴訟で争う |
| 最近の動き | 文化審議会の考え方 (2024年3月15日) | 汎用AIの義務を2025年8月2日から適用 | 2025年6月に学習をフェアユースとする判決が2件 |
同文書は、著作権者が反対の意思を示していることのみをもって、30条の4のただし書 (著作権者の利益を不当に害する場合の例外) に当たるとは考えられないとした。ただし、学習を防ぐ技術的な措置が講じられ、データベースの販売予定が推認され、その措置を回避して集める場合は、ただし書に当たり得るとも整理している。同文書は法的な拘束力を持たない。
日本が有利なのは、あくまで開発・学習の段階 (入力) の話である。注意点は2つある。1つは例外で、30条の4には「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」というただし書がある。有料で販売されているデータベースを海賊版サイトから取得して学習させる行為は、この例外に当たって違法となる可能性が高い。もう1つは生成・利用の段階 (出力) で、学習が適法でも、AIが生成した画像や文章が既存の著作物に似ていて (類似性)、それをもとにしている (依拠性) と判断されれば、通常の著作権侵害として扱われる。文化審議会の考え方は、学習データに含まれていた著作物については通常、依拠性が推認されるとしている。入力の免責はあっても、出力の免責はない。
EUと米国の状況も動いている。EUのDSM著作権指令は、3条で研究機関の学術研究目的の学習を認め、4条で、それ以外の学習を権利者が機械可読の方法で留保していない場合に限って認める。EUのAI法53条1項(c)は、汎用AIの提供者にこの留保を尊重する著作権方針を義務づけ、2025年8月2日から適用が始まった。米カリフォルニア北部地区連邦地裁は2025年6月23日のBartz対Anthropicの判決で、学習への利用をフェアユースと判断し、海賊版の取得はフェアユースに当たらないとした。同事件は15億ドルの和解となり、2026年7月20日に最終承認され、対象は482,460作品に及ぶ。2025年6月25日のKadrey対メタの判決もメタの学習をフェアユースと認めたが、原告の主張の立て方の問題だと断っている。米著作権局は2025年5月9日の報告書で、既存の市場と競合する表現物を作るための大量の商用利用はフェアユースの範囲を超えるとした。記者の見立てでは、学習そのものを適法とする流れが米国の判決に出てきたことで、日本の法制度の優位は「条文で先に決めてある」予見可能性の差に絞られつつある。
国は系統と回線を先に整える型を選んだが、日本海ケーブルは計画から4年たっても事業者が決まっていない
電力規制の側面は送電網につながない選択肢を扱った記事で、原子力と電力株の関係はAIの10年と原子力を扱った記事で分解した。国は今、東京・大阪などの都市部を遅延の少ない推論向け、北海道・九州などの広い土地と再生可能エネルギーを使える地方を学習向けとして、データセンターの分散配置を進めている。課題である系統接続の遅れを、国のインフラ投資 (GX投資) でどれだけ早く解消できるかが、1.3GW超の構想を現実にする最大の鍵になる。
国はこの課題に、系統を先に整える仕組みで応えようとしている。経産省が2026年9月11日に認定したGX戦略地域の第1弾18地域の内訳は、コンビナート等再生型が1地域、データセンター集積型が9地域 (10地点)、脱炭素電源活用型が8地域 (10地点) である。データセンター集積型の10地点は、北海道 (石狩市・苫小牧市)、秋田県 (秋田市)、宮城県 (富谷市)、栃木県 (矢板市)、茨城県 (常総市・つくば市)、富山県 (南砺市)、香川県 (綾川町・坂出市・丸亀市)、福岡県 (北九州市・直方市・鞍手町)、鹿児島県 (薩摩川内市) で、今後10年程度でGW級の集積地を形成する取り組みと位置づけられた。認定には計画の着実な推進と地域との共生の確保という条件が付き、各地域の計画の概要は後日公表される。電力と通信を一体で整える「ワット・ビット連携」の官民懇談会は、2025年3月21日に初会合を開いている。資金の面では、経産省の「AI・半導体産業基盤強化フレーム」が、2030年度までの7年間に10兆円以上の公的支援を行い、10年間で50兆円を超える官民の投資を呼び込む目標を掲げる。
系統の詰まりは数字で見える。資源エネルギー庁の2025年10月7日の資料によると、千葉県の印西・白井地区では連系を待つ大規模需要が約40件あり、申込容量の合計は約2,500MW、必要な工事の総額は2,000億円を超える見込みで、うち上位系統 (基幹の送電網) の工事が約2,000億円を占める。日経によると、電力8社は全国30カ所でデータセンター向けの送電網を増強しているが、接続に最大で約10年かかる事例がある。広域機関の検討をもとにした報道によると、最終的な契約電力が30MW以上の大規模需要には、延期の猶予を1年まで、段階的な契約を原則6年までとする規律が2026年10月1日に始まる。送配電会社は、つなぎやすい地域を示すウェルカムゾーンマップも公開している。
電力の値段を下げる手立ても時間がかかる。電力単価を下げるには、再生可能エネルギーの電力購入契約だけでなく、原子力発電所の近くへの立地と、北海道−本州の直流送電が欠かせない。北海道と本州を結ぶ直流の海底送電は、広域機関の2024年4月の基本要件で容量2GW、後志〜秋田約480km・秋田〜新潟約320km、概算工事費1.5〜1.8兆円程度、工期6〜10年程度とされた。経産省は2026年6月5日、原発を2040年代までに最大5基建て替える目標を示した。
通信回線の整備は、さらに遅れている。総務省の資料をもとにした地図「デジタル田園都市スーパーハイウェイ (日本周回ケーブル)」は、太平洋側を中心に日本を囲む既存の海底ケーブルと陸揚局、東京圏と大阪圏の既存のデータセンターに加え、日本海側を通る新しい海底ケーブルと関西方向への分岐、採択された7か所のデータセンター (石狩市、白河市、相楽郡、生駒市、大阪市、松江市、福岡市) を描く。総務省の「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」は令和3年度補正予算の500億円の基金で始まり、総額は1329億円に膨らんだ。補助率は、データセンターと陸揚局舎が2分の1 (上限40億円、東京圏・大阪圏以外が対象)、国内の海底ケーブルが5分の4 (房総・志摩以外に陸揚げするもの) である。総務省は、陸揚局が房総半島と志摩半島の周辺に集中していることを課題に挙げ、東日本大震災では海底ケーブル10か所が損傷して完全復旧に半年かかったと白書に記している。
データセンターの第1回公募は、19件の申請から7件を採択し、2022年6月27日に発表された。採択されたのは、石狩再エネデータセンター第1号 (石狩市)、ヤフー (白河市)、NTTグローバルデータセンター (相楽郡精華町)、オプテージ及びKS東梅田 (大阪市)、ソフトバンク及びBBIX (生駒市)、インターネットイニシアティブ (松江市)、QTnet (福岡市) である。基金を管理する情報通信ネットワーク産業協会の2024年3月の資料では、ヤフーの白河の施設は2024年2月末に完成した一方、石狩の事業は計画変更の審査中だった。総務省の7か所と経産省のGX戦略地域のデータセンター集積型10地点を並べると、重なるのは石狩市だけである。
海底ケーブルの完成目標は、3度動いた。2022年3月の「デジタル田園都市国家インフラ整備計画」は日本を周回する海底ケーブルを3年程度で完成するとし、2023年3月の有識者会合では2025年度末まで、2023年4月の改訂では2026年度中の運用開始とされた。国内海底ケーブル向けの第4回公募は2026年3月27日に始まり、8月31日正午に締め切られたが、採択結果はまだ公表されていない。令和3年度補正分の基金は、2026年7月22日の公表で支出額が192億3600万円、交付決定額が231億3500万円、残高が307億8400万円である。支出は500億円の38.5%にとどまる (記者の計算)。
日本の最適解は「第3極」を総GWで名乗ることではなく、稼働するMWと国内で動くGPUを増やすことにある
日本の最適解は、米中に次ぐ第3極を総GWの数で名乗ることではない。実態に即した日本の位置は4つある。1つ目は、米国の同盟圏のアジアの計算拠点である。学習の中核は米国に置き、日本は推論、追加学習 (ファインチューニング)、産業向けのAI、主権クラウドを担う。ソフトバンクとエヌビディア、堺と苫小牧の組み合わせは、その接続装置にあたる。2つ目は、中国に対する信頼できる代わりの立地である。同じアジアの時間帯で先端GPUと契約・監査が使える場所は限られ、ここが対中国での最大の国策上の価値になる。3つ目は、国内産業の電化・半導体・通信と一体になった需要を生む装置である。データセンター単体の投資収益より、製造装置・サーバー・電力機器・建設・保守・地方の雇用への波及の方が政策の目的に近く、10兆円はデータセンターの建物代だけでなく周辺の産業政策の資金でもある。4つ目は、災害に備えて分散させる国のインフラである。首都圏に集中したデジタル基盤が一斉に止まる事態を避けることが経済安全保障の本体で、北海道・東北・北陸・九州への分散は計算の効率よりも災害への強さを目的にしている。
実現の条件は単純だ。発表されたGWではなく、2028〜2030年に実際に受電を始めるMWを成果の指標にする。富山の3.1GWのような構想は、第1期 (300〜400MW) の系統・電力購入契約・入居企業が決まるまで、構想として実績と切り分ける。電力単価を下げるため、原子力発電所の近くへの立地と北海道−本州の直流送電を進める。そして、計算は電力とチップと運用の掛け算で決まる以上、GPUとサーバーの国内への実装 (保守と主権を保った運用) を建物の建設より優先する。
時間の計算をすると、切迫感の意味がはっきりする。政府資料がデジタル赤字の約10兆円を見込む2030年までは、あと4年しかない。送電網への接続に最大約10年、北海道と本州の直流送電に6〜10年程度かかるなら、2030年代前半に動く施設の系統は、2026年から2028年のうちに決めなければ間に合わない。
国内の1.3GW前後は、AIインフラ元年の入り口として正しい規模である。2033年の4.9GWは米中には届かないが、G7でアジア唯一の信頼できる拠点としては十分に戦える計画だ。米国との関係は競合ではなく分担であり、中国との関係は容量の競争ではなく、制度・チップ・データの競争である。国策の勝ち負けは巨大な発表の合計ではなく、系統が先に動き、先端GPUが実際に日本の床で回るかどうかで決まる。投資家が見るべき数字は、受電容量の合計ではなく、GPUに回るIT電力の増え方、系統の接続と海底ケーブルの工程、そして国産モデルが政府や企業の調達で実際に選ばれるかどうかだ。
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