投資家の間で出回る「AI基盤の10年」は3段階21分類90銘柄からなる。原子力欄の新興3社はまだ電気を売らず、稼ぐのは既存炉のConstellationとTalenである。日本は核燃料の輸入が4年で9倍に増えた。

「これを手元に置いておけ。どこに投資すべきかを知る必要がある。早く引退せよ」という呼びかけとともに、AI基盤の10年を3段階に分けた一覧が投資家の間で流通している。2026〜2027年に計算・記憶・通信・電力の基盤を築き、2028〜2030年に電力と送電網を築き、2030年以降にロボット・無人機・宇宙・量子という次の産業群を築くという構図で、結びは「10年周期の投資。早めに布陣し、基盤産業で考え、10年単位で考える」である。多くの投資家はすでに動いているものに反応して10年を過ごすが、自分たちは資本が流れ込む前に先回りする、という主張が添えられている。本稿はこの一覧を21分類90銘柄として全数を書き出し、米証券取引委員会 (SEC) の提出書類、金融庁EDINETの有価証券報告書、財務省の貿易統計、米連邦準備制度のデータで、構図のどこに裏付けがあり、どこにまだ無いかを確かめる。原子力とAIデータセンターの米国側の契約は先行記事が扱ったので、本稿は一覧の全体と日本側の有報に重心を置く。円換算は1ドル=159.21円 (2026年8月14日) による。

3段階21分類90銘柄を全数で書き出す: 2026〜27年の基盤が12分類、2028〜30年の電力が9分類、2030年以降が6分類

一覧の第1段階「AI基盤を築く」は12分類である。電力・不動産にNextEra Energy (NEE)、Constellation Energy (CEG)、Talen Energy (TLN)、IREN、Digital Realty (DLR)、Equinix (EQIX)。データセンター・冷却にVertiv (VRT) とSuper Micro Computer (SMCI)。AI半導体にNVIDIAAMDBroadcomAlphabetIntelArm。メモリーにMicronSanDiskWestern Digital。光通信にCorningApplied Optoelectronics、Navitas、Lumentum、Credo。ネットワークにAristaCiscoCelesticaQualcomm。ストレージにPure Storage、Dell、NetApp、HPE。運用基盤にIBMNutanix。GPUクラウドにCoreWeaveNebiusDigitalOcean。大手クラウドにMicrosoft、Akamai、AmazonOracle。推論の配置にCloudflareFastly。電気設備にPowell Industriesと nVentである。

AI基盤の10年: 2026〜27年は基盤、2028〜30年は電力、2030年以降は応用 (3段階・21分類・90銘柄)
AI基盤の10年: 2026〜27年は基盤、2028〜30年は電力、2030年以降は応用 (3段階・21分類・90銘柄)

第2段階「電力を築く」は9分類で、送電網にEatonQuanta ServicesHubbellVertiv (重複)、発電事業者にConstellation (重複) とVistra、電化にGE VernovaTE Connectivity、Albemarle、SQM、現地電源にBloom Energy、銅にFreeport-McMoRan、Teck、Southern Copper、希土類にMP Materials、Critical Metals、USA Rare Earth、Texas Mineral Resources、原子力にEnergy Fuels (UUUU)、NuScale (SMR)、Oklo、サイバーセキュリティにCrowdStrikePalo Alto NetworksZscaler、AI応用ソフトにPalantirSalesforceServiceNowSnowflakeが置かれる。第3段階「未来を築く」は6分類で、ロボットにTeslaServe RoboticsSymbotic、自律移動にArcher AviationJoby Aviation、無人機にAeroVironment、Kratos、Ondas、Red Cat、防衛にLockheed MartinとNorthrop Grumman、宇宙にRocket LabAST SpaceMobileIntuitive MachinesPlanet Labs、BlackSky、量子にIonQD-Wave、Rigettiが並ぶ。流通している文章版は各分類から2〜3銘柄を抜いた短縮版で、一覧の方が銘柄数で約2倍多い。本稿の照合で企業DBに未収録だった49社を登録し、金属・希土類・防衛・データセンター不動産の14社は受け皿が無いため見送った。

この一覧の価値は銘柄の当否ではなく、資本が流れる順序を3段階に区切って示した点にある。第1段階は2026年の決算にすでに表れており、NVIDIAのAIサーバー値上げとMicronの粗利益率79%は前稿で数字を示した。第2段階は契約と認可の段階にあり、第3段階は売上が立つ前の企業が大半を占める。一覧が「10年単位で考える」と念を押すのは、第2・第3段階の企業の多くが現時点で赤字だからで、その実態は提出書類に書かれている。

Constellationは920MWの新規契約と設備利用率93%、Talenは容量市場で10GWを325ドルで落札: 電気を売っている側の8-K

第2段階の発電事業者欄にあるConstellationは、2026年8月6日の8-Kで4〜6月期を報告した。原子力の発電量は44,160GWh (前年同期45,170GWh)、出資比率分の設備利用率は93.0% (同94.8%) で、燃料交換による停止を除けばほぼ全力の稼働である。新たに920MWの長期電力購入契約を投資適格の顧客と結び、そのうちWalmartとの176MWはイリノイ州Dresden原発の30MW出力増強を伴う。Crane (旧Three Mile Island 1号機) は米原子力規制委員会 (NRC) が燃料に関する許可の変更を承認し、2027年の再稼働へ進む。ニューヨーク州のGinnaとNine Mile Point 1号機は運転延長を申請した。2026年1月にCalpineの統合を終えて発電能力は約55GWになり、2026〜2029年の基礎EPS成長を20%超と掲げ、自社株買いは分離以来累計46億ドルに達する。同社の資料は連邦の原子力発電税額控除 (PTC) が44.75ドル/MWhの下限を設けると説明しており、市場価格がこれを下回れば差額を国が補う。

日本の核燃料輸入は4年で9倍、米国の原子力3社はSECの提出書類で何を言ったか
日本の核燃料輸入は4年で9倍、米国の原子力3社はSECの提出書類で何を言ったか

Talen Energyは8月5日の8-Kで、4〜6月期の調整EBITDAを3.74億ドル (前年同期比2.84億ドル増)、2026年通年の見通しを20.25〜22.25億ドルへ引き上げた。PJMの2028/29年容量市場では10GW超を325ドル/MW日で落札し、6月15日に完了したCornerstone買収で発電能力を2.6GW増やし、データセンター向けの用地と契約案件を約4GW分開発している。GAAPの純損益はデリバティブの評価損と金利負担で0.92億ドルの赤字だが、これは会計上の評価であって電気が売れていないという意味ではない。Amazonへペンシルベニア州サスケハナ原発隣接のデータセンターを売った同社は、原発の電気を「電源付き用地」として売る事業に転じた。発電事業者欄にあるVistraも8月7日に8-Kを提出したが、本稿では数字の引用を見送り、提出の事実だけを記す。一覧が電力・不動産欄と発電事業者欄の両方にConstellationを置いたのは、同社が第1段階で契約を獲得し、第2段階で発電するという2つの役割を持つからで、この重複は誤記ではない。

Energy Fuelsは豪ASMと独VACを統合して「ウランから磁石まで」を作る: 原子力欄3社の精錬の裏側

原子力欄の3社は、電気を売っているConstellationとTalenとは事業の段階が異なる。Energy Fuelsは米最大のウラン生産者だが、2026年7月28日にSECへ提出した8-Kは、ウランではなく希土類の統合に関する文書である。豪Australian Strategic Materials (ASM) の全株式を取得する取り決めの補足説明書で、ドイツの磁石メーカーVAC (Vacuumschmelze) との統合 (VAC Merger) を同時に実行し、統合後の新会社として、ウラン生産、ASMの韓国金属工場での希土類金属化、VACの磁石製造までを1社にまとめる計画が書かれている。豪州の裁判所による第2回審理は8月18日に予定された。中国が握る希土類の供給網で最も代替が難しいのは鉱山ではなく分離・金属化・磁石化の工程で、先行記事で示したこの構造に対し、ウラン会社が精錬工程から参入しようとしている。ユタ州のWhite Mesa製錬所はもともとウラン鉱石から酸化ウランを取り出す施設で、同じ湿式の分離工程を希土類に転用できる点が、ウランと希土類が1社に併存する理由である。

NuScaleは8月5日の8-Kで、1基77MWeの原子炉モジュールが米NRCの設計認証を持ち、ルーマニアのドイチェシュティで石炭火力跡地に6基を建設する計画を進め、協力先は60社超で30件超の契約があると説明した。販売は独占提携先のENTRA1 Energyが担う。Okloは高速炉Auroraをアイダホ国立研究所の敷地で建てる計画で、8月7日に四半期報告を提出した。3社に共通するのは、2026年時点で原子炉で発電した電気の売上がないことで、一覧が3社を第2段階 (2028〜30年) に置いたのは、この時間差を踏まえている。新設炉の資本費は金利で決まり、米10年債利回りは8月20日時点で4.69% (FRED) である。日本側では、NuScaleにIHIと日揮が出資し、三菱重工はSRZ-1200でPWRの新設を狙い、高速炉は日本原子力研究開発機構の「常陽」と三菱重工の開発が続く。米国の「炉を作る側」が新興3社なのに対し、日本は重電3社と鍛鋼1社が担う。

日本の核燃料輸入は2021年97億円から2025年885億円へ9倍: 電力会社の有報より半年早く動く統計

日本にはウラン生産者も濃縮事業者も無い。一覧のUUUU欄に相当する上場企業は存在せず、核燃料は全量を輸入に頼る。財務省の貿易統計で「放射性元素及び放射性同位元素」の輸入額を追うと、2021年97億円、2022年303億円、2023年301億円、2024年450億円、2025年885億円と4年で9.1倍になり、2026年は1〜6月だけで487億円に達した。2025年の相手国はフランス214億円、英国208億円、米国199億円、カナダ146億円、スペイン46億円で、フランス (Orano) と英国 (Urenco) は濃縮役務、米国とカナダはウラン精鉱と転換役務が主体である。再稼働した炉の初装荷燃料と取替燃料に加え、ロシア産の濃縮ウランを西側の供給者へ振り替える動きが金額を押し上げた。電力会社の燃料費は有価証券報告書に載るが、決算は年に1度で、輸入統計は毎月公表される。原子力の稼働がどれだけ増えるかは、燃料の輸入額が半年から1年早く示す。

日本側の3段階: 原子炉を作る会社、電気を売る会社、国策AIデータセンターを建てる会社
日本側の3段階: 原子炉を作る会社、電気を売る会社、国策AIデータセンターを建てる会社

日本の電力側は、2026年3月期の有価証券報告書で確認できる。関西電力 (9503) は美浜・高浜・大飯の7基を運転し、売上4兆566億円、営業利益4,376億円 (利益率10.8%)、設備投資5,807億円で、2025年7月に美浜での新設に向けた調査の開始を表明した。九州電力 (9508) は川内・玄海の4基で売上2兆2,472億円、営業利益2,249億円 (10.0%)、設備投資3,815億円。東京電力ホールディングス (9501) は売上6兆3,286億円、営業利益3,377億円、設備投資9,048億円と国内の電力会社で最大の投資額で、柏崎刈羽6号機の再稼働手続きを進める。3社の外国法人等の持株比率は24〜34%で、三菱重工の46%、日立の54%より低い。国の枠組みは第7次エネルギー基本計画 (2025年2月閣議決定) が原子力を「最大限活用」とし、2040年度の電源構成で原子力を2割程度と定める。経済産業省は電力と通信の立地を一体で設計する「ワット・ビット連携」を掲げ、GX経済移行債20兆円で脱炭素電源と次世代炉を支える。米国のPTCに相当する1MWh当たりの価格下支えは日本に無く、ここが米国の既存炉3社と日本の電力3社の収益構造の差になる。

原子炉を作る側の有報: 三菱重工の研究開発2,891億円、日立の外国人持株54%、日本製鋼所の営業利益率9.2%

三菱重工業 (7011) は国内PWRの主契約者で、新型炉SRZ-1200を関西電力などと開発し、2026年3月期の売上収益は4兆9,742億円、研究開発費2,891億円、設備投資1,784億円、従業員7万8,793人、外国法人等の持株比率46.1%である。同社はガスタービン・コンバインドサイクル (GTCC) でもデータセンター向けの受注を積み上げており、原子力とガスの両方で電力の供給側にいる。日立製作所 (6501) は売上収益10兆5,868億円、研究開発費2,903億円、設備投資4,739億円、外国法人等54.5%で、GE日立のBWRX-300をカナダ・オンタリオ州で建て、日立エナジーの送配電機器が欧米の送電網更新の需要を取り込む。一覧の電化欄にあるGE Vernovaは、このBWRX-300の共同開発相手である。IHI (7013) は売上1兆6,434億円、営業利益1,655億円 (10.1%) で、NuScaleへの出資と原子炉格納容器の製造を手がける。日本製鋼所 (5631) は売上2,749億円、営業利益253億円 (9.2%)、外国法人等36.1%で、原子炉圧力容器の大型鍛鋼で世界首位級で、世界で原子炉の新設が増えれば真っ先に注文が入る部材を握る。

国策のAIデータセンター側では、ソフトバンクグループ (9984) が売上7兆7,987億円、研究開発費9,755億円、設備投資1兆3,873億円で、北海道苫小牧に最終300MWのAIデータセンターを建て、OpenAIへ出資する。KDDI (9433) は売上6兆719億円、営業利益1兆991億円、設備投資6,837億円で、旧シャープ堺工場を取得してAIデータセンターに転用した。さくらインターネット (3778) は売上353億円、営業損失4億円、設備投資226億円で、設備投資が売上の64%に当たる。石狩のGPU基盤は経済産業省の助成を受け、国産基盤モデル開発のGENIACに計算資源を供給する。売上の6割を超える設備投資を続ける会社は、一覧の第1段階のGPUクラウド欄にあるCoreWeaveと同じ構造で、電気と冷却の確保がそのまま事業規模の上限を決める。

希土類と原子力の関連銘柄: 米国の5社と日本の8社、売買の推奨や評価は示さない

一覧の希土類欄と原子力欄に対応する銘柄を、本稿の主題に合わせて整理する。米国側はMP Materials (MP、カリフォルニア州Mountain Passの鉱山と分離、テキサス州で磁石)、Energy Fuels (UUUU、ウランとWhite Mesaでの希土類分離、ASMとVACの統合)、USA Rare Earth (USAR、オクラホマ州で磁石工場)、Critical Metals (CRML、グリーンランドの希土類鉱区)、Texas Mineral Resources (TMRC、テキサス州Round Topの鉱区) で、このうち分離工程を実際に稼働させているのはMPとEnergy Fuelsの2社である。日本側は原子力の製造・燃料・電力と、希土類の磁石・精錬にまたがる。数字は2026年3月期の有価証券報告書によるもので、売買の推奨や評価は示さない。

  • 三菱重工業 (7011): PWR主契約者・SRZ-1200・GTCC。研究開発費2,891億円・外国人46%
  • IHI (7013): NuScale出資・原子炉格納容器。営業利益率10.1%
  • 日本製鋼所 (5631): 原子炉圧力容器の大型鍛鋼。営業利益率9.2%・外国人36%
  • 日立製作所 (6501): BWRX-300 (GE日立)・送配電。外国人54%
  • 関西電力 (9503): 原子力7基運転・美浜新設調査。営業利益率10.8%
  • 九州電力 (9508): 原子力4基運転。営業利益率10.0%
  • 助川電気工業 (7711): 高速炉・核融合向けの熱計測機器と液体金属機器
  • 木村化工機 (6378): 原子力用の蒸発装置・廃棄物処理機器

希土類の日本側は、磁石のTDK (6762) と信越化学、分離と金属化を海外で持つ双日 (豪Lynasへの出資) が該当し、先行記事の30銘柄に役割別の整理がある。一覧が銅と希土類を2028〜30年の段階に置いたのは、送電網と発電機の建設が進んでから素材の需要が生じるという順序を示しており、2026年時点で先に動くのは分離工程を持つ会社の買収と統合である。

確かめられる点

第1に、Constellationが2026年7〜9月期の8-Kで新規契約のMW数を920MWから積み増すか、Craneの2027年再稼働の日程を固めるか。第2に、Energy FuelsとASMの統合が8月18日の裁判所審理を経て完了し、VACの磁石製造が連結対象に加わるか。第3に、財務省の貿易統計で放射性元素の輸入が2026年通年で2025年の885億円を超えるか。上半期487億円のため、下半期が同じ水準なら超える。第4に、関西電力が美浜の新設調査の結果を出し、三菱重工のSRZ-1200の受注が有報の受注残に載るか。第5に、NuScaleとOkloの四半期報告に原子炉からの売電の売上が立つ時期が書かれるか。一覧の第2段階が2028年からとされている根拠は、この時期である。

一覧は「資本が来る前に位置を取る」と言うが、提出書類が示すのは、第1段階の企業にはすでに資本が流れ込み、第2段階の既存炉3社には契約が結ばれ、新興3社と第3段階の企業には認可と建設がまだ先にあるという、3つの異なる時間軸である。日本側はこの3つの時間軸を、核燃料の輸入額、電力会社の設備投資、重電の研究開発費で先に読み取れる。