演算素子1つの発熱は700ワットから2,600ワットへ、ラック1本は10キロワットから1メガワットへ向かっている。冷やす仕事が付属品から設計の中心に移り、部品1点の値段と点数が、そのまま会社の売上になる段階に入った。
証券会社が1枚の表を出した。ルービン・ウルトラ世代のラック、VR300 NVL72 に載る冷却板と急速継手の搭載額予想である。冷却板は216枚で平均単価250ドル、1ラックあたり5万4,000ドル。急速継手は808個で平均単価27ドル、1ラックあたり2万1,880ドル。前世代の VR200 NVL72 からの増加は、冷却板が58%、急速継手が103%と書かれている。
本稿はこの数字を掛け算から確かめ、増加率を個数の増加と平均単価の変化に分け直す。同じ列に並んでいる2つの部品が、まったく違う商売に置かれていることが出てくる。そのうえで、代金がどの会社に入るのかを決算で測り、日本側の受け皿を有価証券報告書と設備投資の開示で確かめる。
図1 — 冷却板と急速継手の個数・平均単価・1ラックあたりの金額と、前世代からの増加率
1枚の表を、掛け算から確かめる
まず表そのものの計算をやり直す。冷却板は216 × 250 = 54,000で、ぴたりと合う。急速継手は808 × 27 = 21,816にしかならず、表の21,880より64ドル少ない。
21,880を808で割り戻すと27.0792ドルになる。表の「27」は端数を落とした表示で、計算に使われた平均単価は27.08ドルである。0.08ドルの差だが、この後で個数の増加と単価の変化に分けるとき、この端数が効いてくる。
増加率の側からも前世代を逆算できる。54,000 ÷ 1.58 = 34,177ドル、21,880 ÷ 2.03 = 10,778ドル。調査資料が示す VR200 NVL72 の「約3万4,200ドル」「約1万800ドル」と符合する。急速継手はさらに、GB300 NVL72 比で77%増と示されているので、10,778 ÷ 1.77 = 6,102ドルが GB300 の水準になる。
3つの世代の数字が、これで並ぶ。冷却板は GB300 が約3万3,500ドル、VR200 が3万4,200ドル、VR300 が5万4,000ドル。急速継手は6,102ドル、1万800ドル、2万1,880ドル。合計すると3万9,631ドル、4万5,000ドル、7万5,880ドルになる。2世代で91.5%増える。
演算素子700ワットの時代は2世代前に終わっている
なぜ冷却の部品がこれほど増えるのか。発熱の側の数字を並べると、増え方の理由が見える。
図2 — 演算素子1つあたりの熱設計電力と、ラック1本あたりの電力
演算素子1つあたりの熱設計電力は、アンペア世代とホッパー世代で400ワットから700ワット、ブラックウェル世代で1,000ワットから1,200ワット、ルービン世代で最大2,300ワット、ルービン・ウルトラ世代で2,600ワットとされる。ルービンは省電力側の設定で1,800ワット、性能側の設定で2,300ワットの2つが示されており、2,600ワットは業界の見立てである。
72基を積むと、2,300ワットで165.6キロワット、2,600ワットで187.2キロワットになる。演算素子だけでこの数字で、中央演算処理装置と通信の素子、電源の損失が上に乗る。
ラック1本の電力は、H200 の10キロワットから GH200 の36キロワット、GB300 の130キロワットから140キロワットへ来た。VR200 は省電力設定で190キロワット、性能設定で230キロワットとされ、直接液冷の設計は1ラック227キロワットで組まれている。その先は600キロワットから1メガワットへ向かうと言われる。H200 との比で60倍から100倍である。
空気で運べる熱量と水で運べる熱量は、同じ体積で3桁違う。1ラック100キロワットを超えた時点で、送風で冷やす選択肢は消える。冷却水の流量は GB300 NVL72 比でほぼ倍になるとされ、分配装置と配管も同時に増える。
ラック1本の中身から216枚と808個を組み立て直す
216枚と808個という数字は、どこから出てくるのか。ラックの中身から積み上げると再現できる。
図3 — 演算トレー18枚と交換機トレー9枚から、公表された個数を組み立て直す
NVL72 は演算トレー18枚と交換機トレー9枚で構成される。調査資料によれば、VR200 世代の演算トレー1枚には冷却板が約5枚 (大きいものが2枚、小さいものが3枚) 載り、1枚で複数の素子を一度に覆う構造 (資料は MCCP と表記する) が採られている。急速継手は演算トレー1枚あたり22個、交換機トレー1枚あたり6個である。
掛けると、冷却板は5 × 18 + 2 × 9 = 108枚、急速継手は22 × 18 + 6 × 9 = 450個になる。VR200 の1ラックあたり金額をこの個数で割ると、冷却板が1枚316.67ドル、急速継手が1個24.00ドルという平均単価が出る。
VR300 は冷却板216枚、急速継手808個である。冷却板はちょうど2.0倍、急速継手は1.796倍になる。冷却板が正確に2倍になるのは、資料が挙げた3つの変更点で説明が付く。演算素子の両面に冷却板を貼れば演算トレー側の枚数が2倍になり、交換機の演算素子が倍増すれば交換機トレー側の枚数も2倍になる。90枚が180枚、18枚が36枚で、合わせて216枚である。
なお、ヴェラ・ルービン世代の呼び方には注意がいる。当初は素子の数を数えた VR200 NVL144 という名前だったものが、封止単位で数える VR200 NVL72 に改められた。同じ製品を指す名前が途中で変わっているため、古い資料と新しい資料で数字を突き合わせるときは、どちらの数え方かを先に確かめる必要がある。
「58%増」と「103%増」は、まったく違う商売である
ここからが本稿の主題になる。搭載額の増加を、個数の増加と平均単価の変化に分ける。
図4 — 増加率を個数の寄与と単価の寄与に分けて計算し直す
冷却板は、個数が108枚から216枚へ2.0倍になる一方、平均単価は316.67ドルから250.00ドルへ21.1%下がる。2.0 × 0.79 = 1.579倍で、増加率は57.9%になる。表の「58%」と一致する。
急速継手は、個数が450個から808個へ1.796倍、平均単価が24.00ドルから27.08ドルへ12.8%上がる。1.796 × 1.128 = 2.026倍で、増加率は102.6%になる。表の「103%」と一致する。
同じ表の同じ列に並んでいるのに、2つの部品の商売は逆を向いている。冷却板は数量で伸び、1枚あたりの値段は下がる。急速継手は数量も単価も上がる。
冷却板の平均単価が下がる理由は、両面化で増えるものの中身にある。演算素子の裏面に付く板は表面側より小さく、交換機トレー側の板も演算トレーの大きい板より安い。単価の低い品目が構成に入るので、加重平均は下がる。1枚あたりの値段が上がる材料の話 (後述する銅ダイヤモンド) と、構成が安い側に寄る効果が同時に起きており、後者が勝っている。
この分解が実務でどう効くかを1つ挙げる。冷却板を作る会社の売上は「1ラックあたり5万4,000ドル × ラック台数」で伸びるが、1枚あたりの利幅は下がりうる。数量が伸びている局面で1枚あたりの値段が下がるのは、量産効果が価格に回っている証拠でもある。同じ58%でも、単価が上がって58%なのか、単価が下がって58%なのかで、利益率の見通しは変わる。1ラックあたりの金額だけを見ていると、この違いは出てこない。
冷却板の単価を動かす3つの材料
VR300 で冷却板が変わる点として、調査資料は3つを挙げている。両面化、銅ダイヤモンド複合材、交換機の演算素子の倍増である。
図5 — 冷却板の変更点3つと、急速継手の変更点2つ
両面化は、演算素子の片面だけでは受け取れる熱に上限があることへの対処である。基板を挟んで両側から熱を抜くので、枚数が2倍になる。
銅ダイヤモンド複合材は材料の置き換えである。銅の熱伝導率は約400ワット毎メートル毎ケルビン。ここにダイヤモンドの粒子を混ぜると、600から1,000まで上がる。学術論文では、ダイヤモンドを50体積%まで入れ、粒子の表面をタングステン系の被膜で処理した例で640という値が報告されている。熱膨張率が半導体に近いので、温度が上下しても反りにくいという利点もある。
難しいのは界面である。ダイヤモンドの粒子と銅は、本来なじまない。機械的に接しているだけの状態では界面で熱が止まり、複合材にした意味が薄れる。粒子の表面をどう処理するかで性能が決まるので、量産の歩留まりがそのまま単価に出る。宝石を扱ってきた会社が熱管理の材料として売り込んでおり、ダイヤモンドに新しい売り先ができた。
交換機の演算素子の倍増は、通信を束ねる側の話である。ラック内の72基を結ぶ交換機の素子が2倍になれば、その上に載る冷却板も2倍になる。交換機トレーは9枚あるので、18枚が36枚になる。
急速継手が2倍を超える理由は、点数だけではない
急速継手は、工具なしで抜き差しでき、抜いたときに水が漏れない構造を持つ配管の部品である。保守のたびにラックを止めて水を抜くわけにはいかないので、液冷では必ず入る。
調査資料は VR300 での変更点として、等級の引き上げと、交換機トレーの基板が1枚から2枚になることを挙げている。基板が増えれば配管の分岐が増え、継手の点数が増える。演算トレー側と合わせて450個から808個になる。
等級の引き上げは単価に出る。抜き差しの回数、抜いたときに漏れる量、通したときの圧力損失。これらの規格が上がると、内部の弁とシールの作りが変わる。平均単価が24.00ドルから27.08ドルへ12.8%上がったのは、この置き換えで説明が付く。
この部品は小さく、1個30ドルに満たない。ところが、継手1つの漏れがラック1本を止める。1ラックに808個入るということは、1個あたりの故障率が同じなら、ラック1本が漏れを起こす確率は前世代の1.8倍になるという意味でもある。点数が増えるほど、1個に求められる信頼性は上がる。値段が上がっているのは、この事情による。
1キロワットあたりでは値段が下がっている
搭載額を電力で割ると、別の姿が出てくる。
GB300 は1ラック135キロワットで冷却部品が3万9,631ドル、1キロワットあたり293.6ドル。VR200 は230キロワットで4万5,000ドル、1キロワットあたり195.7ドル。VR300 は600キロワットで7万5,880ドル、1キロワットあたり126.5ドルになる。
1ラックあたりの金額は91.5%増えるのに、1キロワットあたりでは57%下がる。冷やす量あたりの値段は、世代を追うごとに安くなっている。
部品を作る側から見ると、これは売上が電力の伸びより遅く伸びるという意味になる。ラックの電力が4.4倍になるあいだに、冷却部品の搭載額は1.9倍にしかならない。売上が伸びるかどうかは、単価ではなくラックの出荷台数で決まる。冷却板の平均単価が21%下がるという先ほどの分解と、方向は同じである。
代金がどこへ入るのか、決算から確かめる
調査資料は受け手を名指ししている。冷却板がアジア・ヴァイタル・コンポーネンツ、急速継手がフォシテック (5割超を握る)、ロテス、フォックスコン・インターコネクト。ラックを組む側が鴻海精密工業とスーパー・マイクロ・コンピューターである。
図6 — 調査資料が挙げた受け手と、公開されている決算から見た規模
冷却板は納入区分が分かれており、区分Aにはアジア・ヴァイタル・コンポーネンツのほかに3社が名を連ねる。区分は演算装置の設計側が決めるもので、どの区分に何社を入れるかで価格の下がり方が変わる。1社に寄せれば供給が止まったときにラックが作れなくなり、増やせば1枚あたりの値段が下がる。冷却板の平均単価が21%下がるという先ほどの分解は、区分Aに4社が並んでいる事実と地続きになっている。急速継手ではフォシテックが GB200 と GB300 の交換機向けで主力の座にあり、2026年に月産300万個の能力を目標に置く。ロテスとフォックスコン・インターコネクトは検証段階を経て量産に入りつつある。
冷却板と急速継手の外側には、もう1つの層がある。冷却水をラックに配る分配装置と、天井や床下を走る配管、そして建屋側の冷却塔である。この層は搭載額の表には入らないが、ラックの電力が上がれば同じだけ増える。直接液冷の設計は素子に貼る冷却板から1メガワット級の冷却塔まで一続きで組まれており、1ラック227キロワットを前提に寸法が決められている。液冷の普及率は2025年に2割を超えたとされ、ここから先は普及率ではなく1ラックあたりの搭載額で伸びる局面に移る。
規模は決算で測れる。ヴァーティブの2025年12月期は売上高102億2,990万ドル、営業利益18億2,970万ドルで営業利益率17.9%。研究開発費4億4,170万ドル、設備投資2億2,000万ドルである。モディーンの2026年3月期は売上高31億8,110万ドル、営業利益3億4,240万ドルで10.8%。スーパー・マイクロ・コンピューターの2026年6月期は売上高390億6,307万ドル、営業利益27億7,049万ドルで7.1%、粗利益率は10.8%である。
ラック一式を組む側の粗利益率が1割前後であるのに対し、冷却の装置を作る側は営業利益率で17.9%を取っている。同じ供給網の中で、どこに立つかで利幅が倍ほど違う。1ラック7万5,880ドルの冷却部品は、組立を通り抜けて部品側に落ちる金額である。
日本側は素材と水冷モジュールで入っている
日本の会社はこの分野のどこにいるのか。有価証券報告書と設備投資の開示を当たると、位置がはっきりする。
図7 — 古河電気工業の投資、TDKの買収、EDINETの語数、そして素材の規模
古河電気工業 (5801)は2026年3月30日、データセンター向けの水冷モジュールと空冷ヒートシンクの生産能力増強を決めたと開示した。投資額は約550億円で、内訳は水冷モジュールが約510億円、空冷ヒートシンクが約40億円である。
拠点は3か所。フィリピンのラグナにある主力工場の水冷モジュール工場を拡張し、タイのアユタヤに水冷モジュールの新工場を設ける。中国の蘇州にある拠点では空冷ヒートシンクの製造設備を増強する。量産開始は空冷ヒートシンクが2026年7月、水冷モジュールがフィリピンで2027年1月、タイで2028年1月の予定である。
この開示には、報道であまり触れられていない一文が入っている。2024年度以降の水冷モジュールの増産に係る投資総額は、今回を含めて約740億円になるというものである。2024年7月に平塚工場とフィリピンに新設、2025年11月にフィリピンの拡張と平塚の増強、そして今回。3回に分けて積み上がった数字で、550億円は3回目にあたる。
売上計画も書かれている。水冷モジュールの売上は2027年度に1,000億円以上、2030年度に4,000億円。同社の2026年3月期の有価証券報告書を見ると、機能製品セグメントの設備投資97億4,300万円が主にデータセンター向け水冷モジュールの新工場建設によるもので、全社の設備投資254億3,200万円の4割弱を占める。同報告書は、フィリピンの工場拡張と平塚の設備増強について「2026年9月の量産開始に向けた準備を進めた」と書いている。
ここで、冒頭に挙げた受け手の話に戻る。蘇州の拠点は、台湾の冷却板最大手との合弁会社である。2003年に古河電工が35%、アジア・ヴァイタル・コンポーネンツが65%を出資して発足した。調査資料が冷却板の受け手として名指しした会社と、日本の上場企業が20年以上前から同じ工場を持っている。
TDKが3億1,000万ドルで買ったもの
もう1社、有価証券報告書に手掛かりがある。TDK (6762)は2026年6月10日、米国サンディエゴのファブリック8ラブズを買収すると発表した。同社は電気化学的な金属積層造形という工法を持ち、熱管理に使う高性能な金属部品を作る。データセンターでは、この工法で作った液冷の製品が、競合する製品に比べて演算素子の温度を1キロワットあたり最大7度下げるとされる。
報道は「最大4億ドル」と伝えた。TDKの有価証券報告書は違う数字を書いている。取得の対価は現金3億1,000万ドルである。差額の9,000万ドルは、買収契約に定められた条項にもとづく価格調整と、複数年にわたる成果連動の支払いにあたる。取得は2027年3月期中の予定で、議決権付資本持分の100%を取得する。
同報告書は買収の理由として、データセンター関連事業の拡大を加速し、液冷方式で重要になる熱管理の部品を数年以内に「提供できるようになる」こと、そしてTDKの受動部品への応用も検討することを挙げている。液冷という語は、この会社の有価証券報告書の中でこの1か所にしか出てこない。事業として立ち上がる前の段階であることが、語数からも分かる。
EDINETで28社を数える
EDINETから2026年6月提出の有価証券報告書28社を取得し、本文の語数を機械で数えた。
水冷と液冷に当たる語を最も多く書いたのは古河電気工業で、水冷が5回、データセンターが38回、継手が9回、銅が39回である。フジクラ (5803)は液冷3回、継手26回で継手の記載が28社で最も多く、生成AIが16回、データセンターが28回だった。
素材の側では、JX金属 (5016)が銅157回でデータセンターが15回、生成AIが10回。住友金属鉱山 (5713)が銅142回、三菱マテリアル (5711)が銅88回である。冷却板の主材料は銅なので、この3社は素材の入口に立っている。
システムとして冷却を売る側にも日本の会社はいる。ニデック (6594)はサーバー向けの水冷モジュールをタイで作り、ダイキン工業 (6367)は有価証券報告書でデータセンターに7回触れている。ただし、この2社の報告書に水冷や液冷という語が並ぶ回数は、古河電気工業とフジクラより少ない。
一方で、冷却板や急速継手という語をそのまま書いた会社は28社に1社もない。日本の上場企業がこの分野に入る経路は、いまのところ素材か、モジュールとしての水冷装置か、買収による技術の取得である。台湾勢が握っている部品そのものの層には、まだ名前が出てこない。
素材の値段は上がっている。銅の国際価格は2019年1月の1トン5,939.10ドルから2026年6月の13,552.04ドルへ128.2%上がった。冷却板の平均単価が250ドルまで下がるという先ほどの数字は、この材料費の上昇を吸収したうえでの水準になる。
日本の銅の規模も押さえておく。経済構造実態調査によれば、銅伸銅品の出荷は2022年に45万5,309トン・6,252億9,800万円で、生産している事業所は105。前年の43万2,023トン・5,325億5,600万円から、数量が5.4%、金額が17.4%増えた。単価はトンあたり123万3,000円から137万3,000円へ上がっている。黄銅伸銅品は数量が4.2%減り、金額は7.5%増えた。電気銅は121万8,006トン・1兆5,004億1,100万円で、生産している事業所はわずか8である。
古河電工が掲げる2030年度の水冷モジュール4,000億円は、この銅伸銅品の出荷額6,253億円の64%にあたる規模になる。1社の1製品群の計画が、1つの品目の産業規模に近づく。6月30日の円ドル相場162.61円で換算すると、VR300 1ラックあたりの冷却板5万4,000ドルは878万円なので、4,000億円はおよそ4万6,000ラック分に相当する。
現場で使える読み方
搭載額の予想を読むときに、本稿が実際に使った手順を4つに整理しておく。
第1に、掛け算を必ずやり直す。個数 × 平均単価が公表された金額に一致するかを見る。今回は急速継手の側で64ドルずれ、割り戻すと平均単価が27.08ドルだと分かった。表示された整数をそのまま使うと、後の分解が狂う。
第2に、増加率から前世代を逆算する。54,000 ÷ 1.58 と 21,880 ÷ 2.03 で、VR200 の水準が出る。公表資料が「約3万4,200ドル」としか書かない場面でも、増加率の側から小数点以下まで復元できる。
第3に、個数と単価に分ける。個数の比と単価の比を掛けて、公表された増加率に戻るかを確かめる。戻れば分解は正しい。冷却板は2.0 × 0.79、急速継手は1.796 × 1.128で、それぞれ58%と103%に戻った。ここで初めて、冷却板が数量の商売で急速継手が数量と単価の商売だと分かる。
第4に、電力で割る。1ラックあたりの金額だけを見ると右肩上がりだが、1キロワットあたりでは293.6ドルから126.5ドルへ下がっている。搭載額が伸びても、冷やす量あたりの単価が下がっていれば、売上はラックの出荷台数に依存する。伸びている数字がどちらの意味で伸びているのかは、この割り算で分かれる。
この4つは、部品の搭載額を扱うどの資料にも当てはまる。分配装置、配管、電源、基板でも同じである。
これから確かめる4つの数字
第1は、冷却板の平均単価である。250ドルという水準が VR300 の量産で維持されるのか、それとも競争でさらに下がるのか。区分Aに4社が並んでいる以上、1枚あたりの値段は下がる方向に圧力がかかる。
第2は、急速継手の等級の中身である。27.08ドルという平均単価は、どの規格の継手がどれだけ入るかで動く。フォシテックの月産300万個という能力目標が実際の出荷にどう乗るかも、ここに出る。
第3は、古河電気工業の水冷モジュールの売上である。2027年度に1,000億円以上という計画に対し、四半期ごとの機能製品セグメントの数字がどう積み上がるか。フィリピンの量産が2026年9月と2027年1月の2段階で立ち上がるので、2027年3月期の下期に最初の判断材料が出る。
第4は、TDKの買収の完了時期と、そこから出てくる製品である。2027年3月期中に取得する予定で、有価証券報告書は「数年以内に提供できるようになる」と書いている。液冷という語が1回しか出てこない報告書が、来年何回になるか。それがこの会社の本気度を測る、いちばん手軽な指標になる。
冷やす仕事は、これまで機器の付属品として扱われてきた。1ラック7万5,880ドルという金額は、演算装置1台の値段には遠く及ばない。それでも、この部品が1個でも漏れれば、上に載っている数億円が止まる。値段の小ささと、止めたときの損害の大きさが釣り合っていないところに、この産業の当面の利益が置かれている。
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