第VI部 ツール | AI計算資源・大規模モデル 体系解説

主要AIツール10本の教科書 — 仕組み・提供元・料金・実体

ChatGPTClaudeGeminiCopilotPerplexityCanvaGrammarlyMidjourneyZapierReplitの10本を、仕組み・提供元の資本・料金・上場企業の開示に出た回数で解剖する。139本の一覧から米当局の提出書類で実体を確かめた順に採った。

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第VI部 ツール — 10本をどう選び、何を見るか

10本の選び方は、人気ではなく上場企業の開示への出現回数

出回っている「AIツール100選」の類いは、数えると見出しの数字に届かず、同じツールが別名で2度並び、2年半前の呼び名で止まっている。本誌は2つの一覧を1件ずつ転記して139本に絞り、そのうち95本を米証券取引委員会 (SEC) の提出書類の全文検索に当てた。上場企業が自社の開示に書いた回数が多い順に10本を採ったのが本章である。検索の戻り値は1万件で頭打ちになるため、人名や星座名と同じ綴りの Claude と Gemini は「1万件以上」として扱う。

各ツールは4つの面で見る。仕組み (どの計算で動いているか)、提供元と資本 (誰が作り、上場しているか、いくらで評価されているか)、料金 (定額か従量かライセンス数か)、実体の証拠 (上場企業の開示に出た回数)。数字の取得日は2026年9月12日で、会社発表と当局への提出書類を優先し、外部集計は「外部集計」と明記した。より段階を分けた学び方はAIアカデミー AIツール篇 (基礎・高級・投資者視点の3段) にある。

順位製品提供元区分上場SEC提出書類の出現件数
2ChatGPTオープンAI対話型AI非上場2,827件
Claudeアンソロピック対話型AI・開発支援非上場1万件以上 (検索上限)
Geminiアルファベット (グーグル)対話型AI・検索統合上場 (GOOGL)1万件以上 (検索上限)
3Copilotマイクロソフト業務ソフト組み込みAI上場 (MSFT)1,407件
5PerplexityパープレキシティAI検索非上場310件
1Canvaキャンバ設計・資料作成非上場4,165件 (1位)
4Grammarlyグラマリー (スーパーヒューマン・プラットフォーム)文章校正・執筆支援非上場512件
7Midjourneyミッドジャーニー画像生成非上場・外部資金なし89件
6Zapierザピアー業務自動化非上場115件
8ReplitレプリットAI開発環境非上場65件

出現件数は本誌 #4277 の検索 (2026-09-12)。「—」は検索上限1万件に達したもの。順位は件数順で、上限に達した2本は順位を付けない。

ChatGPT オープンAI

対話型AI非上場SEC提出書類 2,827件

文章で問いかけると、大規模言語モデルが文章・表・コードで答える対話の窓口。10本のなかで最も多くの人が使う。

仕組み — 何が動いているか

入力された文章をトークン (日本語で1〜2文字) に刻み、次のトークンを確率で1つずつ選んで文章を組み立てる。この確率は数千億の重み (パラメータ) が決めており、重みは事前学習で固定されている。会話の途中で新しく学ぶことはなく、覚えているように見えるのは「これまでの会話全文」を毎回読み直しているからである。

2026年8月6日から、無料利用者の既定モデルは GPT-5.6 Luna になった。有料の Plus は推論に時間をかける GPT-5.6 Sol を使い、Deep Research (資料を集めて報告書を書く機能) やコード実行環境 Codex が開く。同じ「ChatGPT」でも、料金の段で動いているモデルが違う。

2022年11月30日の公開から3年半で、月間利用者は10億人 (2026年6月)、週間は約9億人に達した。1つの製品としては人類史上最速の普及で、この規模が第4節の「基盤モデルを持つ会社の値決め」を左右している。

提供元と資本

オープンAIは2015年12月に非営利団体として設立され、2019年に営利子会社を置いた。株式は上場しておらず、マイクロソフトが最大の出資者。2026年8月時点の年換算売上高は約400億ドルと報じられ、2月時点の250億ドルから半年で6割増えた。

料金

無料 (GPT-5.6 Luna、文章の対話は無制限、広告あり)、Plus 月20ドル (広告なし・GPT-5.6 Sol)、Pro 月100ドル (Plus の5倍の利用枠) と月200ドル (20倍・Deep Research 約250回)。企業向けはライセンス数で契約する。

実体の証拠

2つのAIツール一覧に載った139本を米当局の提出書類で検索したところ、ChatGPT は2,827件で Canva に次ぐ2位だった。上場企業が自社の開示に書く名前として、対話型AIではこれが基準になっている。

出典: オープンAI 料金頁・公開資料 (2026-09-12 取得) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12) / 報道: 年換算売上高400億ドル (2026年8月)

Claude アンソロピック

対話型AI・開発支援非上場SEC提出書類 1万件以上 (検索上限)

オープンAIを離れた研究者が2021年に作った対話型AI。長い文書の読み込みと、コードを書く用途で企業の採用が多い。

仕組み — 何が動いているか

基盤は Claude という系列の大規模言語モデルで、2026年9月時点の現行世代は Opus 5 (最上位)・Sonnet 5 (標準)・Haiku 4.5 (軽量) に加え、Opus の上に Fable 5.1 を置く4段構成である。段が上がるほど1回の推論に使う計算量が増え、料金も上がる。

ほかの対話型AIと違うのは「憲法AI」と呼ぶ訓練法で、人間の評価者が1つずつ採点する代わりに、あらかじめ書いた原則の文書に照らしてモデル自身が答えを修正する。これで有害な出力を減らしつつ、評価者の人件費を抑える。

開発者向けには Claude Code という端末上の道具があり、リポジトリ全体を読んで修正案を出す。企業向けの Claude for Enterprise と合わせ、収益の中心は対話の窓口ではなく API の従量課金にある。

提供元と資本

アンソロピックは2021年にダリオ・アモデイ氏ら7人が設立した米サンフランシスコの非上場企業。アマゾンアルファベットが大口の出資者で、2026年初めの年換算売上高は約140億ドル (2025年半ばの30億ドルから約4.7倍) と報じられた。

料金

API は100万トークンあたり入力/出力で Haiku 4.5 が1ドル/5ドル、Sonnet 5 が2ドル/10ドル (2026年9月1日に予定された3ドル/15ドルへの改定は見送り)、Opus 5 が5ドル/25ドル、Fable 5.1 が10ドル/50ドル。個人向けは無料、Pro 月20ドル (年払いで実質17ドル)、Max 月100ドル。

実体の証拠

米当局の提出書類の全文検索では1万件の上限に達した。Claude は人名と同じ綴りのため件数は測れないが、上限に達したこと自体が「上場企業の開示に頻出する語」であることを示す。

出典: アンソロピック 料金頁 (2026-09-12 取得) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12) / 報道: 年換算売上高140億ドル (2026年初め)

Gemini アルファベット (グーグル)

対話型AI・検索統合上場 (GOOGL)SEC提出書類 1万件以上 (検索上限)

グーグルの検索・メール・文書に組み込まれた対話型AI。2024年2月8日に Bard から改名し、名前が古い一覧では両方が別物として数えられている。

仕組み — 何が動いているか

モデルは Gemini 3 系列で、2025年11月18日に Gemini 3 Pro と、より長く考える DeepThink が出た。2026年に入って 3.1 Pro、9月には自律的に作業を進めるエージェント向けの 3.8 Flash が加わった。Pro は精度、Flash は速さと単価の低さを取る、という2本立てが一貫している。

最大の特徴は「検索との一体化」で、検索結果の上に要約を出す AI Overviews は月25億人が目にする。対話型AIとしての Gemini アプリと、検索の一部としての Gemini は、同じモデルを別の場所で使っている。

グーグルは自社のAI半導体 TPU で学習と推論を回すため、エヌビディアGPU を買う競合より計算の原価を低く抑えられる。この差は第III部の収益構造で扱ったトークン原価に直接効く。

提供元と資本

提供元のアルファベットはナスダック上場 (GOOGL)。2026年7月22日の決算説明で Gemini アプリの月間利用者は9億5,000万人、法人向け Gemini Enterprise の有料ライセンス数は2,800社超で800万席超と示した。

料金

Google AI Pro 月19.99ドル (5TBの保存容量、Gmail・Docs での利用、YouTube Premium Lite を同梱)、Google AI Ultra 月200ドル (250ドルから引き下げ)、開発者向けに月100ドルの段を新設。API は Flash が最も安い。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索は1万件の上限に達した。Gemini は星座名と同じ綴りで件数は測れないが、上場企業としてアルファベット自身が四半期ごとに利用者数を開示しており、実体は当局の書類で直接確かめられる。

出典: アルファベット 2026年第2四半期決算説明 (2026-07-22) / グーグル 料金頁 (2026-09-12 取得) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Copilot マイクロソフト

業務ソフト組み込みAI上場 (MSFT)SEC提出書類 1,407件

Word・Excel・Teams などの業務ソフトに組み込まれた対話型AI。2023年11月15日に Bing Chat から改名した。

仕組み — 何が動いているか

自社のモデルとオープンAIのモデルを組み合わせ、利用者の文書・メール・会議記録を読んで答える。鍵は「利用者が見てよい情報だけをモデルに渡す」権限の仕組みで、Microsoft 365 の既存の権限設定をそのまま使う。企業が導入しやすい理由はモデルの性能より、この権限の引き継ぎにある。

同じ Copilot の名でも、Microsoft 365 Copilot (業務ソフト用)・GitHub Copilot (コード用)・Copilot Studio (自社のエージェントを組む道具)・Security Copilot は別製品で、料金も別である。一覧で「Copilot」と1つに数えると、この4つが混ざる。

2026年に入ってマイクロソフトは、複数のエージェントを組織で管理する Agent 365 を加えた。1人1台の補助ではなく、部署ごとに何十体ものエージェントを動かす前提へ設計が移っている。

提供元と資本

マイクロソフトはナスダック上場 (MSFT)。2026年4月29日の第3四半期 (2026年1〜3月) 決算で、AI事業の年換算売上高が370億ドル (前年比123%増) を超え、Microsoft 365 Copilot の有料ライセンス数は2,000万を超えたと示した。会社が「AI」を独立した事業として数字で開示した最初の例にあたる。

料金

Microsoft 365 Copilot は1人月30ドルの追加料金 (300人未満の組織向け Business は定価21ドル、2026年9月30日まで18ドルの導入価格)。土台の Microsoft 365 の料金が別に要るため、実際の負担は1人月30〜90ドルになる。個人向けの Copilot Pro (月20ドル) は2025年末に販売を終え、既存の契約者も2026年8月1日で終了した。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で1,407件、上位3位。上場企業が自社の開示に「Copilot を導入した」と書く例が多く、業務ソフトへの組み込み型では最も実体が確かめやすい。

出典: マイクロソフト 2026会計年度第3四半期決算 (2026-04-29) / マイクロソフト 料金頁 (2026-09-12 取得) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Perplexity パープレキシティ

AI検索非上場SEC提出書類 310件

問いに対して、その場でウェブを検索し、出典を示しながら答えを書く「答えを返す検索エンジン」。

仕組み — 何が動いているか

仕組みは検索拡張生成 (RAG) と呼ばれ、①問いを検索語に変換して複数の検索を走らせ、②取れた頁を読み、③引用番号を付けて要約する、の3段で動く。答えの根拠が頁として示されるため、対話型AIに多い「もっともらしいが出典のない答え」を減らせる。

基盤モデルは自社で学習せず、オープンAI・アンソロピック・グーグルなどのモデルを問いの種類で切り替える。自社で持つのは検索の索引と、どの頁を信じるかの順位付けである。

2025年7月9日に自社ブラウザ Comet を出し、頁の要約や予約などの作業を代行する機能を載せた。検索の入り口を自社で持つ狙いで、グーグルとの正面の競合になる。

提供元と資本

2022年にアラビンド・スリニバス氏ら4人が米サンフランシスコで設立した非上場企業。2026年1月9日の資金調達で評価額230億ドル、2026年3月時点の年換算売上高は4億5,000万ドル超 (外部集計)。

料金

無料、Pro 月20ドル、Max 月200ドル (Comet の先行利用を含む)。法人向けはライセンス課金。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で310件。同じ「検索」を名乗るツールのなかでは唯一、上場企業の開示に繰り返し出ている。

出典: パープレキシティ 公開資料 (2026-09-12 取得) / 外部集計: 評価額230億ドル (2026年1月)・年換算売上高4億5,000万ドル (2026年3月) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Canva キャンバ

設計・資料作成非上場SEC提出書類 4,165件 (1位)

ブラウザで資料・広告・動画を作るオーストラリア発の設計ツール。10本のなかで上場企業の開示に最も多く出た。

仕組み — 何が動いているか

もとは雛形 (テンプレート) に文字と写真を置き換える道具で、生成AI以前から月間利用者が1億人を超えていた。2023年に加えた Magic Studio は、文章生成 (Magic Write)・雛形生成 (Magic Design)・背景の消去・画像生成をまとめた機能群で、2026年初めまでの利用回数は累計100億回、月8億回に達した。

技術の核心は「生成」より「配置」にある。生成した画像や文章を、印刷や画面の寸法に合った雛形へ自動で収める部分が、専門の設計ソフトを使わない人の時間を縮めている。

2024年にプロ向け設計ソフトの Affinity を約3億8,000万ドルで買収し、アドビの Illustrator・Photoshop に相当する製品群を手に入れた。無料の入口から専門用途まで、1社で階段を作っている。

提供元と資本

2013年にメラニー・パーキンス氏、クリフ・オブレクト氏、キャメロン・アダムズ氏がシドニーで公開した非上場企業。2025年末の年換算売上高は約40億ドル (前年比43%増)、2026年初めの年換算は約55億ドル、月間利用者は2億4,000万人超。評価額は2025年8月の株式売却で420億ドル、社内評価で650億ドル (いずれも報道)。

料金

無料、Pro 月15ドル前後 (地域で異なる)、Teams はライセンス課金、企業向けは個別見積もり。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で4,165件、139本のなかで1位。上場企業の開示に「Canva を使う」と書かれる回数が ChatGPT より多く、業務への浸透では対話型AIより先行している。

出典: キャンバ 公開資料 (2026-09-12 取得) / 報道: 年換算売上高40億ドル (2025年末)・評価額420〜650億ドル (2025年8月) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Grammarly グラマリー (スーパーヒューマン・プラットフォーム)

文章校正・執筆支援非上場SEC提出書類 512件

英文の誤りを直す校正ツールから、メール・文書・AIエージェントを束ねる業務基盤へ転じた。会社名は2025年10月29日にスーパーヒューマン・プラットフォームへ改めた。

仕組み — 何が動いているか

出発点は文法と綴りの検査で、規則に基づく検査と、大量の文章から学んだ確率的な検査を重ねて誤りを指摘する。生成AIの時代に入り、指摘するだけでなく言い換えを書く方向へ広げた。

2024年12月に共同作業の文書ツール Coda を買収し、その創業者シシル・メロトラ氏が2025年初めに最高経営責任者に就いた。2025年7月にはメールソフトの Superhuman を買収し、10月に会社名そのものを Superhuman に変えた。校正ツールの名は製品名として残る。

現在の製品は4つ: Grammarly (校正)、Mail (メール)、Coda (文書)、Superhuman Go (エージェント群)。文章が生まれる場所すべてに同じAIを差し込む設計で、対話型AIの窓口を持たない代わりに「書く場所」を押さえる。

提供元と資本

2009年にウクライナ出身のマックス・リトビン氏、アレックス・シェフチェンコ氏、ドミトロ・リデル氏が設立し、約8年は外部資金なしで運営した。2021年の評価額130億ドル。2025年5月29日にジェネラル・カタリストから10億ドルを、株式を渡さない売上連動の成長資金として調達した。年間売上高は約7億ドル、週間利用者4,000万人 (報道)。

料金

無料、Pro 月12ドル前後 (年払いで割引)、Enterprise はライセンス課金。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で512件、4位。校正ツールとして企業のIT調達に古くから載っているため、生成AI以前からの実体を持つ。

出典: グラマリー 発表資料: 10億ドルの成長資金 (2025-05-29)・社名変更 (2025-10-29) / 報道: 年間売上高7億ドル・週間利用者4,000万人 / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Midjourney ミッドジャーニー

画像生成非上場・外部資金なしSEC提出書類 89件

文章から画像を生成する専業。外部の出資を一切受けず、少人数で運営される点で10本のなかで最も異質である。

仕組み — 何が動いているか

仕組みは拡散モデルで、雑音だけの画像から出発し、文章の指示に合うように雑音を少しずつ取り除いて絵に収束させる。1枚を作るのに数十段の計算を繰り返すため、対話型AIの1回の応答より計算量が多い。

初期は Discord (チャットの場) の中でしか使えず、自社の画面を持たなかった。現在はウェブ版があり、V6.1 が既定、V7 が公開試験中で、2026年は動画生成へ広げている。

2025年8月22日にメタと提携し、ミッドジャーニーの「見た目の質」に関する技術をメタの将来のモデルへ使用許諾した。自社は売らず、技術を貸す形で大手と組んだ。

提供元と資本

2022年にデビッド・ホルツ氏が米サンフランシスコで設立。外部資金を受けず、年間売上高は約3億ドル (外部集計、5億ドルとする推計もある)、従業員は40〜60人 (外部集計で幅がある)。上場の予定は示していない。

料金

定額制のみで、Basic 月10ドル、Standard 月30ドル、Pro 月60ドル、Mega 月120ドル (年払いで2割引)。無料の段は廃止されている。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で89件。画像生成の専業では最多だが、対話型AIや設計ツールと比べると1桁少ない。上場企業の開示は「画像を作る」道具の名を書くことが少ない。

出典: ミッドジャーニー 公開資料・料金頁 (2026-09-12 取得) / メタとの提携発表 (2025-08-22) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Zapier ザピアー

業務自動化非上場SEC提出書類 115件

異なるソフト同士をつないで「Aが起きたらBをする」を組む自動化ツール。8,000超のソフトに対応する。

仕組み — 何が動いているか

基本の単位は Zap と呼ぶ流れで、引き金 (例: 表に1行増えた) と動作 (例: 通知を送る) をつなぐ。ソフトごとの API の違いを吸収する接続部品を1万近く持つことが、この会社の資産である。

2025年以降、生成AIで判断する Zapier Agents を加えた。ただし創業者のウェード・フォスター氏は、毎回モデルに考えさせるエージェントより、手順が決まっている流れは決定論的な自動化で回すほうが安く確実だと繰り返し述べている。「エージェントより流れ図」という立場は、この分野で珍しい。

社内でも自社の道具を使い、2026年時点で従業員約800人より多くのエージェントが動いていると公表した。

提供元と資本

2011年にウェード・フォスター氏、ブライアン・ヘルミグ氏、マイク・クヌープ氏が米ミズーリ州コロンビアで設立し、外部資金は初期の約140万ドルだけで成長した。2021年1月の株式売却で評価額50億ドル。2026年1〜3月期に年換算売上高4億2,000万ドルを超えた (外部集計)。

料金

無料 (月100回まで)、Professional 月49ドル (月2,000回)、Team・Enterprise はライセンス数と回数で課金。AIエージェントは別枠の従量課金。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で115件。少額の資金で長く続いた会社らしく、上場企業の開示にも地味に長く出ている。

出典: ザピアー 料金頁・公開資料 (2026-09-12 取得) / 外部集計: 年換算売上高4億2,000万ドル (2026年1〜3月期) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

Replit レプリット

AI開発環境非上場SEC提出書類 65件

ブラウザの中でコードを書き、動かし、公開までできる開発環境。2025年以降は「文章で頼むとアプリを作る」エージェントが主力になった。

仕組み — 何が動いているか

土台はブラウザ上の実行環境で、利用者ごとに小さな仮想計算機を用意し、そこでコードを動かす。AI以前は教育用途が中心だった。

Agent 3 (2025年9月) は自律的に設計・実装・試験を進める道具として出て、Agent 4 (2026年3月11日) は画面の設計とコードを1つの場所で扱い、コードを書かない利用者が動くソフトを作れることを掲げた。「コードを書く補助」から「作る人を増やす」へ位置づけを変えた。

対話型AIのモデルは自社で持たず、複数の外部モデルを切り替えて使う。自社の価値は実行環境と、作ったものをそのまま公開できる導線にある。

提供元と資本

2016年にアムジャド・マサド氏が設立し、2024年に米サンフランシスコからフォスターシティへ本社を移した。2026年3月11日に4億ドルを調達し評価額90億ドル (6か月前の30億ドルから3倍)、年換算売上高は2億4,000万ドル、年末に10億ドルを目標とする (会社発表・報道)。

料金

Starter 無料、Core 月20ドル前後 (年払いで割引)、Teams ライセンス課金。エージェントの利用は使った計算量で別に課金される。

実体の証拠

米当局の提出書類の検索で65件、10本のなかで最少。会社の規模が急に大きくなった時期が2025〜26年で、上場企業の開示に名前が載るには時間差がある。

出典: レプリット 発表資料: 4億ドル調達 (2026-03-11)・Agent 4 (2026-03-11) / 本誌 #4277 SEC全文検索 (2026-09-12)

10本を横に並べると、3つの型に分かれる

第1の型は基盤モデルを自社で持つ4本 (ChatGPT・Claude・Gemini・Copilot)。学習に使う計算資源を自ら買うか作るかしており、料金はトークン (API) とライセンス数 (法人) の2本立てになる。第III部で扱ったトークン原価が、そのまま粗利益率を決める。 第2の型は他社のモデルを借りて、自社は入口と作業の場を持つ4本 (Perplexity・Replit・Zapier・Grammarly)。モデルの原価は外部へ払い、自社の価値は検索の索引・実行環境・接続部品・書く場所にある。モデルの値下げは追い風、値上げは向かい風になる。 第3の型は生成を1つの機能として取り込んだ既存のツール2本 (Canva・Midjourney)。Canva は雛形に生成を足し、Midjourney は生成そのものを商品にするが、いずれも対話の窓口を持たず「作る場所」で稼ぐ。

上場企業の開示に出る回数は、この型と対応しない。1位は設計ツールの Canva (4,165件) で、対話型AIの ChatGPT (2,827件) より多い。企業が「使っている」と書くのは、業務の手順に組み込まれた道具であって、最も高性能なモデルではない。投資家がAIの普及を測るとき、モデルの評価指標より、この出現回数のほうが実態に近い。

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