GEOで確かめられる数字は3つしかない。アドビがSemrushに払った19億ドル、Profoundの企業評価10億ドル、網信弁が処分した違反AI製品1万4,000件である。出回る市場規模と入札額は、突き合わせると互いに合わない。
対象は、中国の生成エンジン最適化 (GEO) 業界を実証的に描いた調査報告『中国GEO生態実証全景2026』と、その著者による解説記事である。GEOとは、ChatGPTや豆包のような生成AIの答えの中に自社の名前や製品が出るように働きかける手法で、日本ではLLMOやAIOとも呼ばれる。報告は業界の数字を1本ずつ原典に当て、確かめられないものは確かめられないと書く。本稿はその数字を米証券取引委員会 (SEC) の提出書類、中央網信弁の公告、日本の政府統計と有価証券報告書に当てて、どこまで持つかを試した。
業界地図で確かめられた3つの数と、GEOの5つの関門
報告の表紙に置かれた数字は、アドビによるSemrushの買収額19億ドル、Profoundの企業評価10億ドル、中央網信弁が第1段階で処分した違反AI製品1万4,000件の3つである。
図1 — 表紙の3つの数字。資金は本当に入り、規制も本当に動いた
3つとも一次資料で裏が取れる。Semrushの委任状説明書 (2025年12月29日) は、1株12ドルの現金対価が契約前日の終値に77.5%を上乗せした水準だと記す。アドビの2026年6月15日提出の四半期報告書は、取得を4月28日に完了し、対価は18億7,000万ドルで主に現金だったと書き、買収理由にSEO、生成エンジン最適化、エージェント検索最適化の3つを並べる。前年の年次報告書は自社のAdobe LLM Optimizerを「生成エンジン最適化の製品」と定義していた。Profoundの9,600万ドルのCラウンド (Lightspeed主導、累計1億5,450万ドル、企業顧客700社超) はFortuneが2月24日に報じ、網信弁は7月6日に第1段階の処分を公表した。網信弁は4月30日の実施通知で「GEO技術を使った悪意のあるマーケティング」をAIデータ汚染 (学習データへの毒入れ) の手口の1つに列挙している。
報告が業界の見取り図に使うのは、入り口から取引までの連鎖図ではなく5つの関門である。AIがコンテンツを取得できるか (到達)、モデルがそれを信じるか (信頼)、利用者の質問と関係があるか (合致)、実際に答えに書かれるか (採用)、答えに入って商売になるか (成約) の5段を通り、直列だからどれか1つがゼロなら全体がゼロになる。
図2 — 5つの関門と、証拠の強さ・規制リスクの2つの物差し
業界のサービスの大半は第4関門に集中し、記事をAIの情報源に流し込んで課金する。企業が詰まる場所はしばしば第1か第2の関門で、だから企業は「払ったのにAIに出ない」と感じる。報告はすべての手法に、証拠の強さ (実証あり・要修正・根拠なし) と規制リスク (高・中・低) の2つの物差しを当てる。重ねると、いま最も稼げる手法は証拠が最も強く規制リスクも最も高いマス目にあり、リスクが最も低いマス目では中国のサービス会社の能力が最も薄い。
入り口は豆包3億8,200万に集まり、クリックは69%がゼロになった
QuestMobileが2026年7月14日に出した6月の月間利用者は、豆包が3億8,200万で前年同月比172%増、通義千問が1億6,700万、DeepSeekが約1億3,000万で上位3社のうち唯一の減少 (約2割減)、騰訊元宝が4,984万、Kimiが834万で4四半期連続の減少だった。Kimiをいまも主要な監視対象の入り口に残す提案書は古い資料を写している。逆に落とされがちな入り口が2つある。アリババの検索アプリ「クォーク」はこの集計に入らず、アリババは2025年3月13日に2億ユーザーと発表した。微信の「捜一捜」は月間利用者8億超で、2025年2月15日にDeepSeek R1を接続してAI検索を始めた。
図3 — 中国はAIネイティブアプリ上位5つ、海外は10億級が3つ
海外では10億級の入り口が3つ出た。ChatGPTの週間利用者は2026年7月31日に10億超、Google AI Modeの月間利用者は5月19日に10億 (1年前は米国とインドのみで1億)、Geminiアプリの月間利用者は8月11日に10億。AI Overviewsは2025年7月23日の決算で20億だった。
検索の総量は崩れていない。崩れたのは、結果からサイトへ飛ぶ1回のクリックである。Pew Research Center (2025年7月22日、米国成人900人・68,879検索) では、AI要約が出た結果ページで通常のリンクをクリックした割合は8%、出なかった場合は15%、要約内の引用リンクをクリックしたのは1%だった。Similarwebの集計ではGoogleのゼロクリック検索の比率が2024年5月の56%から2025年5月の69%へ上がった。Ahrefsは1位ページのクリック率の減少幅を、2025年4月調査の34.5%減から12月データの58%減へ広がったと測り、1位のクリック率そのものは0.073%から0.016%へ落ちた。要約の無い対照群も下がっており、AIは最大の原因だが唯一ではない。
図4 — クリックは落ち、来た人は高く売れる。予測と現実の差も
来る人は減り、来た人は高く売れる。Adobe Analyticsの米国小売の集計 (1兆訪問超) では、AI経由のコンバージョン率は2025年3月にAI以外のチャネルより38%低かったのが、2026年3月には42%高くなり、訪問1回当たりの売上高は37%上回った。同じ機関の同じ基準の前後比較で、最も説得力がある。Semrushの2025年6月の調査は、AI検索の訪問者が自然検索の4.4倍の確率で購入などに至るとした。逆の面もある。Seer Interactiveの1サイト実測では、ChatGPT経由のコンバージョン率は15.9% (自然検索1.76%) だが総トラフィックの0.15%にすぎない。追加のチャネルとしては成立し、主力のチャネルと語ると崩れる。
期限を迎えた予測もある。Gartnerは2024年2月19日に「2026年までに従来検索の量は25%減る」と予測した。Alphabetの2026年7月23日提出の四半期報告書では、Google Search & otherの4〜6月期売上が632億7,100万ドルで、前年同期の541億9,000万ドルから16.8%増えた。同じ報告書に「AI Overviews」「AI Mode」の語は研究開発費の説明で1回出るだけで、検索売上高の増加理由としてAI機能は書かれていない。移ったのはクリックと露出の配分で、検索が置き換えられたのではない。
買い手の実像は入札原本1件と、合わない集計2つ
サービス会社の側から書かれた資料は無数にあり、買い手の側はほぼ空白である。報告が最も時間をかけた章で、得られた像は業界の記事と正反対だった。
図5 — 唯一の入札原本、合わない集計、需要と出稿のずれ
原本を入手して条文ごとに引用できる発注側のGEO入札は、ネット全体を探して1件だけだった。某上場モビリティ企業の2025年GEO年間契約の供給業者入札で、公告PDFは同社のドメインにあり、作成日は2025年9月23日である。全国で1社、電動二輪車の品目で独占契約も可能。供給者の要件は設立3年以上、登録資本100万元以上で払込済み3割以上、社会保険加入10人以上、年売上300万元以上で第三者の監査報告つき、同業大手の実績3件以上を契約書と領収書で照合、専任チーム5人以上。入札保証金は1万元で、予算は上限があるが非公開である。中堅・大企業ではGEOの購買がすでに正式な調達手続きを一巡しているが、肝心の金額が非公開で、買い手の研究はここで止まる。
広く出回る「模範例」とされる入札は1件も確かめられなかった。某上場製薬の案件 (実績要件50万元以上) は同社の調達公告の一覧に無く、某観光リゾートの50万元はサービス会社が出した記事にしか出ず、某合弁自動車の1,207万元は一次資料が無いうえ、別の記事では「1,207店舗」と書かれている。入札総額の集計は2種類あり、片方は2026年上半期に160件超・3.4億元・平均312万元、もう片方は年初時点で22件・6,049万元とする。前者は内部でも合わず、3.4億元を160件で割ると約212万元で、業種別の合計は2.93億元にしかならない。中国政府調達網で「生成式引擎優化」「GEO優化」「AI捜索優化」(いずれも中国語の表記) を検索した結果は0件だった。
資金の出所も書かれている。東呉証券の2026年1月の報告は、GEOは効果の帰属 (アトリビューション) が測れずデータの連鎖が切れているため主にブランド予算から出ており、金額規模は比較的小さいと整理した。艾瑞の2026年2月28日の白書は、市場をSEOの既存予算の移転、ブランドとコンテンツ販促の既存予算の代替、技術による上乗せの3つで組む。比率の目安はサービス会社の技術責任者の助言「総販促予算の5%程度」が唯一で、発注側の実測ではない。誰が払っているかも報告は追う。3・15で告発されたサービス会社は年200社超に提供し、業種は医療、教育研修、ロボット、防犯、空気圧縮機、内装。新華社の調査に出た出稿業種は新媒体、質屋、美容医療、ECで、共通するのは信頼の壁が高く顧客獲得コストが高い中小企業である。一方、艾瑞の消費者調査では、購入前にAIで意思決定を補助する品目は3Cデジタル47.3%、家電44.1%、旅行42%、生活サービス36.4%で、88.6%の利用者が購入前にAIを使う。AIで決めたい品目の大手は、まだ買い始めていない。
買い手が最も困っているのは効果ではなく検収である。納品物はAI対話のスクリーンショットが一般的で、都合よく1位になった時の写しを提出して済ませる。チタメディアが2026年6月に検証した営業用の資料では、他社の顧客のブランド名を自社の顧客に画像加工した例や、効果データを全て捏造した例があった。「継続率99%」を掲げた会社は市場監督の調査で根拠が無いと認めた。逆の被害もあり、サービス会社が検証せずに「200平方メートル超の工場」「創業10周年」を捏造すると、広告法と反不正当競争法のもとで責任を負うのは発注側である。3・15の後で最も意外だったのは、発注側が引かなかったことである。豹変の2026年4月の報道では、告発から2週間足らずでサービス会社の問い合わせと受注が増えた。増えたのは競合の偽情報から自社を守る守りの需要で、3社の公開声明のどれにも顧客が出稿を止めたという記述は無い。締まったのは規制で、需要ではない。企業側の人事も動き始めた。某上場消費財ブランドは2026年の新卒採用にAEO/GEO成長担当の幹部候補生を置き、月給6,000〜8,000元で配属は海外ブランド事業部だった。業界のGEO職の月給は8,000〜25,000元で、コンテンツ運用のAI版という位置づけである。某A株のマーケティング会社は2025年10月にGEO事業部の採用を派手に発表し、3か月後には投資家に「まだ立ち上げ準備の段階」と答えた。求人を出すことと事業があることは別である。
世界の資本は2億ドルを投じ、成約のインフラは整ったが売上はまだ無い
方向性の真偽を最もごまかしにくく示すのは、買収価格と資金調達のラウンドである。
図6 — 買収2件、資金調達7件、決済インフラ5本と引き返した2つ
買収は2件ある。アドビとSemrushは前述のとおり。HubSpotは2025年10月30日にイスラエルのxFunnel (設立10か月) を3,000万ドルで買う契約を結び、AI経由の見込み客のコンバージョン率が従来検索の3倍だと説明した。HubSpotの年次報告書は2025年の買収としてFrame AI、Dashworks、XFunnelの3社を挙げ、自社製品を「SEOとAEO (answer engine optimization)」のツールと定義するが、2026年1〜3月期と4〜6月期の四半期報告書にxFunnelの語は1回も出ない。
公開資金調達を直近12か月で拾うと、Profoundの9,600万ドル、Bluefishの4,300万ドルのBラウンド (累計6,800万ドル)、ベルリンのPeec AIの2,100万ドルのAラウンド、Evertune、Scrunch AI、daydreamの各1,500万ドル、ロンドンのgeoSurgeの1,200万ドルのシードで、7件の合計は2億1,700万ドルになる。報告は2.3億ドル超と集計しており、差は本稿が列挙しなかったラウンドである。Peec AIは開始16か月で年間経常収益1,000万ドルに達し、顧客にChanelとAxel Springerを持つ。2億ドルの評価での追加調達は完了が確認できず、数えない。中国側の新興3社は公開資金調達6件を全て取ったが、最大の2件でも数千万元で、Profoundの累計と比べると50〜100分の1である。
第5関門、成約の実態は「インフラは全て整い、売上はまだ無い」である。OpenAIとStripeのACPは2025年9月29日にInstant Checkoutと同時に公開され、GoogleのUCPは2026年1月11日にNRFでShopifyとの共同開発として発表され、Mastercardは3月27日に香港で初の認証済みエージェント取引を完了し、GoogleのAP2は4月28日に本人不在の決済の対応版と同時にFIDO Allianceへ寄贈され、Visaは7月2日に欧州の30を超える発行銀行とエージェントによる実際の購入を始めた。空の側は数字で出ている。Walmartの実測では、ChatGPT内で成約させた場合のコンバージョン率は自社サイトへ誘導した場合の約3分の1にとどまり、同社は試行を終えた。OpenAIは3月にInstant Checkoutを撤回し、小売側がChatGPT内に自前のアプリを持つ方式へ移した。商品探しはAIで、購入は小売側で行う。エージェント経由の成約額は、OpenAI、Google、Perplexity、カード網のどこも開示しておらず、出回る「エージェントECの流通総額」はすべて根拠が無い。
監視ツールの価格は底値に向かっている。Profoundは月99ドルから、399ドルのプランでプロンプト100本と3ユーザー。Otterly.AIは29ドルから489ドルまで4プラン。SemrushはAI Visibility Toolkitをドメイン当たり月99ドルの追加オプションにして、SEOの主契約とは別売りにした。大手が追加オプションの価格で入ると、監視だけを売る小さな会社は苦しくなる。
GEOの技術対策は2つが否定され、データ汚染は250件で足りる
サービス会社が売る技術対策は、llms.txt、構造化データ (schema)、GEO手法によるコンテンツ最適化の3種類に集約される。証拠を並べると、顧客が遅かれ早かれ自分で調べて気づく内容になる。
図7 — 売られている4種の手法と証拠、データ汚染の費用を示す3つの研究
GEO手法は評価が割れる。語を提案したKDD 2024の論文は露出を最大40%上げたとしたが、NeurIPS 2025のC-SEO Benchは、現行の手法の大半が無効で順位に負の影響を与えることも多く、従来のSEO (取り込む文脈の1番目に置くこと) の方が小売領域で最良の手法の約7.6倍効くと再現した。llms.txtは無効と実証済みである。Ahrefsが137,210ドメインのサーバーログ (2026年5月分) を解析すると、28%が設置していたが97%のファイルはAIからのアクセスを1件も受けておらず、アクセスの96%はボットで、最大のアクセス元はSEO監査ツールだった。Googleは6月15日に開発者向け文書を更新し、Google検索はこの種のファイルを使わず、害にも益にもならないと明記した。構造化データも効果が無い。Ahrefsは5月11日に、JSON-LDを新たに足した1,885ページを対照4,000ページと前後30日で比べ、ChatGPTで2.2%増、AI Modeで2.4%増 (統計的にゼロと区別できない)、AI Overviewsで4.6%減 (偶然の確率は2,500分の1) と報告した。裏づけがあるのはコンテンツの権威性と言及で、Ahrefsの75,000ブランドの調査 (5月26日) ではYouTubeでの言及がAIでの露出と最も強く相関し (スピアマンの順位相関で約0.737)、AIの引用はコンテンツの質と権威の信号を見て技術的な目印は見ない。技術対策の詰め合わせを売る商売は対照実験の裏づけを欠き、うち2つはプラットフォームの公式文書と独立実験に否定された。コンテンツの権威性と情報源づくりを売る商売には証拠がある。この区分が3年後にどの会社が残るかを決める。
学術界は3・15を予告していた。ICLR 2025のチューリヒ工科大学の論文は実運用環境で、作り込んだウェブページの文章が大規模言語モデルに攻撃者の製品を優先的に推薦させ、Bingでは推薦される確率が約2.5倍になると測った。論文はこれを囚人のジレンマと呼ぶ。誰にも操作する動機があり、全員が操作すると答えの質が全体で劣化する。データ汚染の費用は想像より低い。Anthropicと英国AI安全研究所、アラン・チューリング研究所の研究では、約250件の悪意のある文書で6億から130億パラメータまでのどの規模のモデルにもバックドアを植え込めた。必要なのは一定の少ない件数で、比率ではない。Microsoft Securityは2026年2月10日に「AI Recommendation Poisoning」を一覧化し、14業種31社が実際に展開し、60日で50超のプロンプトを観測したと示した。MITRE ATLASの技術番号はAML.T0080である。央視の3・15晩会 (2026年3月15日) が見せたのはこのジレンマの現実版で、架空のスマートバンドを記事10本超で流すと2時間で大規模言語モデルが引用して推薦し、3日後にさらに偽レビュー11本を足すと2つのモデルが上位に推薦した。告発された会社のサイトは8つのモデルを「全て対応」と掲げていた。
規制の赤線は1年で14の節目、標準は5系統
中国でGEOは、効くかどうかの問題から、どの手法なら名指しされないかの問題に変わった。14の節目は図8に日付で並べた。
図8 — 標識弁法からCloudflareの遮断まで14の節目、5系統の標準、処分の記録
2025年9月1日のAI生成合成コンテンツ標識弁法の施行から、2026年9月15日のCloudflareの初期設定での遮断までに、経路が3つ断たれた。3月27日に微信の公式アカウント運営基盤 (公衆平台) が、AIやスクリプトで人間の代わりに行う創作と一括・連続の投稿を禁じ、公式アカウントを束ねて配信する手法が塞がれた。4月15日に国家市場監督管理総局がAI生成広告と引証広告 (証言や実績を引用する広告) を名指しし、重点的な取り締まり分野を医療、薬品、医療機器、金融・資産運用、教育研修とした。GEOの客単価が最も高い業種と重なる。9月15日にCloudflareが、新規サイト、無料版、広告のあるページで検索とAIを分けない混用クローラーを初期設定で遮断し、取得ごとの課金を「コンテンツがAIの答えに出た時に払う」方式へ進めた。第1関門の前提条件はこの日に変わった。
処分も具体化した。6月25日に初のGEO虚偽宣伝処分が報じられ、北京市朝陽区市場監督管理局が北京百付科技に5万元の罰金を科した。表彰の額6枚は合計2,400元で自作したもので、「継続率99%」に根拠は無く、処分決定書は業務の実態を、AIで顧客の資料を加工して記事にし、媒体の仲介業者を通じて各サイトに載せて順位を得る、内容の真実性は審査しない、と記録した。「清朗」特別行動は7月6日の第1段階に続き、9月2日の第2段階で特別行動全体の違法・違反情報561万件超を削除し、アカウント4万9,000件超を処分した。7月15日にAI擬人化対話サービス管理暫定弁法が施行され、施行前に豆包、千問、元宝がAIエージェント広場を取り下げた。8月2日にはEU AI法第50条の透明性義務が発効し、罰金は最大1,500万ユーロか世界売上の3%になる。8月11日に公表されたT/CAPT 026-2026は、学習データの汚染、回答の独占、偽の合意形成、プロンプト注入攻撃の4つでブラックハットの手法を名指しした。
国内の豆包、元宝、千問、百度は専用のGEO対策の告知を出しておらず、有料で収録する仕組みも無い。安全の兆しではなく、3・15と清朗の後ではいつ動いてもおかしくない状態である。参入の兆しは3つある。バイトダンスと央視網が中国広告協会のGEO団体標準の第2回意見聴取会 (8月6日) に出席し、プラットフォームが規則づくりの場に加わった。360は自社のAI検索を持ちながらGEOサービスを外販し、信通院の認証評価を17項目全て通過した。新華網は5月9日に「新華GEO智能体平台」を発表し、8月のT/CAPT 026は同社が主導して策定した。当局による上からの介入はまだ起きていないが、窓は狭まっている。
標準は5系統が同時に走る。T/CAPT 026、中国商業聯合会のT/CGCC 119-2026 (7月1日施行、原文は報告も未入手)、中国広告協会の3本の団体標準 (範囲は基本定義、参入能力、見積もり・課金と効果測定、信頼できる学習データ、手順の順守と安全)、中国商務広告協会の団体標準 (29の参加団体と58人の専門家)、信通院AIIAの「GEO服務可信基本要求」(5分野、10要件、17検査項目) である。見積もり・課金と効果測定が標準に書かれる意味は、業界最大の争点に判定の物差しができることである。信通院の評価は業界連盟の標準であって国家級ではなく、サービス会社の記事にある「国家級」「唯一の法的効力」は誇張になる。順守を判定できる客観的な証憑は、この評価と、医療分野のインターネット薬品・医療機器情報サービスの届け出 (備案) の2つしかない。大半のGEO代理店は後者を持たないまま、病院と美容医療のAI推薦サービスを公然と売っている。「十大サービス会社」のランキング記事はどれも証憑にならない。
価格は1桁低く、残るものが4形態を分ける。日本の統計と有報で確かめる
報告が集めた実成約価格は、業界に流れる価格表と大きく食い違う。報道機関の取材価格とサービス会社の自己申告の間に、5〜10倍の開きがある。
図9 — 取材価格と自己申告、4つの形態、日本の公的統計と有価証券報告書
新華社の2026年1月の調査では運用代行は年2,980〜16,980元で、3・15で告発された会社の料金プラン (基本版2,980元、上級版16,980元) と一致する。豹変の4月の報道ではGEOの単年契約が9,800元から1万元強、同じチームのSEOが年約10万元で、GEOの客単価はSEOの10分の1にとどまる。サービス会社の自己申告は運用代行が月2,000〜8,000元 (年2.4万〜9.6万元) で取材価格の5〜10倍、業界の提案書によくある「月1万〜5万元」は公開の成約証拠が1件も無い。料金プランを分解すると課金の単位は「本」だと分かる。基本版2,980元には約2,240本の記事が含まれ1本約1元、上級版16,980元は年23,040本を謳い1日63本になる。杭州の営業担当者は「初期は毎日40〜50本」と語り、21世紀経済報道は1つのAIの回答に載るには複数のプラットフォームで50本超のリンクが要ると換算した。本数で稼ぐ限り費用はコンテンツの量に比例し、天井はプラットフォームのコンテンツ規約が決める。国内のツールで公開の定価とオンライン登録を備えるのは4製品だけで価格帯は月0〜9,800元、うち1つは1回のデータ取得を0.025元と値付けした。残りは全て営業経由で、自称SaaSの多くは実態が監視ツール付きの運用代行である。
検索環境そのものが証拠になる。「GEOサービス会社ランキング」で返る5強、6強、11社推薦の記事は大量に似通い、記事そのものがGEO作業の産物である。同じ名義の機関の市場規模が記事ごとに矛盾し、2025年を280億、480億、4,800億元、2026年を110億、186億、480億、942億元と書き、ある記事は2026年1〜3月期を1,860億、別の記事は上半期を500億とする。某ショート動画アプリの月間利用者34.5億は中国人口の2.4倍、中国のAI検索利用者70億も物理的に不可能である。ランキング記事は削除もされ、某サービス会社の「業界TOP5」記事の複数がポータルから撤去されて404を返し、同時期のランキング以外の記事は残っている。
サービス会社を区別する最も有効な問いは「一件終わった後に何が残るか」である。残るものがスクリーンショット (形態A)、監視の基準値 (形態B)、顧客横断のデータ (形態C)、顧客自身の知識資産 (形態D) のどれかで、利益率と生存確率が分かれる。AとBの費用は顧客数に比例し、コンテンツの量で結果を出すため規制とプラットフォームの規約の締め付けの対象と重なる。CとDは測定と構造を納め、2026年の政策環境で安全側にある。AとBに留まる会社は、下から闇業者の価格破壊、上から規制の線引き、中から大手の追加オプション価格に挟まれる。
日本の読者のために4つを足す。第1に、入り口の移り変わりは日本でも進む。サイバーエージェントGEOラボの第3回調査 (2026年2月6〜7日、9,278人) では、検索行動で生成AIを使う人は37.0%で、2025年10月の31.1%から5.9ポイント上がり、20代は初めて過半数を超えた。第2に公的統計。経済産業省の特定サービス産業動態統計では、広告業のインターネット広告売上高が2019年の8,343億7,700万円から2024年の1兆5,813億4,900万円へ1.9倍になる一方、広告業全体は5兆9,106億2,300万円から5兆7,564億5,600万円へ2.6%減った。比率は14.1%から27.5%へ上がり、月次は2024年12月の1,619億3,400万円 (前年同月比5.8%増) で系列が終わる。GEO単独の公的統計は日本にも無い。第3に上場企業の開示。EDINETで直近の有価証券報告書を数えると、ジオコード (7357、2026年2月期) はLLMOが16回、AIOが16回、AI検索が12回、SEOが62回で、2025年7月にAI最適化サービス (AIO/LLMO) を始め、該当セグメントの売上高は16億3,019万円、セグメント利益は4億3,553万円だった。サイバーエージェント (4751) は「生成AI」が16回でLLMO、GEO、AIOは0回、電通グループ (4324) は「生成AI」が2回でLLMOとGEOは0回、博報堂DYホールディングス (2433) は3語とも0回、Speee (4499) はSEOが8回でLLMOは0回である。専業の小型株1社だけが語を記載し、大手は開示に書いていない。第4に価格と検収。中国の取材価格を円に直すと、2026年9月4日の相場 (6.7108元/ドル、156.11円/ドル) で2,980元は約6.9万円、16,980元は約39.5万円、5万元の罰金は約7,451ドルになる。19億ドルの買収は約2,966億円、9,600万ドルの調達は約150億円である。1桁上の見積を受け取ったら、それは自己申告価格である。検収はAI対話のスクリーンショットでなく、第三者の評価か顧客横断の監視の基準値を求める。中国で最初に罰せられたのは効果の欠如ではなく、証憑の捏造だった。
よくある疑問
GEOとLLMO、AIOは同じものか。 指す対象は同じで、生成AIの答えに自社が出るよう働きかける手法である。中国と欧米ではGEO (生成エンジン最適化) が主流の呼び名で、日本の事業者はLLMOやAIOを使うことが多い。HubSpotの年次報告書はAEO (answer engine optimization) と書く。呼び名の違いは手法の違いを意味しない。
市場規模はいくらか。 大手の調査機関で世界のGEO市場規模を出した所は無く、既存の推計は73億ドルから1,100億ドルまで開く中小の調査会社の報告に由来する。中国側で原典に遡れる数字は、第三者研究の2025年6億元、経済メディアの42億元、3・15関連報道の29億元、証券会社の2026年予測111億元で、サービス会社の記事に流れる280億〜942億元はその7〜22倍で互いに矛盾する。艾瑞の白書は2024年127億元、2025年280億元 (120%増)、2026年560億元、2028年に1,200億元超とするが、報告はこれを原典に遡れる数字に入れていない。本稿もどの数字も採らない。
日本企業がGEOサービスを買うとき、何を確かめればよいか。 中国の処分決定書が示すとおり、最初に崩れるのは効果ではなく証憑である。実績の契約書と領収書の照合、第三者の監査報告、監視の基準値の提出を求め、AI対話のスクリーンショットだけの納品は受け取らない。llms.txtと構造化データを主力の売り物にする提案には、Ahrefsの実測とGoogleの公式文書に照らした効果の説明を求める。
中国の規制は日本に関係あるか。 直接の適用は無いが、2つの経路で関係する。中国向けに販促する日本企業は、4月15日の通知が名指しした医療、金融・資産運用、教育研修で取り締まりの対象になりうる。EU向けには8月2日発効のAI法第50条があり、AI生成物の機械が読める表示を怠ると最大1,500万ユーロか世界売上の3%の罰金がある。表示の義務は中国とEUの双方で先に法制化された。
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