日本ルメンタムDML(直接変調レーザー) Lumentum DML 25G (Directly Modulated Laser)
流す電流の強弱で光の強さを直接変える、InP (インジウムリン) の半導体レーザー。親会社の米ルメンタムは2021年の技術資料で、DML を相模原の主力製品に挙げた。現行品は毎秒25ギガビットの4品種で、うち2品種は PAM4 方式 (光の強さを4段階に分ける方式) の毎秒50ギガビットにも対応する。100G CWDM4・LR4 の光トランシーバーや、5G 携帯基地局のフロントホールに使われる。1レーンあたり毎秒100ギガビットの DML は研究発表の段階で、製品ページには載っていない。価格は公表していない。
詳細解説
- 製品の区分
- DML (直接変調レーザー)。変調器を持たず、レーザーに流す電流そのものを変えて信号を載せる。親会社の2021年の技術資料は、開発中の1レーンあたり毎秒100ギガビットの DML を「EML より低消費電力・低コスト・小型」と説明している ethernetalliance.org
- 現行の品種
- 25G CWDM (HL13BSCP00-Ln)、25G CWDM 拡張温度品 (HL13BSCP02-Ln)、25G TDM (HL13BSCP01)、25G LAN-WDM (HL13BECP00-Dn) の4品種 lumentum.com
- 作る場所
- 親会社の2021年の技術資料は、相模原の主力製品をデータセンター向けのレーザーチップ (DML と PAM4 の EML) とする。ウエハー工程の求人票も「DML…EML…を主力製品とし」と記す。親会社の製品ページは「自社の InP 工場から安定供給」としているが、どの工場かは示していない ethernetalliance.org · hrmos.co
- 系譜
- 親会社の2021年の技術資料の年表によると、2015年に 100G-CWDM4 用の1.3µm 帯・非冷却の毎秒25ギガビットの DML の量産を始めた (資料は「初の量産」としている)。日本ルメンタムの沿革には、2016年3月に「現在トップシェアとなっている光通信用レーザ」の販売を始め、100ギガビット・イーサネットの普及に貢献したとある。それが DML か EML かは示していない ethernetalliance.org · hrmos.co
- 速度について
- 現行品は1レーンあたり毎秒25ギガビット (2品種は毎秒50ギガビットの PAM4 も可)。「100G」はこの DML を4個使う光トランシーバーの速度で、1レーンあたり毎秒100ギガビットの DML は製品ページにない。日本ルメンタムの技術者は2021年の光ファイバー通信会議 (OFC) で、毎秒106ギガビットの PAM4 で動く CWDM の DML を研究として発表した opg.optica.org
- 用途
- 製品ページは用途に、データセンター・アクセス網・アグリゲーション網 (集約網) を挙げ、TDM 品では5G のフロントホール (アンテナ側と制御装置を結ぶ回線) とバックホールを挙げる lumentum.com
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 相模原 (本社とウエハー工場) | 神奈川県相模原市中央区小山 | DML の結晶成長・ウエハー工程・チップ化・検査。親会社の2021年の技術資料は DML を相模原の主力製品とする | ethernetalliance.org | |
| 高尾工場 (第二工場) | 東京都八王子市東浅川町 | InP のウエハー工場。「DML…EML…を主力製品とし」と記したウエハー工程の求人は、勤務地に相模原と高尾工場を挙げている。DML を高尾で作っているかどうかは公表されていない | hrmos.co |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 直接変調
- レーザーに流す電流を信号に合わせて変え、光の強さを直接変える。親会社の2021年の技術資料は、DML と EML のどちらを選ぶかで、消費電力・波長分散への耐性・コストが決まると説明する ethernetalliance.org
- リッジ導波路の構造
- 親会社の2021年の技術資料によると、DML は製造しやすく歩留まりの高いリッジ導波路の構造をとる (EML は埋め込みヘテロ構造) ethernetalliance.org
- InGaAlAs の活性層
- 高温でも信頼性を保つため、InGaAlAs の多重量子井戸 (MQW) を活性層に使う (親会社の2021年の技術資料) ethernetalliance.org
- CPM 回折格子
- 回折格子には、周期を少しずつ変える周期変調型 (CPM) を採用する (親会社の2021年の技術資料) ethernetalliance.org
- 防湿構造のチップ
- 通信機器の信頼性規格 GR-468 の高温高湿試験に耐えるよう、チップ自体に防湿の構造を持たせている (親会社の2021年の技術資料)。4品種とも GR-468 に適合する ethernetalliance.org · lumentum.com
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 25G CWDM (HL13BSCP00-Ln) | CWDM の4波長、20〜65°C、最大10km、用途 100G CWDM4・PSM4 の QSFP28、25G LR・BiDi の SFP28 | lumentum.com |
| 25G CWDM 拡張温度品 (HL13BSCP02-Ln) | CWDM の4波長、−5〜85°C、50G PAM4 にも対応 | lumentum.com |
| 25G TDM (HL13BSCP01) | 1311nm、−40〜85°C、50G PAM4 にも対応、用途 5G のフロントホール・バックホール、25G LR の SFP28 | lumentum.com |
| 25G LAN-WDM (HL13BECP00-Dn) | 1295.56・1300.05・1304.58・1309.14nm、熱電冷却素子 (TEC) で 50〜55°C に保つ、用途 100G LR4 | lumentum.com |
| 信頼性 | 4品種とも Telcordia GR-468 に適合 (qualified) | lumentum.com |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| InP 基板 | インジウムリンのウエハー | 公表されていない | — | 親会社の年次報告書は、中国が日本向けに課した輸出規制が基板の調達に影響したとしているが、供給元の社名は記していない A | |
| 活性層 | InGaAlAs の多重量子井戸 (MQW) | 日本ルメンタム 自社で成膜 |
— | 日本 相模原 |
親会社の2021年の技術資料が DML の活性層を InGaAlAs の MQW とし、求人票が相模原での有機金属気相成長 (MOCVD) によるエピ成膜を挙げる A |
| 回折格子 | 周期変調型 (CPM) の回折格子 | 日本ルメンタム チップの中に作り込む |
— | 日本 相模原 |
親会社の2021年の技術資料 A |
| リッジ導波路 | 光を導く凸型の構造 | 日本ルメンタム チップの中に作り込む |
— | 日本 相模原 |
親会社の2021年の技術資料 A |
| 熱電冷却素子 (TEC) | LAN-WDM 品の温度を保つペルチェ素子 | 公表されていない | — | TEC はチップの外の部品で、レーザーを組み込む側で用意する。製品ページは LAN-WDM 品を TEC で50〜55度に保って使うと説明するが、誰が用意するかは書いていない A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1材料InP の基板を外部から買う。供給元は公表されていない企業: 公表されていない
- 2チップ結晶成長から検査までを日本ルメンタムが行う。親会社の製品ページは、自社の InP 工場から供給すると説明する企業: 日本ルメンタム
- 3光トランシーバーDML を4個使うと 100G CWDM4・LR4 の QSFP28 を、1個で 25G の SFP28 を構成できる企業: 光トランシーバーメーカー (社名は公表されていない)
- 4最終の用途データセンター、アクセス網、アグリゲーション網、5G 携帯基地局のフロントホールとバックホール
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1結晶成長 (エピ)MOCVD 装置で InP 系の結晶層を成膜し、X線回折 (XRD)・フォトルミネッセンス (PL)・原子間力顕微鏡 (AFM)・電子顕微鏡 (SEM・TEM) で評価する設備・企業: 装置メーカーは公表されていない
- 2ウエハー工程
- 3チップ化と検査
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| DML 25G (4品種) | 公表されていない (顧客ごとの見積もり) | 2026年10月31日に製品ページと問い合わせページで確認 | lumentum.com |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 親会社の顧客窓口 | 見積もり・注文・注文状況の問い合わせを受け付ける | lumentum.com |
| 日本の販売代理店 | 親会社の販売代理店の一覧は、日本の代理店として伯東と緑屋電気を挙げている。扱う製品の範囲は示していない | lumentum.com |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 信頼性 | 4品種とも Telcordia GR-468 に適合する | lumentum.com |
| 保証の期間 | 公表されていない | lumentum.com |
🌏 海外輸出
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 公表されていない | DML の売上高・出荷数量 | 公表されていない | 親会社の決算資料は EML と連続発振 (CW) レーザーの出荷動向には触れているが、DML の数字はない | sec.gov |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
DML は変調器を持たないレーザーで、電流で光の強さを直接変える。親会社の2021年の技術資料は、DML と EML のどちらを選ぶかで、消費電力・波長分散への耐性・コストが決まると説明する。伝送距離10km 程度までの 100G 光トランシーバーや、5G 基地局の回線に使われる。資料によると、2015年に 100G-CWDM4 用の非冷却 DML の量産を始めた。
現行の製品は毎秒25ギガビットで、一部が毎秒50ギガビットの PAM4 に対応する。親会社が 800G・1.6T 向けに売るのは、1レーンあたり毎秒100〜200ギガビットの EML と、シリコンフォトニクスと組む連続発振レーザーだ。日本ルメンタムの技術者は2021年に1レーンあたり毎秒100ギガビットの DML を研究として発表したが、製品ページには載っていない。
DML の売上高は公表されておらず、決算資料も触れていない。親会社の成長をけん引しているのは EML と連続発振レーザーだ。DML は、100G の光トランシーバーや 5G 基地局の回線など、800G より前の世代の速度向けの製品とみられる。
公表されていないこと
- DML の売上高と出荷数量
- 高尾工場で DML を作っているかどうか
- 1レーンあたり毎秒100ギガビットの DML を製品にする計画
- 顧客の社名
出所
- ルメンタム DML の製品一覧 (2026-10-31)
- ルメンタム 製品ページ (DML 25G CWDM レーザー) (2026-10-31)
- ルメンタム 製品ページ (DML 25G TDM レーザー) (2026-10-31)
- ルメンタム 技術資料 (イーサネット・アライアンスの TEF 2021 での講演) (2021-01-28)
- 日本ルメンタム 採用サイト (2026-10-31)
- 日本ルメンタム 求人票 (ウエハープロセスエンジニア) (2026-10-31)
- 日本ルメンタム 求人票 (ウエハープロセス装置担当) (2026-10-31)
- 直接変調 DFB レーザーの毎秒106ギガビット PAM4 動作 (OFC 2021、日本ルメンタムの論文) (2021-06)
- ルメンタム 2026年6月期 年次報告書 (10-K) (2026-08-17)
出所との照合日: 2026年10月31日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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