安川電機・RBIのまほろ(バイオ実験用の双腕ロボット) LabDroid Maholo
生命科学の実験を人の手技どおりに再現する双腕ロボット。産業技術総合研究所と安川電機が2012年に共同開発した。安川電機の子会社ロボティック・バイオロジー・インスティテュート(RBI)が「LabDroid まほろ」の名で販売と受託実験を手がける。人が使う実験器具をそのまま扱い、7軸の腕2本で細胞培養や遺伝子解析の前処理をこなす。アステラス製薬と安川電機の合弁会社セラファ・バイオサイエンスが、まほろを使う細胞医療製品の製造基盤を開発している。価格は公表されていない。
詳細解説
- 開発
- 産業技術総合研究所(産総研)と安川電機が、生命科学・医学分野の実験台の作業を自動化するため、2012年に汎用ヒト型ロボット「まほろ」を共同開発した。 rbi.co.jp
- 販売・運用の会社
- ロボティック・バイオロジー・インスティテュート(RBI)が2015年6月22日に産総研の技術移転ベンチャーとして設立され、まほろの開発・販売・保守とロボット施設の運営を担う。 rbi.co.jp
- 安川電機の出資
- 安川電機は2015年11月12日にRBIへ出資した。科学技術振興機構(JST)は2018年4月、保有するRBIの全株式を安川電機に譲った。安川電機はRBIを子会社と記す。 jst.go.jp
- 安川電機の役割
- 安川電機は長年RBIと共同開発し、まほろの土台となる双腕ロボットを提供してきたとJSTは説明する。 jst.go.jp
- 主な用途(会社発表)
- がんゲノム診断の前工程、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の培養、PCR検査(遺伝子増幅検査)などの医療検査工程を自動化してきたと安川電機は記す。 yaskawa.co.jp
- 再生医療の臨床研究
- 理化学研究所・VCセルセラピー・ダイダン・RBIの共同研究グループは、まほろとクリーンルーム装置を組み合わせた細胞培養加工施設を開発した。そこで培養したiPS細胞を使う臨床研究は2022年2月に厚生労働省の承認を受けた。 rbi.co.jp
- アステラス製薬との合弁
- 安川電機とアステラス製薬は2025年9月29日、まほろを使う再生医療等製品の製造基盤を開発・提供するセラファ・バイオサイエンスを設立した。資本金は資本準備金を含め45億円、出資比率はアステラス製薬60%、安川電機40%。 yaskawa.co.jp
- 経営計画での位置
- 安川電機は2026年2月期の有価証券報告書で、医療・医薬品市場でパートナーとの連携を強め、「プラットフォーマーとしてのバイオ向け双腕ロボット『まほろ』の導入を拡大する」と記した。 disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 最近の展示
- RBIは2025国際ロボット展(2025年12月3〜6日)で安川電機のブースに出展し、形の定まらない試料をAIで見分けて、培養細胞をはがして回収する作業と、3層に分かれた液の上の層を回収する作業を見せた。 rbi.co.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| まほろの製造拠点 | 公表されていない | まほろの機体をどこで造るかは、安川電機もRBIも公表していない。安川電機の産業用ロボットは本社・八幡西事業所(北九州市)と中間事業所(福岡県中間市)で生産する。 | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| RBI 本社・御茶ノ水ラボ | 東京都文京区湯島(東京科学大学 湯島キャンパス M&Dタワー20階) | 本社と受託実験の拠点。2025年10月10日から現在地で業務を始めた(RBI発表)。 | rbi.co.jp | |
| RBI 筑波ラボ | 茨城県つくば市春日(筑波大学の建物内) | 受託実験の拠点。 | rbi.co.jp | |
| 東京科学大学 ロボット未来創造センター | 東京都文京区湯島 | 東京科学大学は、まほろを多数台導入したロボット実験施設と説明する(東京科学大学)。同大学は2026年4月15日の開所式と記念シンポジウムを予告した(RBI発表、2026年3月28日)。延べ床面積600平方メートルの施設に、まほろ7台などを置く計画と報じられた。セラファ・バイオサイエンスの本社もこのセンターに移る予定と報じられた(MONOist)。 | isct.ac.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 双腕・7軸の腕
- 腕は2本で、それぞれ7軸。6軸のロボットより二の腕をひねる関節を1つ多く持ち、実験台まわりの狭い場所でも人に近い動きをする。 rbi.co.jp
- 人の器具をそのまま使う
- 研究者が使ってきた機器・装置をそのまま使う。作業ごとの専用機を何台も組み合わせる方式と違い、実験の内容を変えても機体を替えずに済む。 rbi.co.jp
- 手技の再現
- 熟練した研究者の手技をミリメートル単位・秒単位で再現し、100回、1,000回と同じ動作を繰り返すとRBIは説明する。 rbi.co.jp
- 操作の方法
- 専用の端末は使わず、パソコンやタブレットから操作する。付属のソフトウエアで、図と数値の設定によって実験手順(プロトコル)を組む。 rbi.co.jp
- AIとの組み合わせ
- 作業手順はデジタルデータとして記録され、AIで手順を最適化できる。理化学研究所との研究では、まほろとAIが再生医療用細胞の培養条件を自律的に試行錯誤した(2022年6月発表)。 rbi.co.jp
- 手順の移管
- セラファ・バイオサイエンスは、デジタル化した製造工程を別の拠点のまほろへ送る「ワンクリック転送」で、作業者を訓練しなくても工程を移せる製造基盤を開発する。 yaskawa.co.jp
主要諸元
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 双腕ロボット(機体の土台) | 公表されていない | 安川電機 | 6506 | 日本 公表されていない |
JSTの発表(安川電機がベースとなる双腕ロボットを提供) A |
| 実験手順を組むソフトウエア | 公表されていない 開発元は公表されておらず、RBIの紹介は「付属のソフトウエア」とだけ記す |
RBI | — | 日本 該当しない |
RBIの製品紹介(付属ソフトウエア) A |
| クリーン環境の装置(細胞培養加工施設の構成) | All-in-One CP Unit | ダイダン | 1980 | 日本 公表されていない |
理研・RBIなどの共同研究の発表(2023年11月30日)。臨床研究用の施設の構成で、まほろ全機への標準装備ではない A |
| 制御装置・ハンド・カメラ | 公表されていない | 公表されていない | — | 公表されていない |
RBIの仕様表に記載がない A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1機体安川電機が土台の双腕ロボットを提供する。企業: 安川電機
- 2システム化・販売・保守RBIがまほろとして仕上げ、販売・保守と実験手順の実装を担う。企業: ロボティック・バイオロジー・インスティテュート
- 3受託実験RBIのラボで、まほろを使ったたんぱく質解析・薬剤スクリーニング・RNA(リボ核酸)の配列解析・細胞培養を請け負う。企業: ロボティック・バイオロジー・インスティテュート
- 4製造工程の開発と治験薬の製造(事業内容)セラファ・バイオサイエンスは事業内容に、大学やスタートアップが持つ細胞治療薬候補の製造工程の開発と、GMP(医薬品の製造管理と品質管理の基準)に沿う施設での治験薬の製造を掲げる(2025年10月22日、会社発表)。GMP製造拠点は2027年度に設ける方針と報じられた。企業: セラファ・バイオサイエンス(アステラス製薬60%・安川電機40%)
- 5導入先の例アステラス製薬は2017年末にまほろを入れ、細胞医療の創薬研究と製造技術の研究に使ってきた。企業: アステラス製薬
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1機体の製造製造工程は公表されていない。設備・企業: 安川電機・RBI
- 2実験手順の実装RBIが顧客の実験手順をまほろに組み込み、培地交換などの一部の工程から分化誘導までを自動化する。設備・企業: RBI
💴 販売価格
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| RBIへの問い合わせ | 導入・技術支援はRBIが受け付ける(電話・問い合わせフォーム)。 | rbi.co.jp |
| ロボットシェアリング(受託実験) | 試料を送ると、RBIのまほろが実験し解析データを返す。たんぱく質解析・薬剤スクリーニング・RNAの配列解析・細胞培養の4種類を用意する。 | rbi.co.jp |
| 製造基盤の提供(予定) | セラファ・バイオサイエンスは2026年度に大阪の中之島クロスにプロセス開発拠点を開き、2027年度にアステラス製薬のつくば研究センターの隣にGMP製造拠点を設ける方針と報じられた。開発製造受託機関(CDMO)ではない事業の形を目指すとする(報道)。 | monoist.itmedia.co.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 公表されていない | 海外への納入実績と、輸出管理の対象になるかどうかは公表されていない。セラファ・バイオサイエンスの社長は2029年度から海外展開を進めたいと述べた(報道)。 | monoist.itmedia.co.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年2月期 | まほろの販売台数・売上高 | 公表されていない | 安川電機はロボットセグメントの中のバイオメディカル用ロボットとして扱い、内訳を開示していない | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| セラファ・バイオサイエンスの資本金 | 45億円(資本準備金を含む)。安川電機の出資比率は40% | yaskawa.co.jp | |
| RBIの資本金 | 1億円(2018年5月31日時点) | rbi.co.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
まほろは専用機を並べる自動化ではなく、人の器具をそのまま使う汎用機として設計された。手順がデジタルデータになるため、熟練者の技を別の拠点へ移せる点が価値の中心にある。細胞医療では、研究から製造へ技術を移すのに1年〜1年半かかり、再現できないこともあると合弁会社は説明した(報道)。その移管を手順データの転送に置き換えることが、合弁会社の狙いだ。安川電機は機体の提供者から始まり、RBIの親会社、合弁会社の出資者へと関与を広げてきた。合弁会社は2027年度につくばにGMP製造拠点を設ける方針と報じられた。安川電機の業績への寄与が数字で見えるのは2027年度以降になり、まほろの台数と売上高は今も開示されていない。
公表されていないこと
- まほろの累計の導入台数と導入先の一覧
- 機体の価格と、どの工場で造るか
- 安川電機のRBIへの持ち株比率
- 可搬質量や繰り返し精度などの機械的な仕様
出所
- RBI 製品紹介(LabDroid まほろの仕様) (2026-11-06)
- RBI 会社概要・沿革 (2026-11-06)
- RBI 受託サービス (2026-11-06)
- RBI 第三者割当増資を含む資金調達を実施 (2015-11-25)
- JST ロボティック・バイオロジー・インスティテュートの株式譲渡について (2018-04-27)
- 安川電機 アステラス製薬と細胞医療プラットフォーム構築の覚書 (2024-05-21)
- 安川電機 合弁会社設立に関する契約締結 (2025-03-06)
- 安川電機 セラファ・バイオサイエンスの設立 (2025-10-22)
- 安川電機 有価証券報告書 第110期(2026年2月期) (2026-05)
- RBI 再生医療用の細胞培養加工施設の開発(理研など) (2023-11-30)
- RBI 2025国際ロボット展に出展 (2025-11-24)
- RBI ロボット未来創造センター開所式の案内 (2026-03-28)
- MONOist アステラスと安川出資の新会社が始動(3ページ) (2025-10-22)
- RBI 本社事務所およびラボ移転のお知らせ (2025-10-06)
- MONOist アステラスと安川出資の新会社が始動(2ページ) (2025-10-22)
- 東京科学大学 ロボット未来創造センター 開所式および記念シンポジウム (2026-03)
出所との照合日: 2026年11月6日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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