ラピダスのチップレット先端パッケージ(Rapidus Chiplet Solutions) Rapidus Chiplet Solutions (RCS) advanced packaging
ラピダスの後工程拠点RCS (Rapidus Chiplet Solutions) で開発するチップレット実装のサービス。拠点は北海道千歳市のセイコーエプソン千歳事業所内にある。2nm世代のチップを含む複数のチップを1つのパッケージに収める。600mm角のパネルに有機絶縁膜の再配線層 (RDL) を作る中間基板 (インターポーザー) と、2.5次元・3次元の実装技術を開発する。拠点は2024年10月に着工し、2025年12月に600mm角パネルのRDLインターポーザーを試作、2026年4月11日に本格稼働した。先端パッケージの量産開始は計画では2028年度。価格と顧客は公表していない。
詳細解説
- 提供するもの
- パッケージ内で機能の異なる複数のチップを組み合わせるチップレット実装。ラピダスは、前工程・後工程・設計支援を一体で引き受ける事業RUMSの後工程の柱と位置づける。他のファウンドリーで作った旧世代のチップと2nmチップを1つに収める計画もある (会社サイトの社員インタビュー) rapidus.inc
- NEDO事業
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) の「2nm世代半導体のチップレットパッケージ設計・製造技術開発」として2024年3月に採択された (ラピダスの2026年4月11日の発表。2024年10月の発表では2024年4月の採択と表記)。2026年度の支援上限額は1,174億円 (経済産業省の2026年4月11日の発表、報道) rapidus.inc
- 拠点の設置
- 2024年10月3日、セイコーエプソン千歳事業所内にクリーンルーム約9,000平方メートルの後工程拠点RCSを設けると発表し、工事を開始した。2025年4月から装置の搬入を始めた rapidus.inc
- 試作の実績
- 2025年12月に600mm角パネルで、業界初 (会社主張) の有機絶縁膜RDLインターポーザーを試作した。SEMICON Japan 2025 (2025年12月17〜19日) で展示 rapidus.inc
- 開所
- 2026年4月11日に解析センターとともに開所式。赤澤亮正経済産業大臣、鈴木直道北海道知事、横田隆一千歳市長が出席した。この開所で本格稼働に入った rapidus.inc
- IBMとの共同開発
- 2024年6月4日、米IBMから高性能半導体向けパッケージ技術の供与を受け、チップレット実装の量産技術を共同開発すると合意した。技術者はIBMの北米の拠点で共同開発する rapidus.inc
- 量産の予定
- 実施計画では先端パッケージの量産開始は2028年度。2026年度はRCSのパイロットラインを本格稼働させ、2.5次元・3次元パッケージの製造技術と用途別のチップレットパッケージの設計・テスト技術を開発する (いずれも予定) mof.go.jp
- 前工程との統合
- 2025年4月1日に前工程のシリコン技術本部と後工程の3Dアセンブリ本部を統合してエンジニアリングセンターを設けた。IIM-1にも2027年に後工程のラインを設ける計画 (会社サイトの社員インタビュー) rapidus.inc
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| Rapidus Chiplet Solutions (RCS) | 北海道千歳市美々758-173 (セイコーエプソン千歳事業所内) | 後工程の研究開発拠点。クリーンルーム約9,000平方メートル。フリップチップBGA (FCBGA)、シリコンインターポーザー、RDL、チップ同士を直接接合するハイブリッドボンディングのパイロットライン。2025年4月から装置搬入、2026年4月11日開所。装置は約300台を計画 (会社サイトの社員インタビュー) | rapidus.inc | |
| IIM-1 (後工程ラインの計画) | 北海道千歳市美々758-62 | 2027年に後工程のラインを設ける計画 (会社サイトの社員インタビュー)。前工程と同じ敷地で前後工程を一貫して開発する | rapidus.inc | |
| IBMの北米の拠点 | 北米 (ラピダスは都市名を公表していない) | チップレット実装の量産技術の共同開発。製造拠点ではない | rapidus.inc |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 600mm角パネルの有機RDLインターポーザー
- 600mm角のパネルに有機絶縁膜で再配線層 (RDL) を作るインターポーザー。露光装置が1回で焼き付けられる面積 (レチクル) の8倍、81mm角のインターポーザーを想定し、300mmウエハーでは4個しか取れないのに対し600mmパネルでは約49個取れる。業界の標準は300mm径か515mm×500mmのパネル。NEDOの公募で8レチクルを提案したのはラピダスだけだったと折井靖光専務執行役員は説明する (会社サイトの社員インタビュー) rapidus.inc
- ガラス基板
- インターポーザーの材料に、現在主流のシリコンではなくガラスを使う開発を進め、2025年末に600mm角のガラス基板の試作品を発表した (経済産業省資料)。SEMICON Japan 2025では工程中にチップを支えるガラスのキャリア基板を使うチップレット製造技術を紹介した mof.go.jp
- 2.5次元・3次元実装とハイブリッドボンディング
- チップを積層する3次元化でチップ間の接続を短く高密度にする。RCSのパイロットラインはハイブリッドボンディングに対応する。2026年度に2nm世代を含む2.5次元・3次元パッケージの製造技術を開発する計画 rapidus.inc
- 設計キットとテスト
- 後工程の設計に必要なADK (アセンブリー設計キット)、KGD (良品チップ) の選別フロー、最新の後工程技術に対応したリファレンスフローを開発する (2025年度の計画。ラピダスは年度内に進めたと発表) rapidus.inc
- 国際連携
- 米IBM (パッケージ技術の供与)、独フラウンホーファー研究機構 (RDLインターポーザー)、シンガポール科学技術研究庁 (A*STAR) のマイクロエレクトロニクス研究所 (IME、チップとウエハーの接合・チップレット)、技術研究組合最先端半導体技術センター (LSTC)・産業技術総合研究所・東京大学と連携する rapidus.inc
- 認定の段階
- 折井靖光専務執行役員によると、材料と装置条件の組み合わせ (レシピ) の作成、テストチップの高温・低温サイクルなどの信頼性試験 (技術認定)、顧客の実チップでの製品認定の順に進める (会社サイトの社員インタビュー) rapidus.inc
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| パネルの大きさ | 600mm角 (有機絶縁膜RDLインターポーザー、2025年12月試作) | rapidus.inc |
| インターポーザーの大きさ (想定) | 露光面積8個分 (81mm角)、600mmパネルで約49個 (会社サイトの社員インタビュー) | rapidus.inc |
| 対応する工程 | フリップチップBGA (FCBGA)・シリコンインターポーザー・RDL・ハイブリッドボンディング | rapidus.inc |
| クリーンルーム | 約9,000平方メートル | rapidus.inc |
| 装置台数 | 約300台を計画 (会社サイトの社員インタビュー、2026年1月) | rapidus.inc |
| 量産開始 | 2028年度 (実施計画・予定) | mof.go.jp |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 有機絶縁膜 (RDL用の感光性樹脂) | 公表されていない | 公表されていない | — | 公表されていない |
ラピダスは600mm角パネルに有機絶縁膜のRDLを作ったと発表したが、材料の供給元は公表していない A |
| ガラス基板 (キャリア・インターポーザー) | 公表されていない | 公表されていない | — | 公表されていない |
経済産業省の資料は600mm角のガラス基板の試作品を発表したと記すが、ガラスの供給元は公表されていない A |
| パネルレベルパッケージの製造装置 | 公表されていない | 公表されていない | — | 公表されていない |
折井靖光専務執行役員は社員インタビューでパネル用装置の設置完了と約300台の計画を述べるが、装置メーカーは公表していない A |
| パッケージ技術 (ライセンス) | 高性能半導体向けパッケージ技術 海外上場 (NYSE: IBM) |
IBM | — | 米国 | 2024年6月4日の共同発表で、ラピダスがIBMからパッケージ技術の供与を受けると明記 A |
| クリーンルームの建屋 | セイコーエプソン千歳事業所の一部 セイコーエプソンは2026年2月の増資にも出資 |
セイコーエプソン | 6724 | 日本 北海道千歳市美々758-173 |
2024年10月3日の会社発表。千歳事業所はプロジェクター用の高温ポリシリコンTFT液晶パネルの工場で、従業員約200人 A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1技術の供給米IBMからパッケージ技術の供与 (2024年6月)。独フラウンホーファー研究機構・シンガポール科学技術研究庁 (A*STAR) のマイクロエレクトロニクス研究所 (IME)・技術研究組合最先端半導体技術センター (LSTC)・産業技術総合研究所・東京大学と要素技術を開発企業: IBM・フラウンホーファー研究機構・A*STAR IME・LSTC・産業技術総合研究所・東京大学
- 2拠点セイコーエプソン千歳事業所内にクリーンルームを構築企業: セイコーエプソン
- 3材料・装置有機絶縁膜・ガラス基板・装置の供給元は公表されていない。装置はNEDOの委託事業で取得企業: 公表されていない
- 4前工程との接続IIM-1で作った2nmチップをRCSで実装する。基板の製造をチップの製造と並行して始め、後工程の期間を約半分にする考え (会社サイトの社員インタビュー)企業: ラピダス
- 5外部委託フリップチップBGA (FCBGA) 基板への実装とテストは後工程を請け負う企業 (OSAT) に委託する計画。委託先は公表されていない企業: 公表されていない
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1パネルの再配線層 (RDL) 形成600mm角パネルに有機絶縁膜で再配線層を作る。パネル用装置の設置は完了 (2026年1月時点)設備・企業: 公表されていない
- 2シリコンインターポーザー・フリップチップBGAシリコンインターポーザーとフリップチップBGA (FCBGA) の装置を搬入中 (2026年1月時点)。FCBGAは将来、後工程を請け負う企業 (OSAT) への委託も計画設備・企業: 公表されていない
- 3ハイブリッドボンディング・3次元積層チップ同士を直接接合して積層する。パイロットラインに対応装置を置く設備・企業: 公表されていない
- 4良品チップの選別・テストKGD (良品チップ) の選別フローと用途別のチップレットパッケージのテスト技術を開発設備・企業: 公表されていない
- 5信頼性評価テストチップの高温・低温サイクル試験などを解析センター (2026年4月開所) で行う設備・企業: 解析センター
💴 販売価格と補助金
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| チップレット実装の受託 | 公表していない。見積もり | 2026-11-01 | rapidus.inc |
| 項目 | 額 (円) | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| NEDO 研究開発委託費 (後工程) | eetimes.itmedia.co.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 前工程と一体の受託 | 前工程・後工程・設計支援を一体で引き受ける事業RUMSの一部として、2nmチップの前工程と合わせてラピダスと直接契約する。後工程だけを請け負うかどうかは公表されていない | rapidus.inc |
| 米国の窓口 | Rapidus Design Solutions (サンタクララ) が米国の顧客の窓口 | rapidus.inc |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保証・保守 | 実装の保証条件は公表されていない。ラピダスは社員インタビューで、顧客の実チップでの製品認定を経て量産に入る手順を説明するにとどまる | rapidus.inc |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 海外全般 | 量産開始前で、輸出の実績はない。経済産業省の資料はAIデータセンターで使う特定用途向け半導体 (ASIC) を設計する海外のファブレス企業からの受注を先に狙うとする。輸出管理 (外為法・米国EAR) の扱いはラピダスが公表していない | mof.go.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年度 | NEDO研究開発委託費 (後工程・支援上限額) | 1,174 | 億円 | 製品の売上ではない。経済産業省の2026年4月11日の発表 (報道) | eetimes.itmedia.co.jp |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| クリーンルーム面積 | 約9,000平方メートル | rapidus.inc | |
| 装置台数 (計画) | 約300台 | rapidus.inc |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
後工程の量産は、前工程より1年後の2028年度の計画だ。2025年12月の600mm角パネルの試作と2026年4月の本格稼働は、ラピダスの発表のとおり進んだ。ラピダスが狙うのは、300mmウエハーで4個しか取れない露光面積8個分のインターポーザーを1枚のパネルから約49個取ることだ。この取れる個数はラピダスの説明にとどまり、歩留まりの数字はまだない。顧客と価格は公表されていない。前工程との一体提供を売りにし、IBMからの技術供与とフラウンホーファー・A*STARとの連携で要素技術を補う。材料 (有機絶縁膜・ガラス基板) と装置の納入企業はまだ公表されておらず、セイコーエプソンが建屋の提供と出資の両方で関わる唯一の名前の出た国内企業である。
公表されていないこと
- 有機絶縁膜・ガラス基板・装置の供給元
- FCBGAとテストの委託先 (OSAT)
- 600mmパネルの歩留まりと実装の信頼性試験の結果
- 後工程だけを請け負うかどうか
- 実装の価格と顧客
出所
- Rapidus、最先端半導体 (後工程) の研究開発機能をセイコーエプソン千歳事業所内に設置 (2024-10-03)
- Rapidus、解析センターとRCSを開所 (2026-04-11)
- NEDO、2026年度の計画・予算を承認 (Rapidus発表) (2026-04-11)
- NEDO、2025年度の計画・予算を承認 (Rapidus発表) (2025-04-01)
- NEDO、2024年度の計画・予算を承認、チップレットパッケージ開発も採択 (2024-04-02)
- Rapidus and IBM Expand Collaboration to Chiplet Packaging Technology (2024-06-04)
- Rapidus 事業と技術 (チップレットパッケージ) (2026-11-01)
- 折井靖光 専務執行役員インタビュー (前工程と後工程の統合) (2026-01-26)
- 清水敦男 代表取締役インタビュー (IIM-1の現場) (2025-11-11)
- 石丸一成CTOインタビュー (2025-07-18)
- Rapidus、『SEMICON Japan 2025』に出展 (2025-12-15)
- 財政投融資分科会 説明資料 (経済産業省・IPA) (2026-10-19)
- Rapidus 2nmパイロットライン立ち上げ (マイナビニュース) (2025-04-01)
- 経産省、Rapidusに6315億円追加支援 (EE Times Japan) (2026-04-13)
出所との照合日: 2026年11月1日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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