無料で配られた1枚に、値動きの型が22並んでいる。本誌はその22を1つ残らず書き出し、どこまでが確かめられた事実で、どこからが裏づけのない主張なのかを分けた。読者が受け取る図形は22、公表されている比率は1つだけだった。

「彼らはこれを公にしたくない」という書き出しで、値動きの型を並べた1枚が拡散している。添えられた文章は、内部にいる者は指標を見ておらず、流動性の在りかと、誰が損を抱えているかと、どうすれば値動きを起こせるかだけを見ている、と説明する。並ぶ型はどれも偶然ではなく、注文が積み上がった場所へ価格を動かすために存在する、とも書く。文章は最後に、次の局面では自分の読者が最初に知ることになる、通知を入れておけ、と結ばれている。

投稿が主張する事柄は、米商品先物取引委員会と司法省の処分記録、欧州の監督機関の分析、注文の集中に関する学術研究、金融庁のEDINET、米証券取引委員会の提出書類、セントルイス連邦準備銀行が配信する経済統計、総務省の家計調査と突き合わせて確かめた。以下はその結果である。

22の型を1つも落とさずに書き出す

一覧は22の型でできている。どの型も、下降局面の図と上昇局面の図が対で描かれ、同じ形を上下反転させた作りになっている。前半の11を、表記のまま並べる。

見出し (資料の表記)描かれている形図に添えられた注記
QM Quick Retest高値と安値が非対称に並んだ後、QMの水準へ素早く戻るQM Level (QML)
DM Shadowろうそく足の影で切り上がった高値を作るHH / LL / QML
Continuation QM同じ向きの動きが続くContinue Downtrend / Continue Uptrend
2R/2S fakeout抵抗線2本・支持線2本を抜けて戻すR R / S S
V TwinV字の谷が2つ並ぶV
Flag B旗の下限を抜けて戻すFlag Limit */ Supply / Engulf previous low
Fakeout V1 (Default)基本形の抜け戻しR1 R2 / S1 S2
Fakeout V3 (Diamond)ひし形の抜け戻しHead of QM is at same level as previous R1/R2
Double SSR支持線・抵抗線が3本ずつ並ぶS S S / R R R
3 Drive同じ向きに3回押し込む1 drive / 2 drive / 3 drive
Can-Can細かい上下を繰り返して値幅が縮む注記なし

QMはQuasimodoの略で、高値と安値の並びが左右で非対称になる形を指す。22のうち5つがこの語を含み、QM Quick Retest、QM Late Retest、Continuation QM、QM Re - Entry、Ignored QM が同じ骨格の派生にあたる。残る17は、抜けて戻す動き、旗、圧縮、押し込みという4つの発想に分かれる。

後半の11には、定規、罠、圧縮という別の系統が入る。

見出し (資料の表記)描かれている形図に添えられた注記
QM Late Retest戻りが遅れて来るQML
QM Re - Entry大きい水準と小さい水準を分けて入るMain QML / Entry at small QML
Ignored QM (IQM / QMTR上下を反転させた形。括弧が閉じていないIQML / Wait for Fakeout / HH / R / LL / S
Ruler (Pembaris)同じ高さの山や谷が定規の目盛りのように並ぶ1 2 3 4 5
MPL直前の安値・高値を飲み込んで反転するStop hunt / Engulf previous Low / Stop hunt / Supply
Flag A + Flag B旗が2つ連なるFlag A / Flag B / Engulf / LL / R1 R2
Fakeout V2 (SR Flip)支持線と抵抗線が入れ替わるSR Flip / RS Flip
Fakeout V3 (Diamond SBR)ひし形と支持・抵抗を組み合わせるR1 R2 / S1 S2
Compression (CP)斜めの線に沿って値幅が縮むSupply Clear / Demand Clear
Compression Liquidity (CPLQ)圧縮に注文の厚みを重ねるLQ
Can-Can + Fakeout圧縮の後に抜けて戻すFake Supply / Fake Demand / LQ

Pembarisはマレー語で定規を指す。番号1から5までを等間隔に振った図が添えられており、等間隔であること自体が型の条件になっている。作者がマレーシアを拠点にしていることが、用語の側に残っている。

注記に現れる言葉には偏りがある。逆指値の刈り取りを指すStop huntが3か所、直前の値を飲み込むEngulfが3か所、偽物を指すFakeが2か所に出る。いずれも他人の注文が処理されることを前提にした語で、値動きそのものを説明する語ではない。一覧の語彙は、値動きの記述ではなく、その裏で誰が損をしているかの物語で組まれている。

「描かれている形」の欄は、図から本誌が読み取ったものである。一覧の側には、どの型にも文章による定義が付いていない。 数値の基準も、どの時間軸で見るかの指定も無い。型の名前と図だけが並び、条件は読む側に委ねられている。

一覧そのものに残る4つの食い違い

22の見出しと凡例を並べると、一覧そのものの不整合が表に出る。いずれも図を眺めているだけでは気づきにくい。

一覧に残る食い違い
一覧に残る食い違い

第1に、版番号が重複している。「Fakeout V3 (Diamond)」と「Fakeout V3 (Diamond SBR)」があり、同じ番号が2つの別の型に付いている。V4は存在せず、V1・V2・V3・V3という並びになる。

第2に、括弧が閉じていない。「Ignored QM (IQM / QMTR」は開き括弧のまま終わっている。この手法の一般的な呼び名は「Inverted QM」で、頭文字のIQMと合うのは Inverted の側である。

第3と第4は凡例にある。10の記号のうち2つが、図の中の用法と合わない。

記号凡例の定義図の中での用法
SSupport (支持線)一致する
RResistance (抵抗線)一致する
LLine (線)高値を示すHと対になる位置にあり、安値を指している
HHigh (高値)一致する
LLLower Low (切り下がった安値)一致する
HHHigher High (切り上がった高値)一致する
LQLiquidity (注文の厚み)一致する
QMQuasimodo水準を示す記号は一貫してQML
Supply Zone供給の帯 (赤)一致する
Demand Zone需要の帯 (緑)一致する

食い違うのはLとQMの2つで、いずれも凡例の側が図に追いついていない。Lは線と定義されながら実際には安値を指し、QMはQuasimodoと定義されながら図の記号はQMLで通っている。

無料で配る資料に誤植があること自体は珍しくない。ただし、この一覧は「内部の者が使っている図」として拡散している。内部で使われている図なら、版番号が重複したまま何年も流通し続ける理由の説明が必要になる。しかも写しはどれも、同じ食い違いを持ったまま複製されている。

元になった講座は5,000ドルから2万ドルで売られている

一覧には、ReadTheMarket.com と Mansor Sapari (CMS) から採ったと記されている。この名義は無料で配られた図の出どころではなく、有料の講座の出どころである。

講座と一覧の関係
講座と一覧の関係

同講座について、取引者向けの掲示板と複数の紹介サイトは、受講料が5,000ドルを超え、2万ドルに達するものもあると記す。入門にあたる Lite 講座は1,275ユーロと記されている。手法の土台は Sam Seiden の需給の考え方にあり、そこから注文の流れと図形上の位置に重心を移したものだと説明されている。

同じ一覧の写しは、文書共有サイトと講座の海賊版を扱うサイトに複数置かれている。無料で手に入る状態が既に何年も続いており、「公にしたくない」という前置きが指す秘匿の実態は見当たらない。無料の図は講座への入口として働き、拡散すればするほど講座の名前が広がる。配る側の利益は、図の内容ではなく図が運ぶ名義の側にある。

注文がキリのよい数字に集まることは、確かめられている

投稿の主張のうち、学術的な裏づけがある部分と、無い部分をはっきり分けておく。

注文の集中に関する研究
注文の集中に関する研究

裏づけがあるのは、注文が特定の水準に集まるという部分である。Carol Osler は大手為替銀行の板 (注文の一覧) を調べ、逆指値注文と利益確定注文がキリのよい数字に強く集中し、下2桁が00で終わる水準の注文が全体の約10%を占めると報告した。Bourghelle と Cellier は指値注文が目立つ水準に集中してその水準だけ厚みを増し、価格の壁として働くと示した。Goodhart と Curcio、Sopranzetti と Datar、Mitchell と Izan も直物為替相場で同じ集中を観測している。

集中が起きる理由は単純で、多くの参加者が同じ場所に注文を置くためである。直近の安値の少し下、支持線の下、100や50で終わる水準。注文を置く側の思考が似ていれば、注文の位置も似る。

裏づけが無いのは、22の図形がその集中の在りかを示す地図だ、という部分にあたる。集中の研究が測っているのは板の中身であり、値動きの形ではない。注文の記録は取引所と業者が持っており、図形からは推し量れない。

同じ形が何度も見えるのは、目の側の事情でもある

値動きの図を長く見ていると、同じ形が繰り返し現れるように感じられる。この感覚そのものは正しい。ただし理由は2つあり、投稿はその片方しか説明していない。

1つ目の理由は、値動きが上下を繰り返すものである限り、高値と安値の並び方の組み合わせが有限だという点にある。3つの山と2つの谷という骨格に、それぞれの高さの大小関係を割り当てると、組み合わせは数十通りにしかならない。22の型はその中から選ばれた一部で、どの型も出現する。出現すること自体は、その型に意味があることを示さない。

2つ目の理由は、選び方の側にある。図を教える教材は、その型が現れて、その後に予想どおり動いた場面を例として載せる。現れたが動かなかった場面は載らない。読者が見る例は、成功した側だけを抜き出したものになっている。この選別は意図的とは限らず、教える側が「よく説明できる例」を選ぶだけで自然に起きる。

過去の値動きを後から見れば、22の型のどれかが当てはまる場面はいくらでも見つかる。当てはまった場面を数えることと、当てはまった後に予想どおり動いた比率を数えることは別の作業で、後者を示した資料は見当たらない。図を22覚えた読者が身につけるのは、値動きを分類する語彙であり、分類したあとに何が起きるかの確率ではない。

図形の一致を機械で判定すると、何が起きるか

22の型を機械に判定させる作業は、技術としては定型にあたる。値動きの並びから高値と安値の並びを取り出し、型ごとに定めた条件と照合する。条件は、直前の高値より高いか、直前の安値より低いか、2つの水準の差が一定の範囲に収まるか、という比較の組み合わせで書ける。22の型は、いずれもその形で表せる。

問題は判定の後にある。型が現れた回数を数え、その後の値動きを集計すると、必ず何らかの数字が出る。出た数字が偶然でないことを示すには、同じ検定を何度繰り返したかを数えに入れる必要がある。22の型に対し、上昇と下降の2方向、複数の時間軸、複数の銘柄を掛け合わせれば、検定の回数は数百に達する。有意水準を5%に置いたまま数百回試せば、実際には何も無くても十数回は「効いている」という結果が出る。多重比較の調整を入れずに型の有効性を語ることは、統計の手続きとしては成り立たない。

もう1つの落とし穴が、条件の後づけである。型の定義に「一定の範囲」という余地がある限り、過去の値動きに合うように範囲を選べる。選んだ後で同じ範囲を将来に当てると、成績は落ちる。機械学習の分野で過学習と呼ばれる現象と同じ構造で、標本の中でよく当たる規則ほど、標本の外では当たらない。前掲の表のとおり、22の型には数値の基準が付いていない。基準が無いということは、判定する側が後から決められるということでもある。

検証の作法は決まっている。型の条件を数式で固定し、決めた期間の外側の値動きだけで成績を測り、検定の回数に応じて有意水準を厳しくする。この3つを踏んだ検証を、一覧も投稿も示していない。図形の一覧が示すのは、値動きを分類する語彙であって、その語彙が利益に結びつくかどうかとは別の話になる。

相場を動かした側は、実際に罰せられている

「注文が積み上がった場所へ価格を動かす」という行為が現実に存在するかどうかは、処分記録で確かめられる。存在する。

処分された相場操縦
処分された相場操縦

2020年9月29日、米商品先物取引委員会はJPモルガン・チェースと関係2社に合計9億2,020万ドルの支払いを命じた。同委員会が1件で科した金銭的な処分として過去最大である。内訳は賠償が3億1,173万7,008ドル、利益の吐き出しが1億7,203万4,790ドル、民事制裁金が4億3,643万1,811ドルで、いずれも過去最高だった。司法省と証券取引委員会の調査も並行して解決している。

行為の中身は明快である。2008年から2016年まで、貴金属デスクと米国債デスクの責任者を含む多数の担当者が、金・銀・プラチナ・パラジウムと米国債の中期債・長期債の先物で、取り消す意図をもって数十万件の注文を出した。買う気も売る気もない注文を並べて相場を傾け、本当に売買したい相手から利益を取る手口にあたる。

監視する側の道具も公になっている。取引所と規制当局は、注文の出し方そのものを機械で監視する仕組みを持つ。1件の注文が板に載っていた時間、取り消しの比率、同じ担当者が短時間に出した反対向きの注文の並びといった指標を、約定の記録から計算する。取り消す意図があったかどうかは、この指標の異常値として最初に浮かぶ。JPモルガンの件で当局が押さえたのも、この種の記録だった。値動きの図からではなく、注文の履歴から入る。

ただし罰せられた手口は、22の型のどれでもない

処分の記録を読むと、投稿の論理に飛躍があることも同時に分かる。

処分された手口と図形の距離
処分された手口と図形の距離

処分の対象は、板に出しては消される注文そのものである。値動きの形ではない。当局が証拠として使ったのは、担当者の発注記録と社内のやり取りであり、線や図形ではない。同じ行為を外から見分けようとしても、板の履歴を持たない参加者には手が届かない。

さらに、この手口は違法である。8年間続いた末に9億ドルを超える制裁を受けた行為を、繰り返される決まった形として当てにするのは筋が通らない。罰せられた以上、同じことを同じ規模で続ける組織は減る。処分記録は「起きていた」ことの証拠であって、「これからも同じ形で起き続ける」ことの証拠にはならない。

投稿が触れていないのはこの区別である。相場操縦が実在することと、22の図形がその痕跡であることは、まったく別の主張になる。前者には9億2,020万ドルの記録があり、後者には何もない。

投稿が1度も出さない数字がある

読者にとって最も重要な数字が、投稿には出てこない。損失を出している口座の比率である。

公表されている損失口座の比率
公表されている損失口座の比率

欧州証券市場監督機構は2018年3月、域内各国の所管当局が差金決済取引を分析した結果として、個人の口座の74%から89%が損失を出していると公表した。1顧客あたりの平均損失は1,600ユーロから29,000ユーロだった。同機構と英金融行為監督機構は、業者に対し標準化されたリスクの警告文を出すこと、そのうえで自社の顧客のうち損失を出した口座の比率を数字で示すことを求めている。

この比率は、業者ごとに毎四半期公表される。読者が同じ手法を教える相手の広告を見るときに、最初に確かめられる数字にあたる。投稿が「99.9%の人より先を行ける」と書くとき、その99.9%の側には、74%から89%という別の数字が既に置かれている。

日本の開示義務には、その比率が入っていない

同じ数字を日本で探すと、見つからない。

日本と欧州の開示義務
日本と欧州の開示義務

2019年9月以降、店頭の外国為替証拠金取引を扱う金融商品取引業者は、金融商品取引業等に関する内閣府令 第117条第1項第28号の2にもとづき、未カバー率、カバー取引の状況、平均証拠金率を開示することが義務づけられた。業者が抱えた持ち高をどれだけ外へ流したかという、業者側の健全性に関わる項目である。顧客のうち損失を出した口座の比率は、この義務に含まれていない。

規模は小さくない。金融先物取引業協会の集計では、2026年7月末時点で店頭の外国為替証拠金取引を扱う業者は46社、月間の取引高は882兆768億円にのぼる。日本の名目国内総生産を上回る金額が、1か月で売買されている計算になる。それだけの取引がありながら、顧客の何割が負けているかを示す公式の数字は存在しない。

「ロスカット」を書いた社が、ほとんど無い

日本の業者が自社の開示で何を書いているかを、語数で測った。本誌は個人向けの証拠金取引と証券・投資情報に関わる11社の最新の有価証券報告書を全文で数えた。

日本11社の語数
日本11社の語数

証拠金という語はヒロセ通商が156回、トレイダーズホールディングスが80回、GMOフィナンシャルホールディングスが70回と多い。カバー取引もヒロセ通商64回、トレイダーズ21回、GMO 18回で、業者の健全性に関わる説明は厚い。ところが強制的に持ち高を切る仕組みを指す「ロスカット」は、ヒロセ通商5回、トレイダーズ4回、いちよし証券と光世証券が各2回、GMOとSBIホールディングスが各1回にとどまる。顧客の資金が実際に失われる瞬間の説明は、開示の中で薄い。

対面で売る側は別の語を使う。勧誘は光世証券33回、極東証券33回、いちよし証券29回で、手数料は極東証券81回、いちよし証券73回、丸三証券59回になる。株式情報を扱うミンカブ・ジ・インフォノイドは広告を63回書く。同じ個人の資金をめぐりながら、証拠金の側は取引の仕組みを、対面の側は勧誘と手数料を、情報の側は広告を書いている。

収益の効率にも差が出る。ヒロセ通商は従業員93人で営業収益104億9,057万円、1人あたり1億1,280万円になる。GMOフィナンシャルホールディングスは476人で495億1,800万円、1人あたり1億400万円。一方でマネックスグループは1,122人で100億3,100万円、1人あたり894万円である。証拠金取引を主力にするほど、少人数で大きな収益を上げる構造になっている。

「流動性」は98回、「逆指値」は1回

米国側でも同じ数え方をした。個人を客にする証券・暗号資産・値付け業務の8社が対象である。

米国8社の語数
米国8社の語数

流動性という語は8社すべてが多用する。ロビンフッド・マーケッツ98回、バーチュ・フィナンシャル96回、チャールズ・シュワブ88回、トレードウェブ86回。投稿が中心に置く概念は、業界の言葉としてはっきり存在する。ところが逆指値を指す語を書いたのは、ストーンエックスの1社1回だけだった。見せ玉を書いたのはコインベースの1回のみである。

注文回送の対価を最も書くのは、それを払う側にあたる。バーチュ・フィナンシャルが注文の流れを51回、注文回送の対価を8回書き、受け取る側のロビンフッドは3回にとどまる。ロビンフッドはむしろ暗号資産を229回、オプションを83回、信用取引を71回書く。インフルエンサーに3回、交流サイトに8回触れているのも、客がどこから来るかを示している。

変動率は15.7、貯蓄率は2.6%

投稿が描く相場の姿と、統計が示す姿を並べる。

相場と家計の実勢
相場と家計の実勢

株価の変動率指数 (VIX) は2026年9月8日に15.72だった。2020年12月の22.75、2024年12月の17.35より低く、長い目で見た平均を下回る。S&P500は2019年末の3,230.78から7,636.36へ136.4%上がり、ナスダック総合は8,972.600から26,421.410へ194.5%上がっている。混沌でも荒れ相場でもなく、静かに上がり続けた6年9か月になる。

一方で米国の家計貯蓄率は2019年12月の6.2%から2026年6月の2.6%へ下がった。2020年12月には11.8%まで上がっていた数字が、5年半で4分の1以下になっている。家計と非営利団体の株式保有は58兆3,331億ドルで、純資産182兆9,798億ドルの31.9%にあたる。相場に置いた資産の比率は高く、損失を吸収する余力は薄い。

家計の有価証券は7年で2.40倍、収入は9.9%増

日本の家計でも同じ方向の動きが起きている。総務省の家計調査から、二人以上の世帯の全国平均を取り出した。

日本の家計の資産構成
日本の家計の資産構成

2019年1〜3月期の有価証券は213万円だった。2026年1〜3月期には511万円で、2.40倍になっている。貯蓄に占める比率は12.1%から24.1%へ上がった。同じ期間に年間収入は628万円から690万円へ9.9%しか増えていない。定期性預貯金は669万円から527万円へ21.2%減っている。

収入がほとんど増えないなかで、定期預金から有価証券へ資金が移っている。2021年から別掲されるようになった株式は154万円から235万円へ52.6%増えた。値動きの型を教える資料に読者が集まる理由は、この資産構成の変化そのものにある。読者が増えれば、読者を相手にする商いも増える。

誰の収益になっているか

資料と投稿の流れを、資金の動きで追い直す。

収益がどこで生まれるか
収益がどこで生まれるか

図を作った側の収益は講座にある。5,000ドルから2万ドル、入門で1,275ユーロという価格が公になっている。無料の図はその入口で、拡散するほど講座の名前が広がる。投稿を拡散した側の収益は読者数にある。「通知を入れておけ」という結びは、次に売るものがある前提で書かれた文にあたる。

業者の収益は取引の回数と持ち高にある。日本の店頭の外国為替証拠金取引は月間882兆768億円で、証拠金を主力にする業者は1人あたり1億円を超える営業収益を上げている。米国では注文回送の対価が値付け業者から支払われ、受け取る側の年次報告に3回、払う側に8回という非対称な形で現れる。

読者の側に残るのは、公表された74%から89%という数字だけになる。日本にはその数字すら無い。図形を22覚えることと、この比率を1つ確かめることでは、後者のほうが手間は少ない。

読者が自分で確かめられる3つの手順

投稿を見た読者が、図形を22覚える前にできることがある。いずれも公開された情報だけで完結し、費用もかからない。

第1に、取引しようとする相手が欧州で認可を受けているかどうかを調べ、持つなら広告と口座開設の画面に出る警告文を読む。そこには自社の顧客のうち損失を出した口座の比率が数字で書かれている。四半期ごとに更新され、業者間で直接に比べられる。日本の登録しか持たない業者にはこの表示が無いため、比べる材料そのものが存在しない。

第2に、金融先物取引業協会が毎月出す集計で、店頭の外国為替証拠金取引の業者数と取引高を見る。2026年7月末で46社、月間882兆768億円になる。この規模の取引が動きながら、顧客の何割が負けているかを示す公式の数字が無い、という状態を確かめておく。

第3に、有価証券報告書で業者の収益構造を読む。ヒロセ通商は従業員93人で営業収益104億9,057万円、1人あたり1億1,280万円になる。取引が成立するたびに収益が生まれる仕組みであり、顧客が勝つか負けるかとは別の場所に収益源がある。この構造を理解しておけば、無料で配られる図の役割も見えてくる。

読者が次に確かめる数字

  • 取引しようとする業者が欧州で認可を受けているなら、標準化された警告文に載る自社の損失口座比率。四半期ごとに更新され、業者間で直接に比べられる。日本の登録しか持たない業者にはこの数字が無い。
  • 店頭の外国為替証拠金取引の月間取引高と業者数。2026年7月末で882兆768億円と46社。取引高が増えても顧客の損益は公表されないため、規模の拡大は顧客の成績とは別に読む必要がある。
  • 家計調査の有価証券と定期性預貯金。2026年1〜3月期で511万円と527万円まで接近した。有価証券が定期預金を上回れば、家計の資産構成は1970年代以降で例のない位置に入る。

図に描かれた22の型は、値動きを見るための語彙としては使える。ただし語彙が増えることと、相場から利益を取れることの間には、公表された数字ひとつ分の隔たりがある。9億2,020万ドルの制裁記録は、相場を動かす行為が実在したことを示す。74%から89%という比率は、その相場に向かった個人の側に何が起きたかを示す。どちらも無料で読めて、どちらも投稿には書かれていない。