村田製作所が8月の1か月で599億9,997万円を買い付けた。枠は5月11日に開いていたが、7月まで1株も取得していない。前提レートを開示した主要企業を並べ、1円動いたときの金額を一次資料で確かめた。

7月7日、村田製作所 (6981) は「自己株式の取得状況に関するお知らせ」で、6月の取得を0株・0円と開示した。2か月後の9月7日、同じ様式の開示に8,160,300株・59,999,969,500円という数字が並んだ。取得期間は8月1日から8月31日、取得方法は東京証券取引所における市場買付。累計欄 (2026年8月31日現在) も同じ8,160,300株・59,999,969,500円で、つまり5月11日の開始から7月末までの取得はすべてゼロだったことになる。2枚の開示の間で何が変わったのかを、会社の四半期資料、47社の想定為替レート、有価証券報告書のヘッジ注記、そして実勢レートの実測で追う。

村田製作所の自己株式取得の開示 (2026年7月7日・9月7日)
村田製作所の自己株式取得の開示 (2026年7月7日・9月7日)

枠は5月11日に開いていた ― 取得ゼロの2か月半と、8月の1か月

2026年4月30日の取締役会が決めた枠は、取得し得る株式の総数75,000,000株 (上限)、取得価額の総額1,500億円 (上限)、取得期間2026年5月11日から2027年1月29日である。75,000,000株は発行済株式総数 (自己株式を除く) の4.12%に当たる。6月5日の開示 (5月11日〜31日) が0株・0円、7月7日の開示 (6月) が0株・0円、そして9月7日の開示で累計が8月分と一致したことから、7月の取得もゼロだったと確定する。枠が開いてから最初の82日間、会社は1株も買わなかった。

月次開示から復元した取得の推移
月次開示から復元した取得の推移

8月の数字を割り戻すと、平均取得単価は7,352.67円になる (59,999,969,500円 ÷ 8,160,300株)。取得価額は1,500億円の枠のちょうど40.0%で、上限まであと30,500円という位置に止まった。金額の枠に張り付いた形であり、株数ではなく金額を基準にした発注が組まれていたことを示す。8月の東京証券取引所の立会日は20日 (11日は山の日で休場) だったから、1日当たり30.0億円ずつ買った計算になる。

株数の上限が効いていない点も見ておきたい。7,352.67円で1,500億円を使い切っても取得できるのは約2,040万株で、発行済株式総数 (自己株式を除く) の1.12%にすぎない。決議した75,000,000株 (4.12%) の27%にしか届かない。株数の上限は制度上の余裕枠であり、実際に効くのは金額の1,500億円だけである。この構造は、株価が上がるほど取得株数が減り、下がるほど増えることを意味する。会社が単価に無関心なら金額基準、取得株数に意味を持たせたいなら株数基準を選ぶが、村田は前者を選んでいる。

取得しなかった2か月半に、会社は沈黙していたわけではない。7月31日の第1四半期決算説明資料に「当年度に予定している1,500億円の自己株式取得についても、当初方針どおり実施する予定」と明記している。その翌営業日から買い始めた形跡が、8月の600億円である。第1四半期の連結キャッシュ・フロー計算書に載る自己株式の取得による支出はわずか4百万円で、これは単元未満株の買取請求に応じた規模にとどまる (前年同期は373億72百万円)。期末自己株式数も142,709,692株から142,712,565株へ2,873株しか増えていない。

増益368億円のうち168億円が為替 ― 村田の第1四半期

8月の買い付けの前に、7月31日の数字がある。第1四半期 (2026年4〜6月) の売上収益は5,023億円で四半期として過去最高、前年同期比20.7%増。営業利益は985億円で59.8%増、営業利益率は14.8%から19.6%へ上がった。会社はこの増収増益を為替の影響と実力に分けており、売上収益の増加861億円のうち335億円、営業利益の増加368億円のうち168億円が為替である。為替を除いた増収率は12.6%、増益率は32.6%になる。

村田製作所の2027年3月期第1四半期
村田製作所の2027年3月期第1四半期

第1四半期の対米ドル平均レートは159.49円で、前年同期の144.60円から14.89円の円安。期末レートは2026年6月末が162.45円、3月末が159.93円、前年6月末が144.82円である。通期予想は売上収益2兆1,100億円 (4月予想比1,500億円の上方修正)、営業利益4,300億円 (同500億円の上方修正) に引き上げ、第2四半期以降の為替の前提を1米ドル150円から155円へ変えた。会社が示す対ドル感応度は年間で売上収益が約90億円、営業利益が約45億円 (いずれも1円当たり) である。

前提を150円から155円へ5円動かせば、感応度どおりなら営業利益で225億円分の上振れ要因になる。実際の上方修正幅500億円のうち、残りは数量と価格の善で説明される。コンデンサの売上収益は30.0%増の2,825億円、用途別ではコンピュータ向けが47.0%増の1,029億円で、データセンター向けが牽引した。自己株式の取得を8月に実行できる根拠は、この四半期の数字と通期の引き上げにある。

162円から130円まで ― 47社が置いた前提の幅

同じ時期に、主要企業が置いている想定為替レートは1米ドル162円から130円まで広がっている。最も円安を見込むのがキオクシアの162円、最も円高を見込むのがソシオネクストの130円で、その差は32円ある。同じ通貨、同じ期間について、会社ごとに32円の見方の幅がある状態である。

開示された想定為替レートの分布
開示された想定為替レートの分布

分布には偏りがある。150円に13社 (味の素コマツ、アステラス製薬、アドバンテスト三菱重工業川崎重工業日産自動車任天堂伊藤忠商事三井物産住友商事三菱商事、三菱HCキャピタル) が集まり、160円に11社 (日立製作所INPEX、日東紡、SUMCO、信越化学、日本製鉄住友金属鉱山、古河電工、フジクラ太陽誘電トヨタ自動車) が並ぶ。150円は前期 (2026年3月期) の期中平均150.67円をほぼそのまま置いた水準であり、160円は足元の実勢に寄せた水準である。前提の立て方に、前期実績を引き継ぐ会社と直近を織り込む会社の二通りがあることが読み取れる。

数字の一部は一次資料で裏が取れる。トヨタ自動車は第1四半期の説明資料で通期の前提を1米ドル160円・1ユーロ181円と明記した。任天堂は8月6日の資料で「前提為替レートは1ドル150円、1ユーロ175円」と書いている。アドバンテストは「当連結会計年度第2四半期以降の9か月間の為替レートは、米ドルが150円、ユーロが170円」と記す。村田は150円から155円への引き上げを短信に書いた。一方で、安川電機の145円は単年度の想定ではなく、中期計画「Dash 35」が置く2029年度の前提である (2025年度の実績レートは149.87円)。日立製作所は6月提出の有価証券報告書の時点では見通しを1ドル150円としており、9月時点で流通している160円との間に10円の開きがある。前提は固定値ではなく、四半期ごとに動く。

実勢は159.88円 ― 前提より円安に振れた5か月

前提の高低は、実勢と並べて初めて評価できる。セントルイス連邦準備銀行が公表する日次のドル円 (DEXJPUS) で2027年3月期の期間を集計すると、4月1日から8月28日までの平均は159.88円、最高値は163.86円、最安値は156.44円だった。第1四半期 (4〜6月) の平均は159.36円、7〜8月は160.65円である。前期 (2025年4月〜2026年3月) の平均150.67円と比べると、9.21円の円安が既に実現している。

実勢レートと想定レートの位置関係
実勢レートと想定レートの位置関係

月別に見ると、2026年7月の月平均162.33円が最も円安で、8月は158.80円に戻した。7月の高値163.86円はキオクシアの想定162円をも上回る。逆に8月の安値156.96円は村田の155円に接近した。前提150円を置く13社は、実勢がこのまま推移すれば約10円分の余地を持つことになり、前提162円のキオクシアは実勢が162円に届かない限り為替では上振れしない。想定為替レートの一覧を眺めるときに必要なのは、この実勢との距離である。

1円でいくら動くのかを書いている会社は6社

距離が分かっても、金額に直せなければ投資の判断材料にならない。1円当たりの業績影響額を自ら開示している会社は、確認できた範囲で6社にとどまる。

開示された1円当たりの為替感応度
開示された1円当たりの為替感応度

トヨタ自動車は通期の為替影響を米ドル+4,200億円、ユーロ+150億円と示した。前提を150円から160円へ、180円から181円へ動かした場合の金額であり、ドルは1円当たり約420億円に相当する。日立製作所は有価証券報告書に「見通しの為替レートから1円変動した場合の業績影響額」として、ドルが売上収益145億円・Adjusted EBITA 15億円、ユーロが売上収益90億円・Adjusted EBITA 8億円と書いた。三菱商事は「米ドル・円のレートが1円変動すると、当社の当期純利益は年間約50億円増減する」と記す。INPEXは「1円変動すると、外貨建て売上及び原価等の増減により、2026年12月期の損益は年間30億円増減する」とし、三井物産は感応度表に豪ドル1円当たり18億円を原油や石炭と並べて掲げている。村田の約45億円 (営業利益) を加えて6社である。

日立の開示は、この種の数字の読み方を教えてくれる。1円の円安が売上収益を145億円押し上げるのに対し、利益段階に残るのは15億円で、割合にすると10.3%にとどまる。残りは外貨建ての費用に吸収される。海外に生産と販売の両方を持つ会社ほど、売上高と費用が同じ通貨で立つため相殺が働く。1円の円安が丸ごと利益になるという前提は、どの会社にも当てはまらない。

有価証券報告書の「為替感応度分析」は事業の感応度ではない

残る40社余りが何も開示していないかというと、そうではない。有価証券報告書の「金融商品関係」注記には、ほとんどの会社が為替感応度分析を載せている。ただし、その中身は事業の感応度とは別物である。

金融商品の為替感応度分析 (1%前提)
金融商品の為替感応度分析 (1%前提)

村田の注記は「日本円が米ドルに対して1%円高になった場合に、連結損益計算書の金融費用の計上により税引前当期利益に与える影響」を11億41百万円の減益としている。同じ会社が事業では1円 (約0.63%) の円高で45億円の減益と書いているのだから、桁が違う。差は対象範囲にある。注記の分析は期末に保有する外貨建ての金融商品だけを動かしたもので、1年分の売上高や仕入れは入らない。在外子会社の資産負債を円に換算する影響も除くと明記されている。

各社の数字も同じ性質である。三菱重工業は1%円高で米ドル30億74百万円の減益、本田技研工業は20億46百万円の減益、IHIは14億70百万円の減益、川崎重工業は米ドル4億83百万円の減益。キオクシアに至っては0.02億円の減益で、売りと買いの予約が釣り合って残高がほぼ相殺されている状態を示す。アステラス製薬だけは10%の前提で書き、米ドルは円高で17億85百万円の増益、ユーロは32億50百万円の減益と符号が分かれる。外貨建ての負債が資産を上回る通貨では、円高が利益をもたらす。

投資家が必要とするのは事業の側の数字だが、制度が義務づけているのは金融商品の側である。この非対称が、想定為替レートの一覧は出回るのに感応度が出回らない理由になっている。

想定162円のキオクシアが156.05円で34億ドルを売っていた

もう一つ、想定為替レートの一覧からは見えない層がある。ヘッジである。

ヘッジの想定元本と平均レート
ヘッジの想定元本と平均レート

キオクシアの2026年3月期有価証券報告書は、キャッシュ・フロー・ヘッジとして為替予約 (売予約) の契約額等5,407億51百万円、想定元本3,425百万米ドル、平均レート156.05円と開示している。買予約は938億2百万円・593百万米ドル・158.61円、通貨スワップは3,266億56百万円・2,200百万米ドル・148.48円である。想定為替レート162円を掲げる会社が、34億25百万ドルを156.05円で売る契約を持つ。1ドル当たり5.95円、対象額に掛けると約204億円が、実勢が162円まで円安に振れても取り込めない計算になる。売予約の公正価値は77億52百万円の負債で、円安が進んだ分だけ含み損として積み上がっている。前期の売予約は1,081百万米ドル・147.28円だったから、想定元本は1年で3.2倍に膨らんだ。

規模で目を引くのはファーストリテイリングである。2025年8月31日現在の為替予約契約の残高は2兆7,743億63百万円。同期の売上収益3兆4,005億39百万円に対して81.6%に相当する。同社は仕入れが外貨建てで売上高の多くが円建ての側にあり、円安が原価を押し上げる向きに効く。想定159円という数字は、この予約で先に固めた水準の反映と読むのが自然である。ヘッジの平均レートは有価証券報告書の注記にしか出てこない。

利益率が違えば同じ1円の意味も変わる

前提と感応度に加えて、もう一つ確認しておきたいのが利益の厚みである。想定為替レートを開示した主要20社の2026年3月期を並べると、同じ「160円」の中に営業利益率56.4%のINPEXと2.4%の日本製鉄が同居している。

想定為替を開示した主要20社の2026年3月期
想定為替を開示した主要20社の2026年3月期

アドバンテストは売上収益1兆1,286億円に対し営業利益4,991億円で利益率44.2%、キオクシアは2兆3,376億円に対し8,704億円で37.2%。この水準なら、円安で増えた売上高の相当部分が利益に残る。対して日本製鉄は10兆632億円の売上収益に対し営業利益2,429億円 (2.4%)、ソシオネクストは2,008億円に対し124億円 (6.2%) で、為替より数量と価格の方が先に効く。本田技研工業は2026年3月期に4,143億円の営業損失 (前期は1兆2,135億円の営業利益)、武田薬品工業は営業利益62億円 (同3,426億円) と、為替以外の要因で利益が消えた年だった。想定155円や156円という前提の意味は、この土台の上でしか測れない。

感応度を自分で出す ― 3つの手順と答え合わせ

会社が1円当たりの金額を書いていない場合、公開情報だけで概算する道筋はある。手順は3つで、いずれも有価証券報告書と決算資料から取れる数字だけを使う。

感応度の推計手順と答え合わせ
感応度の推計手順と答え合わせ

第一に、売上高に海外売上高比率を掛け、想定為替レートで割って外貨建ての売上高を出す。村田なら売上収益1兆8,309億円に海外売上収益比率90%を掛け、155円で割ると約106億ドルになる。第二に、外貨建ての売上高に1円を掛ける。106億ドルなら1円当たり106億円である。会社が開示する売上収益への感応度は約90億円だから、差は15%に収まる。第三に、利益に残る割合を掛ける。日立の例では売上収益145億円に対して利益15億円、割合は10.3%だった。村田の場合は売上収益90億円に対して営業利益45億円で50%になる。この割合が会社ごとに1割から5割まで開く理由は、原価をどの通貨で払っているかにある。

推計が外れる場面も押さえておきたい。現地生産の比率が高い会社では売上高と費用が同じ通貨で立つため相殺が働く。為替予約で固めた部分は動かない。商社や資源会社では、為替より商品価格の感応度が先に効く。三井物産の感応度表がドルや豪ドルと並べて原油価格を載せ、しかも「原油価格は期ずれで当社連結業績に反映される」として2027年3月期には約55%が4〜6か月遅れ、約40%が1〜3か月遅れで反映されると注記しているのは、その現れである。

それでも概算する価値は残る。1円でいくら動くのかを知らないまま、想定レートの高低だけを比べても投資の判断にはならない。同じ160円の想定でも、営業利益率16.0%のフジクラと2.4%の日本製鉄では、円安がもたらす結果が違う。決算が上方修正されたとき、為替でいくら、実力でいくら増えたのかを分解できるようになる。村田の第1四半期がその実例で、増益368億円のうち168億円が為替、200億円が実力だった。

為替は3つの層で企業に入る

ここまでの数字を整理するには、為替が企業の損益に入る経路を3層に分けておくと見通しがよくなる。

第一層は取引そのものの層である。外貨建てで売り、外貨建てで仕入れる商いの取引が決済されるまでの間にレートが動くと、差額が為替差損益として計上される。トヨタの2026年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書には為替差損益 (純額) が前期の2,123億75百万円の損失から1,123億78百万円の利益へ振れた記録が残る。この層は残高が対象で、有価証券報告書の感応度分析が測っているのもここである。

第二層は換算の層である。海外子会社の損益計算書と貸借対照表を円に直すときに使うレートが変われば、連結の売上高と利益が動く。信越化学工業が「1〜3月平均の為替レートは、海外子会社の損益を連結する際に使用」と注記し、152.6円から156.9円への変化を掲げているのはこの層の話である。ここは現金の動きを伴わないが、連結の数字は確実に変わる。

第三層は事業構造の層である。生産をどの国に置き、部材をどの通貨で買い、販売価格をどの通貨で決めているかという設計そのものが、為替に対する感度を決める。村田の海外売上収益比率90%超はこの層の指標であり、会社が「海外での販売について為替の変動を販売価格に反映させるよう努めており」と書くのも、この層で吸収する努力を指す。1円当たりの営業利益への影響額は、第一層と第二層と第三層の合計として現れる。したがって、金融商品の注記だけを見て事業の感応度を推し量ることはできない。

ヘッジ会計は、この3層のうち第一層と、予定取引を通じて第三層の一部に手を入れる仕組みである。キオクシアが採用するキャッシュ・フロー・ヘッジでは、予約したレートと実勢の差がその他の包括利益に一旦入り、対象の取引が損益に計上されるときに振り替えられる。予約の公正価値は貸借対照表に資産または負債として載る。同社の売予約が77億52百万円の負債になっているのは、円安が進んで予約レートより実勢が有利になったためであり、事業側の増益と表裏の関係にある。ヘッジは為替の変動をなくすのではなく、確定の時期を前倒しして分散させる仕組みである。

自己株式取得の執行がどう組まれるか

村田の8月の600億円に戻る。発行会社による自己株式の買付けは、相場を動かす力を持つため、価格と数量に制約が置かれている。会社は通常、証券会社に一定期間の金額または株数を委託し、日々の売買高に応じて配分される。金額を基準にすれば、株価が上がった日は取得株数が減り、下がった日は増える。村田の8月の取得価額が上限1,500億円に対して30,500円まで接近して止まったのは、金額の上限に張り付く設計だったことを示す。

1日当たり30.0億円というペースは、市場の厚みと制約の両方に規定される。取得を急げば価格を押し上げて自らの取得単価を悪化させ、遅らせれば取得期間 (2027年1月29日まで) を使い切れない。残る枠は900億円で、同じ単価なら約1,224万株に相当する。9月から1月末までの5か月に均せば1か月180億円、8月の3分の1に落ちる。逆に8月と同じペースを続ければ、11月半ばには枠を使い切る計算になる。どちらを選ぶかは、会社が株価をどう見ているかの表明になる。

第1四半期の資料で「当初方針どおり実施する予定」と書いた会社が、その直後の月に枠の40%を使ったという順序は、開示と執行の関係を考える材料になる。決算発表の前後は会社が未公表の情報を持つ期間に当たり、自己株式の取得を控える運用が広く採られている。5月11日から7月31日までの取得ゼロは、この運用と重なる。

投資家が次に見る数字

  • 10月上旬: 村田製作所の9月分の取得状況の開示。8月と同じ30億円規模を続けたのか、180億円ペースへ落としたのかで、残り900億円の配分が読める。
  • 10月下旬〜11月: 主要企業の第2四半期決算。実勢が4〜8月平均159.88円で推移した後、想定150円を置く13社が前提を引き上げるかどうか。引き上げれば、その差分がそのまま上方修正の材料になる。
  • 通年: キオクシアの為替予約の想定元本と平均レート。34億25百万ドル・156.05円の水準がどこまで更新されるかで、同社が円安をどこまで自ら手放しているかが分かる。

村田の2枚の開示は、1,500億円という枠の下で「買わない」と「買う」が同じ様式で並ぶことを示した。想定為替レートの一覧も同じで、162円と130円が同じ表に並ぶ。数字が並んでいること自体には意味がなく、意味は距離と感応度と利益率の3つを掛け合わせたところにしか出てこない。1円当たりの金額を書いている会社が6社しかないという事実は、その計算を投資家の側でやるしかないことを意味する。