ソフトバンクのAITRAS(AIと無線アクセス網を同じGPU基盤で動かすAI-RAN) AITRAS
ソフトバンクが開発する、AIの処理と携帯電話の無線アクセス網 (RAN) の信号処理を同じエヌビディア製の計算基盤で動かす製品。2024年11月13日に開発を本格化した。2027年にノキアと商用網での実地試験を行う計画で、他の通信事業者への展開も目指す。2026年11月時点で商用網への本格導入は発表されていない。
詳細解説
- 開発の本格化
- 2024年11月13日。自社の商用網への導入に加え、2026年以降に国内外の通信事業者への展開を目指すと発表した softbank.jp
- 構成の実装
- 2025年3月3日、富士通の協力で、基地局の集約装置 (CU) の機能をGrace CPUの基盤に実装した。CUと分散装置 (DU) を1台で処理する分散型の構成 (D-RAN) の実装も終えた softbank.jp
- 屋外実証
- 屋外の実証実験で、多数の端末へ同時に送るMU-MIMOを16レイヤーで動かし、4レイヤー構成の約3倍の通信効率を確かめた disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 外部のAI処理
- 2026年2月25日、ノキアの基盤とつなぎ、外部のAI処理に計算資源を割り当てる機能を加えた。MWC Barcelona 2026で実演するとした。商用の提供は発表されていない softbank.jp
- 商用網での試験
- 2026年10月20日、ノキアと2027年に商用網で実地試験をすることで合意した。ノキアのRANソフトanyRANをAITRASの上で動かす softbank.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 自社の製造工場はない | 該当しない (計算機の製造地は公表されていない) | 計算機はエヌビディアの製品を使い、ソフトバンクはソフトウエアと統合を担う | softbank.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 信号処理のソフト化
- エヌビディアのGPUで、専用機器で行っていた無線信号の処理をすべてソフトウエアで実行する方法を確立した disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 物理層ソフト
- 物理層 (L1) のソフトは、エヌビディアのAI Aerialを基にソフトバンクが開発した。処理の並列化と、処理を起動する時点の調整で動作を安定させる softbank.jp
- AIによる信号処理
- 生成AIで使われるTransformerのモデルを無線信号処理に使う構成を開発した。実環境で5Gの上り速度を約30%高めつつ、処理の遅れを平均約338マイクロ秒に抑えた disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- オーケストレーター
- AIとRANの計算資源の需要を即時に把握し、空き状況・要件・消費電力の予測に基づいて配分する。中核機能の一部を2026年2月にオープンソース (無償で公開するソフト) にした softbank.jp
- 他社のRANソフト
- 自社のRANソフトAITRAS-RANに加え、他社のRANソフトやエッジAIのアプリも動かせる softbank.jp
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 当初の計算基盤 | エヌビディアのGH200 Grace Hopper Superchip | softbank.jp |
| 実地試験の計算基盤 | Grace CPU、RTX PRO 4500 Blackwell Server Edition GPU、エヌビディアの通信用部品ConnectX-8を載せたNVIDIA Aerial RAN Computer MGX 2U Short | softbank.jp |
| CUの収容数 | Grace CPUの基盤で処理すると、1台のCUに収容できる無線装置の数がおよそ2倍になる | softbank.jp |
| 参照キットの構成 | オーケストレーター、エッジAIアプリ、RANのL2/L3 (データリンク層・ネットワーク層) のソフト、L1ソフト、仮想化基盤、GH200、無線装置の7要素 | softbank.jp |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 計算基盤 (当初) | GH200 Grace Hopper Superchip 米ナスダック上場 (NVDA) |
エヌビディア | — | 米国 公表されていない |
ソフトバンクの発表 A |
| 計算基盤 (実地試験) | NVIDIA Aerial RAN Computer MGX 2U Short | エヌビディア | — | 米国 公表されていない |
ソフトバンクの発表 A |
| CUの処理基盤 | Grace CPU Superchip CPUはアームの設計を使う |
エヌビディア | — | 米国 公表されていない |
ソフトバンクの発表 A |
| 仮想化RANソフトと技術支援 | 富士通のvRAN (仮想化した無線アクセス網) のソフトウエア | 富士通 | 6702 | 日本 公表されていない |
ソフトバンクの発表 (CUの実装で協力) A |
| RANソフト (実地試験) | anyRAN・MantaRay ヘルシンキ証券取引所上場 |
ノキア | — | フィンランド 公表されていない |
ソフトバンクの発表 A |
| 無線装置 | 公表されていない | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
ソフトバンクは無線装置の供給元を公表していない A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1計算機エヌビディアのGPUとCPUの基盤を使う企業: エヌビディア
- 2RANソフトソフトバンクのAITRAS-RANのほか、富士通の協力やノキアのソフトを組み合わせる企業: ソフトバンク・富士通・ノキア
- 3統合と運用ソフトバンクがオーケストレーターで統合し、自社の網に入れる企業: ソフトバンク
- 4産業向けAITRASを使うエッジデータセンターで、三菱重工業と協業を始めた (2026年3月2日発表)企業: 三菱重工業
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1開発と検証2025年度から、集約型 (C-RAN) と分散型 (D-RAN) の構成を屋外の検証環境に順次入れて性能を確かめる計画とした。2027年に商用網で実地試験を行う設備・企業: ソフトバンク
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| AITRAS (通信事業者向け) | 公表されていない | 2026-11-06 | softbank.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 通信事業者向けの参照キット | 通信事業者が自社の試験室で検証できる参照キットを2025年以降に提供・展開することを目指すと発表した (2024年11月) | softbank.jp |
| 計算資源の貸し出し | ソフトバンクは、外部の顧客がAI-RANの基盤の計算資源を必要なときに使える仕組みを目指す。商用の提供は発表されていない | softbank.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保守 | 通信事業者に提供するときの保守の条件は公表されていない | softbank.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内外の通信事業者 | 2026年以降に国内外の通信事業者への展開を目指すとした。具体的な採用先は公表されていない | softbank.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 研究開発費 (AI、成層圏から通信を届けるHAPS、広告などの合計) | 968 | 億円 | AITRASの売上高と開発費の内訳は公表されていない | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| AITRASの投資額 | 公表されていない | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
AITRASの論点は、商用化がどの段階にあるかだ。2024年11月の発表では、自社の商用網に入れ、2026年以降に国内外の通信事業者へ広げる目標を掲げた。2026年11月時点で、商用網への本格導入も他社の採用も発表されていない。次の節目は、2027年にノキアと行う商用網での実地試験だ。性能では、屋外の実証実験でMU-MIMOの通信効率が約3倍になった。別の実環境での検証では、Transformerを使う処理で上り速度が約30%上がった。2026年2月には、外部のAI処理に計算資源を割り当てる機能を加えた。計算機はエヌビディア製で、RANのソフトは富士通やノキアと組んで用意する。売上高と投資額は開示されていない。
公表されていないこと
- 商用網への本格導入の時期と、導入する基地局の数は公表されていない
- 他の通信事業者への販売実績と価格は公表されていない
- 無線装置の供給元は公表されていない
出所
- ソフトバンク AI-RAN統合ソリューション「AITRAS」を開発 (2024-11-13)
- ソフトバンク 「AITRAS」、C-RANとD-RANのAI-RANアーキテクチャー実装の完了 (2025-03-03)
- ソフトバンクとノキア、AI-RANで社外のAIワークロードを実行可能に (2026-02-25)
- ソフトバンク Telco AI Cloud構想を発表 (2026-03-02)
- ソフトバンクとノキア、商用ネットワークにおけるAI-RANのフィールドトライアル実施に合意 (2026-10-20)
- ソフトバンク 有価証券報告書 第40期 (2026年3月期) (2026-06-19)
出所との照合日: 2026年11月6日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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