手と感覚 — ロボットハンド・触覚・力覚・視覚
ロボットの手は、小さなモーター・ねじ・歯車・センサーを手のひらに詰め込んだ小さな人型ロボットです。力を感じる触覚と力覚は、カメラより目立たないが、関節ごと・指先ごとに繰り返し入る部品です。見る・触る・力を測るの3つを分けて説明します。
入門は要点と図だけ、標準は仕組みまで、研究は式と論文の水準まで表示します。選んだ深さはこの端末に残ります。
ロボットハンドは、関節の部品を手のひらの大きさに縮めて十数個詰め込んだ「小さな人型ロボット」
- 指1本に2〜4個の関節があり、手全体では十数〜二十数の自由度になる
- 小さなモーター・減速機・ねじ・角度と力のセンサーを手のひらと前腕に詰める
- 動かし方 (腱で引くか、関節ごとにモーターを置くか) がまだ定まっていない
人間の手には27個の骨と、20を超える自由度があります。ロボットハンドはこれを、小さなモーター・減速機・ねじ・角度のセンサー・触覚のセンサーで再現しようとします。関節の部品を手のひらの大きさに縮め、十数個を詰め込むので、人型ロボットの部品の供給網が1つの手に集まります。
指の動かし方は大きく2つあります。前腕にモーターを置き、腱のようなワイヤーで指を引く方式は、指を軽く細くできますが、ワイヤーの伸びと摩擦で力の制御が難しくなります。指の関節ごとに小さなモーターを置く方式は、制御は素直ですが、指が太く重くなります。投稿が引用した証券会社の採点で、ロボットハンドの「技術の選択の確かさ」が最低の1なのは、この方式がまだ定まっていないためです。
手は、人型ロボットの価値の大きな部分を占めます。同じ採点で、ロボットハンドは波動歯車に次ぐ15点でした。最も複雑で、組み上げたときの付加価値が大きく、5本指で力を加減する手を大量に必要とする製品はほかにありません。ただし、投稿の筆者は、最先端の手はテスラ・フィギュア・サンクチュアリなどの完成品メーカーが自社で作ることが多く、部品会社にとっては内製化されることがリスクだと指摘しています。公表された仕様では、テスラのオプティマスの試作機 (2022年) の手は6本のアクチュエーターで11の自由度を持ち、指は金属の腱で動きます。第2世代 (2023年) では全部の指に触覚を加えました。フィギュア 02 の手は16自由度、ワンエックスの NEO の手は22自由度です。日本ではハーモニック・ドライブ・システムズとミネベアミツミが、指1本で5キログラムを持てる小さな駆動部品を共同で開発しました。中国では兆威機電が小型モーターと歯車とねじで手の駆動部品を作り、匯川技術がモーターの制御で、帕西尼が触覚で手に関わります。
触覚センサーは、指先の「どこに・どれだけの力が・滑っているか」を測る
- 卵を割らずに持つには、目で見るより指先の力の感覚が要る
- 押す力の分布、滑り、硬さを測る
- 方式は電気の容量・抵抗・光・磁気の変化など、研究と実用化が進む途中
人は、卵を持つときも紙コップを持つときも、目で見る前に指先の感覚で力を加減しています。ロボットにこれをさせるのが触覚センサーです。指先の柔らかい皮膚の下に小さな感知点を並べ、どこにどれだけの力がかかっているか、物が指の間で滑り始めていないかを測ります。
測り方には、押されて電極の間の距離が変わると電気の容量が変わることを使う方式、押されると電気の抵抗が変わる素材を使う方式、柔らかい皮膚の変形をカメラで撮って力を推定する方式、磁石の動きを磁気センサーで読む方式などがあります。カメラで撮る方式の代表は、マサチューセッツ工科大学で生まれた GelSight で、塗料を塗った透明なゴムの変形を撮って表面の形を復元します。どれも、小さく、壊れにくく、安く、多くの点を速く読むことの両立が課題で、決まった方式はまだありません。フィギュア 03 の指先は、3グラムの力を感じ取れると同社は説明しています。
研究触覚は、制御の輪の速さの点でも重要です。カメラの画像を解析して手の動きを直すには数十〜数百ミリ秒かかりますが、指先の力の変化は数ミリ秒で読めます。滑り始めを触覚でとらえて握る力を強める「滑りの検知」は、物をつかむ作業の失敗を減らす代表的な使い方です。学習の面では、触覚の値をカメラの画像と一緒に学習モデルに入れる研究が広がっています。
力覚センサーは関節ごと・手首と足首に入り、1体に何十個も繰り返し使われる
- 6軸力覚センサーは、押す・引く3方向と、ねじる3方向の力を1つで測る
- 中身は、金属のひずみを測るひずみゲージが主流
- 頭のカメラは1組だが、力のセンサーは関節の数だけ要る
6軸力覚センサーは、押す・引く力を3つの向きで、ねじる力を3つの軸のまわりで、合わせて6つの成分を1つで測ります。中には十字や車輪の形をした金属の梁があり、そこに貼ったひずみゲージが、力で梁がわずかに伸び縮みするのを電気の抵抗の変化として読みます。手首に付ければ、工具を押し当てる力や、物を持ったときの重さが分かります。足首に付ければ、足の裏のどこに体重がかかっているかが分かり、転ばずに歩くための制御に使えます。
小ささの例として、米国のエー・ティー・アイの Nano17 は直径17ミリ・重さ9.07グラムで、指先にも付けられます。同社はノバンタが2021年に1億6,920万ドルで買収しました。日本でも、ミネベアミツミが直径9.6ミリの半導体製の6軸力覚センサーを、ワコーテックが電気の容量の変化で測る6軸力覚センサーを作っています。
研究ひずみゲージの抵抗の変化率は、ひずみ ε にゲージ率 K を掛けた値 (ΔR/R = K × ε) で、ホイートストンブリッジという回路で電圧に変えて読みます。6軸の力は、複数のゲージの出力に校正で求めた行列を掛けて分離します。温度で出力がずれるため、ゲージの配置と補正の設計が精度を決めます。
業界地図のセンサーの列には、米国のノバンタ (6軸力覚センサーの ATI を傘下に持つ) とビシェイ・プレシジョン、中国の坤維科技、日本の村田製作所と TDK が並びます。投稿の筆者は、角度を測る磁気センサーのアレグロ・マイクロシステムズも挙げています。投稿の筆者が強調するのは、カメラは頭に1組しか付かないのに対し、力を測るセンサーは関節ごと・指先ごとに繰り返し入る点です。1体あたりの数が多く、しかも精度の要る部品は、人型ロボットが増えるほど需要が掛け算で増えます。
目はカメラと LiDAR — 自動車と部品が共通で、値下がりが速い
- 2つのカメラのずれで距離を測るステレオカメラと、光で距離を測る深度カメラ・LiDAR
- 自動車の運転支援と同じ部品で、中国では価格競争が激しい
- 採点では電池と並ぶ最下位の12点
ロボットの目の中心はカメラです。人間の両目と同じように、少し離して置いた2つのカメラの見え方のずれから、物までの距離を計算できます (ステレオカメラ)。光の模様や光の往復時間で画素ごとに距離を測る深度カメラや、レーザーを回転させて周囲の形を点の集まりとしてとらえるLiDAR (ライダー) を組み合わせる機種もあります。
目の部品は、自動車の運転支援や掃除ロボットと共通です。中国では LiDAR とカメラの値下げ競争が進み、禾賽・速騰聚創・奥比中光・舜宇光学などが大量に生産しています。投稿の筆者は、米国の固体式 LiDAR のオースター、工場の画像検査のコグネックス、カメラのインテルも挙げています。投稿が引用した証券会社の採点では、カメラと LiDAR は電池と並ぶ最下位の12点で、「部品表に占める金額」は最低の1でした。目は人型ロボットに欠かせませんが、人型ロボットが利益の源になる部品ではない、という評価です。
研究近年の基盤モデルは、カメラの画像から直接、手の動きを出力する方向に進んでいます。そのため、距離を正確に測る専用のセンサーより、安いカメラを複数付けて学習で距離と形を推定する設計が増えています。一方で、暗い場所・透明な物・光る物では画像だけでは距離を誤りやすく、深度カメラや LiDAR を補助に残す設計もあります。
センサーの統合 — 目・触覚・力覚・体の傾きを合わせて1つの判断にする
- 体の傾きは、胴に入る慣性計測装置 (加速度と回転の速さ) で測る
- センサーごとに得意な速さと正確さが違う
- 合わせて使うと、1つのセンサーの弱点を補える
人型ロボットは、頭のカメラ、指先の触覚、関節と手首・足首の力覚、胴の慣性計測装置 (加速度と回転の速さを測る装置) を同時に使います。慣性計測装置は1秒に千回を超える速さで体の傾きを測れますが、少しずつ誤差がたまります。カメラは遅いが誤差がたまりません。足首の力覚は着地の瞬間を正確にとらえます。これらを組み合わせて、体の状態を1つにまとめる計算をセンサーの統合と呼びます。統合した状態が、次の章で扱う頭脳と、第6章で扱う制御の入力になります。
この章の確認
腱で指を引く方式と、関節ごとにモーターを置く方式の長所を1つずつ挙げてください。
腱で引く方式は、モーターを前腕に置けるので指を軽く細くできる。関節ごとにモーターを置く方式は、腱の伸びや摩擦が無く、力の制御が素直になる。
6軸力覚センサーが測る6つの成分とは何ですか。
X・Y・Z の3つの向きに押す・引く力と、X・Y・Z の3つの軸のまわりにねじる力。中の金属の梁に貼ったひずみゲージの伸び縮みから計算する。
カメラと LiDAR が「人型ロボットの利益の源になりにくい」とされる理由は何ですか。
自動車の運転支援などと部品が共通で大量に作られ、中国で価格競争が進んでいるから。1体あたりの金額も小さく、採点では最下位の12点だった。
この章の出所
- 人型ロボットの部品への投資を論じた英語の投稿 (ゴールドマン・サックスの採点表と業界地図の画像を引用) (2026年9月)
- ミネベアミツミ CES 2026 への出展 (ハーモニックと共同開発の指の駆動部品) (2025年12月16日) — 原典
一次資料との照合: 2026-09-24。企業の数字は各社の開示、技術の数字はメーカーの技術資料と論文から取りました。二次情報 (報道・証券会社の資料を引いた投稿) の値は、その旨を本文に書いています。
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