米新興企業がDJIの小型ドローン2機種を分解し、部品ごとの価格を推計した。部品原価に占める日本製の比率は4年で7.0%から0.3%に下がり、本体の粗利益率は72%から79%に上がった。ACSLの売上総利益率は19.3%にとどまる。

日米のメーカーは、DJIと同じ性能のドローンを同じ価格で作れるのか。ハードウエア開発を支援する米新興企業アリーナ・フィジカは9月16日、DJIが2019年に発売した小型ドローン「Mavic Mini」(以下、旧機種)と、2023年発売の「Mini 4 Pro」(同、新機種)をねじ1本に至るまで分解し、部品ごとの推定価格をまとめた部品表を公開した。2機種はいずれも重さが250グラム未満で、米国など多くの国では機体の登録や操縦の資格が要らない。DJIはこの重さの範囲内で、2019〜2023年に小型ドローンを7機種発売した。本誌は公開された部品表を1行ずつ検証し、国内ドローンメーカーのACSLの開示資料と比べた。

部品原価は138.91ドルで本体価格の約2割、粗利益率は79%

部品表によると、新機種の部品原価は組み立て費を含めて138.91ドルだった。販売価格759ドルは送信機などを含むセットの価格で、送信機と予備部品の分として90ドルを差し引くと、本体価格は669ドルになる。部品原価はその20.8%にあたり、本体の粗利益率は79.2%と推計される。旧機種は部品原価が86.07ドルで、本体価格はセット価格399ドルから90ドルを差し引いた309ドルと推定される。部品原価の比率は27.9%、粗利益率は72.1%だった。4年で粗利益率は約7ポイント上がった計算になる。

各部品の価格は2026年時点の水準で、量産時の調達価格を補修用部品の小売価格の約2割とみて見積もった。補修用部品の小売価格で積み上げると約715ドルになる。推計値には25〜30%程度の誤差があるという。研究開発費、半導体の設計費、ソフトウエアの開発費、金型代、梱包費、物流費は含まない。粗利益率79%は、こうした費用を差し引く前の数字だ。日本経済新聞とフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの分解調査でも、DJIの別の機種「Mavic Air 2」の部品原価は135ドルで、セット価格799ドルの約17%だった。調査した機関が違っても、部品原価は販売価格の2割前後に収まる。

主要な半導体は4年で自社設計品に置き換わった

2019年から2023年にかけて、部品原価に占める中国製の比率は35.8%から63.7%へ27.9ポイント上昇した。このうち22.1ポイントはDJIの内製品の増加による。内製部品の金額は2019年の約18.59ドル(部品原価の21.6%)から2023年の60.70ドル(同43.7%)へ3.27倍に増えた。2019年の比率と金額は、2023年の値から増減幅を差し引いて本誌が算出した。

部品原価の調達先別の比率
部品原価の調達先別の比率

図1 — 旧機種(2019年)と新機種(2023年)の部品原価の調達先別の比率

変化が最も大きいのは、飛行や撮影を制御する電子部品だ。自社で設計した電子部品は、旧機種では部品原価の1%にすぎなかったが、新機種では26%を占める。旧機種は米アンバレラの映像処理用半導体(9ドル)、オランダのNXPセミコンダクターズの制御用半導体(4ドル)、米クアルコムの通信用半導体(3.5ドル)を外部から調達していた。3個で16.5ドル、部品原価の19.2%にあたる。新機種はこれを、DJIが自ら設計した半導体4個(合計30ドル、部品原価の21.6%)に置き換えた。4個はそれぞれ画像認識、画像処理の補助、映像の伝送、全体の制御を担う。

DJIが自社設計の半導体を初めて載せたのは、2018年発売の上位機種「Mavic Air」の映像処理用だった。価格の高い機種は1台あたりの利益が大きく、開発費を回収しやすい。小型ドローンで自社設計品が採算に合う水準に達したのは、2023年9月発売の新機種だったという。アリーナ・フィジカは、DJIが半導体の自社設計を始めたのは、売上高が10億ドルを超えたとみられる2015年ごろだと推測する。

自社で設計すれば、半導体メーカーの利幅を払わずに済む。半導体メーカーが原価に70〜100%の利幅を乗せていたと仮定すると、DJIは新機種1台あたり半導体の費用を7〜8ドル減らせる計算になる。ただし特定の用途に向けた半導体の開発には通常5,000万ドル前後かかり、数百万台規模で量産してはじめて採算が合う。1台あたり8ドルの削減で5,000万ドルを回収するには約625万台、7ドルなら約714万台の販売が必要になる(本誌試算。同じ半導体を使う他の機種の台数も含む)。DJIは世界のドローン市場で約7割のシェアを握るとされ、1社でこの台数を確保できる。

軽量化にもつながった。DJIは飛行を制御する機能を主要な半導体に取り込み、部品原価約139ドルで、飛行の制御、無線通信、映像処理を備えた機体を250グラム未満に収めた。アリーナ・フィジカによると、競合他社は同じ機能を個別の部品を組み合わせて実現するため、制御系の部品だけで数千ドルかかり、それでも重さは250グラムを超えるという。

4年で置き換わった主な部品
4年で置き換わった主な部品

図2 — 旧機種(2019年)と新機種(2023年)の主な部品と推定価格

新機種の部品原価138.91ドルを8つの区分に分けた内訳は、部品を押すと金額と旧機種からの増減が出る3Dモデル(試作版)でも確かめられる。

電池は2ドル高い中国製に替え、浮いた20グラムをセンサーと半導体に充てた

中国製への切り替えは、安さだけが理由ではない。旧機種の部品原価の14%を占めていた主要部品4品目で、DJIは新機種までに調達先を海外から中国に切り替えた。典型が電池だ。中国は世界のリチウムイオン電池の8割超を生産している。

旧機種は韓国サムスンSDIの円筒形電池2本(5ドル)を使っていた。新機種は中国アンペース製の電池(約8.6ドル)で、2ドル以上高い。その代わり、電池のエネルギー密度は1キログラムあたり176ワット時から243ワット時へ38%高まった。電池の重さは98グラムから78グラムへ20グラム減り、容量は17.28ワット時から18.96ワット時へ10%増えた。

電池の軽量化で浮いた20グラムは、機体重量の8%に相当する。DJIはこの分をセンサーや半導体の追加に充てた。新機種の基板は旧機種の1.3倍の重さで、搭載する半導体の数は1.5倍、カメラ部の重さは1.6倍になった。障害物を検知するセンサーは、旧機種の下向きのカメラだけから、魚眼カメラ4個と下向きのカメラ2個、立体的に距離を測るセンサーに増えた。全方向の障害物を避けて飛べるようになり、暗い場所でも撮影しやすくなった。250グラムの制約の中で、電池の軽量化が機能を増やす余地を生んだ。

アリーナ・フィジカの分解では、旧機種の電池パックの中に緑色の円筒形電池が2本入っていた。新機種の電池には「249g」の表示があり、機体には視覚センサーの取り付け部品が加わった。

衛星測位の受信用半導体だけはスイス製のまま

衛星の電波で位置を測る受信用半導体は、2019〜2023年の小型ドローンの全機種でスイスのユーブロックス製が使われた。価格は旧機種が2.2ドル、新機種が2.8ドルで、部品原価に占める比率は2%程度にすぎない。

切り替えなかった理由は、価格ではなくソフトウエアにある。DJIの飛行制御ソフトはユーブロックス独自の通信方式に対応している。受信用半導体を替えるには、飛行制御の中核にある、機体の位置を推定する計算の仕組みを改修し、性能と安全性を検証し直す必要がある。アリーナ・フィジカは、切り替えの負担が重すぎたとみている。数ドルの部品でも、ソフトウエアと密接に結びついた部品は簡単には替えられない。

日本製の比率は7.0%から0.3%に、画像センサーの製造元は特定できず

部品原価に占める中国以外の比率は、56.2%から19.7%へ36.5ポイント低下した。2019年の日本製は7.0%(本誌試算で約6.02ドル)と、中国以外では米国(31.4%)に次ぐ規模だったが、2023年は0.3%(0.40ドル)に縮んだ。

調達先2023年の比率金額2019年比の増減
日本0.3%0.40ドル−6.7ポイント
米国10.5%14.60ドル−20.9ポイント
オランダ0.0%0ドル−4.6ポイント
スイス2.2%3.10ドル−0.6ポイント
韓国5.8%8.00ドル−0.1ポイント
台湾0.9%1.30ドル−3.5ポイント
中国以外の合計19.7%27.40ドル−36.5ポイント
中国63.7%88.53ドル+27.9ポイント
うちDJIの内製43.7%60.70ドル+22.1ポイント
調達先不明16.5%22.98ドル+8.5ポイント
合計100%138.91ドル

新機種の部品原価を、部品メーカーの本社がある国ごとに分類した。金額の合計138.91ドルは部品原価の総額と一致する。

2019年の日本製の約6ドルは、ソニーの画像センサー(1/2.3型、1,200万画素、4.5ドル)とキオクシアNAND型フラッシュメモリー(1.2ドル)が大半を占める。ただし、画像センサーがソニー製という点はアリーナ・フィジカの推定だ。新機種では、DRAMが韓国SKハイニックス製(8ドル)、記憶用のフラッシュメモリーが米サンディスク製の8ギガバイト品2個(計6ドル)に替わった。

注意が必要なのは画像センサーだ。新機種は1/1.3型、4,800万画素の画像センサー(10ドル、部品原価の7.2%)を載せているが、アリーナ・フィジカはソニー製かオムニビジョン製かを特定できず、調達先不明(16.5%)に分類している。ソニー製であれば、日本製の比率は約7.5%になる(本誌試算)。日本製が姿を消したとは言い切れない。確実なのは、主要な半導体やメモリー、電池といった中核部品に日本製が使われていないことだ。

ACSLの売上総利益率は19.3%、差を生むのは量産規模

米連邦通信委員会は2025年12月、外国製のドローンを、安全保障上のリスクがある通信機器の一覧に加えた。中国の通信機器大手ファーウェイなども載る一覧で、これから発売する機種は米国で販売できなくなる。DJIへの警戒は2017年にさかのぼる。米国土安全保障省が、中国の国家情報法によってDJIが利用者の情報の提供を求められる恐れがあると指摘した。米国防総省は2022年にDJIを「中国軍事企業」に指定した。2025会計年度の国防権限法のもとで、期限までにDJI製品の安全性を認める政府機関は現れず、新製品の販売禁止が発効した。一方、カリフォルニア州消防長協会は2025年、米国の警察と消防が使うドローンの9割超がDJI製だと推計し、代わりになる機体がないとして禁止に反対している。

国産ドローンを手がけるACSLは、有価証券報告書でこの規制に触れている。米連邦通信委員会の措置で、外国製のドローンと主要部品は新たな機器認証を原則として取得できなくなったが、同社の小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」は認証を取得済みで、販売を続けられるという。ACSLは2021年12月に同機の受注を始め、2023年1月に米国子会社を設立し、同年11月に米国向けの輸出許可を取得した。

採算の差は大きい。ACSLの2025年12月期の連結売上高は25億9,873万円、売上原価は20億9,745万円で、売上総利益は5億128万円、売上総利益率は19.3%だった。2026年1〜6月期は売上高が16億4,821万円(前年同期比68.9%増)、売上総利益が5億4,784万円で、売上総利益率は33.2%に改善した(前年同期は8.6%)。DJIの79%は部品原価から推計した値で、製造費や開発費を含む会計上の売上総利益率とは算出方法が異なる。それでも、部品原価が本体価格の2割に収まるDJIと、売上原価が売上高の8割を占めた2025年12月期のACSLとの差は、算出方法の違いだけでは説明できない。

この分析を中国語で紹介した投稿は、日米のメーカーは技術的に作れないのではなく、この価格では太刀打ちできないため、軍や政府向けに1機数万ドルで売るしかないと指摘する。DJIは世界の数千万人の利用者に販売し、膨大な台数で自社設計の半導体や金型の費用を回収してきた。参入の壁は技術力の差ではなく、量産の採算にあるという見方だ。

開発の速さは、部品メーカーが近くに集まっていることにも支えられている。米ドローン大手スカイディオも、電池セルは深センのDJI本社から約50キロメートル離れた広東省東莞市で生産されたものを使っていた。DJIには部品が1〜2日で届くが、スカイディオには数週間かかる。基板の設計変更にかかる時間はDJIが数時間、スカイディオが3〜6週間で、深センの開発チームは米国が1回試作する間に2〜3回の試作ができるという。

日本のドローンメーカーにとって、組み立ての技術は障壁ではない。自社設計の半導体に5,000万ドルを投じ、数百万台規模の販売で回収できるかどうかが、部品原価を本体価格の2割に抑えられるかどうかを左右する。規制で米国市場に参入する余地が広がっても、販売台数が伴わなければDJIの価格には届かない。国内ドローン各社の採算はテラドローンの迎撃ドローンの採算の検証テラドローンの企業情報で、米国の規制の経緯はDJI製ドローンの安全審査の記事で取り上げている。