生成AIのサーバーと電気自動車 (EV) の中身は、同じ5種類の部品でできている。部品価格は1990年以降に97.5%以上下がった。日本はその売り手だが、輸出で伸びが目立つのは半導体だけで、エネルギー向けの部品は小さいままだ。

スマートフォンの電池と、送電網につなぐ蓄電池は同じ種類の部品である。英シンクタンクのエンバーは2026年9月16日、AIなどのITと、太陽光・風力・蓄電池・EVといった電気で動くエネルギー技術を一体として捉えるべきだとする報告書を公表した。資料は99ページあり、著者はダーン・ウォルター、サム・バトラースロス、キングスミル・ボンド、アントワーヌ・イサックの4氏である。本稿は、この主張の土台となる9ページ目の図「共通の部品構成」を起点に、同じ資料の関連ページと日本の財務省貿易統計を突き合わせ、AIとエネルギーが同じ部品でつながっているという見方が日本の投資家の判断をどう変えるかを確かめる。資料の取得日はいずれも2026年9月17日である。

スマートフォンから系統用蓄電池まで、6つの機器は同じ5部品でできている

9ページ目の副題は「ITもエネルギー技術も、半導体チップ・センサー・パワーエレクトロニクス・電池・モーターの上に成り立つ」である。パワーエレクトロニクスは電気の電圧や周波数を変えて必要な場所へ送る技術で、中核部品はパワー半導体だ。エンバーは5つの部品を色で塗り分けた。チップが青紫、センサーが赤茶、パワーエレクトロニクスが橙、電池が緑、モーターが紺である。

9ページ目の左半分は人の体を描き、体の部位と機械の部品を線で結んでいる。脳はチップ、感覚はセンサー、脂肪は電池、神経と血管はパワーエレクトロニクス、筋肉はモーターに当たる。考える、測る、蓄える、送る、動かすという5つの働きが、それぞれ1つの部品に割り当てられている。

右半分には6つの機器の模式図が並ぶ。スマートフォン、AIサーバー、ドローン、EV、ヒートポンプ、系統用蓄電池である。スマートフォンは本体の大半を緑の電池が占め、上部に青紫のチップと3つの赤茶のセンサー、橙のパワーエレクトロニクスが小さく1つ、下端に紺のモーターがある。AIサーバーは1台のラックの棚に5色すべてが収まる。ドローンは4つの回転翼の根元に紺のモーターがあり、機体の中央に電池・パワーエレクトロニクス・チップ・センサーを載せる。EVは床下に電池、後輪にモーター、車体の中央にパワーエレクトロニクス、前方にチップとセンサーを配置する。ヒートポンプは紺の送風機、青紫のチップ、橙のパワーエレクトロニクス、緑の部品を備え、配管の弁に赤茶のセンサーが付く。系統用蓄電池は筐体の中に電池・パワーエレクトロニクス・センサー・チップが入り、上部に紺の送風機がある。

同じ5部品が、IT機器にもエネルギー機器にも組み込まれている
同じ5部品が、IT機器にもエネルギー機器にも組み込まれている

6つの機器のすべてに5色がそろう。違うのは部品の大きさと配置だけである。同ページの注記によると、出所はメーカーの資料と公開された分解調査、エンバー自身の分析で、模式図のため縮尺は正確ではない。このページは9ページ目で、右下に同社のロゴが入る。9ページ目に数値は1つもないが、資料の他のページがその主張を数値で裏付ける構成になっている。

AI半導体の基板もEVのモーターも、材料費の8割超を半導体材料や銅、レアアースが占める

部品が共通になるのは、材料の段階から重なっているためだ。資料の8ページは、機器1台の材料費のうち、シリコンなどの半導体材料、銅などの電線材料、レアアース (希土類) などの磁石材料、リチウムなどの電池材料が占める割合を並べている。以下ではこれらをまとめて電気関連の鉱物と呼ぶ。IT機器では、AI半導体を載せた基板 (モジュール) が83%、サーバーの基板が74%、光トランシーバーが71%、スマートフォンが68%、ノートパソコンが58%だった。エネルギー機器では、EVの駆動用モーターが82%、EVの電池パックが74%、太陽光発電のインバーターと風力発電機の発電部 (ナセル) がともに67%、送電用の変圧器が66%、太陽光パネルが60%、LED照明が44%、空気熱源式ヒートポンプが32%である。

一方、置き換えの対象となる従来の機械は、電気関連の鉱物をほとんど使わない。ガスタービンとガスボイラーが5%、エンジン車の駆動系が4%、輪転印刷機は0.3%にとどまり、残りは鉄鋼や樹脂、ガラス、セラミックスが占める。

資料の10ページは、この関係をサプライチェーンの図で示す。シリコンや銅、リチウム、レアアースなどの鉱物が、ロジック半導体やメモリー、パワー半導体、インバーター、電池セル、イメージセンサー、モーターといった部品になり、スマートフォンやAIサーバー、EV、ヒートポンプ、系統用蓄電池に組み込まれる。化石燃料を使う機械のボイラーやタービンの羽根、クランクシャフトとは、部品の段階でほとんど重ならない。AIのデータセンターに必要な金属の量と金額は、1ギガワット級のAIデータセンターを金属25種で数えた記事で扱った。

5部品の価格は35年で97.5〜99.9%下がり、一方の需要が他方の値下がりを促した

報告書の要旨は、5部品を合わせたコストが1990年以降に99%下がったとしている。資料の15ページが部品ごとの内訳を示す。

表1 5部品の価格の下落 (最初の年を100とした場合)

部品期間価格の単位下落率現在の水準
半導体チップ1990〜2024年処理性能あたり−99.9%0.1
電池1991〜2024年1キロワット時あたり−99.2%0.8
パワエレ1990〜2024年1キロワットあたり−99.5%0.5
モーター1990〜2024年1キロワットあたり−97.5%2.5
センサー2007〜2026年ライダー1台あたり−99.8%0.2

出所: エンバーの公表資料15ページ (元データは米ニュースレターのノット・ボーリング、英オックスフォード大学系のアワー・ワールド・イン・データ、米ベロダイン、中国の禾賽科技 (ヘサイ)、英調査会社サンダー・セッド・エナジー)。価格はいずれもドル建て。パワエレはパワーエレクトロニクスの略。現在の水準は下落率から記者が計算

ライダー (LiDAR) はレーザー光で距離を測るセンサーである。センサーだけは期間が2007年からと短く、価格も1台あたりで測っているため、他の4部品と同じ基準では比べられない。電池の99.2%という下落率を別の資料で確かめる作業は、アワー・ワールド・イン・データが電池価格の数値の二次利用を認めていないため、未取得である。

5部品の価格は、最初の年を100とすると0.1〜2.5まで下がった
5部品の価格は、最初の年を100とすると0.1〜2.5まで下がった

エンバーは、この値下がりを好循環として説明する。5部品はITとエネルギーの両方の機器に組み込まれているため、一方の製品が売れると他方の部品も安くなる。スマートフォンの普及で電池がEVに使える価格まで下がり、EVの普及で送電網の蓄電に使える価格まで下がった、というのが同社の説明だ。5部品を使う製品の例には、パソコン、スマートフォン、AIサーバー、太陽光発電設備、EV、系統用蓄電池の6つを挙げている。値下がりの速さは14ページの学習率に表れる。学習率は累積生産量が2倍になるたびにコストが何%下がるかを示す指標で、ハードディスクが50%、トランジスタが43%、DRAMが39%、太陽光パネルが24%、リチウムイオン電池が20%、陸上風力が10%だった。小型で大量に作る製品ほど値下がりが速い。

安くなった部品は、互いの製品を実現する前提にもなっている。資料の38ページによると、EVのモーターは毎秒200回の指令に応答できるが、エンジンの応答は毎秒3回が上限だ。報告書は、きめ細かな自動運転の制御に応えられるのは電動の車だけだと指摘する。逆に、急速充電では電流を毎秒最大1000回調整する必要があり、チップなしでは実現できない。AIで運用する仮想発電所は10万を超える設備を自動で制御できるが、人が操作する制御室で扱えるのは200程度だという。報告書はこの先の効果として、家庭のエネルギーを電気に切り替えて使い方を最適化すればランニングコストが最大80%、EVと自動運転を組み合わせればトラック輸送とタクシーの費用が最大70%、電化と高度な自動化を組み合わせれば製造コストが40〜70%下がると見積もる。モーターが人型ロボットの原価のどこに効くかは、関節部品の原価を分解した記事で検証した。

生産拠点も重なり、IT機器の81%とエネルギー機器の76%が東アジアに集まる

資料の11ページは生産拠点を比べている。半導体工場、ディスプレー、プリント基板、スマートフォン、パソコンの生産能力を同じ比重で合算すると、2024〜25年時点で81%が東アジアにある。同社が挙げる国・地域は日本、韓国、台湾、中国だ。太陽光パネル、電池セル、EV、風力発電機の生産能力を合算しても、2024年時点で76%が東アジアに集まる。部品が共通である以上、工場が同じ地域に集まるのは当然の成り行きだ。

報告書の要旨は、ITとエネルギーの両方を同時に進めている国は少ないとみる。米国はAIで先行するが電化で遅れ、欧州は再生可能エネルギーで先行するが電化とAIで遅れている。例外は中国で、2010年以降に電力供給を2倍超に増やし、新車販売に占めるEVの比率を60%超に高めた。要旨はさらに、世界の情報の保存と通信は99%超がすでにデジタル化されて電気で処理されていること、実際に使われるエネルギー (有効エネルギー) で見ると電気が2007年に石油を抜いて最大の供給源になったことを挙げる。情報のデジタル化はほぼ終わり、エネルギーの電化がそれを追っている、というのが報告書の見立てである。

日本の5部品の輸出は年8兆7,862億円、輸出全体に占める比率は8.24%から7.96%に下がった

日本は東アジアの81%の担い手として名前が挙がる。では、5部品は日本の輸出のどれだけを占めるのか。財務省の貿易統計 (e-Statの概況品別国別表と品別国別表、取得日2026年9月17日) から5部品に最も近い品目を選び、国別の輸出額を合計した。2021〜2024年は確定値、2025年は確々報で、元データの単位は千円である。半導体等電子部品と電池の合計は、税関が公表する年別の推移と一致することを確認した。

表2 日本の5部品の輸出額 (2021年と2025年)

品目2021年2025年増減率
半導体等電子部品4兆8,995億円6兆5,880億円(+34.5%)
電池6,639億円8,629億円(+30.0%)
電動機4,051億円4,644億円(+14.7%)
静止型変換器3,098億円3,750億円(+21.0%)
測定用等の電気機器5,696億円4,958億円(−12.9%)
5部品の合計6兆8,480億円8兆7,862億円(+28.3%)
輸出総額83兆914億円110兆4,005億円(+32.9%)

出所: 財務省貿易統計 (e-Stat表0003425295・0003425293、税関の年別推移)。静止型変換器は統計品目番号8504.40。合計と増減率は記者の計算

静止型変換器はインバーターやコンバーターを含む品目で、パワーエレクトロニクスに最も近い。センサーは貿易統計に単独の品目がないため、測定用等の電気機器で代用した。半導体等電子部品のうち、集積回路は3兆3,461億円から4兆8,696億円に45.5%増え、個別半導体は1兆280億円から1兆1,798億円に14.8%増えた。電池のうちリチウムイオン電池 (統計品目番号8507.60) は、3,699億円から5,499億円に48.7%増えている。

日本の5部品の輸出は8兆7,862億円、4年で28.3%増えたが輸出全体の伸びに届かない
日本の5部品の輸出は8兆7,862億円、4年で28.3%増えたが輸出全体の伸びに届かない

5部品の合計は4年間で28.3%増えた。ただ、輸出総額が32.9%増えたため、輸出全体に占める比率は8.24%から7.96%に下がった。合計の75.0%を半導体等電子部品が占め、電池、電動機、静止型変換器の3品目を足しても1兆7,023億円にとどまる。記者の見立てでは、エンバーが説く好循環は、日本の輸出統計では半導体にしか表れていない。エネルギー向けの部品は金額が小さく、センサーに近い品目は4年前より減った。

エンバーの国別分類で、日本は「出遅れ組」に入った

供給側の数字に比べ、利用側での日本の位置付けは厳しい。資料の42ページは、縦軸にAI向け計算設備の導入量、横軸に2010年以降の電化の進展 (太陽光・風力の発電比率、電化率、EVの販売比率それぞれの上昇幅の合計) をとり、国を4つに分類した。右上の「電化とAIの両方で先行する国」は中国、左上の「AIで先行する国」は米国で、日本は左下の「出遅れ組」に入った。

資料の94ページは、各国の輸出品が製品・部品・材料の各段階とどれだけ深く関わっているかを指数で示す。部品の段階で国名が記されているのは米国、ドイツ、イタリア、カナダ、韓国、台湾、中国、ロシアで、日本の名前はない。年に8兆円を超える5部品を輸出する国が、このページでは名前を挙げられていない。国名を記す基準は示されておらず、日本が対象外という意味ではないが、報告書が日本を主要な担い手として描いていないことは読み取れる。

記者の見立てでは、この2ページと貿易統計を重ねると、日本の5部品の需要は国内の電化やAIの導入ではなく、海外での導入に支えられている。国内が出遅れ組にとどまる限り、部品の出荷先は東アジアの他国の工場や、電化を進める国の製品に限られる。EVのインバーターに使う炭化ケイ素など材料の位置付けは、半導体技術の教科書の材料の節で整理している。

AIとエネルギーは、同じ5つの部品を奪い合い、互いの値下がりを促す1つの産業になりつつある。投資家がAI関連とエネルギー関連を別々のテーマとして見ている間に、部品の段階では両者の境目がすでに消えている。日本はその5部品を作って売る側に立つが、伸びているのは半導体だけで、国内の利用には回っていない。

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