電気工事と空調の求人が増えているのはAIモデルのせいではなく、1GWのAI向け施設1棟に18万トンの金属が入るからだ、という投稿が回った。集計の25種を出典まで戻し、生産量と価格と求人統計で確かめた。

投資家向けの投稿は短い。「電気工事士と空調工事の仕事が現れているのはAIモデルのせいではない。1GW の AI 向け施設が1棟で18万トンの金属だからだ。鋼材132,660 t、銅27,212 t、アルミニウム14,320 t、銀12 t、金2.8 t。それが仕事だ。銅を吊り、鋼を冷やす。クラウドは屋根の付いた鉱山である」。添えられた集計は医師で投資家のサレ・アルメナワー氏が「重要鉱物の情報 2026 (Critical Minerals Intelligence)」の題で作ったもので、1ギガワットの AI データセンター (建設費500億〜1,000億ドル) に25種の鉱物・金属、合計179,940 t が入るとし、重量順に15種を数字で、10種を「含まれるが量は非公表」として並べる。本誌はこの一覧を全行転記し、出典に挙がった世界経済フォーラム (WEF) とカーニーの報告書、米地質調査所 (USGS) の鉱物資源概要2026に当たり、FRED の金属価格、米証券取引委員会 (SEC) の提出書類、金融庁の EDINET、財務省の法人企業統計、厚生労働省の職業別求人統計で、投稿の主張を一つずつ数字に置き換えた。

25種の一覧を全行転記する ― 鋼材が73.7%、金は2.8 t

集計は重量順である。1位の鋼材132,660 t が全体の73.7%を占め、2位の銅27,212 t (15.1%)、3位のアルミニウム14,320 t (8.0%) と合わせて3種で96.8%になる。4位以下は黒鉛2,311 t、ニッケル1,410 t、コバルト602 t、シリコン450 t、リチウム408 t、すず274 t、鉛265 t と続き、11位の銀12 t から下は桁が落ちて、レアアース6.6 t、ガリウム5.3 t、金2.8 t、ゲルマニウム0.9 t で15種が終わる。15種の合計は179,937.6 t で、表題の179,940 t は四捨五入の値である。

1GW の AI データセンターに入る金属25種 (重量順、合計179,940 t)
1GW の AI データセンターに入る金属25種 (重量順、合計179,940 t)

16位から25位は量が公表されていない。タンタル、白金、パラジウム、インジウム、ヒ素、蛍石、重晶石、ホウ素、タングステン、アンチモンの10種で、集計は「鉱物構成に含まれるが数量は公表されていない」と注記する。出典の説明は「WEF とカーニーの報告書『From Minerals to Megawatts』の1MW当たりの鉱物・金属の原単位を、冷却・非常用電源・電気・計算・ネットワークの各系統で合算し、1GW の施設に換算。世界の年間生産量は USGS 鉱物資源概要2026。棒は相対的な重量で、見やすさのために目盛りを調整」である。

投稿が拾った5つの数字 (鋼材・銅・アルミニウム・銀・金) は一覧のとおりで、「18万トン」は179,940 t の概数である。銀12 t と金2.8 t を挙げたのは、重量では0.008%に満たない2種が、後で見るように金額では上位に来るからで、投稿者はそこまで書いていない。

出典の報告書に戻る ― 1MW当たり60〜75 t と、集計の180 t の差

WEF とカーニーが2025年12月に出した報告書「From Minerals to Megawatts: Building Resilience for EVs, Data Centres and Power Grids」は、図4で「データセンターの構成要素別の鉱物内訳 (kg/MW)」を5つの系統に分けて示し、合計を「1MW当たり約60〜75 t」と書く。系統別の比率は冷却系 (空調機、冷却分配装置、チラー、冷却塔) が35〜45%、非常用電源 (発電機、UPS) が20〜30%、電気系 (開閉装置、配電盤、配線) が15〜20%、サーバー系 (サーバー、チップ) が12〜16%、ネットワークとストレージが1〜3%である。

WEF・カーニーの1MW当たり内訳 (5系統) と集計の1GW値を1MWに戻した比較
WEF・カーニーの1MW当たり内訳 (5系統) と集計の1GW値を1MWに戻した比較

本誌が図4の5系統を金属ごとに足すと、鉄・鋼47.66 t/MW、銅11.58、アルミニウム11.32、黒鉛0.31、ニッケル0.47、鉛0.265、すず0.137、シリコン0.21、コバルト0.043、リチウム0.03、銀0.007、レアアース0.004、ガリウム0.002、金0.0013、ゲルマニウム0.0005で、合計72.0 t/MW になり、報告書の本文 (60〜75 t) と合う。集計の179,940 t を1,000で割ると179.9 t/MW で、報告書の2.5倍である。金属ごとに見ると鉛は0.265で完全に一致し、アルミニウム1.3倍、すず2.0倍、銀1.7倍、レアアース1.8倍、ゲルマニウム1.8倍は近い。一方で鋼材2.8倍、銅2.3倍、黒鉛7.4倍、コバルト14.0倍、リチウム13.6倍は報告書の2倍を超える。

差の一部は集計範囲の取り方で説明がつく。WEF の解説記事はマイクロソフトのシカゴ拠点 (80MW) が銅を約2,100 t 使い、敷地内と近接の電源接続を含めると26 t/MW、施設だけなら約12 t/MW と書く。集計の銅27.2 t/MW は前者の範囲、報告書の図4 (11.6 t/MW) は後者の範囲に当たる。鋼材の2.8倍も、図4が空調機・チラー・配電盤・発電機・サーバーという設備の金属を数え、建屋の鉄骨を含めないことと整合する。コバルト14倍とリチウム14倍、黒鉛7倍は非常用電源のリチウムイオン電池の持続時間の想定で動く数字で、図4の注記は2024年の構成 (従来型76%、GPU型24%) を前提にしている。集計は「AI データセンター」と題しており、GPU 型を100%と想定すればサーバー系と非常用電源の金属は増える。1GW=180,000 t は上限に近い数字として読むのが正確で、投稿の「18万トン」は報告書の本文なら6万〜7.5万トンである。

世界の年間生産量で割る ― ガリウムは1GWで0.59%、144GWで85%

USGS の鉱物資源概要2026は2025年の世界生産量を推定値で載せる。銅は鉱山23,000千 t (製錬29,000千 t)、アルミニウム74,000千 t、粗鋼1,900百万 t、黒鉛1,800千 t、ニッケル3,900千 t、コバルト310,000 t、金属シリコン5,000千 t、リチウム290,000 t (2024年222,000 t)、すず290,000 t、鉛4,500千 t、銀26,000 t、レアアース390,000 t、一次ガリウム900 t、金3,300 t である。ゲルマニウムは「多くの生産者が公表しないため」世界生産量を載せていない。

1GW 分は世界の年間生産量の何日分か (USGS 2026 の2025年生産で割る)
1GW 分は世界の年間生産量の何日分か (USGS 2026 の2025年生産で割る)

1GW の重量を年産で割ると、鋼材は0.007% (0.03日分)、銅0.12% (0.43日)、アルミニウム0.019%、黒鉛0.13%、コバルト0.19% (0.71日)、リチウム0.14%、すず0.094%、金0.085% (0.31日) で、最大はガリウムの0.59% (2.15日) である。1GW 単位では小さいが、報告書は世界のデータセンター容量が2024年の従来型91GW・AI 型22GWから2035年に111GW・166GWへ増えると見込む。AI 型が増える分の144GWに集計の原単位を掛けると、ガリウムは年産の85%、コバルト28%、リチウム20%、黒鉛18.5%、銅17%、すず13.6%、金12%になり、鋼材は1.0%、アルミニウム2.8%にとどまる。報告書が2035年の世界需要に占めるデータセンターの比率をガリウム6.0%、ゲルマニウム2.4%、すず1.2%、銅0.9%、金0.6%、コバルト0.5%とするのは、この計算を報告書の (集計より低い) 原単位で行い、11年間にならした結果である。

ガリウムの数字が突出するのは、世界の一次ガリウム900 t の99%を中国が作り、2023年8月に輸出許可制を敷き、2024年12月に対米輸出を禁じたためである。USGS は2025年の米国の輸入単価が1kg当たり439ドルから580ドルへ上がったと書き、9月初旬の欧州価格は2,269ドル/kg である。ゲルマニウムも同じ経路で、USGS は欧州価格が2025年1月の3,150ドル/kg から10月の5,380ドル/kg へ上がり、米国のゲルマニウム金属輸入が中国の禁輸で67%減の7,000 kg になったと書く。9月初旬の価格は8,598ドル/kg で、年初来48%高い。

金属の購入額は約11億ドル ― 金2.8 t が銅27,212 t を上回る

重量に直近の価格を掛けると、購入額の順位は重量順とまったく違う。FRED の LME 月平均 (2026年7月) は銅13,543ドル/t、アルミニウム3,158ドル、ニッケル16,632ドル、すず52,882ドル、鉛1,843ドルで、貴金属はスポットの金4,429ドル/oz (9月5日)、銀66ドル/oz (9月4日)、電池材料はコバルト45,386ドル/t、炭酸リチウム18,310ドル/t (英調査会社ベンチマーク、8月12日)、天然鱗状黒鉛320ドル/t、レアアースは NdPr 酸化物109ドル/kg、鋼材は米国の熱延コイル1,191ドル/t (7月31日)、金属シリコン1,259ドル/t である。

1GW の金属を2026年9月初旬の価格で買うといくらか (購入額 合計約11億ドル)
1GW の金属を2026年9月初旬の価格で買うといくらか (購入額 合計約11億ドル)

合計は11億2,300万ドルになる。首位は金で、2.8 t は90,022トロイオンス、4,429ドルを掛けて3億9,900万ドル。2位が銅の3億6,900万ドル、3位が鋼材の1億5,800万ドルで、アルミニウム4,500万ドル、リチウム (炭酸リチウム換算2,172 t) 4,000万ドル、コバルト2,700万ドル、銀2,600万ドル、ニッケル2,400万ドル、すず1,500万ドル、ガリウム1,200万ドル、ゲルマニウム800万ドルと続く。黒鉛・レアアース・シリコン・鉛は各100万ドル未満である。金の順位は2.8 t という前提に左右され、報告書の図4は金を約1.2 kg/MW (1GW で1.2 t、1億7,100万ドル) とするため、その場合は銅が首位で金は2位になる。どちらの範囲でも、重量で0.002%の金が金額では2割前後を占める。

11億ドルは集計が示す建設費500億〜1,000億ドルの1.1〜2.2%である。残りは工事、機器の加工費、土地、そして人件費で、国際電気工事労働組合 (IBEW) はデータセンター建設費の45〜70%が電気工事だとする。金属の材料費が1〜2%で電気工事が半分前後という比率が、投稿の「銅を吊り、鋼を冷やす」を数字で言い直したものになる。ドイツ銀行のリポート「Capitalism and the dollar: the AI race, tokenization, and the dollar's future」(2026年9月4日、マリカ・サチデバ氏) は AI 競争が米国への資本流入とドル需要を左右すると論じるが、1GW 当たり11億ドルの金属はすべてドル建てで値付けされ、500億〜1,000億ドルの建設費の大半は米国内の工事と人件費に落ちる。

供給の偏りと埋蔵年数 ― 15種のうち12種で精錬の首位が中国

報告書の図11は2024年の埋蔵年数 (現在の埋蔵量÷年産) と、採掘・精錬の上位3か国の比率を載せる。精錬で中国が首位なのはガリウム (上位3か国で100%)、黒鉛 (98%)、レアアース (97%)、ゲルマニウム (96%)、リチウム (96%)、コバルト (89%)、すず (75%)、アルミニウム (71%)、タンタル (66%)、銅 (57%)、鉛 (56%)、銀 (43%) の12種で、例外はニッケル (インドネシア78%)、金 (スイス57%)、鉄 (中国77%だが精錬の集中度は低い) である。埋蔵年数はすず15年、金20年、鉛20年、銀30年、銅40年、コバルト40年、ニッケル40年が短く、ガリウム65年、アルミニウム65年、鉄80年、リチウム125年、黒鉛170年、タンタル190年、レアアース230年、ゲルマニウム420年が長い。

上位3か国の集中度・埋蔵年数・2025年の価格の動き
上位3か国の集中度・埋蔵年数・2025年の価格の動き

USGS の2025年の記述を重ねると、価格が動いたのは供給の偏りが大きい金属である。アンチモンは中国の対米輸出禁止で年平均25ドル/lb と2024年の2.4倍、ゲルマニウムは1〜10月で71%高、ガリウムの米国輸入単価は32%高、金は3,300ドル/oz (38%高) と銀38ドル/oz (34%高) が過去最高、銅の COMEX 価格は4.80ドル/lb (14%高) で過去最高、アルミニウムの米国市場価格は関税で39%高である。逆にリチウムの炭酸リチウム年平均は9,000ドル/t で31%安、ニッケルの LME 年平均は11%安、鉛は3%安で、電池材料は2025年が底だった。米国の輸入依存度は銅が45%から57%へ上昇し (関税前の前倒し輸入)、コバルト79%、すず77%、銀77%、アルミニウム60%、ガリウム・黒鉛・タンタル・蛍石が100%である。

電気工事と空調の仕事を数字で ― 米国の受注残と日本の求人倍率

投稿の主題である「仕事」を、米国は SEC と FRED、日本は厚労省と法人企業統計で追った。米国の空調・電気工事最大手コンフォート・システムズ USA (FIX) の受注残は2026年6月末に140.6億ドルで前年比73%増、4〜6月期の売上高32.7億ドル、営業利益5.6億ドル、純利益4.4億ドルである。EMCOR (EME) の残存履行義務は171.4億ドル (3月末156.2億ドル)、送電・電気工事のクアンタ・サービシズ (PWR) は335.5億ドル (3月末262.4億ドル) で、3社の受注残の合計は647億ドル、1四半期で約100億ドル増えた。冷却・電源機器のヴァーティブ (VRT) は4〜6月期の売上高32.7億ドル (前年同期比24%増)、営業利益6.4億ドルである。

米国の受注残と求人、日本の求人倍率と法人企業統計
米国の受注残と求人、日本の求人倍率と法人企業統計

FRED の雇用統計では、米国の専門工事業の雇用は2026年7月に526.6万人で2019年7月より10.1%多く、非住宅の専門工事は120.6万人、建設業の求人 (JOLTS) は32.6万件で2024年7月の24.9万件から増え、建設業の平均時給は41.50ドルと2019年7月の30.71ドルから35%上がった。IBEW は繁忙拠点に他地域から応援の電気工事士を1,200人超配置し、業界の推計では2026年のデータセンター建設で最大49.9万人が不足する。電気工事が建設費の45〜70%という比率は、金属の材料費1〜2%と対になる。

日本は厚生労働省の一般職業紹介状況 (令和8年7月分、参考統計表) で、電気工事従事者の有効求人21,770人に対し有効求職6,668人、有効求人倍率は3.26倍 (パートを含む常用)、パートを除くと3.70倍である。職業計の1.05倍 (同1.16倍) の3.1倍で、建築・土木・測量技術者の5.46倍、土木作業従事者の6.49倍、建設・採掘従事者の4.99倍と並ぶ。電気工事の有効求人は前年同月比4.5%増、新規求人は10.0%増で、倍率が0.12ポイント下がったのは求職者が8.1%増えたためである。法人企業統計 (2026年4〜6月期) の建設業は売上高27.9兆円から29.1兆円 (4.5%増)、営業利益1兆1,472億円から1兆3,518億円 (17.8%増)、従業員254.9万人から266.4万人 (4.5%増)、人件費4.55兆円から4.76兆円 (4.7%増) で、設備投資は5,841億円から5,504億円へ5.8%減った。利益と人は増え、機械への投資は減っている。電気機械器具製造業は営業利益が5,605億円から7,253億円 (29.4%増)、設備投資が2,889億円から3,326億円 (15.1%増) で、機器側は逆に投資を増やした。

日本の工事会社の決算にもデータセンターが出る。関電工 (1942) の2026年3月期決算短信は完成工事高7,420億円 (前期比10.4%増)、営業利益831億円 (42.5%増)、純利益635億円 (49.9%増)、単体の新規受注高7,315億円 (13.0%増) で、2027年3月期は完成工事高7,800億円、営業利益900億円、単体受注8,090億円を見込み、理由に「旺盛な半導体・データセンター関連投資」を挙げる。高砂熱学工業 (1969) の受注高は4,600億円 (10.6%増)、営業利益477億円 (47.3%増) で、来期の受注高5,200億円・純利益400億円を予想し、短信は「資機材価格の高止まりや労務費の高騰」を注記する。きんでん (1944) は売上高7,507億円、営業利益903億円 (48.0%増) である。

掘る会社と据え付ける会社 ― SEC 12社と EDINET 14社

米上場では金属を掘る7社と据え付ける5社を並べた。銅のフリーポート・マクモラン (FCX) は2025年の売上高259億ドル・営業利益65億ドル、2026年4〜6月期は売上高70.3億ドル・営業利益20.0億ドル、サザン・コッパー (SCCO) は4〜6月期の売上高42.9億ドルに営業利益26.2億ドルで営業利益率61%である。アルミニウムのアルコア (AA) は4〜6月期の売上高39.7億ドル、鋼材のニューコア (NUE) は4〜7月期に売上高104億ドル・純利益11.6億ドル、スチール・ダイナミクス (STLD) は60.9億ドル・営業利益7.0億ドルで、鋼材の営業利益率 (11%と7%) は銅 (28%と61%) より低い。レアアースの MP マテリアルズ (MP) は4〜6月期の売上高1.1億ドルに対し設備投資2.3億ドルで、営業損失が続く。据え付け側はイートン (ETN) が4〜6月期の売上高85.3億ドル、ヴァーティブ32.7億ドル、クアンタ95.6億ドル、EMCOR 51.5億ドル、コンフォート・システムズ32.7億ドルで、5社の合計298億ドルは掘る7社の327億ドルに迫る。

米上場12社の直近四半期 (SEC)
米上場12社の直近四半期 (SEC)

日本は EDINET の2026年3月期有価証券報告書14社を並べた。電線の住友電気工業 (5802) は売上高5兆1,102億円、営業利益4,182億円、純利益3,695億円 (前期比1.9倍)、設備投資2,432億円、従業員302,972人で、フジクラ (5803) は売上高1兆1,824億円、営業利益1,887億円、純利益1,572億円 (1.7倍)、自己資本比率57.8%、古河電気工業 (5801) は売上高1兆3,076億円、営業利益639億円、純利益725億円 (2.2倍) である。銅の JX金属 (5016、2025年3月上場) は営業利益1,750億円 (56%増)、純利益1,046億円、住友金属鉱山 (5713) は売上収益1兆7,416億円、純利益1,763億円、三菱マテリアル (5711) は営業利益605億円、DOWA ホールディングス (5714) は純利益625億円で、いずれも銅・ニッケル・金の価格上昇が利益を押し上げた。鋼材の日本製鉄 (5401) は USスチール取得 (子会社取得の支出2兆156億円) で設備投資9,430億円、支払利息が382億円から896億円へ増え、純利益は172億円に落ちた。アルミニウムの UACJ (5741) は売上収益1兆1,817億円、営業利益769億円、神戸製鋼所 (5406) は営業利益1,299億円である。空調機のダイキン工業 (6367) は売上高5兆150億円、営業利益4,150億円、設備投資3,000億円で、工事3社 (高砂熱学・関電工・きんでん) の営業利益はそろって4割前後伸びた。

日本の金属・電線・鉄鋼・工事14社の有価証券報告書 (2026年3月期)
日本の金属・電線・鉄鋼・工事14社の有価証券報告書 (2026年3月期)

株式需給は本誌のデータベース (東証の信用残8月28日、日本証券金融9月3日、空売り残高報告9月2日まで) で15銘柄を見た。電線3社と JX金属は信用買い残が1,000万株を超え (住友電工1,242.6万株、フジクラ2,210.3万株、古河電工1,772.7万株、JX金属2,066.5万株)、日証金の融資超過も120万〜270万株と厚い。日本製鉄は買い残3,545.7万株に売り残346.0万株で、BNPパリバが1.20%の空売り残高を報告する。工事3社は買い残が27.6万〜48.4万株の規模で、倍率は11〜16倍である。ダイキンは野村證券が1.43%の空売り残高を報告し、電線・銅と工事・空調で需給の厚みが違う。

金属・電線・工事15銘柄の信用残・貸借・空売り
金属・電線・工事15銘柄の信用残・貸借・空売り

金属はどこに使われるか ― 変電所からチップまでの電気と熱の経路

1GW の電気は特別高圧で受電し、変圧器で降圧され、開閉装置と配電盤 (PDU) を通り、無停電電源装置 (UPS) を経て、ラックへは近年48Vから800Vへ移りつつある直流で入る。熱は同じ経路を逆にたどり、チップから放熱器、冷却分配装置 (CDU)、空調機 (CRAH)、チラー、冷却塔を経て外へ出る。報告書の図4はこの経路に沿って金属を配分しており、電気系に鉄9,900 kg/MW と銅3,500 kg/MW、冷却系に鉄18,000 kg/MW・アルミニウム6,700 kg/MW・銅3,600 kg/MW、非常用電源に鉄14,000 kg/MW・銅2,200 kg/MW・鉛240 kg/MW・黒鉛290 kg/MW・ニッケル220 kg/MW・コバルト40 kg/MW・リチウム30 kg/MW、計算系にアルミニウム2,700 kg/MW・銅2,000 kg/MW・シリコン160 kg/MW・すず120 kg/MW・ガリウム2 kg/MW・金1 kg/MW を配る。

変電所からチップまでの電気と熱の経路と各金属の物性
変電所からチップまでの電気と熱の経路と各金属の物性

なぜ銅とアルミニウムが電気と熱を運び、金と銀が接点に残るかは物性で決まる。20℃の電気抵抗率は銀1.59 μΩ·cm、銅1.68、金2.44、アルミニウム2.65、鉄9.7で、熱伝導率は銀429 W/m·K、銅401、金318、アルミニウム237、鉄80である。銀が導電率の首位だが価格で銅に譲り、接点とはんだにだけ残る。アルミニウムは銅の1.6倍の断面積で同じ抵抗になるが密度が2.70 g/cm³と銅 (8.96) の3分の1のため、同じ損失で重量は0.48倍になる。母線と高圧ケーブルがアルミニウムに寄り、端子と巻線が銅に残るのはこの比の結果で、図4が冷却系のフィンとサーバーの放熱器にアルミニウムを、変圧器の巻線と熱交換器の管に銅を使うのも同じ理由である。

金は酸化しないため基板の端子めっきと半導体のボンディングワイヤー (接続線) に使われ、厚さ0.05〜1 μm の薄膜で足りる。集計の2.8 t は1MW当たり2.8 kg で、GPU サーバー1台に数グラムずつ載る金の合計である。ガリウムは窒化ガリウム (GaN) を使う電源の変換回路と光通信のレーザーに使われ、ラック電源が48Vから800V直流へ移る過程で炭化ケイ素 (SiC) とともにシリコンを置き換える。ゲルマニウムは光ファイバーの中心部 (コアへの二酸化ゲルマニウムの添加) と光学部品に、レアアースはファンとポンプのモーター磁石 (ネオジム鉄ホウ素) に、鉛は非常用の鉛蓄電池に、リチウム・黒鉛・ニッケル・コバルトはリチウムイオン電池に使われる。変圧器の鉄心は方向性電磁鋼板で、鉄の重量の大半は筐体・配管・建屋の構造用鋼である。液冷 (CDU) が空冷に置き換わると、銅とアルミニウムの熱交換器が増えて鉄の筐体は減り、報告書は液冷の普及で銅とアルミニウムへの依存が増すと書く。

投稿を読み直す ― 数字が支える部分と、集計範囲で動く部分

投稿の主張を3つに分けると、数字が支えるもの、集計範囲で動くもの、言い過ぎのものがある。

  • 支えるもの: 電気工事の仕事はデータセンターで増えている。米国の3社の受注残647億ドル、建設業の時給35%高、日本の電気工事従事者の求人倍率3.26倍と関電工の受注13%増は、いずれも一次資料の数字である。
  • 集計範囲で動くもの: 「1GW=18万トン」は集計の上限値で、出典の報告書の本文は6万〜7.5万トンである。銅27 t/MW は電源接続を含む範囲 (シカゴ拠点26 t/MW) と合い、鋼材は建屋の鉄骨を含むかで2.8倍動く。
  • 言い過ぎのもの: 「クラウドは屋根の付いた鉱山」は重量で見れば鋼材と銅とアルミニウムの話であり、金額で見れば金と銅の話で、世界生産に対する比率で見ればガリウムとコバルトとリチウムの話になる。どの尺度かを言わない比喩は、どの株を買うかを決めない。

尺度を選ぶと銘柄が変わる。重量なら鋼材と電線 (ニューコア、日本製鉄、住友電工)、金額なら金と銅 (フリーポートJX金属住友金属鉱山)、世界生産に対する比率ならガリウム・ゲルマニウム・コバルトの精錬を握る中国とその外側 (MP マテリアルズ、DOWA)、そして建設費の45〜70%を占める電気工事 (クアンタ、EMCOR、コンフォート・システムズ、関電工、きんでん、高砂熱学) である。次に確かめる数字は、9月末のコンフォート・システムズの受注残、10月末の厚労省9月分の職業別求人倍率、11月の関電工と高砂熱学の第2四半期受注高、そして USGS が2027年1月に出す鉱物資源概要2027のガリウムとゲルマニウムの価格である。