上海税関によると、上海市と江蘇・浙江・安徽の3省からなる長江デルタで1〜8月の貿易総額は13兆1,600億元と前年同期比18.8%増え、集積回路の輸出は2倍になった。ファナックは中国向けの受注が4〜6月に50.9%増えた。
日本から中国への輸出は2026年上半期に約10兆2,000億円と前年同期比14.3%増えた。ただ、財務省の貿易指数でみると、数量指数は7.6%低下し、価格指数は23.6%上昇した。金額を押し上げたのは「半導体等電子部品」で、半導体製造装置は逆に15.3%減った。中国側では、長江デルタの輸出が集積回路と自動車を中心に伸びている。中国税関総署が10月14日に発表した1〜9月の全国の貿易額も39兆9,400億元と18.8%増え、伸び率は長江デルタの1〜8月と同じだった。日本の上場企業の開示には何が表れているかを、ファナックと安川電機の中国事業の数字で確かめる。
長江デルタの貿易額は1〜8月に13兆1,600億元、18カ月連続で前年同月を上回る
上海税関が9月22日に発表した統計によると、長江デルタの2026年1〜8月のモノの輸出入総額は13兆1,600億元と、前年同期より18.8%増えた。1〜8月としては過去最高で、前年同月を上回るのは18カ月連続となった。全国の輸出入総額に占める割合は37.8%だった。税関総署が9月8日に発表した1〜8月の全国の輸出入総額は34兆7,800億元 (17.6%増) で、この数字から計算しても37.8%になる。
累計の伸び率は1〜4月の15.9% (6兆1,400億元) から上半期の18.0% (9兆6,200億元)、1〜7月の18.9% (11兆4,100億元) へ高まり、1〜8月は18.8%だった。全国でも伸びは加速している。税関総署が10月14日の記者会見で示した四半期ごとの伸び率は1〜3月が15.3%、4〜6月が18.3%、7〜9月が22.3%だった。9月単月の貿易額は5兆1,600億元と27.5%増え、単月で初めて5兆元を超えた。1〜9月は輸出が23兆2,000億元 (16.4%増)、輸入が16兆7,400億元 (22.3%増) だった。長江デルタの1〜9月の統計は、10月14日時点ではまだ公表されていない。
長江デルタの1〜4月の輸出は3兆8,300億元で全国 (9兆3,300億元、11.3%増) の41.1%、輸入は2兆3,100億元 (20.1%増) で全国 (6兆9,000億元、20%増) の33.5%を占めた。1〜4月の全国の輸出入総額は16兆2,300億元 (14.9%増) で、長江デルタの占める割合は37.8%だった。前年同期比の伸び率から逆算すると、2025年1〜4月は長江デルタが約5兆3,000億元、全国が約14兆1,300億元で、割合は約37.5%になる (本稿の計算)。長江デルタの比重は1年で0.3ポイント高まった。なお、2025年1〜4月も3省1市の輸出入はそろって前年を上回っていた。江蘇省が1兆8,500億元で5.7%増、浙江省が1兆7,500億元で6.6%増、上海市が1兆4,000億元で1.0%増と前年も伸びており、2026年の高い伸びは前年の落ち込みの反動とはいえない。
輸出は集積回路と自動車が押し上げ、東南アジア諸国連合との貿易は1〜7月に31.1%増
上海税関の1〜8月の発表によると、長江デルタの輸出の64.2%を機械・電気製品 (中国の統計の「機電製品」) が占めた。機械・電気製品の輸出は5兆3,500億元で26.6%増えた。このうち集積回路の輸出は約7,304億元で前年同期の2倍、自動車は約4,345億元で66.8%増だった。電気自動車・太陽光発電製品・リチウムイオン電池に代表される新興製品の輸出は約5,659億元で59.4%増、AI産業と関係の深いハイテク製品の輸出は2兆2,400億元で48.6%増えた。
| 品目 (2026年1〜8月) | 輸出額 (億元) | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 機械・電気製品 (輸出総額の64.2%) | 53,500 | +26.6% |
| AI産業と関係の深いハイテク製品 | 22,400 | +48.6% |
| 集積回路 | 7,304.4 | 2.0倍 |
| 新興製品 (電気自動車・太陽光発電製品・リチウムイオン電池など) | 5,658.5 | +59.4% |
| 高度な機械設備 (高端装備) | 4,926.4 | +22.0% |
| 自動車 | 4,344.9 | +66.8% |
| 船舶 | 1,813.7 | +30.8% |
| ロボット4種 | 160 | 4倍 (原文は「3倍増」) |
出所: 上海税関の統計 (新華網、2026年9月22日)。機械・電気製品の比率から逆算すると、長江デルタの1〜8月の輸出総額は約8兆3,300億元で、集積回路はその8.8%、自動車は5.2%にあたる (本稿の計算)。中国の統計では「1倍増」は前年の2倍、「3倍増」は4倍を指す。集積回路の「1倍増」は、南京税関が発表した1〜7月の96.9%増とも合う。「1倍増」(2倍) から逆算すると、集積回路の前年同期の輸出額は約3,652億元になる (本稿の計算)。ロボット4種は手術ロボット、人や動物の形や動きをまねたロボット、清掃ロボット、産業用ロボットの合計で、前年同期の輸出額は公表されていない。
1〜8月の長江デルタの輸出入の増加額は約2兆800億元で、このうち集積回路の輸出の増加分 (約3,652億元) は約18%、自動車の増加分 (約1,740億元) は約8%にあたる (本稿の計算)。2品目で増加額の4分の1強を占めるが、残りは機械・電気製品のほかの品目や輸入の増加によるものだ。全国の集積回路の輸出は1〜8月に1兆7,668億元で95.4%増えており、長江デルタの集積回路の輸出 (約7,304億元) はその41.3%にあたる (本稿の計算)。
南京税関の統計を伝えた人民日報 (8月17日) によると、1〜7月の長江デルタの輸出では、計算処理用の機器・部品のうち集積回路が96.9%増、コンピューターのストレージ部品が128.4%増 (2.3倍)、電気自動車 (新エネルギー車) が108.7%増 (2.1倍) だった。全国でも同じ傾向で、税関総署が10月14日の記者会見で示した1〜9月の輸出は集積回路が99.1%増、電気自動車が72.3%増、リチウムイオン電池が36.4%増だった。上海税関の1〜4月の発表では、輸出で伸びた品目にリチウムイオン電池やLNG運搬船、数値制御工作機械、産業用ロボットなどの高度な機械設備 (約2,298億元、23.5%増) が挙がり、集積回路は輸入で伸びた品目に入っていた。1〜7月の発表では集積回路の輸出が96.9%増、1〜8月は2倍と、輸出の主な品目として取り上げられるようになった。
相手先別では、東南アジア諸国連合との貿易の伸びが大きい。長江デルタの同連合との輸出入は1〜4月に23.7%増、1〜7月に31.1%増だった (1〜7月の中南米は11.7%増、アフリカは16.9%増)。全国の1〜9月は同連合との輸出入が6兆8,400億元で22.7%増、EUとは4兆7,800億元で8.4%増だった。米国とは3兆1,800億元で4.1%増にとどまった。1〜8月の米国との輸出入は2兆7,600億元で1.3%増だった。米国との貿易の伸びが小さく、東南アジアとの伸びが大きいのは全国でも同じだ。ただし、税関の統計は貨物の仕向け地までしか示さず、東南アジアに送られた部品や製品がそこから第三国へ再輸出されたかどうかは分からない。
日本から中国への輸出は上半期14.3%増だが数量は7.6%減、半導体製造装置は15.3%減
財務省が7月22日に発表した2026年上半期の貿易統計 (速報) によると、日本の対中国輸出は10兆2,247億円で前年同期比14.3%増、輸入は14兆8,683億円で15.7%増だった。輸出額・輸入額とも上半期として過去最高で、貿易収支は4兆6,436億円の赤字と、半期ごとの集計で75期連続の赤字になった。
金額の伸びと数量の動きは一致していない。同じ発表の貿易指数 (2020年=100) では、対中国輸出の金額指数は135.6で14.3%上がったが、数量指数は68.0で7.6%下がり、価格指数は199.3で23.6%上がった。数量の0.924倍と価格の1.236倍を掛けると1.142倍になり、金額の伸び (1.143倍) とほぼ一致する。上半期の税関長公示レートは1ドル157.75円で、前年同期の149.47円より5.5%の円安だった。価格指数は対中国輸出全体の単価の指数で、円安で円建ての価格が上がった分と、輸出品そのものの値上がりや単価の高い品目への構成の変化を含む。円安の5.5%だけでは23.6%の上昇は説明できない。品目別では、半導体等電子部品 (半導体を含む電子部品の品目) の金額が64.4%増えた。
| 対中国輸出の品目 | 2026年上半期 | 2026年8月 |
|---|---|---|
| 半導体等電子部品 | +64.4% (寄与度4.2) | +131.3% (寄与度10.3) |
| 半導体等製造装置 | ▲15.3% (寄与度▲1.6) | +16.3% (寄与度1.8) |
| 非鉄金属 | +34.4% (寄与度1.4) | +33.8% (寄与度1.3) |
| 原料品 | +55.8% (寄与度1.9) | (概要に記載なし) |
| 自動車 | (概要に記載なし) | ▲53.5% (寄与度▲2.1) |
| 対中国輸出の総額 | +14.3% | +20.6% |
出所: 財務省の貿易統計 (速報) の概要。上半期の対中国輸出の増加品目は半導体等電子部品 (64.4%増)、原料品 (55.8%増)、非鉄金属 (34.4%増) で、減少品目は半導体等製造装置 (以下、半導体製造装置、15.3%減) だった。8月単月の対中国輸出は1兆8,095億円と20.6%増え、6カ月連続で前年同月を上回った。半導体等電子部品が131.3%増えて寄与度10.3と、伸びの半分を占めた。半導体製造装置は上半期は15.3%減だったが、8月単月は16.3%増だった。自動車は53.5%減った。対中国輸入は8月に2兆3,611億円と22.5%増え、13カ月連続で前年同月を上回った。増えたのは半導体等電子部品 (65.8%増)、非鉄金属 (98.9%増)、通信機 (13.7%増) だった。貿易収支は5,516億円の赤字で、赤字は65カ月続いている。8月の公示レートは1ドル160.64円で、前年同月の147.73円より8.7%の円安だった。
8月分の速報の概要に載る月次の値を1〜8月で足し合わせると、日本の対中国輸出は14兆424億円になる (本稿の計算)。7月は2兆86億円で25.8%増、8月は20.6%増と、年の後半に入って伸びが加速している。長江デルタの集積回路の輸出が2倍になった時期に、日本から中国への半導体等電子部品の輸出も上半期64.4%増、8月131.3%増と伸びている。一方、日本の半導体製造装置の対中国輸出は上半期に15.3%減り、8月単月は16.3%増だった。
ファナックの中国向け受注は4〜6月に50.9%増、安川電機の中国売上高は人民元建てでは横ばい
ファナックと安川電機は、中国事業の数字を顧客や販売会社の所在地別に開示している。どちらも中国全体の数字で、長江デルタに分けた数字はない。工場自動化機器の大手2社の開示を、長江デルタの統計と同じ時期について見る。
ファナックが7月31日に公表した2026年度第1四半期 (2026年4〜6月) の決算説明会資料によると、連結売上高2,310億円 (前年同期比17.7%増) のうち中国は693億円で、前年同期の533億円から30.0%増え、直前の1〜3月と比べても11.5%増えた。売上高に占める中国の割合は27.1%から30.0%に上がった。中国向け受注は887億円で、前年同期の588億円から50.9%増、直前の1〜3月と比べて12.3%増え、全社の受注高2,819億円 (36.9%増) の31.5%を占める。受注は中国だけが伸びたわけではなく、国内が51.3%増、中国を除くアジアが75.8%増、欧州が17.1%増、米州が8.3%増と、すべての地域で前年同期を上回った。数値制御装置などの部門では中国の売上高が22.3%増えて部門全体の39.0%を占め、ロボット部門では21.1%増で27.7%だった。同社は第1四半期の決算短信で、ロボットは中国でEV関連向けと一般産業向けが好調に推移し、小型切削加工機のロボドリルは国内や中国で需要が好調で、ワイヤ放電加工機のロボカットは中国の需要増で売上高が増えたと説明している。あわせて2027年3月期の通期予想を、4月24日に示した売上高9,096億円から9,481億円 (前期比10.5%増) に上方修正した。
2025年度 (2026年3月期) の通期では、ファナックの連結売上高は前年度の7,971億円から7.6%増の8,578億円となり、このうち中国は2,284億円で前年度の1,866億円を22.4%上回り、構成比は23.4%から26.6%に上がった。ロボット部門の売上高は3,786億円で14.9%増えた。同社は決算短信で、ロボット部門は中国でEV関連向けと一般産業向けが好調で売上高が大きく増えたとし、数値制御装置などの部門も設備投資に積極的な産業の需要が旺盛な中国で好調だったと記している。有価証券報告書に載るロボット部門の中国向け売上高と、安川電機のロボット事業の中国での売上高は、ファナックと安川電機の中国でのロボット販売を扱った記事にまとめている。
| 会社・期間 | 当期 | 前年 (同期・前年度) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| ファナック 2026年4〜6月 中国売上高 | 693億円 | 533億円 | +30.0% |
| ファナック 2026年4〜6月 中国向け受注 | 887億円 | 588億円 | +50.9% |
| ファナック 2025年度 中国売上高 | 2,284億円 | 1,866億円 | +22.4% |
| 安川電機 2026年3〜8月 中国の売上収益 (販売会社の所在地別) | 667億円 | 579億円 | +15.1% |
| 安川電機 同 (人民元換算、本稿の計算) | 28億4,000万元 | 28億6,000万元 | ▲0.6% |
安川電機が10月9日に発表した2027年2月期中間期 (2026年3〜8月) の決算では、売上収益が2,856億円で9.8%増、営業利益は221億円で5.5%減だった。決算説明資料の地域別 (販売会社の所在地別) の売上収益では、中国は667億円で前年同期の579億円から15.1%増えた。米州は781億円で26.2%増、欧州は335億円で0.8%増、中国を除くアジアは366億円で7.3%増だった。海外の合計は2,149億円で14.8%増えた。国内は707億円で3.2%減った。同社は決算短信で、中国は半導体関連投資の拡大を背景に需要が好調で、一般産業分野の自動化需要も底堅く、自動車向けは大口案件があった前年同期より減ったものの設備投資の需要は堅調だったと説明している。事業別では、サーボモーターとインバーターのモーションコントロール事業が1,373億円で21.7%増え、米州、中国、韓国・台湾で販売を広げた。ロボット事業は1,184億円で0.7%減ったが、半導体の製造装置向けロボットが好調な中国など海外では伸びた。
受注は売上収益より伸びている。決算説明資料の地域別の四半期受注 (円建て、期中平均レートで換算) では、中国は3〜5月が353億円 (前年同期298億円) で19%増、6〜8月が375億円 (同277億円) で35%増だった。6〜8月は国内が18%増、米州が60%増、欧州が36%増、中国を除くアジアが53%増と、ファナックと同じく全地域で増えた。6〜8月のロボット事業の受注は中国で41%増、サーボモーターは33%増だった。
ただし、安川電機の中国売上高が円建てで15.1%伸びた分は、為替でほぼ説明がつく。同社の開示では中間期の人民元の平均レートは1元23.48円で、前年同期の20.26円から15.9%の円安・元高になった。中国の売上収益を各期のレートで人民元に換算し直すと、前年同期の約28億6,000万元に対して当期は約28億4,000万元と0.6%減る (本稿の計算)。円建ての15.1%増は、人民元建てではほぼ横ばいだ。同社は上期の売上収益の増加額254億円のうち206億円が為替の影響だったと開示している。受注の35%増も円建てで、15.9%の円安・元高を差し引くと人民元建てでは16%程度の増加になる (本稿の概算)。ファナックは人民元のレートを開示していないが、1ドルの為替レートは前年同期の144.59円から159.49円へ10.3%の円安になっており、中国売上高の30.0%増と中国向け受注の50.9%増にも円安による押し上げ分が含まれる (本稿の推定)。
財務省の統計は対中輸出の数量減を、2社の開示は円安を含む中国向け受注の増加を示す
長江デルタの貿易は、集積回路と自動車の輸出がそれぞれ2倍、66.8%増と伸び、1〜8月の輸出入総額13兆1,600億元は全国の37.8%を占める。同じ時期の日本の対中国輸出は、上半期に金額で14.3%増えたが数量は7.6%減り、金額を押し上げたのは半導体等電子部品と価格の上昇だった。半導体製造装置の対中国輸出は上半期に15.3%減り、8月単月は16.3%増だった。
ファナックの中国向け受注は4〜6月に50.9%増え、安川電機の中国での受注も6〜8月に35%増えた。中国の売上の伸びの理由として、ファナックはEV関連と一般産業向けを、安川電機は半導体関連投資と一般産業の自動化を挙げており、長江デルタの集積回路や自動車の輸出と結びつける開示はない。受注は国内や中国以外のアジアでも同じように伸びており、中国だけの動きではない。円建ての伸び率には円安による押し上げが含まれ、安川電機の中国売上高は人民元建てでは横ばいだった。日本の投資家が長江デルタの活況を2社の業績に読み替えるときは、円建ての伸び率から為替の分を差し引き、売上高と受注を分けて見る必要がある。
2社の企業情報はファナックの企業ページと安川電機の企業ページに、決算や開示資料はファナックの銘柄ページと安川電機の銘柄ページに、ロボットの技術はロボット技術の体系解説にまとめている。
※2026年10月14日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版の「2025年同期はゼロコロナ政策の解除直後で経済活動が正常化していなかった」は誤りで、ゼロコロナ政策の解除は2022年12月であり、2025年1〜4月の江蘇省の貿易は5.7%増、浙江省は6.6%増でした。「バイデン政権が2026年5月に関税引き上げを発表した」も誤りで、関税引き上げの発表は2024年5月でした。出所を確かめられなかった「地域的な包括的経済連携協定の加盟国向け27.9%増」「輸出13.6%増」「人民元安による押し上げ」「リン酸鉄リチウム電池の搭載車が8割超」「中国のファウンドリが28ナノメートル以上で世界の生産能力の39%」「約135兆円」の記述と、村田製作所・信越化学工業・東京エレクトロンについての見通しは削除し、統計は上海税関の2026年1〜8月の発表と財務省の貿易統計、ファナックと安川電機の決算資料に改めました。
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