中国は2025年に産業用ロボットを35万4000台導入し、世界の59%を占めた。中国メーカーがシェア55%を握るが、海外メーカーの導入台数は27%増え、中国でのロボット売上高はファナックが58.8%、安川電機が11.7%伸びた。

スペインの有力紙エル・パイスは9月26日、「中国は技術超大国か」と題した記事で、中国が産業や科学技術で世界の最先端に立ったと伝えた。データ分析を担当する記者のキコ・リャネラス氏とボルハ・アンドリノ氏が、製造業や特許、大学、人工知能(AI)など各分野の実力をグラフで示した。リャネラス氏はSNSへの投稿で、中国はすでに産業と科学技術の超大国となり、短期間でその地位を築いたと指摘した。ロボットでは、2024年の中国の導入台数がほかの国・地域の合計を上回ったことを挙げた。国際ロボット連盟(IFR)が9月24日に公表した2025年の統計では、世界の導入台数に占める中国のシェアは54%から59%に高まった。同紙は記事の最後で、AIでは中国がなお米国に後れを取っていると指摘した。本誌は同紙の数字を元の統計で確かめ、ファナックと安川電機の有価証券報告書と照らし合わせた。

世界の製造業付加価値は中国が28%、日本は2004年の14%から5%に

エル・パイスによると、中国は世界の製造業付加価値の28%を占め、米国・日本・ドイツの合計を上回る。付加価値は、生産額から原材料などの仕入れを差し引いた金額を指す。世界銀行と米商務省経済分析局の統計を基にした本誌の計算では、2024年の中国は28.0%(4兆6500億ドル)で、米国(17.3%)、日本(4.7%)、ドイツ(5.1%)の合計27.1%を0.9ポイント上回った。中国は2010年に米国を抜き、2021年には約30%に達した。日本は2004年の14.1%から、20年で約3分の1に低下した。

輸出でも中国のシェアは高い。同紙によると、2024年の世界の輸出額に占める中国のシェアは、玩具が65%、磁器製の食器が65%、旅行かばん類が71%、ノートパソコンが68%、家庭用ゲーム機が68%、エアコンが65%だった。同紙はほかに、ステンレス製の台所用品(74%)とパソコン用モニター(61%)も挙げた。仏国際経済予測研究センター(CEPII)の国際貿易データベースで計算し直すと、玩具は65.1%、エアコンは64.9%とほぼ一致した。ただ、いずれも品目を細かく分類した場合の数字で、エアコンの関連品目全体では39.4%にとどまる。

中国が世界のロボット導入台数の59%、中国市場では中国メーカーが55%

エル・パイスは、2024年に中国が世界の太陽光パネル生産の86%、電池の80%、電気自動車の72%、スマートフォンの64%、産業用ロボットの新規導入台数の54%、ドローン輸出の49%を占めたと伝えた。IFRの統計でも、2024年の世界の導入台数54万2000台のうち中国が29万5000台(54%)を占め、日本は4万4500台で2位だった。

IFRによると、2025年の世界の導入台数は前年比11%増の60万台超で、世界の工場で稼働するロボットは500万台に達した。中国の導入台数は20%増の35万4000台で、世界の59%を占めた。中国メーカーのロボットは15%増の19万5000台で、中国市場でのシェアは55%だった。中国メーカーのシェアは2017年には22%にすぎず、2024年に57%まで高まった後、2025年はわずかに下がった。海外メーカーのロボットは27%増の約16万台(前年は約12万5000台)で、2021年の約18万6000台にはまだ届かない。

中国の導入台数を業種別にみると、電機・電子が9万6400台(16%増)、自動車が7万8900台(38%増)、金属・機械が7万8700台(44%増)だった。IFRは、中国市場にはなお成長の余地が大きく、導入台数は2029年まで年平均5〜10%伸びるとみている。人口構成の変化による人手不足を背景に、自動化の需要が根強いことを理由に挙げる。

IFRは、世界全体の導入台数が2026年に9%増の65万5000台、2029年に80万6000台に達すると予測する。

一方、日本国内の導入台数は2025年に19%減の3万6219台と、2015年以来10年ぶりの低水準となった。米国(約3万8500台)に抜かれ、世界3位に後退した。電機・電子向けは21%減、自動車向けは27%減だった。IFRは、日本はロボットの生産や輸出が好調な一方、国内需要が振るわないと分析している。

中国の産業用ロボット導入台数と中国メーカーのシェア
中国の産業用ロボット導入台数と中国メーカーのシェア

図1 — 中国の産業用ロボット導入台数(海外メーカーと中国メーカーの内訳)と中国メーカーのシェア(国際ロボット連盟の資料から本誌作成)

中国でのロボット売上高、ファナックは58.8%増、安川電機は11.7%増

ファナックの2026年3月期の有価証券報告書によると、ロボット部門の中国向け売上高は917億7200万円と、前期の577億9700万円から58.8%増えた。ロボット部門全体の売上高は14.9%増の3786億1000万円で、増加額490億円の約7割(340億円)を中国が占めた。同社は、中国で電気自動車関連と一般産業向けが好調だったと説明している。日本国内向けは34億円減った。地域別で最も大きいのは米州(1610億7800万円)で、中国は2番目だ。

CNC(コンピューター数値制御)装置などを含む会社全体では、中国向け売上高は2283億7600万円と、前期の1866億1900万円から22.4%増えた。売上高全体の8578億3100万円に占める割合は、23.4%から26.6%に上がった。

売上高の10%以上を占める顧客は、上海ファナックロボティクス(上海市)の1社だけだ。ファナックが50%を出資する持ち分法適用会社で、中国でロボットの販売・保守とロボットシステムの製造を手がける。上海ファナックへの売上高は896億3900万円(売上高全体の10.4%)と、ロボット部門の中国向け売上高(約918億円)に近い。中国向けロボットの大半は上海ファナックを通じて販売しているとみられる。このため、ファナックが売上高を計上する時期と、中国の工場でロボットが実際に導入される時期はずれることがある。

安川電機の2026年2月期の有価証券報告書では、ロボット事業の中国での売上収益は681億800万円と、前期の609億8700万円から11.7%増えた。中国の数字には香港を含む。ロボット事業全体の売上収益は4.0%増の2470億1200万円で、中国が占める割合は25.7%から27.6%に上がり、地域別で最大の市場となっている。同社は、自動車向けが日本・米州・欧州で減った一方、中国やその他のアジアでは大型案件で販売が増えたと説明する。ただ、採算の低い大型案件が響き、ロボット事業の営業利益は14.0%減の204億1800万円だった。人民元の対円相場の期中平均は1元=21.12円から21.01円と、わずかに円高・元安となり、為替による押し上げ効果はなかった。人民元ベースでは約12%増えた。

2社の数字は期間と集計の基準が異なる。ファナックは2025年4月〜2026年3月で顧客の所在地別、安川電機は2025年3月〜2026年2月でグループ会社の所在地別だ。IFRの暦年の統計とも期間がずれ、金額と台数は性質が異なるため単純には比べられない。ただ、IFRの統計で海外メーカーの導入台数の伸び率は27%と、2社の伸び率(58.8%と11.7%)の間にある。

ファナックと安川電機の中国でのロボット売上高と日本の導入台数
ファナックと安川電機の中国でのロボット売上高と日本の導入台数

図2 — ファナックと安川電機の中国でのロボット売上高と、日本の産業用ロボット導入台数(両社の有価証券報告書と国際ロボット連盟の資料から本誌作成)

特許・論文・大学評価・学力でも中国が伸び、日本は国際特許出願で3位を維持

エル・パイスはロボット以外の分野でも中国の伸びを示した。本誌が元の統計で確かめた主な指標を、日本・米国・中国で比べると次のとおりだ。

指標時点・単位日本米国中国
国際特許出願2024年・件48,39754,08770,160
トップ1%論文の割合2022年・%1.061.721.29
臨床試験の開始件数の割合本社所在国別・2024年・%33530
大学ランキング上位100校2026年・校23716
大学ランキング上位500校2026年・校12111115
PISAの数学的応用力2025年・点525463612(4地域)

特許協力条約(PCT)に基づく国際特許出願では、エル・パイスは2024年に中国が約7万件で世界の4分の1を占め、米国(約5万4000件)と日本(約4万8000件)を上回ったと伝えた。世界知的所有権機関(WIPO)によると、中国は7万160件で、世界全体27万3900件の25.6%を占めた。米国は5万4087件、日本は4万8397件、ドイツは1万6721件、韓国は2万3851件だった。2025年は中国が7万3718件、米国が5万2617件、日本が4万7922件で、日本は3位を維持した。

米国立科学財団(NSF)の集計では、中国の論文数は2017年の46万3411本から2023年の93万8945本へと2.03倍に増えた。2023年の中国の論文数は米国の2.18倍にあたる。被引用数が上位1%に入る「トップ1%論文」の割合は、中国が2006年の0.42%から2022年に1.29%へと3倍に高まった。米国は同じ期間に1.87%から1.72%に下がった。エル・パイスは中国がすでに欧州連合(EU)を上回った可能性が高いと伝えたが、2022年の統計ではEUの1.33%をまだわずかに下回る。日本は1.06%だった。

米調査会社アイキューヴィア(IQVIA)によると、世界で始まった臨床試験のうち中国に本社を置く企業による試験の割合は、2009年の1%から2024年に30%へ上がった。同じ期間に欧州は44%から21%に、米国は39%から35%に下がり、中国は欧州を抜いて米国に迫る。日本は10%から3%に下がった。

上海交通大学が始めた世界大学学術ランキングの2026年版では、上位100校に入った中国の大学は16校(2015年はゼロ)、米国は37校、日本は東京大学(30位)と京都大学(43位)の2校だった。上位500校では中国が115校と米国の111校を上回り、日本は12校だった。

経済協力開発機構(OECD)が9月8日に公表した国際学習到達度調査(PISA)の2025年調査では、中国から参加した北京市・上海市・江蘇省・浙江省の4地域が数学的応用力612点、科学的応用力597点で首位、読解力527点でシンガポールに次ぐ2位だった。エル・パイスは、参加したのが比較的豊かな地域に限られる点に注意を促している。4地域の数学的応用力は、米国(463点)やスペイン(457点)を約150点上回る。日本は数学的応用力525点(5位)、科学的応用力538点(5位)、読解力503点(4位)で、3分野ともOECD加盟国の中で首位だった。

AI人材については、米シンクタンクのマクロポーロ(シカゴ)が、AIの国際学会「NeurIPS」に2022年に採択された論文の著者を調べた。中国の大学で学部を卒業した人は45%で、米国の17%を大きく上回る。大学院を修了した国では米国が44%、中国が23%、勤務先は米国が42%、中国が28%で、学部を終えた後に米国へ移る人が多い。米国で働く著者でも、学部を卒業した国は中国が38%、米国が37%でほぼ並ぶ。エル・パイスは、この傾向が今後も続くとは限らないとみている。

AIの性能と半導体は米国が先行、AI半導体の計算能力の96%は米4社

AIでは米国の優位が続く。米研究機関エポックAIがAIモデルの性能を点数にした指標で国・地域ごとの最高点を比べると、米国が166.6、中国が157.7、EUが141.4だった。最先端で米国と競っているのは中国だけだが、2023年以降に最高点を塗り替えた22回は、すべて米国のモデルによるものだ。中国は平均7カ月遅れで追っている。

背景には半導体の差がある。エポックAIの集計では、2025年末までに出荷されたAI半導体の計算能力を合わせると、米エヌビディアの主力品「H100」換算で約2030万個分になり、2024年3月末時点の累計約240万個分から大きく増えた。このうちエヌビディアが67.3%、グーグルが18.0%、AMDが6.1%、アマゾンが5.0%で、米4社の合計は96.3%に上る(各社の値は四捨五入)。中国の華為技術(ファーウェイ)は3.5%、中科寒武紀科技(カンブリコン)は0.2%だった。中国は米国の輸出規制で先端品の入手が限られている。エル・パイスは、これが米国の優位が当面続く大きな理由だとみている。

購買力平価ベースのGDPは中国が世界の約20%、日本は3%に

世界銀行の統計によると、購買力平価(PPP)ベースの国内総生産(GDP)で世界に占める中国の割合は、1990年の3.17%から2025年に19.58%に高まった。中国は2016年に米国を抜いて首位に立った。同じ期間に日本は7.47%から3.31%に、米国は約18.5%から約14.6%に、EUは約23.5%から約13.8%に低下した。2025年はドイツが約2.9%、インドが約8%だった。エル・パイスは、1990年の中国はスペイン(約2%)と大差なかったと指摘する。スペインは現在約1.3%だ。世界銀行によると、1日3ドル未満で暮らす貧困層は、1990年には中国の人口の83.1%を占めたが、直近ではほぼゼロになった。

2社の企業情報はファナックの企業ページと安川電機の企業ページに、決算や開示資料はファナックの銘柄ページと安川電機の銘柄ページに、ロボットの技術はロボット技術の体系解説にまとめている。

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