中国で2025年に売れた北斗対応の端末は4億1,000万台超で、対応スマートフォンの保有台数は12億〜14億台に達した。日本のみちびきは運用5機で、7号機が加わっても6機にとどまる。5号機を補う衛星の打ち上げ時期は示されていない。

中国の衛星測位システム「北斗」を核にした産業の規模が、2025年に6,290億元になった。中国の業界団体である中国衛星測位協会 (正式名称は中国衛星導航定位協会) が2026年5月18日に北京で発表した白書の数字で、前年比9.24%増である。同じ白書は、測位 (位置) と時刻のサービスに地理情報や移動通信を合わせて一体で数える「北斗時空産業」(白書の呼び名のまま) という広い範囲も初めて集計し、1兆3,323億元とした。中国が端末の台数で社会基盤の規模を示すのに対し、日本の準天頂衛星システム「みちびき」は、2025年12月の打ち上げ失敗で5号機を失い、他国の衛星に頼らずに測位できる7機体制の完成が遠のいた。両者の差を、2025年版と2026年版の白書、内閣府の資料と工程表、日本の上場企業3社の開示で確かめる。

衛星測位産業6,290億元と北斗時空産業1兆3,323億元は数える範囲が違う

白書を出している中国衛星測位協会は、14年にわたり「中国衛星測位・位置サービス産業発展白書」を発行してきた。2026年版は名称を「2026中国北斗時空産業発展白書」に改め、調査の範囲を広げた。中国国営の新華社通信 (新華網) が伝えた白書の定義では、北斗時空産業は北斗衛星測位システムを核に、リモートセンシング・地理情報・移動通信・屋内測位などの技術を融合した産業の全体を指し、従来から数えてきた衛星測位産業はその基礎にあたる。

2つの数字は別の範囲なので、前年と比べられるのは衛星測位産業の方である。2025年の衛星測位産業の生産額6,290億元を、2025年版の白書が示した2024年の5,758億元で割ると1.0924になり、白書の9.24%増と一致する。一方の1兆3,323億元は衛星測位産業の6,290億元を含む広い範囲の数字で、6,290億元はその47.2%にあたる。残る52.8%の約7,033億元を、2026年版で初めて数えた融合分野が占める。2025年版の白書は2024年の衛星測位産業の内訳として、チップ・デバイス・アルゴリズム・ソフトウエア・測位データ・端末・インフラの中核部分の生産額を1,699億元 (前年比5.46%増、構成比29.51%)、応用・サービスの関連部分を4,059億元 (8.21%増、70.49%) と分けていたが、2026年版の発表記事にこの内訳は出ていない。

表1 白書の数字の範囲 (2024年と2025年)

白書の数字2024年 (2025年版白書)2025年 (2026年版白書)
衛星測位産業の生産額5,758億元 (+7.39%)6,290億元 (+9.24%)
北斗時空産業の生産額数えていない1兆3,323億元
関連する企業・機関2万社近く (衛星測位・位置サービス)3万社超 (北斗時空産業)
従業員100万人近く (同)200万人近く (同)
上場の関連企業94社 (同)323社 (同)
端末の年間販売台数4億1,000万台以上 (衛星測位端末)4億1,000万台超 (北斗端末)
北斗対応スマホ出荷約2億8,800万台 (衛星測位対応は2億9,400万台)2億8,000万台近く
チップ・モジュール累計23億個近く26億個近く

出所は各年の白書の発表記事 (新華社・科技日報・人民日報・中国証券網)。伸び率は白書の前年比をそのまま用い、端末の台数は白書の単位 (台/セット) を台に統一した。端末販売の2024年の「以上」と2025年の「超」は白書の表現のままである。上場企業は新三板と呼ぶ中小企業向け市場を含む。2024年の北斗対応スマートフォン約2億8,800万台は衛星測位対応2億9,400万台の98%にあたる数で、白書は2024年末時点の北斗対応の台数として示している。企業数・従業員数・上場企業数は、2026年版が北斗時空産業 (1兆3,323億元の範囲) の数字と明記しているのに対し、2025年版は衛星測位・位置サービス分野の数字で、範囲が違う。3万社超・200万人近く・323社を前年の2万社近く・100万人近く・94社と並べても、同じ範囲での増減は読めない。2026年版は上場企業が生む生産額が産業全体の16.4%を占めるとしている。

端末は年4億1,000万台で、北斗対応スマートフォンの出荷は前年より減った

北斗の規模を示すのは生産額より端末の数である。白書によると、2025年の国内の北斗端末の販売台数は4億1,000万台超で、うち北斗測位機能を持つスマートフォンの出荷が2億8,000万台近く、車載ナビゲーション端末が2,400万台超、監視・測位用の各種端末 (手持ち・IoT・ウエアラブル・車載などを含む) が1億2,000万台超だった。端末販売の7割近くをスマートフォンが占める。内訳の3つを足すと約4億2,400万台で、総数の4億1,000万台超を上回るが、白書の発表記事は区分の重なりを説明していない。

北斗対応スマートフォンの出荷は前年より減っている。2025年版の白書は2024年の衛星測位機能を持つスマートフォンの出荷を2億9,400万台、うち北斗に対応するものを約2億8,800万台 (98%) としており、2025年の2億8,000万台近くは、北斗対応の台数で比べると約3%減にあたる。出荷が減っても対応率は変わらない。工業情報化部によると、2026年上半期に国内で出荷された携帯電話1億3,300万台の98%超が北斗測位に対応した。白書は保有台数ベースでも、北斗測位に対応するスマートフォンが12億〜14億台で全体の約98%、ウエアラブル機器が1億6,000万台超、車載機器を積む乗用車が1億台超としている。

部品の累計出荷も白書にある。北斗に対応するチップとモジュールの累計出荷はスマートフォン向けを含めて2025年末に26億個近くとなり、2024年末の23億個近くから1年で約3億個増えた。北斗の機能を持つ端末の社会全体の保有台数は22億台超で、2024年末の20億台以上から増えた。業務用では、白書は重点業種の北斗端末の保有台数を4,000万台近く (前年比23.96%増) とし、重点業種での北斗の普及率を約90%とする。工業情報化部によると、北斗だけで測位するシェアサイクル (電動二輪を含む) は1,400万台超で保有台数の90%以上を占め、北斗の大規模利用を試験的に進めるモデル都市は39都市に達した。

北斗三号は30機で、運用中の衛星は内閣府の表で45機、中国の発表で50機

衛星の数は、中国国務院新聞弁公室が2022年11月4日に出した白書「新時代の中国北斗」にある。中国は2000年末に北斗一号、2012年に北斗二号を整備し、2020年7月31日に全世界を対象にする北斗三号の正式運用の開始を宣言した。北斗三号の衛星は中軌道・静止軌道・傾斜地球同期軌道の3種の軌道に計30機である。白書は中核部品をすべて国内で調達・管理できるとし、宇宙用のメモリー、衛星に載せるプロセッサー、大電力のマイクロ波スイッチ、進行波管増幅器などを国産化したと説明する。白書が示す性能は、全世界で水平方向の測位精度が9メートル以内、垂直方向が10メートル以内、速度が毎秒0.2メートル以内、時刻の精度が20ナノ秒以内で、北斗独自の短文メッセージは1回560ビット (漢字40字)、中国周辺の地域では1万4,000ビット (漢字1,000字) である。

30機は北斗三号の基本の構成で、運用中の衛星の総数はそれより多い。内閣府宇宙開発戦略推進事務局が2026年8月の打ち上げ前の説明資料で示した各国の比較表 (2026年3月現在) では、北斗の運用機数は45機で、米国のGPSの31機、ロシアのグロナスの24機、欧州のガリレオの27機より多い。北斗の運用を管理する中国衛星導航系統管理弁公室は2026年7月31日、衛星の軌道上の更新を終え、運用中の衛星が50機に達したと発表した。みちびきは5機なので、内閣府の表の45機でも北斗は9倍にあたる。精度の欄は北斗が10〜15メートル (補強情報で20センチ程度を目指す)、GPSが5〜10メートル、みちびきが5〜10メートル (センチメートル級の補強情報を使うと数センチ、最も良い場合で6センチ) となっており、衛星の数と補強なしの精度は別の指標だ。中国衛星測位協会は2025年版の白書で、北斗の関連サービスと製品が140余りの国と地域に輸出され、11の国際機関の規格に採用されたと説明し、次世代の北斗と、測位・航法・時刻配信を一体で担う国家の体系 (白書は「総合時空体系」と呼ぶ) の完成目標を2035年に置く。協会の張輝峰会長は2026年版の発表で、第15次5カ年計画の期間 (2026〜2030年) に衛星測位産業が1兆元を超えるとの見通しを示した。

みちびきは5号機を失い、7号機を打ち上げても6機にとどまる

日本のみちびきは2018年11月に4機体制でサービスを始め、2025年7月に6号機を加えて5機になった。5号機は2025年12月の打ち上げで失い、運用は5機のままである。内閣府は基本のサービスとして、GPSと互換の信号による通常の測位、誤差を補正する補強、災害情報などのメッセージの3つを挙げる。補強のうち、CLAS (センチメータ級測位補強サービス) は誤差6センチ以下、SLAS (サブメータ級測位補強サービス) は1メートル以下である。政府は2011年9月に4機体制と将来の7機体制を閣議決定し、2023年6月に改定した宇宙基本計画に11機体制の検討・開発を加えた。

計画を狂わせたのが2025年12月22日の打ち上げ失敗である。宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が2026年7月23日に公表した原因究明の報告書によると、5号機を載せたH3ロケット8号機は、衛星フェアリングを切り離した直後に衛星を載せる構造が損傷し、衛星は第1段を分離した時点で、損傷した搭載構造の一部が付いたまま既にロケットから離れていたと報告書は推定する。第2段エンジンの2回目の燃焼が正常に始まらずに止まったのはその後の出来事で、衛星は予定の軌道に投入されなかった。JAXAは報告書で、衛星を載せるアダプターの接着部の間に製造工程で生じたはがれが、フェアリング分離の衝撃で広がってアダプター全体が壊れたことを直接の原因と特定した。はがれが生じた主因は、接着の工程で一部の温度が想定より高くなり、接着の強度が下がったことだった。8号機のアダプターの状態は記録に残っておらず、製造済みの複数のアダプターの調査で同じはがれが見つかったことから、報告書は8号機も同じ状態で飛んだと判断した。はがれは打ち上げ前の検査では検出できていなかった。アダプターの破壊で衛星と搭載構造の一部が機体の中に落ち込み、第2段の液体水素タンクの加圧配管を損傷させたと報告書は推定している。

7号機は2026年8月11日にH3ロケット9号機で打ち上げられ、軌道投入に成功した。内閣府の資料では、打ち上げから半月ほどで準静止軌道に入り、2か月余りで搭載機器の機能を確かめ、約5か月で測位の調整を終える。測位サービスの開始は打ち上げの約7か月後を予定する。ただし7号機が加わっても運用は6機で、内閣府は、他国に頼らずみちびきだけで測位できる7機体制と比べて、みちびきだけで測位したときの精度が下がり、真上に近い高い仰角に衛星がある状態 (資料の言う高仰角性) も保ちにくくなると認めている。資料の図は、6機でもみちびきだけで測位したときの精度の目安を日本の上空に描いているが、内閣府の説明では、みちびきだけで測位できるのは7機体制が必要最低限の機数である。6機では使える範囲の端が狭まり、北日本で精度が落ちる。西日本と沖縄への影響は小さい。内閣府は準天頂軌道の衛星の配置のバランスを検討しており、配置を見直した場合の試算では北日本の精度が戻る。打ち上げ前の資料では7機体制の早期構築と11機体制の開発加速に尽力するとしている。

次の衛星の打ち上げ時期は、同じ資料に内閣府が載せた宇宙基本計画工程表 (2025年12月改訂) の抜粋で読める。元の工程表は、7機体制に向けた追加3機の打ち上げを2024年度に1機、2025年度に2機の印で示し、「7機体制の運用」の期間を2026年度から始まるものとして示したうえで、7機体制の運用の帯に2031年度 (令和13年度)、11機体制に向けた開発の帯にも2031年度の打ち上げの印を置く。印は打ち上げ年度の現時点でのめどで、各種の要因の影響を受ける可能性があるとの注記が付く。元の工程表は5号機と7号機を2025年度に打ち上げる前提のままだが、内閣府は2026年8月の抜粋で5号機の印に取り消し線を引き、2031年度の2つの印に「3R」(3号機の後継機) と「8」(8号機) の番号を書き込んだ。2031年度の2つの印のうち、3号機の後継機は設計寿命を迎える衛星の置き換えで、衛星の数を増やすのは8号機である。5号機を補う衛星の打ち上げ時期は、元の工程表にも8月の抜粋にも示されていない。

表2 みちびきの衛星 (2026年10月)

衛星軌道打ち上げ状態
2号機準天頂軌道2017年6月1日運用中
3号機静止軌道2017年8月19日運用中
4号機準天頂軌道2017年10月10日運用中
初号機後継機準天頂軌道2021年10月26日運用中
6号機静止軌道2025年2月2日運用中 (2025年7月サービス開始)
5号機準天頂軌道 (予定)2025年12月22日打ち上げ失敗で喪失
7号機準静止軌道2026年8月11日軌道投入成功、打ち上げの約7か月後にサービス開始予定

出所は内閣府の打ち上げ前の説明資料と三菱電機の衛星概要資料。内閣府の説明では、7機体制はみちびきだけで測位できる必要最低限の機数で、1機でも壊れるとその測位が続けられない。11機体制なら、どの1機が壊れても測位を続けられる。内閣府は欧州のガリレオでサービスが1週間程度止まった例を挙げ、予備の衛星の必要性を説明している。内閣府の資料はこの停止を2017年と記す。ガリレオのサービスが数日止まった出来事として記録があるのは2019年7月で、欧州GNSSサービスセンターの通知と欧州GNSS庁の発表では、地上設備の機器の不具合で7月13日にサービスが止まり、7月18日に復旧した。

2026年度当初と前年度補正の計340億円を後継機3機と8号機、地上設備の開発に充てる

日本の事業の大きさを示す数字は、まず予算である。内閣府の衛星測位ワーキンググループに示された令和8年度 (2026年度) 予算案によると、「実用準天頂衛星システムの開発・整備・運用」は2026年度当初予算169.1億円と2025年度補正予算171.2億円の計340.3億円で、前年の計306.0億円 (2025年度当初169.1億円と2024年度補正136.9億円) から11.2%増えた。当初予算は2年とも169.1億円で、増えたのは補正予算の分である。この予算は運用の費用も含み、7機体制の確立と11機体制の構築に充てる。7機体制はみちびきだけで測位を続けるため、11機体制は予備の強化と使える地域を広げるためで、2〜4号機の後継機と8号機、地上設備を開発・整備する。2026年度の宇宙関係予算の全体 (当初案と2025年度補正、基金の執行予定額の合計) は1兆446億円で前年比1,081億円増、内閣府分は404億円で、準天頂衛星の約340億円は宇宙関係予算全体の3.3%にあたる。

利用の広がりを示す数字も内閣府の資料にある。2026年6月末時点でみちびきに対応する製品は483製品で、受信機・スマートフォン・カーナビ・スマートウォッチなど50種類に及ぶ。日産自動車はアリアとセレナの運転支援にCLASを使い、ACSLはSLASに対応した小型ドローンを官公庁に600台以上出荷した。防衛省・自衛隊と海上保安庁だけが使う暗号化された公共専用信号について、内閣府の2026年8月の資料 (参考の頁) は、5〜7号機の投入後に2つの周波数で配信する予定と記したままで、5号機喪失後の扱いには触れていない。2024年度には内閣府が、測位信号が本物であることを電子署名で証明する信号認証サービスを始め、GPSとガリレオの信号も認証できるようにした。

三菱電機は8機すべての衛星バスを造り、NECは11機体制の測位ペイロードを受注した

衛星を造るのは日本の上場企業2社である。三菱電機は、準天頂衛星の初号機から7号機まで (初号機後継機を含む8機) のすべてに自社の衛星バスDS2000 (電源・姿勢制御・推進など衛星の土台になる部分) を使い、2〜7号機では主契約企業として内閣府に納めてきた。2026年8月5日の衛星概要資料によると、5〜7号機の設計寿命は15年以上、打ち上げ時の質量は5号機が約4.7トン、6号機が約4.8トン、7号機が約4.9トン、太陽電池パネルの発電能力は6.7キロワットである。測位用の搭載機器 (ペイロード) は2〜4号機より質量で約120〜160キログラム、電力で約500ワット増え、質量と電力の規模は約1.3倍になった。増えたのは、測位用の搭載機器の機能向上と、衛星どうしの距離と地上と衛星の間の距離を精密に測る装置の追加による。三菱電機によると、DS2000を使う衛星は2026年7月時点で20機を打ち上げ済みで、うち16機が運用中、4機は運用を終えた。この20機に、軌道に入らなかった5号機は含まれていない。軌道上の運用は累計196年になる。ほかに3機が受注済みで未出荷、1機が出荷済みで打ち上げ前である。三菱電機は5号機の打ち上げ失敗を製品ページに「軌道投入にいたりませんでした」と記し、7号機の打ち上げ時期の欄は2026年10月18日の時点でも「未定」のままである。

NECは測位信号を出す搭載機器 (測位ミッションペイロードと呼び、測位信号の生成、距離の計測、信号伝送の通信機器で構成する) を初号機から一貫して手がけ、5〜7号機向けの地上局とアンテナも整備した。民間の資金とノウハウで公共施設を整えるPFI方式の事業では代表企業として、地上の設備とサービスの運用をまとめて受け持つ。同社は2025年10月15日、JAXAから「準天頂衛星システム11機体制 (第一期) 測位ミッションペイロードの開発」を受注したと発表した。新しいペイロードには、複数の原子時計を組み合わせて周波数を安定させる仕組みと、ソフトウエアで信号の形式を切り替えられる仕組みを加える。金額は公表されていない。同社は2026年8月12日の発表で、5〜7号機で新たに備えた、衛星どうしの距離と地上と衛星の間の距離を測る機能をすべての衛星に載せれば、一般のスマートフォンの誤差は5〜10メートル程度から1メートル程度に縮まる見込みだと説明した。地上と衛星の間の測距は6号機で実証中で、衛星どうしの測距の軌道上の実証には7号機と将来の8号機を組み合わせる必要がある。11機体制に向けては、まず3号機の後継機と8号機の開発に着手し、設計寿命を迎える衛星の後継機と追加の衛星を整備するという。

古野電気の衛星測位は産業用事業の一部、基地局の時刻同期で海外の販売を伸ばす

受信機を手がけ、関連の数字を開示している上場企業に古野電気がある。同社の2026年2月期の売上高は約1,406億円 (前年比10.8%増)、営業利益は約162億円 (23.3%増) で、3年続けて過去最高を更新した。ただしGNSS (衛星測位システム) の受信機と時刻同期製品は産業用事業の一部で、産業用事業にはこのほかにITS (高度道路交通システム)、生化学分析装置のヘルスケア、防衛装備品が入る。GNSSだけの売上高は開示していない。産業用事業の売上高は約158億円で全社の1割強、利益は約8億円 (57.8%増) で利益率は4.9%と、舶用事業 (13.8%) の3分の1強にとどまる。

表3 古野電気の事業別の数字 (2026年2月期、百万円)

区分売上高前年比利益利益率
舶用事業121,147+11.5%16,76313.8%
産業用事業15,821+11.3%7824.9%
産業用 (前期)14,214―4963.5%
連結140,616+10.8%16,24611.6%

出所は古野電気の決算短信。産業用事業はGNSS・ITS・ヘルスケア・防衛装備品を含む。利益は営業利益ベースのセグメント利益で、利益率は編集部の計算。同社は決算短信で、産業用のITS・GNSS事業は時刻同期製品の販売が海外向けを中心に好調だったと説明し、2027年2月期も携帯電話基地局向けの時刻同期製品の海外販売を広げるとしている。

同社は2026年2月27日に公表した中期経営計画 (2026〜2028年度) で、2028年度の売上高目標1,500億円のうち、重点的に投資する分野で700億円を稼ぐとした。内訳は船の保守250億円、レジャー用の船 (プレジャーボート) 160億円、作業船 (ワークボート) 140億円、防衛70億円、衛星測位 (GNSS) 40億円、新規事業40億円である。同社はGNSS・時刻同期事業の追い風に「重要インフラ分野における安定性・セキュリティの需要拡大」を、リスクに「海外メーカーとの価格競争の激化」を挙げた。中国では北斗の端末が年4億1,000万台売れるのに対し、古野電気が開示する衛星測位の売上目標は40億円で、同社が成長の軸に置くのも測位そのものより基地局向けの時刻同期である。

日本側で投資家が確かめられる数字は、2026年度当初と前年度補正の予算340.3億円と、古野電気のGNSSの売上目標40億円である。衛星を造る三菱電機とNECの受注額は開示されていない。内閣府の表では北斗の衛星は45機、みちびきは5機で、7号機を加えても6機にとどまる。6機では精度が7機体制より下がり、衛星の数を増やす8号機の打ち上げのめどは2031年度で、5号機を補う衛星は工程表に無い。三菱電機とNECの事業は企業データベース (三菱電機・NEC) にまとめている。

※2026年10月18日、一次資料に基づき全面的に書き直しました。旧版の題と本文の「北闘」は「北斗」の誤りでした。旧版が「関連領域を含めた総生産額1.3兆元 (約28兆円)」とした数字は、2026年版の白書で初めて数えた「北斗時空産業」の生産額1兆3,323億元で、衛星測位産業 (6,290億元) に周辺の分野を加えた広い範囲の数字です。金額は人民元のまま記し、換算の基準日を決められないため円には換算していません。「政府が北斗対応チップの搭載を事実上義務付けた」「基幹部品の国産化率90%超」「国産チップが年間2億個以上出荷」の3つの記述と、北斗に対応するAI半導体の製造工程についての記述は、白書にも政府の資料にも無いため削除しました。日本の部分は、上場廃止したトプコンを含む社名の列挙を改め、内閣府の予算と工程表、三菱電機・NEC・古野電気の開示で書き直しました。

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