ラムリサーチAether(EUV露光用ドライレジスト装置) Aether Dry Resist for EUV Lithography
EUV (極端紫外線) 露光で使うレジスト (感光膜) を、液体を塗る代わりに真空中の気相で付け、露光後の現像も乾式で行う装置。ラムリサーチは2020年にドライレジストを発表し、2025年1月に主要なメモリーメーカーが最先端 DRAM の量産装置に選んだと発表した。ベルギーの研究機関 imec (アイメック) は2nm 以下のロジック配線で28nm ピッチのパターン形成を実証した (2025年1月)。日本の JSR (インプリア) とは2025年9月に相互ライセンスと共同開発で合意した。価格は公表していない。
詳細解説
- 製品の区分
- ドライレジスト (フォトレジストとパターン転写)。EUV 露光と高 NA EUV 露光向け (10-K の製品表) sec.gov
- 発表の経緯
- 2020年にドライレジストを発表 (会社発表)。2025年1月14日、ベルギーの研究機関 imec が2nm 以下の配線工程で28nm ピッチのパターン形成向けに認定。2025年1月29日、主要なメモリーメーカーが最先端 DRAM の量産ラインの標準装置に選定 (社名は非公表) newsroom.lamresearch.com
- JSR・インプリアとの契約
- 2025年9月15日、JSR とその子会社インプリア (金属酸化物レジスト) との間で、非独占の相互ライセンス・共同開発の契約。JSR のレジスト・膜を、ラムリサーチのエッチング技術とドライレジスト成膜 (Aether) に組み合わせ、高 NA (開口数) EUV の材料も開発する。デラウェア州連邦地裁のインプリア対ラムリサーチの特許訴訟と関連する特許審判は、双方が取り下げで合意した newsroom.lamresearch.com
- IBM との共同開発
- 2026年3月10日、IBM と1nm 未満ロジックの5年間の共同開発。高 NA (開口数) EUV のドライレジスト工程を含む newsroom.lamresearch.com
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 米国の製造拠点 (フリーモント・リバモア・トゥアラティン・シャーウッド) | 米カリフォルニア州フリーモント・リバモア、オレゴン州トゥアラティン・シャーウッド | ラムリサーチは年次報告書 (10-K・2026年6月期) で、製造・倉庫の施設をカリフォルニア、オハイオ、オレゴン、オーストリア、韓国、マレーシア、台湾に持つと説明する。フリーモント・リバモア・トゥアラティンの施設の大半とシャーウッドの製造施設は自社所有。製造の中身は部品・部分組立品・モジュールの組み立てと試験で、それを完成した装置に組み上げる | sec.gov | |
| オハイオ州の製造拠点 (イートン・スプリングフィールド) | 米オハイオ州イートン、スプリングフィールド | 会社の所在地一覧では米国の製造拠点。オハイオの製造施設は自社所有 (10-K)。何を製造するかは公表していない | lamresearch.com | |
| 韓国の製造拠点 (竜仁・華城・烏山) | 韓国京畿道竜仁市、華城市、烏山市 | 所在地一覧ではアジアの製造拠点。竜仁は年次報告書が主要な事業・研究開発拠点にも挙げる。子会社ラムリサーチ・マニュファクチャリング・コリア (Lam Research Manufacturing Korea LLC・10-K 別紙21) | lamresearch.com | |
| マレーシアの製造拠点 (バトゥカワン) | マレーシア・ペナン州バトゥカワン | アジアの製造拠点の1つで、製造施設は自社所有 (10-K)。2022年6月期から15年間の税制優遇を受け、2026年6月期の税負担を約9億6,800万ドル減らした (10-K) | sec.gov | |
| 台湾の製造拠点 (桃園・中壢) | 台湾・桃園市中壢区 | アジアの製造拠点の1つ (所在地一覧) | lamresearch.com | |
| オーストリアの製造拠点 (フィラッハ) | オーストリア・フィラッハ | 欧州の製造拠点 (所在地一覧)。フィラッハの施設は賃借で、更新または買い取りの選択権が付く (10-K)。ザルツブルクは主要な事業・研究開発拠点 (10-K) | sec.gov | |
| 製品ごとの製造地 | 公表されていない | Aether をどの工場で組み立てるかは公表していない | sec.gov |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 気相での膜形成
- レジスト下層とレジスト膜を真空中で形成し、現像も乾式で行う。液体の塗布 (スピン) 方式で起きるパターンの倒れや歪みを避ける (10-K) sec.gov
- 有機金属化合物
- 有機金属化合物の膜は、炭素系のレジストに比べ EUV の光を3〜5倍多く吸収する (会社発表)。露光量 (コスト) と欠陥 (歩留まり) を両立できるとラムリサーチは説明する lamresearch.com
- 膜の設計
- 気相で付けるため、膜の中に組成の混合・層・勾配を作り込める (10-K) sec.gov
- 薬液と環境
- 液体のレジスト工程に比べ薬液の使用量が5〜10分の1、消費電力も少ないとラムリサーチは説明する newsroom.lamresearch.com
- 1回の露光で済む世代を広げる
- ラムリサーチは、二重露光 (費用は1回の露光の1.5〜2倍) に代えて、先端世代でも1回の露光で済ませられるとする lamresearch.com
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 解像度 (imec 実証) | 28nm ピッチのパターン形成 (配線工程)。低 NA (開口数) の EUV 露光機と組み合わせ、高 NA にも拡張可能 | newsroom.lamresearch.com |
| 光の吸収 | 炭素系レジストの3〜5倍 (会社発表) | lamresearch.com |
| 薬液の使用量 | 湿式の5〜10分の1 (会社発表) | newsroom.lamresearch.com |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 成膜・現像モジュール | 真空の気相成膜と乾式現像のモジュール | ラムリサーチ | — | 公表されていない |
ラムリサーチが年次報告書で方式を記す A |
| レジスト材料 (前駆体) | 有機金属化合物の前駆体 JSR・インプリアと材料の共同開発・相互ライセンス (2025年9月)。供給契約ではない |
公表されていない | — | 公表されていない |
会社発表。Aether 用の前駆体の供給元は公表されていない A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1材料JSR・インプリアのレジスト・膜を、ラムリサーチのエッチング技術とドライレジスト成膜 (Aether) に組み合わせる共同開発・相互ライセンス (2025年9月)企業: JSR・インプリア
- 2研究機関ベルギーの研究機関 imec が28nm ピッチを実証 (2025年1月)。IBM (ニューヨーク州のアルバニー・ナノテック複合施設) と高 NA EUV の工程を開発 (2026年3月)企業: imec・IBM
- 3顧客主要なメモリーメーカー1社が最先端 DRAM の量産装置に選定 (2025年1月・顧客名は非公表)企業: 公表されていない
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1組み立てと試験部品・部分組立品・モジュールを組み立てて試験し、出荷前または顧客の工場で完成した装置に組み上げる。組み立てと試験は主にクリーンルームで行う (10-K)設備・企業: ラムリサーチ
- 2外部委託製造の一部、生産用の倉庫、物流を第三者に委託する契約がある (10-K)。委託先の社名は公表していない設備・企業: 公表されていない
- 3調達先が1社の部品一部の部品・部分組立品は1社からしか調達できず、代替の供給元の認定や在庫の積み増しで備える (10-K)。部品名は公表していない設備・企業: 公表されていない
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 装置本体 | 公表していない。見積もり (顧客ごとの相対取引) | 2026年11月1日に製品ページと問い合わせページで確認 | lamresearch.com |
| 参考: 前受け収益 | 顧客の前払い金などからなる前受け収益の残高は2026年6月28日時点で24億3,000万ドル (10-K)。装置の価格そのものは開示していない | 2026年6月28日 | sec.gov |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 直販 (製品営業と現場の技術者) | ラムリサーチは年次報告書で、製品マーケティングと営業の担当者に加え、装置・プロセスの技術者が顧客ごとに対応すると説明する。販売代理店の制度は開示していない | sec.gov |
| 注文と検収 | 承認済みの注文書を契約とみなす (10-K)。日本の顧客への出荷は検収まで売上に計上せず、2026年9月27日時点で検収待ちの出荷は4億6,830万ドル (8-K) | sec.gov |
| 顧客向けポータル MyLam | 技術資料・部品の注文・保守の情報は、パスワードで保護した顧客向けサイト MyLam で提供する | lamresearch.com |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保証 | 標準保証は、材料・製造上の欠陥が無く合意した仕様に適合することを対象とする。修理か新品同等品への交換に限られ、保証期間内の通知が条件 (10-K)。年限は公表していない | sec.gov |
| 保守拠点 | 米国、中国、欧州、インド、日本、韓国、東南アジア、台湾にサービス技術者の網を置く (10-K)。日本は新横浜本社のほか、四日市・北上・大津 (熊本)・大分・諫早・高岡のサービスセンター、鶴岡・東広島・千歳のオフィス、四日市の中部パーツセンター | lamresearch.com |
| 部品 (スペア) | 純正部品のほか、修理・再生部品、長寿命の高性能部品、公差を緩めた低価格部品を扱う。生産を終える部品は最終受注 (ラストバイ) を案内し、代替部品を設計する | lamresearch.com |
| 改造 (アップグレード) | 次の微細化世代への対応、稼働率・処理能力・歩留まりの改善、省エネ・ガス削減の改造を、設置済みの装置に施す | lamresearch.com |
| 遠隔監視と保守の自動化 | Equipment Intelligence (装置の稼働データを使う保守・制御) で、稼働率を高め、処理能力を上げ、欠陥を減らす (10-K)。2024年12月発表の協働ロボット Dextro は、期間を定めた保守契約の一部として提供する | lamresearch.com |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| ラムリサーチ全体の地域別売上高 (2026年6月期) | 中国34%、台湾22%、韓国19%、日本9%、米国7%、東南アジア6%、欧州3%。売上高は顧客の工場の所在地で分ける (10-K)。製品群ごとの内訳は公表していない | sec.gov |
| 2026年7〜9月期 | 中国35%、韓国20%、台湾18%、日本9%、米国8%、東南アジア6%、欧州4% (8-K 2026年10月21日) | sec.gov |
| 米国の輸出管理 | ラムリサーチは年次報告書で、米国の輸出管理により中国の一部の顧客・用途向けに輸出許可が要り、許可が下りる保証は無いと説明する。2024年12月2日の追加規制についてラムリサーチは、影響は従来の想定と大筋で一致すると説明した | newsroom.lamresearch.com |
📈 販売の実績
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| Aether の売上高 | 公表されていない | sec.gov |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
ドライレジストは、ラムリサーチにとって新しい領域への入り口だ。レジストの塗布と現像は、これまで東京エレクトロン (8035) などの塗布・現像装置の領域だった。材料は JSR などの化学メーカーが供給してきた。Aether は気相の成膜と乾式の現像でこの工程に装置側から入る。
2025年の2つの発表は節目になる。imec の28nm ピッチ認定と、メモリーメーカー1社の DRAM 量産装置への選定だ。ラムリサーチは「主要なメモリーメーカー」としか書いておらず、社名は分からない。
日本との関係では JSR との契約が大きい。インプリアとの特許訴訟は取り下げで合意し、金属酸化物レジストと Aether を組み合わせる。高 NA EUV の材料でも組む。日本の材料メーカーが装置メーカーと組む形だ。
公表されていないこと
- Aether を組み立てる工場
- DRAM 量産に採用したメモリーメーカーの社名
- Aether の売上高と設置台数
- 前駆体の供給元
出所
- ラムリサーチ 年次報告書 10-K (2026年6月期・2026年8月7日提出) (2026-08-07)
- ラムリサーチ 8-K 2026年7〜9月期 決算発表 (2026-10-21)
- ラムリサーチ 所在地一覧 (2026-11-01)
- ラムリサーチ 製品一覧 (2026-11-01)
- ラムリサーチ カスタマーサポート概要 (2026-11-01)
- Aether 解説ページ (2026-11-01)
- Aether の DRAM 量産採用の発表 (2025-01-29)
- imec の28nm ピッチ認定の発表 (2025-01-14)
- JSR・インプリアとの契約の発表 (2025-09-15)
- IBM との共同開発の発表 (2026-03-10)
出所との照合日: 2026年11月1日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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