ラムリサーチ誘電体成膜装置(Striker ALD・VECTOR PECVD・SPEED・SOLA・Prestis) Striker ALD / VECTOR PECVD / SPEED HDP-CVD / SOLA UVTP / Prestis PLD
絶縁膜を付ける装置。Striker は原子層堆積 (ALD) で薄く均一な膜を付ける。VECTOR はプラズマ化学気相成長 (PECVD) で3次元 NAND (NAND 型フラッシュメモリー) の100層を超える積層膜やハードマスクを成膜する。2025年9月9日発表の VECTOR TEOS 3D は先端パッケージングでチップ間の隙間を埋める装置で、厚さ最大60マイクロメートルの膜を1回で付ける。ラムリサーチは主要なロジック・メモリーの工場に設置済みとする。価格は公表していない。
詳細解説
- 製品の区分
- 誘電体 (絶縁膜) 成膜。Striker: 枚葉式 ALD (Striker、Striker FE)。VECTOR: PECVD (VECTOR、VECTOR TEOS、VECTOR AHM、VECTOR MD、VECTOR Strata、VECTOR DT、VECTOR TEOS 3D)。VECTOR の一部型式は Reliant (再生品) でも提供する lamresearch.com
- Striker の用途
- 隙間埋め (ギャップフィル)、段差に沿って均一に付ける下地膜、多重露光のスペーサーとマスク、気密の封止、エッチング停止層、光学膜 (製品ページ)。ラムリサーチは年次報告書で低誘電率スペーサー、高アスペクト比のギャップフィル、高弾性率のスペーサー材を挙げる lamresearch.com
- VECTOR の用途
- 3次元 NAND の100組を超える交互積層膜の成膜、ハードマスク、トランジスターや3次元構造の絶縁層。極低温エッチングの解説ページは、VECTOR Strata を酸化膜・窒化膜の積層制御、VECTOR DT をウエハー裏面の反り補正膜に挙げる lamresearch.com
- SPEED・SOLA・Prestis
- SPEED は高密度プラズマ CVD (HDP-CVD) で配線間や素子間の隙間を絶縁膜で埋める装置 (一部型式は Reliant でも提供)。SOLA は成膜した低誘電率膜に紫外線・ガス・熱を当てて強度を上げる紫外線熱処理 (UVTP) 装置。Prestis はパルスレーザー成膜 (PLD) 装置で、スカンジウムを多く含む窒化アルミニウムスカンジウムなど、スパッタリングでは付けにくい膜を高周波フィルターや MEMS 向けに成膜する lamresearch.com
- VECTOR TEOS 3D の発表
- 2025年9月9日。3次元積層・異種集積のチップ間ギャップフィル専用。発表時点で主要なロジック・メモリーの工場に設置済み (会社発表) newsroom.lamresearch.com
- 共同開発
- IBM との1nm 未満ロジックの5年間の共同開発 (2026年3月10日) に Striker の成膜が含まれる newsroom.lamresearch.com
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 米国の製造拠点 (フリーモント・リバモア・トゥアラティン・シャーウッド) | 米カリフォルニア州フリーモント・リバモア、オレゴン州トゥアラティン・シャーウッド | ラムリサーチは年次報告書 (10-K・2026年6月期) で、製造・倉庫の施設をカリフォルニア、オハイオ、オレゴン、オーストリア、韓国、マレーシア、台湾に持つと説明する。フリーモント・リバモア・トゥアラティンの施設の大半とシャーウッドの製造施設は自社所有。製造の中身は部品・部分組立品・モジュールの組み立てと試験で、それを完成した装置に組み上げる | sec.gov | |
| オハイオ州の製造拠点 (イートン・スプリングフィールド) | 米オハイオ州イートン、スプリングフィールド | 会社の所在地一覧では米国の製造拠点。オハイオの製造施設は自社所有 (10-K)。何を製造するかは公表していない | lamresearch.com | |
| 韓国の製造拠点 (竜仁・華城・烏山) | 韓国京畿道竜仁市、華城市、烏山市 | 所在地一覧ではアジアの製造拠点。竜仁は年次報告書が主要な事業・研究開発拠点にも挙げる。子会社ラムリサーチ・マニュファクチャリング・コリア (Lam Research Manufacturing Korea LLC・10-K 別紙21) | lamresearch.com | |
| マレーシアの製造拠点 (バトゥカワン) | マレーシア・ペナン州バトゥカワン | アジアの製造拠点の1つで、製造施設は自社所有 (10-K)。2022年6月期から15年間の税制優遇を受け、2026年6月期の税負担を約9億6,800万ドル減らした (10-K) | sec.gov | |
| 台湾の製造拠点 (桃園・中壢) | 台湾・桃園市中壢区 | アジアの製造拠点の1つ (所在地一覧) | lamresearch.com | |
| オーストリアの製造拠点 (フィラッハ) | オーストリア・フィラッハ | 欧州の製造拠点 (所在地一覧)。フィラッハの施設は賃借で、更新または買い取りの選択権が付く (10-K)。ザルツブルクは主要な事業・研究開発拠点 (10-K) | sec.gov | |
| 製品ごとの製造地 | 公表されていない | Striker・VECTOR をどの工場で組み立てるかは公表していない | sec.gov |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 多ステーション構造
- Striker は量産実績のあるマルチステーション成膜構造で生産性を高める。VECTOR はクアッドステーションモジュール (QSM) で4つのステーションを並列に動かす (製品ページ) lamresearch.com
- ALD の制御 (Striker)
- ALD 対応の部品・ソフトウエア・制御で高速に ALD サイクルを回し、膜の機械的・電気的性質を温度範囲の中で用途に合わせて調整する。膜への不純物添加 (ドーピング) と、成膜と同じチャンバー内でのマスクの削り込みに複数の反応ガスを使う lamresearch.com
- PECVD の特徴 (VECTOR)
- 成膜と独立したウエハー加熱で膜質を保ちながら処理時間を短くする。面内・ウエハー間の均一性に重点を置く (製品ページ) lamresearch.com
- TEOS 3D の反りウエハー対応
- 反りの大きいウエハーを保持する新しいクランプ技術と台座 (ペデスタル) の設計で、厚い膜を均一に付ける。高効率の RF 発生器と周辺機器の省エネ制御 (ECO モード) を備える (会社発表) newsroom.lamresearch.com
- 成膜後の処理
- ラムリサーチは年次報告書で、紫外線硬化処理など成膜後の処理で誘電体膜の性質を改善すると記す sec.gov
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 膜厚 (TEOS 3D) | チップ間の膜で最大60マイクロメートル、100マイクロメートル超へ拡張可能。30マイクロメートル超の割れの無い膜を1回で成膜 (会社発表) | newsroom.lamresearch.com |
| 処理能力 (TEOS 3D) | 前世代の隙間埋め装置に比べ処理能力が68%高く (社内試験)、保有コストが最大20%下がる (会社発表) | newsroom.lamresearch.com |
| 3次元 NAND の積層 (VECTOR) | 100組を超える交互積層膜をその場で連続成膜 (製品ページ) | lamresearch.com |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 成膜モジュール | クアッドステーションモジュール (QSM・VECTOR)、マルチステーション成膜構造 (Striker) | ラムリサーチ | — | 公表されていない |
製品ページが構造を記す A |
| RF 発生器 | 高効率 RF 発生器 (TEOS 3D) | 公表されていない | — | 公表されていない |
発表が記す。供給元は公表されていない A |
| ウエハー台座とクランプ | 反りウエハー用のクランプ機構と台座 (TEOS 3D) | ラムリサーチ | — | 公表されていない |
発表が記す A |
| 前駆体 (原料ガス) | TEOS (オルトケイ酸テトラエチル) など | 公表されていない | — | 型式名 VECTOR TEOS が原料を示す。供給元は公表されていない A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1部品供給元は公表していない。一部は調達先が1社 (10-K)企業: 公表されていない
- 2顧客10-K の主要顧客はマイクロン、サムスン電子、SK ハイニックス、TSMC。TEOS 3D は主要なロジック・メモリーの工場に設置済み (会社発表・顧客名は非公表)企業: 公表されていない
- 3材料の共同開発JSR (日本) と2025年9月15日に相互ライセンスと共同開発の契約。JSR のヤマナカヒューテック買収 (2024年8月) を生かし、ALD とエッチング向けの新しい前駆体材料と工程を探る計画 (会社発表)企業: JSR
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1組み立てと試験部品・部分組立品・モジュールを組み立てて試験し、出荷前または顧客の工場で完成した装置に組み上げる。組み立てと試験は主にクリーンルームで行う (10-K)設備・企業: ラムリサーチ
- 2外部委託製造の一部、生産用の倉庫、物流を第三者に委託する契約がある (10-K)。委託先の社名は公表していない設備・企業: 公表されていない
- 3調達先が1社の部品一部の部品・部分組立品は1社からしか調達できず、代替の供給元の認定や在庫の積み増しで備える (10-K)。部品名は公表していない設備・企業: 公表されていない
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 装置本体 | 公表していない。見積もり (顧客ごとの相対取引) | 2026年11月1日に製品ページと問い合わせページで確認 | lamresearch.com |
| 参考: 前受け収益 | 顧客の前払い金などからなる前受け収益の残高は2026年6月28日時点で24億3,000万ドル (10-K)。装置の価格そのものは開示していない | 2026年6月28日 | sec.gov |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 直販 (製品営業と現場の技術者) | ラムリサーチは年次報告書で、製品マーケティングと営業の担当者に加え、装置・プロセスの技術者が顧客ごとに対応すると説明する。販売代理店の制度は開示していない | sec.gov |
| 注文と検収 | 承認済みの注文書を契約とみなす (10-K)。日本の顧客への出荷は検収まで売上に計上せず、2026年9月27日時点で検収待ちの出荷は4億6,830万ドル (8-K) | sec.gov |
| 顧客向けポータル MyLam | 技術資料・部品の注文・保守の情報は、パスワードで保護した顧客向けサイト MyLam で提供する | lamresearch.com |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 保証 | 標準保証は、材料・製造上の欠陥が無く合意した仕様に適合することを対象とする。修理か新品同等品への交換に限られ、保証期間内の通知が条件 (10-K)。年限は公表していない | sec.gov |
| 保守拠点 | 米国、中国、欧州、インド、日本、韓国、東南アジア、台湾にサービス技術者の網を置く (10-K)。日本は新横浜本社のほか、四日市・北上・大津 (熊本)・大分・諫早・高岡のサービスセンター、鶴岡・東広島・千歳のオフィス、四日市の中部パーツセンター | lamresearch.com |
| 部品 (スペア) | 純正部品のほか、修理・再生部品、長寿命の高性能部品、公差を緩めた低価格部品を扱う。生産を終える部品は最終受注 (ラストバイ) を案内し、代替部品を設計する | lamresearch.com |
| 改造 (アップグレード) | 次の微細化世代への対応、稼働率・処理能力・歩留まりの改善、省エネ・ガス削減の改造を、設置済みの装置に施す | lamresearch.com |
| 遠隔監視と保守の自動化 | Equipment Intelligence (装置の稼働データを使う保守・制御) で、稼働率を高め、処理能力を上げ、欠陥を減らす (10-K)。2024年12月発表の協働ロボット Dextro は、期間を定めた保守契約の一部として提供する | lamresearch.com |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| ラムリサーチ全体の地域別売上高 (2026年6月期) | 中国34%、台湾22%、韓国19%、日本9%、米国7%、東南アジア6%、欧州3%。売上高は顧客の工場の所在地で分ける (10-K)。製品群ごとの内訳は公表していない | sec.gov |
| 2026年7〜9月期 | 中国35%、韓国20%、台湾18%、日本9%、米国8%、東南アジア6%、欧州4% (8-K 2026年10月21日) | sec.gov |
| 米国の輸出管理 | ラムリサーチは年次報告書で、米国の輸出管理により中国の一部の顧客・用途向けに輸出許可が要り、許可が下りる保証は無いと説明する。2024年12月2日の追加規制についてラムリサーチは、影響は従来の想定と大筋で一致すると説明した | newsroom.lamresearch.com |
📈 販売の実績
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 誘電体成膜装置の売上高 | 公表されていない。ラムリサーチは年次報告書で成膜装置の売上高を分けて開示しない | sec.gov |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
誘電体成膜は、ラムリサーチが2012年に買収したノベラス・システムズから受け継いだ製品群だ (CEO アーチャー氏の経歴・10-K)。3次元 NAND の積層膜を100組以上同じチャンバー内で付ける VECTOR と、薄い膜を原子層ごとに付ける Striker がある。どちらもメモリーとロジックの両方に入る。
2025年9月の VECTOR TEOS 3D は、先端パッケージング向けの新しい用途だ。チップを縦に積むと反りが大きくなり、隙間を埋める膜も厚くなる。ラムリサーチは60マイクロメートルの膜を1回で付けると説明する。HBM (広帯域メモリー) などの積層需要を成膜装置で取り込む動きだ。
ラムリサーチは年次報告書で成膜の競合にアプライドマテリアルズ、ALD と PECVD では ASM インターナショナルとウォニク IPS を挙げる。東京エレクトロン (8035) は成膜では競合に名が無く、エッチングと洗浄で競合する。
公表されていないこと
- Striker・VECTOR を組み立てる工場
- 誘電体成膜装置だけの売上高
- TEOS 3D の設置先の社名
- RF 発生器・前駆体の供給元
出所
- ラムリサーチ 年次報告書 10-K (2026年6月期・2026年8月7日提出) (2026-08-07)
- ラムリサーチ 8-K 2026年7〜9月期 決算発表 (2026-10-21)
- ラムリサーチ 所在地一覧 (2026-11-01)
- ラムリサーチ 製品一覧 (2026-11-01)
- ラムリサーチ カスタマーサポート概要 (2026-11-01)
- Striker 製品ページ (2026-11-01)
- VECTOR 製品ページ (2026-11-01)
- VECTOR TEOS 3D 発表 (2025-09-09)
- SPEED 製品ページ (2026-11-01)
- SOLA 製品ページ (2026-11-01)
- Prestis 製品ページ (2026-11-01)
- IBM との共同開発の発表 (2026-03-10)
- 極低温エッチング解説ページ (周辺工程の記述) (2026-11-01)
出所との照合日: 2026年11月1日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
ラムリサーチ のほかの製品
🧰 ツール・特集の入口
一次データで動く 14 本 — 銘柄の絞り込み・供給網・比較・一次データの台帳・解説・規制レンズ (すべて無料)