FRBの利上げで広がった日米金利差は、翌18日の日本銀行の決定しだいで元に戻る。2023年7月から政策金利の差は約半分に縮んだが、円は当時より13円余り安く、政府は円買い介入を重ねている。
米連邦準備制度理事会 (FRB) は米東部時間2026年9月16日午後2時、政策金利の0.25ポイントの引き上げを発表した。2023年7月以来、3年2か月ぶりの利上げである。「日米金利差が再び開き、円安の材料になる」という見方は分かりやすいが、差が開いた状態は1日で終わる可能性がある。日銀は9月17日と18日に金融政策決定会合を開き、日本経済新聞は12日、日銀が政策金利を1.0%から1.25%に引き上げる方針だと報じた。本稿は、FRBの声明と実施細目、日銀の決定文、財務省の国債金利と為替介入の実績、FRED (米セントルイス連銀の経済統計) の相場の数字 (いずれも2026年9月17日に取得) で、FRBの利上げが日本に何をもたらすのかを確かめる。
FRBの政策金利は3.75〜4.00%の幅で、0.25ポイント上がったのは下限と上限の両方である
FRBの政策金利であるフェデラルファンド金利 (銀行同士が翌日まで資金を貸し借りする金利) は、1つの数字ではなく「誘導目標」という幅で決められる。FRBの声明によると、連邦公開市場委員会 (FOMC) は12対0の全会一致で、この幅を3.50〜3.75%から3.75〜4.00%に引き上げた。下限が3.50%から3.75%に、上限が3.75%から4.00%に上がったのが、一般に「0.25%の利上げ」と呼ばれる決定の中身である。金利そのものが%で表されるため、その差は正確には0.25ポイント (パーセントポイント) と書く。「0.25%上がった」を文字どおりに読むと、3.75%の0.25%分、つまり0.009375ポイントしか上がらない計算になる (記者の計算)。本稿では金利の変化と金利差をすべて「ポイント」で表す。新しい幅は9月17日から適用された。利上げ前の水準は6月16〜17日の会合で据え置かれ、7月28〜29日の会合でも9対3で据え置かれていた。
実際の金利を幅の中に収めるための関連レートも、同じ日に上がった。FRBの実施細目を7月の実施細目と並べると、次のようになる。
表1 FRBの関連レート (FRBの実施細目から作成、9月17日から適用)
| レート | 利上げ前 | 利上げ後 |
|---|---|---|
| 誘導目標の下限 | 3.50% | 3.75% |
| 誘導目標の上限 | 3.75% | 4.00% |
| 準備預金への付利 | 3.65% | 3.90% |
| 公定歩合 | 3.75% | 4.00% |
| 翌日物レポ | 3.75% | 4.00% |
| 翌日物リバースレポ | 3.50% | 3.75% |
準備預金への付利 (IORB) は、銀行がFRBに預ける準備預金に付く金利で、幅の中で実際の金利を導く中心的な道具である。公定歩合は、FRBが健全な銀行に直接貸す「プライマリークレジット」の金利を指す。翌日物レポはFRBが国債を担保に市場へ資金を供給する金利で、上限の役目を持つ。翌日物リバースレポは逆に市場から資金を吸収する金利で、下限を支える。リバースレポには1社あたり1日1,600億ドルの上限がある。
FRBの声明は景気・雇用・物価の3点だけを書き、エネルギーや関税への言及はない
利上げの理由について、声明の文面は短い。経済活動は堅調に拡大し、地政学的な動きもあって不確実性は高いものの国内の支出は底堅い。生産性の伸びは強く、設備投資は力強い。雇用の伸びは労働力の増加に見合い、失業率はほとんど変わっていない。そのうえで「インフレは高止まりしている」と書き、今回の決定が2%の目標へのより早い回帰を支えるとした。ウォーシュ議長は会見の冒頭で、インフレは高すぎ、その状態が長く続きすぎていると述べた。景気は堅調で、雇用は崩れず、インフレはまだ高いという3点である。
物価を押し上げている要因として、市場はエネルギー価格 (報道では対イラン情勢)、関税、AIへの投資を挙げ、国内の報道も中東情勢を受けた原油価格の高騰を背景に挙げる。ただし声明には、エネルギー、関税、AIという語はない (記者の確認)。声明が挙げたのは「地政学的な動き」と「力強い設備投資」までで、その先は市場の読みである。日銀の6月16日の決定文も、中東情勢の影響による原油価格の上昇を、日本の景気と物価の両面の要因として繰り返し挙げている。
FRBが目標とするのは、個人消費支出 (PCE) の物価指数で2%の上昇率である。9月16日に公表された経済見通しでは、2026年のPCE物価の上昇率は3.7%、食品とエネルギーを除くコアは3.4%で、目標を大きく上回る。
見通しでは18人中16人が年内の追加利上げを描き、実現すれば幅は4.00〜4.25%になる
FOMCの参加者が各自の政策金利の見通しを点で示す図 (ドットプロット) では、2026年末について、見通しを出した18人のうち12人が4.125%、4人が4.375%、2人が3.875%を描いた。4.125%は今の幅の中央値3.875%から0.25ポイント上で、年内にもう1回の利上げにあたる。これが実現すれば幅は4.00〜4.25%になる。4人は年内にあと2回、2人は据え置きを見込んでおり、見方にはばらつきがある。議長のケビン・ウォーシュ氏は見通しを出していない。これらは参加者の見通しで、決定ではない。
利上げには政治の反発も出ている。利下げを求めてきたトランプ大統領は、決定の数時間後にSNSのトゥルース・ソーシャルへ、米国の金利は「1%かそれ以下」であるべきだと投稿し、金利の早急な引き下げを求めた。一方で、議長に指名したウォーシュ氏への信頼は変わらないとも述べた (CNBC、2026年9月16日)。年内のFOMCは10月27〜28日と12月8〜9日の2回が残る。次の確認点は、12人が描いた年内の追加利上げがこの2回のどちらかで本当に来るかどうかである。会合ごとの見通しの変化と株価指数への影響は、9月FOMCと日経平均・TOPIXの差を扱った記事で分解した。
日米金利差はFOMCで2.875ポイントに広がり、18日の日銀の決定で2.625ポイントに戻り得る
日本側の政策金利は、日銀が2026年6月16日に無担保コール翌日物 (銀行同士が翌日まで無担保で資金を貸し借りする金利) の誘導水準を0.75%程度から1.0%程度に引き上げた段階にある。採決は賛成7、反対1で、適用は6月17日からだった。日銀の当座預金への付利は1.0%、日銀が銀行に貸す基準貸付利率は1.25%である。反対した浅田委員は、中東情勢の影響で生産や雇用が下振れするリスクの方が大きいとした。日銀は2025年1月24日に0.5%程度、2025年12月19日に0.75%程度へ引き上げており、6月の利上げは2025年以降で3回目になる。
米国の幅の中央値と日銀の誘導水準の差を政策金利の日米差とすると、6月の日銀の利上げ後からFOMCの前までは3.625%と1.0%で2.625ポイント、FOMCの後は3.875%と1.0%で2.875ポイントになった (記者の計算)。FRBが上げた0.25ポイントの分だけ、差は再び広がった。
ただし、この差は翌日にも縮む可能性がある。日銀の9月の会合は17日と18日で、結果は18日に公表される。日経は12日、日銀が1.0%から1.25%に引き上げる方針だと報じた。日銀の7月31日の会合は1.0%程度での据え置きを賛成8、反対1で決めたが、反対した高田委員は、海外発の需要の強まりによる物価の上振れリスクや、海外の金融環境の転換に機動的に対応する必要があるとして、1.25%程度への引き上げを提案していた。6月の決定文も、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き政策金利を引き上げていくと書き、日本の実質金利 (金利から予想物価上昇率を差し引いた値) は短中期の期間を中心にマイナスで、金融環境は緩和した状態にあるとした。
日米の次の決定の組み合わせで、差は次のように変わる (いずれも記者の計算)。
表2 日米の次の決定と政策金利の差 (米国は幅の中央値)
| 組み合わせ | 米国 | 日本 | 差 (ポイント) |
|---|---|---|---|
| 今 (FOMC後) | 3.875% | 1.00% | 2.875 |
| 日銀が1.25%、FRBは年内据え置き | 3.875% | 1.25% | 2.625 |
| 日銀が1.25%、FRBが年内1回 | 4.125% | 1.25% | 2.875 |
| 日銀が据え置き、FRBが年内1回 | 4.125% | 1.00% | 3.125 |
| 日銀が1.25%、FRBが年内2回 | 4.375% | 1.25% | 3.125 |
日銀が18日に上げ、FRBが12人の見通しどおり年内にもう1回上げれば、差は今と同じ2.875ポイントにとどまる。差が今より開くのは、日銀が据え置くか、FRBが2回上げる場合である。日銀の年内の会合は、9月のあと10月29〜30日と12月17〜18日が残る。
日米金利差は2023年の約半分に縮んだのに円は13円余り安く、政府は27兆円超の介入で円を支えている
「金利差が開けば円安」という関係は、この3年間の数字には素直に表れていない。FRBが前回利上げを決めた2023年7月26日は、米国の誘導目標は上限5.50%・中央値5.375% (7月27日から)、日銀のマイナス金利が-0.1%で、政策金利の差は5.475ポイントあった。財務省と米財務省の国債利回りで比べると、2年債は2023年7月26日に米国4.82%・日本-0.038%で差が4.858ポイントだったが、2026年9月16日は米国4.74%・日本1.852%で2.888ポイントに縮んだ。10年債も米国3.86%・日本0.451%の3.409ポイントから、米国5.01%・日本2.998%の2.012ポイントへ縮んだ (差は記者の計算)。一方、FREDのドル円はニューヨーク正午の相場で、2023年7月26日が140.41円、2026年9月11日が153.71円で、13.30円の円安である。
2026年の円安は、政府の介入を引き出した。財務省によると、4〜6月の為替介入は11兆7,349億円で、4月30日に6兆2,787億円、5月4日に7,802億円、5月6日に4兆6,759億円、いずれもドルを売って円を買った。ドル円はその後も円安が進み、7月29日には163.86円と2023年以降で最も円安の水準を付けた。財務大臣談話によると、日本の財務省は米東部時間7月31日、米財務省と協調して円買い介入を実施した。2025年9月の日米財務大臣共同声明に基づくもので、談話は更なる協調介入も躊躇しないとし、米国の中央銀行が外国の通貨当局に資金を貸す「FIMAレポ・ファシリティ」を将来使う予定だとも記した。7月30日から8月26日までの介入額は15兆3,993億円で、4〜8月の合計は27兆1,342億円になる (記者の計算)。ドル円は7月30日に159.47円、8月3日に156.96円と円高に振れ、9月11日には153.71円まで戻した。
FRBの利上げの後、米国株は下げ、円は再び売られた。FREDによると、16日のダウ平均の終値は前日比631.21ドル安の51,461.90ドルで、6月12日 (51,202.26ドル) 以来、約3か月ぶりの安値だった。9月16日のニューヨーク市場ではドル円が一時156円42銭を付けた (みんかぶ)。同じ日の2年債の日米差は2.888ポイントで、日銀が利上げを決めた6月16日の2.636ポイント (米国4.05%・日本1.414%) から広がっている (記者の計算)。記者の見立てでは、日本の実質金利がマイナスにとどまる限り、名目の金利差が縮んでも円を持つ利点は小さく、日銀の0.25ポイントの利上げだけで円安の流れが変わるとは限らない。政府が介入で相場を支えている以上、介入の余力と日米の協調が続くかも、円相場を左右する。
日本への影響を1つの数字で測るなら、2.875ポイントという金利差そのものより、18日の日銀の決定と年内2回のFOMCの組み合わせで差がどちらに動くかを見る方がよい。FRBの利上げは差を0.25ポイント広げたが、日銀が18日に上げれば差は元に戻る。それでも円安の圧力が消えないことは、金利差が半分になっても円が13円余り安く、政府が27兆円を超える介入で円を支えてきた2026年の数字が示している。
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