9月のFOMCは予想どおりの利上げを決めたが、年末の政策金利を4.125%以上と見る参加者は6月時点の6人が今回は16人になった。翌朝の日経平均の上昇率はTOPIXの約4割にとどまり、差の大半を半導体株2社が生んだ。

米連邦準備制度理事会 (FRB) は2026年9月16日の米連邦公開市場委員会 (FOMC) で、政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75〜4.00%とした。利上げは2023年7月以来、約3年2カ月ぶりになる。利上げの確率は会合前の16日朝に約92.5%まで織り込まれており、1カ月前の33%から急上昇していた (CNBCが伝えたCMEフェドウオッチの数字)。一方、年内の追加利上げを見込む参加者は18人中16人に上り、発表後に米国株は下げに転じた。翌17日朝の東京では日経平均が248円高 (0.39%高) にとどまる一方、TOPIXは1.05%高、東証グロース市場250指数は1.81%高と上げ幅が大きかった。本稿は、17日朝の市況速報が伝えた2つの市場の動きを、FRBの声明と経済見通し、米財務省と米セントルイス連銀の統計、日本経済新聞社と日本取引所グループの指数資料で確かめる。

日経平均の上昇率はTOPIXの約4割で、差の大半を半導体株2社の222.5円が生んだ

17日朝の東京市場では、日経平均が朝の高値から上げ幅を縮めた。17日朝の市況速報によると、半導体株が売られる一方で、医薬品、商社、保険、ゲーム関連が買われた。日経半導体株指数は1.04%安で、前日の朝は上げていた東京エレクトロンアドバンテストもこの日はマイナス圏に沈んだ。日経半導体株指数は、東京証券取引所に上場する主な半導体関連株を原則30銘柄選び、時価総額に応じて組み入れる指数で、日本経済新聞社が2024年3月25日に公表を始めた。

日経平均を押し下げたのはアドバンテストの約115.9円と東京エレクトロンの約106.6円で、2社で約222.5円に上る。一方、ファーストリテイリングは1.06%高で約57円押し上げ、前日の朝に大きく下げたソフトバンクグループも0.16%高と小幅に上げた。2社の押し下げがなければ、日経平均は470.5円高 (0.74%高) だった計算になる (記者の試算)。日経平均の0.39%高はTOPIXの1.05%高の約37%で、半導体以外の業種に値上がりが広がった朝に、日経平均だけが取り残された形になった。

市況速報の数字には取得時刻の記載がない。株探によると、17日10時時点の日経平均は64,076.04円 (153.04円高) で、押し下げは東京エレクトロンが120.68円、アドバンテストが84.48円だった。時刻によって2社の順位は入れ替わるが、2社が日経平均の最大の重荷だった点は変わらない。値上がりが目立った業種について、株探は米国の利上げを受けて銀行株が利ざや改善の期待から買われたと伝えた。ただ、保険株の上昇を金利上昇だけで説明するのは難しい。東京海上ホールディングスが2026年5月26日に示した資料では、経済価値ベースのソルベンシー比率 (ESR、保険金の支払い余力を示す指標) は2026年3月末で268%で、金利が0.5ポイント上がると266%へ2ポイント下がる。金利の上昇は同社の資本の厚みをほとんど変えない。

日経平均は上位4社で35.94%を占め、TOPIXでは同じ4社が6.65%にとどまる

同じ朝に2つの指数の値動きがこれほど分かれたのは、指数の組み立て方が違うからだ。日本経済新聞社の算出要領によると、日経平均は225銘柄の株価に「株価換算係数」を掛けて合計し、「除数」で割って求める。株価の高い銘柄や係数の大きい銘柄ほど、指数を動かす力が強い。9月16日の除数は29.83110217で、日経平均の終値は63,923.00円 (438.90円高) だった。

同じ日のウエート (構成比) は、アドバンテストが11.59%、ファーストリテイリングが8.44%、東京エレクトロンが8.13%、ソフトバンクグループが7.78%で、上位4社だけで35.94%に達する。半導体の2社だけでも19.72%ある。これに対し、浮動株の時価総額に応じて1,636銘柄を組み入れるTOPIXでは、日本取引所グループが公表した7月31日時点のウエートがアドバンテスト1.7526%、東京エレクトロン2.0876%、ファーストリテイリング0.9998%、ソフトバンクグループ1.8109%で、4社合わせても6.6509%、半導体2社は3.8402%にすぎない。

日経平均は上位4社で35.94%、TOPIXでは同じ4社が6.65%
日経平均は上位4社で35.94%、TOPIXでは同じ4社が6.65%

市況速報の押し下げ額は、公表されたウエートから再現できる。株価換算係数はアドバンテストが7.2、東京エレクトロンが3で、9月16日の終値をもとにすると、株価が1%動いたときの日経平均への寄与はアドバンテストが74.09円、東京エレクトロンが51.97円、ファーストリテイリングが53.95円になる。ここに市況速報の変化率 (アドバンテスト1.56%安、東京エレクトロン2.05%安、ファーストリテイリング1.06%高) を当てはめると、押し下げは115.58円と106.54円、押し上げは57.19円となり、市況速報の数字とほぼ一致する (記者の試算)。

この偏りは、日経平均の係数の見直しで少し和らぐ。日本経済新聞社は、アドバンテストのウエートが上限の10%を超えたため、10月1日から同社の係数を7.2から6.4に引き下げると7月31日に発表した。9月29日からは東京エレクトロンの係数が1対5の株式分割に合わせて3から15に、東京海上ホールディングスの係数が1.5から22.5に変わる (9月4日発表)。分割に伴う係数の変更は株価の下落と相殺されるため、東京エレクトロンの影響力そのものは変わらない。

FOMCは12対0で0.25ポイントの利上げを決め、2023年7月以来の利上げに踏み切った

東京の値動きの起点になったのが、前日の米国の決定だ。FOMCの声明は誘導目標を0.25ポイント引き上げて3.75〜4%とし、採決は12対0の全会一致だった。声明は、インフレ率は高止まりしていると指摘し、今回の決定は物価上昇率を2%の目標に早く戻すのに役立つと説明した。7月29日の会合は据え置きを決めたが、採決は9対3で、ハマック、カシュカリ、ローガンの3氏が0.25ポイントの利上げを主張して反対していた。9月は、3氏の主張が全会一致の決定になった。FRBは同時に、金融機関が預ける準備預金への付利を3.90%に、公定歩合を4.0%に引き上げた (いずれも9月17日から)。

米セントルイス連銀の統計で誘導目標の推移をたどると、2026年に目標を動かしたのは9月が初めてだ。直前の変更は2025年12月の利下げで、誘導目標の中央値は3.625%だった。利下げを打ち止めてから9カ月で、方向が引き締めに変わったことになる。今回の利上げで中央値は3.875%になった。

米国の政策金利の推移 (2003〜2026年)
米国の政策金利の推移 (2003〜2026年)

過去の転換点もFRBの声明で確かめられる。2004年6月30日の利上げ (1.25%へ) は2000年5月16日以来で、約4年ぶりだった。2007年9月18日には4.75%へ引き下げ、声明は信用条件の引き締まりと金融市場の混乱を理由に挙げた。声明に「サブプライム」という語はない。2008年12月16日にはゼロ金利に踏み切り、住宅ローン担保証券などの大量購入を続けた。2014年10月には資産購入の終了を決め、2015年12月16日の利上げは2006年6月29日以来、9年半ぶりだった。2020年3月15日には金利を0〜0.25%に下げ、国債を少なくとも5000億ドル、住宅ローン担保証券を少なくとも2000億ドル買い増すと決めた。議長はグリーンスパン氏 (1987年8月〜2006年1月)、バーナンキ氏 (2006年2月〜2014年1月)、イエレン氏 (2014年2月〜2018年2月)、パウエル氏 (2018年2月〜2026年5月) と代わり、ケビン・ウォーシュ氏が2026年5月22日に議長に就任した。同氏が8月の講演で人工知能 (AI) を生産要素と位置づけた点は別の記事で扱った。議長としての初の会合は6月だった。同氏の前回の理事在任はFRBの歴代理事一覧で2006年2月24日から2011年4月2日 (辞任) までで、「2011年3月まで」とする表記は正確ではない。

ウォーシュ議長は会見の冒頭で、失業率は4.1%前後と低く雇用は良好だとしたうえで、「インフレ率は高すぎ、しかもその状態が長く続きすぎている」と述べた。8月の個人消費支出 (PCE) 物価指数は前年同月比3.6%前後と推計し、「この夏の物価指標を見ても、基調的な物価の流れがはっきり改善したとは言えない」と語った。金融環境は引き締まっているとは言いにくく、金融緩和の度合いを一段弱めたと説明している。CNBCによると、質疑では、先々の政策を前もって示すつもりはないとも述べた。

FOMCで動いたのは先の見通しで、年末4.125%以上を描く参加者は6月の6人から16人に増えた

利上げ幅が織り込み済みだった以上、市場が反応したのは先行きの見通しだ。FRBが公表した経済見通しでは、見通しを出したのは議長を除く18人だった。各参加者が2026年末の政策金利を1点ずつ示す分布図 (ドットチャート) では、4.375% (年内あと2回の利上げ) が4人、4.125% (あと1回) が12人、3.875% (据え置き) が2人だった。市況速報の「18人中16人が追加利上げを想定」は、この分布と一致する。

6月の見通しと比べると、転換の大きさが分かる。6月時点の2026年末の分布は4.375%が1人、4.125%が5人、3.875%が3人、3.625% (当時の水準で据え置き) が8人、3.375% (利下げ) が1人だった。年末に4.125%以上を描く参加者は6人から16人に増え、据え置きや利下げを見込む参加者は9人から0人になった。

2026年末の政策金利の見通しは6月から大きく上に移った
2026年末の政策金利の見通しは6月から大きく上に移った

表1 FOMC参加者の見通しの中央値 (%、括弧内は6月時点)

指標2026年2027年2028年長期
政策金利4.1 (3.8)4.1 (3.6)3.9 (3.4)3.2 (3.1)
PCE物価3.7 (3.6)2.3 (2.3)2.1 (2.0)2.0 (2.0)
コアPCE物価3.4 (3.3)2.5 (2.5)2.2 (2.1)
失業率4.1 (4.3)4.1 (4.3)4.1 (4.2)4.2 (4.2)

2027年末の政策金利の中央値は3.6%から4.1%へ0.5ポイント上がった。6月は2027年に利下げに転じる姿を描いていたが、9月は高い水準を保つ姿に変わった。2026年の実質成長率の見通しは2.3% (6月2.2%) と上がり、失業率は4.1% (4.3%) に下がった。景気が強く、物価も下がりにくいという見立てが、金利の先行きを押し上げている。

この転換は債券市場の値動きにも表れた。米財務省の公表値では、2年債利回りは9月14日の4.65%、15日の4.67%から16日は4.74%へ0.07ポイント上がり、利上げ後の誘導目標の上限4.00%を0.74ポイント上回った。10年債は14日の4.97%、15日の5.00%から16日は5.01%で、上昇は0.01ポイントにとどまる。政策金利の先行きに敏感な2年債が大きく動いたことは、市場が利上げそのものより見通しに反応したことを示す。

市況速報は「米10年債利回りは5%台に上昇」と伝えたが、10年債は会合の前日にすでに5.00%に達していた。CNBCによると、15日には日中に5.039%を付け、2007年7月以来の高さになった。米セントルイス連銀の統計で分けると、9月9日から15日までの上昇0.17ポイントのうち、物価連動債の利回り (実質金利) の上昇が0.16ポイント (2.46%から2.62%) で、期待インフレ率は2.37%から2.38%とほぼ動いていない。名目金利を実質金利と期待インフレ率に分ける考え方は市場のゆがみを扱った記事で詳しく説明した。年初 (2025年12月26日) から見ても、10年債の上昇0.86ポイント (4.14%から5.00%) のうち0.71ポイント (82.6%) が実質金利で、長期金利の上昇はインフレ懸念より実質金利の上昇によるところが大きい (記者の計算)。

発表直後の株安は途中経過で、ダウ平均の終値は631ドル安だった

市況速報は、発表後に米国株が下げに転じ、ダウ平均が一時800ドル超下げたと伝えた。日本時間17日午前4時30分ごろの時点で、ダウ平均は773ドル安 (1.48%安) の51,319ドル、ナスダック総合指数は99ポイント安 (0.38%安)、S&P500は57ポイント安 (0.76%安)、ナスダック100は0.32%安、ラッセル2000は1.11%安だった。FANG+指数は0.77%安、24時間取引の値は0.65%安で、フィラデルフィア半導体株指数だけが0.12%高 (13ポイント高) と上げていた。

終値で見ると姿は異なる。米セントルイス連銀の統計によると、ダウ平均の16日終値は51,461.90ドルで、前日の52,093.11ドルから631.21ドル安 (1.21%安) だった。CNBCによると、S&P500は0.45%安、ナスダック総合は0.01%安で引けた。ヤフーファイナンスの日中値では、ダウ平均の安値は51,186.67ドルで、前日比906.44ドル安まで下げていた。市況速報の「800ドル超安」は日中の値として正しいが、引けにかけて下げ幅は縮まった。

為替は円安・ドル高に振れた。みんかぶによると、ドル円は16日のニューヨーク市場で一時156円42銭を付けた。社債市場にも警戒が広がり、米国のハイイールド債 (信用度の低い企業の社債) の上乗せ金利は9月11日の2.65%から15日は2.76%に広がった。米国で半導体株指数が上げた一方、東京で半導体株が売られた理由は、確認できた範囲の報道では説明されていない。

9月のFOMCが市場に突きつけたのは、0.25ポイントの利上げではなく、年末までにもう1回、人によっては2回引き上げるという見通しだった。2年債利回りは誘導目標の上限を0.74ポイント上回る水準まで上がり、翌朝の東京では、構成比の約2割を占める半導体2社を抱える日経平均が、TOPIXの約4割しか上がらなかった。同じ材料でも、どの指数やどの銘柄を持つかで受け止めが分かれた朝だった。

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