ACSLのSOTEN(蒼天・小型空撮ドローン) SOTEN
ACSLが設計する国産の小型空撮ドローン。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で開発し、2021年12月に受注を始めた。カメラをワンタッチで替えられ、通信と撮影データを暗号化する。量産は外部の生産パートナーが担う。2025年12月期は1,276台・20億700万円を売った。主な買い手は防衛省と、米国の電力会社や警察・消防などだ。国内はオープン価格で、米国の標準セットは1万米ドル以下。
詳細解説
- 開発の経緯
- ACSLは2020年4月、NEDOが公募した「安全安心なドローン基盤技術開発」事業に採択され、この事業でSOTENを開発した。 disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 開発の体制
- NEDOの事業にはACSL、ヤマハ発動機、NTTドコモ、ザクティ、先端力学シミュレーション研究所の5社が参加し、事業予算は16億1,000万円だった(MONOistの報道、2021年4月)。 monoist.itmedia.co.jp
- 受注開始
- 2021年12月7日に受注を始めた。 acsl.co.jp
- 米国への輸出
- ACSLは2023年11月13日に米国への輸出許可を経済産業省から受けた。12月に米国子会社が代理店ジェネラル・パシフィックへ50台を納め、米国で販売を始めた。 acsl.co.jp
- 米国の大口受注
- 2024年10月に米国の総代理店アルモから500台を受注し、一部を2024年12月に、残りを2025年12月期中に納めた。2025年11月に追加で400台を受注した。 disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 防衛省への納入
- ACSLは防衛装備庁から小型空撮機を2024年以降続けて受注し、2026年3月に約10億円、4月に約3億円の案件を受注した。 acsl.co.jp
- 自衛隊での採用
- ACSLによると、陸上自衛隊と航空自衛隊がSOTENを採用した。航空自衛隊は空撮用ドローンとして採用した。 www2.jpx.co.jp
- 米国向けの周辺機器
- 米国子会社は2025年8月26日、米国防権限法(NDAA)に準拠したスマートコントローラーTAITENを発表し、9月に米国の販売店網で販売を始める予定とした。赤外線カメラSAMOの改良も発表した。 acsl.co.jp
- 米国の規制との関係
- 米連邦通信委員会(FCC)は2025年12月、外国で生産されたドローンと主要構成品を規制の対象リストに加え、新規の機器認証を原則として制限した。ACSLはSOTENが認証を取得済みで販売を続けられると説明する。 disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- カナダでの販売
- 米国子会社は2025年12月、カナダの代理店ジャム・インダストリーズと契約して200台を受注した。2026年5月にはドラガンフライと販売代理店契約を結び、ジャムを起点とする商流で6月から販売すると発表した。 acsl.co.jp
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 外部の生産パートナー | 公表されていない | ACSLは小型機の量産に外部の生産パートナーを使い、2026年12月期の事業計画に足りる生産体制を確保したと説明する。社名は公表されていない。 | www2.jpx.co.jp | |
| ACSL本社 | 東京都江戸川区臨海町 | ACSLの有価証券報告書の主要な設備は本社(事務所と開発の設備など、賃借)だけ。2020年6月に開発・製造の拠点を本社に統合した。 | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| 生産能力 | 公表されていない | ACSLは2026年11月2日の発表で、会社全体で年間3万台の生産体制を構築し、実現できる状態にあると説明した。機種別の内訳と生産の場所は公表されていない。 | acsl.co.jp |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 飛行制御
- 機体の運動を数学モデルで表すモデルベース制御に、一部で非線形制御の手法を加える。ACSLは、一般的なPID制御(比例・積分・微分の組み合わせ)より耐風性や高速飛行時の安定性に優れると説明する。 disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 認識と自律飛行
- 画像処理による自己位置推定(Visual SLAM)、レーザー光で距離を測るセンサー(LiDAR)などの情報の統合、人工知能(AI)による環境認識を飛行制御に組み込む。衛星測位(GPS)が使えない場所でも自律飛行でき、計算は機体の上で行う。 disclosure2dl.edinet-fsa.go…
- 情報セキュリティー
- 国際規格ISO/IEC 15408(コンピューターセキュリティーの評価基準)に基づく対策で、データの漏えいや抜き取り、機体の乗っ取りを防ぐ。米国版は通信と飛行記録をAES256という方式で暗号化し、撮影データもSDカードへの記録時に暗号化できる。 acsl-usa.com
- カメラの交換
- ワンタッチの交換方式で、標準カメラを赤外線と可視光の複合カメラ、多波長(マルチスペクトル)カメラ、光学ズームカメラに替えられる。ACSLは小型空撮機で初めての方式と説明する。 product.acsl.co.jp
- 衛星測位
- 全地球測位システム(GPS)に準天頂衛星みちびき(QZSS)を組み合わせ、みちびきのサブメートル級測位補強サービス(SLAS)と静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)にも対応する。2023年9月からは、センチメートル級の測位ができるRTK(リアルタイムキネマティック)方式のRTK-SOTENの受注も始めた。 acsl.co.jp
- 外部機能の組み込み
- ACSLは2026年10月、新興企業スペースデータの仮想環境で開発した制御と画像認識の機能をSOTENの実機につなぎ、自動離陸から対象の検出、ホバリングまでを確かめた。 acsl.co.jp
- ソフトの更新
- 2024年2月7日のファームウエア更新で、送電線や鉄塔の近くの交流磁界の中での操作性を上げた。 acsl.co.jp
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 型式 | L14(標準モデル)、L22(携帯電話の通信網LTEを使うモデル) | product.acsl.co.jp |
| 寸法 | アーム展開時637mm×560mm(プロペラを含む)、収納時162mm×363mm | product.acsl.co.jp |
| 機体重量・最大離陸重量 | 1,720g(標準カメラ・電池込み)・2,000g | product.acsl.co.jp |
| 最大飛行時間 | 秒速8メートルの風で標準カメラ搭載時25分、非搭載時29分 | product.acsl.co.jp |
| 最大伝送距離 | 4km(障害物や電波干渉がない場合) | product.acsl.co.jp |
| 最大対気速度 | 秒速15メートル | product.acsl.co.jp |
| 防じん防水 | 等級IP43(カメラ・ジンバル・電池搭載時) | product.acsl.co.jp |
| 標準カメラ | 1インチ・2,000万画素のセンサー、機械式シャッター、4K動画 | acsl-usa.com |
| 衝突回避 | 3方向のセンサー(前・上・下のカメラ、上・下の赤外線センサー) | acsl-usa.com |
| 操縦の電波 | ACSL独自の無線、2.412〜2.477GHz | acsl-usa.com |
| 制御の通信規格 | 無人機の通信規格MAVLinkに準拠 | product.acsl.co.jp |
| 電池 | 94Wh | product.acsl.co.jp |
| スマートコントローラーTAITEN | 7インチ・明るさ1,500ニトの表示部、防じん防水の等級IP54、映像出力端子(HDMI) | acsl.co.jp |
| 赤外線カメラSAMO | 640×512画素の放射温度を測る赤外線カメラと6,400万画素の可視光カメラを組み合わせ、20倍ズームに対応 | acsl-usa.com |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 標準カメラ | 1インチセンサーの標準カメラ ザクティは非上場 |
ザクティ | — | 日本 公表されていない |
MONOistの報道(2021年4月)によると、カメラの開発はザクティが担当した B |
| 赤外線カメラのモジュール | SAMOに内蔵する赤外線と可視光の複合モジュール 親会社テレダイン・テクノロジーズはニューヨーク証券取引所に上場 |
テレダイン・フリアー | — | 米国 公表されていない |
米国子会社の発表によると、テレダイン・フリアーの機器メーカー向けカメラモジュールを内蔵する A |
| 飛行制御装置 | フライトコントローラー 製造の委託先は公表されていない |
ACSL | 6232 | 日本 公表されていない |
MONOistの報道によると、飛行制御装置とクラウドへの通信の開発はACSLとNTTドコモがけん引した B |
| 筐体・モーター・電池 | 機体の筐体、モーター、94Whの電池 | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
MONOistの報道によると、ヤマハ発動機の量産の経験やノウハウが設計に反映された。部品の供給元の記述はない B |
| プロペラ | 静音性のプロペラ | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
MONOistの報道によると、静音性プロペラの設計に先端力学シミュレーション研究所の技術を使った。供給元の記述はない B |
| 主要部品の調達方針 | 主要部品 | 公表されていない | — | 日本ほか 公表されていない |
ACSLは製品ページで、主要部品に国産品か信頼性の高い海外からの調達品を使うと説明する A |
| LTE通信モジュール | オプションの携帯電話の通信網(LTE)の通信モジュール | 公表されていない | — | 公表されていない 公表されていない |
ACSLは製品ページでオプション品として公表している A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1設計・開発飛行制御、機体、地上局ソフトをACSLが開発する。研究開発の人員はグローバル最高技術責任者(CTO)以下30人(2025年12月末)。企業: ACSL
- 2量産外部の生産パートナーが小型機を量産する。企業: 公表されていない
- 3部材の調達ACSLは2026年6月29日に中国商務省の「注視リスト」に載り、中国からの軍民両用品の一部の輸出審査が厳しくなった。ACSLは代替調達、代替部材の採用、設計変更を進める。企業: ACSL
- 4米国の販売カリフォルニア州の米国子会社が、総代理店アルモ(商号エクセルティス・アルモ)と20社以上の販売店を通じて売る。売上高は総代理店への出荷の時点で計上する。企業: 米国子会社、アルモ
- 5国内の販売ACSLによると、国内では15社以上の販売代理店が売る。企業: 販売代理店
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1組み立てと検査生産パートナーでの組み立てや検査の中身は公表されていない。ACSLは品質保証管理規程と生産管理規程に基づいて製造と品質を管理し、主要な取引先を定期的に監査すると説明する。設備・企業: 公表されていない
- 2品質の認証ACSLは2018年12月に品質管理の国際規格ISO9001の認証を得た。設備・企業: ACSL
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 国内向け(標準モデル・LTEモデル) | オープン価格(代理店に問い合わせ) | 2026-11-06 | product.acsl.co.jp |
| 米国向けの標準セット | 1万米ドル以下(税抜きかどうかは公表されていない) | 2024-01-23 | acsl.co.jp |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内の販売代理店 | 国内では販売代理店を通じて買う。ACSLの直販の案内はない。 | product.acsl.co.jp |
| 米国の販売店 | 2024年1月の発表時は8社の販売代理店が扱い、その後20社以上に増えた。 | acsl.co.jp |
| 防衛省・官公庁 | 防衛装備庁などの調達で受注する。 | acsl.co.jp |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内の修理 | 製品サイトに修理依頼の窓口がある。保証の年限は公表されていない。 | product.acsl.co.jp |
| 米国の修理 | 米国の販売代理店が認定の修理・サービスも担う。米国子会社はオハイオ・ドローン・リペアをSOTENの認定修理拠点に加えた。 | acsl-usa.com |
| ソフトの更新 | 地上局アプリTAKEOFFは2026年10月13日に最新版を公開した。撮影データの暗号化・復号のアプリSnapSafeと、LTE通信用のアプリTAKEOFF VPN(仮想私設網)も製品サイトからダウンロードできる。 | product.acsl.co.jp |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 米国 | ACSLは2023年11月13日に経済産業省の輸出許可を受けて輸出を始めた。2025年12月期の海外販売は500台・9億2,100万円。 | acsl.co.jp |
| カナダ | ACSLによると、2026年6月からドラガンフライと連携してSOTENを販売している。 | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
| 全般 | 輸出管理では、ACSLは外為法で規制の対象になる製品なら経済産業省の輸出許可が要ると案内する。製品と技術は外為法の安全保障貿易管理の対象になる場合があると説明する。 | product.acsl.co.jp |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 小型空撮機の販売 | 1,276台・20億700万円 | 台・円 | うち国内776台・10億8,600万円、海外500台・9億2,100万円 | www2.jpx.co.jp |
| 2024年12月期 | 小型空撮機の販売 | 240台・4億200万円 | 台・円 | うち海外112台 | www2.jpx.co.jp |
| 2026年1〜6月 | 小型空撮機の販売 | 634台・11億1,200万円 | 台・円 | うち海外600台・10億1,800万円、国内34台・9,300万円 | www2.jpx.co.jp |
| 2026年1〜6月 | 北米の売上高 | 10億1,838万円 | 円 | SOTENの機体と関連部品・付属品 | disclosure2dl.edinet-fsa.go… |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| NEDO事業の予算 | 16億1,000万円(MONOistの報道) | monoist.itmedia.co.jp | |
| 防衛装備庁の小型空撮機の案件(2026年) | 3月に約10億円、4月に約3億円 | acsl.co.jp | |
| 米国の総代理店からの受注 | 500台(2024年10月)、400台(2025年11月) | disclosure2dl.edinet-fsa.go… | |
| カナダの代理店からの受注 | 200台(2025年12月) | acsl.co.jp |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
ACSLは2025年12月期の売上高25億9,873万円のうち、20億700万円をSOTENで売った。2026年1〜6月は634台のうち600台が海外向けで、国内向けは34台だった。北米の伸びは、米国が外国製ドローンの新規の機器認証を原則として制限した時期と重なる。SOTENは規制の前に認証を取っていた。有価証券報告書によると、中国製を含む新規機体の米国での販売は実質的に制限された。国内の売上は防衛装備庁の大型案件の納入時期に左右され、2026年は約10億円と約3億円の案件を抱える。量産は社名を公表していない生産パートナーが担う。中国の注視リスト入りで、部材の調達先と設計を替える作業も続く。ACSLはSOTENより小型・軽量の次世代機を2026年半ばから後半に出す計画だ。
公表されていないこと
- 生産パートナーの社名と工場の所在地は公表されていない
- モーター・電池・プロペラ・通信部品の供給元は公表されていない
- 国内での販売価格と保証の年限は公表されていない
- SOTENが外為法の規制の対象かどうかの判定は公表されていない
出所
- 製品サイト 小型空撮ドローン(SOTEN) (2026-11-06)
- 米国子会社の製品ページ (2026-11-06)
- ACSL 有価証券報告書 第14期 (2025年12月期) (2026-03-31)
- ACSL 半期報告書 (2026年12月期中間期) (2026-08-14)
- 2026年12月期 第2四半期決算説明資料 (2026-08-14)
- 米国におけるSOTENの価格と販売代理店 (2024-01-24)
- 進化し続ける国産ドローンSOTEN(蒼天) (2024-02-08)
- 米国子会社が新型スマートコントローラー「TAITEN」を発表 (2025-08-27)
- TAITENの発表とSAMOの改良 (米国子会社、英語) (2025-08-26)
- 米国子会社がカナダ市場での本格展開を開始 (2026-05-11)
- 大型案件の受注に関するお知らせ (2026-11-02)
- 海外募集による新株式発行に関するお知らせ (2026-08-24)
- スペースデータとの実機連携の検証 (2026-10-20)
- MONOist 安全安心な国産ドローンが1年弱で完成 (1頁目) (2021-04-14)
- MONOist 安全安心な国産ドローンが1年弱で完成 (2頁目) (2021-04-14)
出所との照合日: 2026年11月6日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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