キオクシアとサンディスクの製造合弁(四日市・北上の前工程) Kioxia-Sandisk Manufacturing Joint Ventures (Flash Partners / Flash Alliance / Flash Forward)
キオクシアが米サンディスクと組む3つの製造合弁会社を通じた、3次元フラッシュメモリの共同開発と前工程の共同生産の枠組み。3社はフラッシュパートナーズ (2004年)、フラッシュアライアンス (2006年)、フラッシュフォワード (2010年)。合弁3社が四日市・北上の生産設備を持ち、キオクシアが製造を受託して加工済みウエハーを合弁3社に売る。合弁3社はそれをキオクシアとサンディスクに半分ずつ売る。両工場の生産能力の約80%を合弁で共有し、残り約20%はキオクシア単独。契約はいずれも2034年12月31日まで延び、サンディスクは製造サービスの対価として2026〜2029年に計11億6,500万ドルを払う。2032年までに両社で約5兆円を日本に投資する見込み (政府支援が前提)。
詳細解説
- 仕組み
- キオクシアとサンディスクが共同出資する製造合弁3社が、両社からの借り入れやリースで生産設備を調達し、四日市工場・北上工場に設置する。キオクシアが合弁3社から製造委託を受け、無償貸与された設備で生産し、加工済みウエハーを合弁3社に販売。合弁3社はキオクシアとサンディスクへ50%ずつ販売する ssl4.eir-parts.net
- 3つの契約
- フラッシュパートナーズ基本契約 (FLASH PARTNERS MASTER AGREEMENT、2004年9月10日、四日市第3製造棟ほか)、フラッシュアライアンス基本契約 (2006年7月7日、四日市第4製造棟ほか)、フラッシュフォワード基本契約 (2010年7月13日、四日市第5製造棟ほか。四日市の協業と設備は一部を除き北上工場へ順次移管中)。いずれも2034年12月31日まで ssl4.eir-parts.net
- 2026年1月の延長
- 四日市工場の合弁会社の契約期間を2029年12月31日から2034年12月31日へ5年延長 (北上は既に2034年12月まで)。契約条件も見直し、サンディスクは製造サービスと継続的な製品供給の対価として11億6,500万ドルを2026〜2029年に分割して払う。キオクシアは「製造オペレーションの価値を認めた」合意と説明 kioxia.com
- 能力の配分
- 両工場の生産能力合計の約80%を合弁で共有し、約20%をキオクシアが単独で持つ。合弁分は両社に半分ずつ割り当てられる。キオクシアは工場を運営し製造ノウハウを持つ ssl4.eir-parts.net
- 会計上の扱い
- キオクシアは合弁3社の議決権の50.1%を持ち、国際会計基準 (IFRS) の共同支配事業として資産・負債・収益・費用の50%を連結する。合弁3社が持つ設備の帳簿価額 (キオクシアの持ち分として認識する額) は2,519億9,000万円 (2026年3月末、日本基準) ssl4.eir-parts.net
- 2026年8月の投資計画
- 両社は政府支援を前提に、2032年までに日本で総額約5兆円 (310億ドル超) の投資を見込む。過去25年の国内設備投資は約9兆円。四日市・北上の生産設備、インフラ、技術の強化が目的 kioxia.com
- サンディスクとの関係
- サンディスクは2025年2月にウエスタンデジタルから分社し米ナスダックに上場。キオクシアは分社が合弁に重大な影響を及ぼすとは見込まないとしつつ、合弁の利点を享受し続けられる保証はないと有価証券報告書に記す。2025年3月期はサンディスクグループ向け売上が1,986億円 (11.6%) ssl4.eir-parts.net
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 四日市工場 (第3〜第7製造棟など6棟) | 三重県四日市市 | 合弁3社の設備で前工程を行う。土地の一部を外部から賃借 (年間賃借料26億6,700万円、有価証券報告書)。65万9,281平方メートルは2024年2月にヒューリックへ信託受益権を譲渡し、2074年3月までの事業用定期借地で使う。従業員6,788人 | ssl4.eir-parts.net | |
| 北上工場 (第1・第2製造棟) | 岩手県北上市 | フラッシュフォワードの設備を四日市から順次移管。第2製造棟は2025年9月稼働、2026年7月に第10世代の生産を開始し両社が披露式を開催。運営会社キオクシア岩手は2027年4月1日にキオクシアに吸収合併される予定 | kioxia.com | |
| 北上工場 第3製造棟 (計画) | 岩手県北上市 | 2029年度中の稼働を目標に土地整備を開始 (2026年8月)。政府支援が前提。合弁の対象になるかは公表されていない | kioxia.com |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- 共同開発
- 3次元フラッシュメモリ BiCS FLASH をサンディスクと共同開発する。第10世代 (332層) QLC、第9世代 2Tb QLC の技術発表は両社連名 (2026年8月) kioxia.com
- スマートファクトリー
- 両社は AI を活用したスマートファクトリーと規模の利点で先端 3次元フラッシュメモリの安定生産を進めると説明。四日市は6棟を棟間搬送でつなぐ統合生産 kioxia.com
- 免震・省エネ
- 北上第2製造棟は免震構造、省エネ設備、再生可能エネルギーの利用。四日市・北上で大規模な自家消費型の太陽光発電を進める ssl4.eir-parts.net
- 製造ノウハウの帰属
- 工場の運営と製造ノウハウはキオクシアが持ち、サンディスクは対価を払って製造サービスを受ける形に2026年1月の合意で転換 (会社説明) ssl4.eir-parts.net
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 合弁3社 | フラッシュパートナーズ有限会社、フラッシュアライアンス有限会社、フラッシュフォワード合同会社。いずれも三重県四日市市。事業内容は「メモリ製品製造委託及び当社グループ等への製品販売」。キオクシアの議決権50.1% | ssl4.eir-parts.net |
| 契約期間 | 3契約とも2034年12月31日まで | ssl4.eir-parts.net |
| 設備の債務保証 | 合弁3社の設備リース契約について、キオクシアとサンディスクが個別に50%ずつ債務保証。サンディスクが履行できない場合はキオクシアが承継する可能性 (リスク情報) | ssl4.eir-parts.net |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| 生産設備 (前工程製造装置) | 合弁3社が保有・リースする製造設備 | 公表されていない 装置メーカー名は非開示 |
— | 四日市工場・北上工場に設置 |
有価証券報告書: 合弁3社が借り入れやリースで調達し両工場に設置。みずほ東芝リース等から賃借する製造設備の年間賃借料644億5,400万円 A |
| 設備リースの提供者 | 製造設備のリース みずほ東芝リースは非上場 |
みずほ東芝リースほか | — | 日本 | 有価証券報告書の主要な設備の状況 (注) に「みずほ東芝リース株式会社等から賃借している主要な設備」と記載 A |
| 工場の土地 (四日市) | 四日市工場の土地 65万9,281平方メートル 3003 はヒューリックの東証コード |
ヒューリック 信託受益権の譲渡先)、三井住友信託銀行 (受託者 |
3003 | 日本 三重県四日市市 |
有価証券報告書の重要な契約 (セール・アンド・リースバック契約、2024年2月9日) A |
| 加工済みウエハー (合弁の製品) | BiCS FLASH のウエハー 持株会社キオクシアホールディングスの東証コードは285A |
キオクシア 製造受託 |
— | 日本 四日市工場・北上工場 |
有価証券報告書 A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1資金合弁3社は両社からの借り入れとリースで設備を調達。経済産業省の助成 (約929億円と最大1,500億円) は合弁3社とキオクシア・キオクシア岩手が対象企業: キオクシア・サンディスク・経済産業省
- 2製造キオクシアが受託し四日市・北上で前工程を行う企業: キオクシア・キオクシア岩手
- 3引き取り合弁3社からキオクシアとサンディスクへ50%ずつ販売。合弁経由のサンディスク向け売上は「その他」区分に計上企業: サンディスク
- 4対価製造サービスの対価として2026〜2029年に計11億6,500万ドルをサンディスクが支払う企業: サンディスク
- 5終了時の規定契約違反などの解約事由ではサンディスクの持ち分 (設備の残存簿価を反映) をキオクシアが買い取る可能性。2034年以降の継続と条件は未定企業: キオクシア・サンディスク
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1前工程 (共同生産)合弁の設備を使い、四日市の6棟と北上の2棟で BiCS FLASH のウエハーを加工設備・企業: キオクシア (運営)
- 2設備移管フラッシュフォワードの四日市の協業と設備を北上工場へ順次移管中設備・企業: フラッシュフォワード
- 3増強2026〜2028年度に年平均約4,700億円 (キオクシア分) の設備投資。北上第2製造棟と四日市第7製造棟の空きスペースを埋め、2029年度に北上第3製造棟の稼働を目指す設備・企業: キオクシア・サンディスク
💴 販売価格と補助金
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 製造サービスの対価 (サンディスクからキオクシアへ) | 11億6,500万ドル (2026〜2029年の分割払い)。ウエハー1枚当たりの価格は公表されていない | 2026-01-30 | kioxia.com |
| 項目 | 額 (円) | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 経済産業省 特定半導体生産施設整備等計画 (2022年7月認定) | 四日市第7製造棟に最大約929億円。事業者はキオクシアと合弁3社 | kioxia.com | |
| 同 (2024年2月認定) | 四日市・北上に最大1,500億円。事業者はキオクシア・キオクシア岩手と合弁3社 | kioxia.com |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 該当なし (2社間の合弁) | 第三者が利用できるサービスではない。キオクシアの NAND・SSD を買うには法人窓口 (特約店・販売子会社) を使う | kioxia.com |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 契約の保守・更新 | 2034年12月31日の期限後に合弁を続けるか、どの条件にするかは未定 (有価証券報告書) | ssl4.eir-parts.net |
| 運営上の留意点 | 合弁の運営では両社が対等の権利義務を持ち、サンディスクは競合でもあるため、方向性が食い違うと意思決定に時間がかかるリスクをキオクシアは記す | ssl4.eir-parts.net |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 米国 (サンディスク向け) | 合弁3社からサンディスクへ生産量の半分を販売。2025年3月期のサンディスクグループ向け売上は1,986億円 (全社の11.6%)。2026年3月期は10%未満で非開示 | ssl4.eir-parts.net |
| 日米関係 | 両社は約5兆円の投資計画を日米経済協力の事例と位置づけ、日本政府の経済政策に沿うと説明 (2026年8月27日) | kioxia.com |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | サンディスクグループ向け売上高 | 1,986億円 | 円 | 全社売上の11.6%。2026年3月期は10%未満のため非開示 | ssl4.eir-parts.net |
| 2026年3月期 | その他売上高 (合弁経由のサンディスク向けを含む) | 2,150億円 | 円 | SD カード・USB メモリも含む | ssl4.eir-parts.net |
| 2026〜2029年 | 製造サービスの対価 (サンディスクから) | 11億6,500万 | ドル | 分割払い | kioxia.com |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 合弁3社の設備の帳簿価額 (キオクシア持ち分) | 2,519億9,000万円 (2026年3月末、日本基準) | ssl4.eir-parts.net | |
| 合弁3社の設備の年間賃借料 | 644億5,400万円 (みずほ東芝リース等) | ssl4.eir-parts.net | |
| 2032年までの投資見込み | 約5兆円 (310億ドル超、両社合計、政府支援が前提) | kioxia.com | |
| ビット生産量シェア (両社合計) | 29% (米調査会社テックインサイツ、2025年4月〜2026年3月) | ssl4.eir-parts.net |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
この合弁はキオクシアの生産体制そのものであり、単独で工場を持つ競合とは資本効率の計算が異なる。両工場の能力の約80%を合弁で分け合い、合弁の生産量は両社が50%ずつ引き取る。2026年1月の見直しで、サンディスクが製造サービスに11億6,500万ドルを払う形へ変わったのは、工場運営の価値を対価に変えた点で意味が大きい。2034年12月までの契約期限と、その後の継続が未定である点は、2029年度以降の新棟投資の判断と重なる。経済産業省の助成も合弁3社を事業者に含み、約5兆円の投資計画は政府支援を前提に置く。サンディスクが競合でもあるという構造上の利害の対立は、有価証券報告書もリスクとして明記する。次の節目は、2029年度稼働を目指す北上第3製造棟を合弁の枠組みに入れるかどうかの判断だ。
公表されていないこと
- 合弁3社それぞれの生産能力・ウエハー枚数は公表されていない
- 11億6,500万ドルの年ごとの支払い額と会計処理の区分は公表されていない
- 北上第3製造棟が合弁の対象になるかは公表されていない
- 2034年12月以降の合弁の継続と条件は未定
- 合弁3社が使う製造装置のメーカーは公表されていない
出所
- キオクシアホールディングス 有価証券報告書 2026年3月期 (2026-06-24)
- 四日市工場における合弁会社の契約期間延長について (2026-01-30)
- キオクシアとサンディスク、日本で約5兆円を投資 (2026-08-27)
- サンディスクコーポレーションとの投資計画に関するお知らせ (適時開示) (2026-08-27)
- 北上工場 新製造棟 (K3棟) の建設について (2026-08-27)
- 北上工場第2製造棟において第10世代3次元フラッシュメモリの生産を開始 (2026-07-03)
- 業界最高のビット密度を実現する新しい3次元フラッシュメモリ技術を発表 (両社連名) (2026-08-04)
- 特定半導体生産施設整備等計画の認定について (2024年) (2024-02-06)
- 四日市工場の特定半導体生産施設整備等計画の認定について (2022年) (2022-07-26)
- 連結子会社間の合併に関するお知らせ (キオクシア岩手) (2026-10-30)
- Investor Day 2026 質疑応答集 (2026-06-02)
- 法人のお客様向け製品のお問い合わせ (2026-10-01)
出所との照合日: 2026年11月1日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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