規模の感覚をつかむのに、電力ほど適した単位はない。最新の大規模な施設は、1か所で1ギガワットの受電容量を消費する設計になっている。ニューヨーク市全体の消費がおよそ5.5ギガワットだから、この規模の施設が5つ建つごとに、ニューヨーク市がもう1つ系統に加わる計算になる。

施設を成立させる要素は4つに分けられる。建設そのもの、それを支える産業機械、内部で動く計算設備、そして電力である。加えて、施設を保有あるいは賃借して利用者に役務を提供する側がいる。

本稿は、この構造を歴史と物理の2つの面から解剖する。なぜ世界最大の集積地が北バージニアなのか。1990年代に同じ形の建設競争が起きたとき何が残ったのか。そして、演算装置1台あたりの電力が上がり続けているにもかかわらず、1ペタフロップスあたりの電力はむしろ下がり続けているという、報じられ方と逆の事実を数字で確かめる。株価や資金調達の数字は扱わない。扱うのはメガワット、キロワット毎ペタフロップス、そしてボルトである。

AIデータセンターの構成要素
AIデータセンターの構成要素

世界最大の集積地は、1969年の結線が残った結果である

最初期の計算機は、いまのデータセンターとよく似た形をしていた。計算量の多い重要な課題を解くために、1か所に集中させた計算機。その典型が2つある。

1つはコロッサスで、暗号機エニグマの解読のために英国で作られた。設計に関わったアラン・チューリングは、計算機科学と人工知能の双方で始祖に数えられる人物である。もう1つがエニアックで、第2次世界大戦中に米軍の要請で設計され、完成は1946年になった。コロッサスのほうが先に動いていたが、機密扱いだったため、長らくエニアックが最初の計算機とされてきた。どちらも、最初のデータセンターと呼びうる建物に収められていた。

1950年代に入ると大型汎用計算機で国際事務機器が台頭し、通信の側では米国電話電信が並び立つ構図になる。そして1969年、増え続ける計算機どうしを結ぶ目的でアーパネットが公開された。いまの通信網の最初の形にあたる。

ここに、現在まで効いている偏りが生まれた。アーパネットは政府の事業だったため、結線が最も密になったのは首都ワシントン周辺だったのである。以後、新しい世代の施設が建つたびに、事業者は既存の設備が使える場所を選んだ。その場所が北バージニアだった。

結果として、この地域はいまも世界最大の集積地であり続けている。2023年の調査では2,552メガワット。2位の北京が1,799メガワットだから、1.4倍の開きがある。日本では東京が865メガワットで6位前後、大阪が241メガワットで続く。

そして皮肉なことに、この蓄積がいま制約に変わっている。同じ調査は、地域の電力会社が変電所へ十分な電力を配れないため、計画中および建設中の案件が遅れる可能性を注記している。1969年の結線の偏りが集積を生み、その集積が受電の限界を先に叩いた。

集積地の成り立ちと、現在の分布
集積地の成り立ちと、現在の分布

1990年代の光ファイバーが教えていること

1990年代、通信量の増大を見込んで通信事業者が大規模な設備投資を行った。この時期の投資額の推移は、いまのAI関連の建設競争と形がよく似ている。1991年を1とすると、2000年の頂点はおよそ3.5倍。そこから2年で半分以下まで落ちた。

ここまでは、よく引かれる話である。掘り下げる価値があるのは、そのあとに物理的な設備がどうなったかだ。

この期間に北米と欧州で敷設された光ファイバーは、8,000万から9,000万マイル規模とされる。だが2001年の時点で、そのおよそ95パーセントは光が通っていない状態、いわゆる暗いままの回線だった。4年後の2005年末でも、なお85パーセントが暗いままである。

需要の予測が誤っていたわけではない。1998年の事業者が2001年に来ると見込んだ通信量は、実際には2008年に到達した。行き先の読みは正しく、時期の読みが7年ほどずれた。

そして重要なのは、この設備が破棄されなかったことである。資本は消えたが、ガラスは地中に残った。帯域の価格が崩れたことで、遠隔地に計算資源を置いて回線越しに使うという形が、はじめて採算に乗るようになる。2006年に商用のクラウドが登場し、以後の成長が始まるのは、この安くなった回線があったからだ。

投じた資本を失った側と、残った設備を安く使う側は、別の主体だった。この構図が、いまの建設競争の曲線を延長するときに置いておくべき条件になる。設備が過剰かどうかと、そこに投じた資本が回収できるかどうかは、別の問いである。

1990年代の建設競争で、何が消えて何が残ったか
1990年代の建設競争で、何が消えて何が残ったか

伸びの曲線を、2つの尺度で押さえる

現在の見通しを、米国の受電容量と世界の電力量という2つの尺度で確認する。

米国では、施設の消費電力が2014年のおよそ7ギガワットから2030年に35ギガワット前後へ向かう見通しが示されている。伸び率は一定ではない。初期の年率13.0パーセントから、11.9パーセント、9.6パーセント、8.7パーセントへと段階的に落ちる形で描かれている。指数的な増加ではなく、減速しながら伸びる曲線である。

内訳の変化のほうが、構造としては大きい。2014年に7パーセント前後だった超大規模事業者の割合は、2030年に3割強まで上がる。同居型の施設も比率を伸ばし、一般企業が自前で持つ設備の比率は大きく下がる。計算資源の所有が、利用する組織から運用に特化した組織へ移っていく流れが、電力の配分にそのまま出ている。

世界の尺度では、施設全体の年間消費電力が2030年に1,500テラワット時前後へ向かう見通しが基準として置かれ、世界の発電量に占める割合は2010年のおよそ0.5パーセントから4.5パーセント前後へ上がる。ただしこの推計には、AIの影響が限定的な場合、基準の場合、加速する場合の3本の線が引かれており、2030年の値は基準で1,500テラワット時前後、加速する場合で2,100テラワット時前後、限定的な場合で700テラワット時強と、3倍近い開きがある。

幅がこれだけ広いこと自体が、この分野の見通しの性質を表している。単一の数字を引用する使い方は、この推計の作りに合わない。

電力の伸びを、米国と世界の2つの尺度で見る
電力の伸びを、米国と世界の2つの尺度で見る

受電口から筐体まで、建屋の中を順にたどる

物理的な作りを、電気が入ってくる側から追う。ここは日本の報道でほとんど図解されない部分になる。

系統の側では、発電所で作られた電気がまず変圧器で昇圧される。長い距離を送るときに、電圧が高いほど電流が小さくなり、電線での損失が減るからだ。送電線で目的地の近くまで運ばれると、変電所の変圧器で降圧され、配電線に移る。最後にもう一度降圧されて、需要家の設備に入る。この送電と配電の全体が、日常で系統と呼ばれているものにあたる。

施設の敷地に入ると、構成はこうなる。高圧の受電が二重に引き込まれ、それぞれが受電盤に入る。片方が落ちても止まらないようにするための冗長化で、この二重化が建設費の相当部分を占める。受電盤には自動切替開閉器が組み込まれ、外部からの受電が途切れた瞬間に、非常用の発電機側へ切り替える。多くの施設が軽油の発電機を備えているのは、この切り替え先としてである。

ただし発電機は起動から出力の安定まで時間がかかる。その空白を埋めるのが無停電電源装置と、それにつながる蓄電池の列である。切替の数十秒から数分を蓄電池が支え、その間に発電機が立ち上がる。ここまでが電力の側の骨格になる。

そこから電力分配装置を経て、配線が筐体に届く。冷却の側は別系統で、冷凍機、乾式冷却器、空調機が並び、熱を建屋の外へ運ぶ。演算装置を収めた筐体では、この冷却が空気ではなく液体になりつつある。

受電口から筐体まで、そして系統の側の作り
受電口から筐体まで、そして系統の側の作り

演算装置8個をつなぐ内部の結線が、価値の重心を移した

筐体の中身を見ると、なぜ通信の部品が独立した層として重みを持つようになったかがわかる。

代表的な構成では、汎用処理装置が2個、演算装置が8個。演算装置どうしは専用の交換器で相互に結ばれ、外部との通信には専用の通信カードが演算装置ごとに割り当てられる。記憶装置は高速な不揮発性の規格で接続され、汎用処理装置との間には分岐用の交換器が入る。

配線の本数を数えると、構図がはっきりする。演算装置8個は交換器を介して互いに直結し、そこに1個ずつ通信カードが張り付く。汎用処理装置は、この網の外側で分岐器を通じて周辺機器を束ねる役割に退いている。

処理を汎用処理装置から演算装置へ肩代わりさせる設計が広がったことで、汎用処理装置は仕事の割り振りに近い役割へ移った。代わりに重みが増したのが、演算装置どうしを結ぶ帯域と、筐体をまたいで結ぶ帯域である。学習では大量のデータを繰り返し動かすため、演算そのものより、運ぶ経路の太さが速度を決める場面が増える。

背景には、半導体の集積度の向上が鈍ってきたという事情がある。1個の半導体の性能を上げにくくなったぶん、部品どうしの距離を縮めて系全体として速くする方向に設計が移った。筐体を1つの計算機として設計し、さらに複数の筐体を束ねて1つの単位として設計する。施設そのものを1つの計算機として設計するという発想も、同じ流れの延長にある。

加速器の設計は、この制約に対して十数社が別々の賭けをしている状態にある。ウェハー1枚を丸ごと1個の半導体として使う方式、実行時間を決定的にして待ちを減らす方式、トランスフォーマーの構造を回路に焼き込む方式、データの流れに沿って演算器を並べる方式、記憶の直近で演算する方式、開かれた命令規格を土台にする方式。いずれも、演算器を増やすだけでは速くならないという同じ壁に対する、別々の回答になっている。

筐体の内部結線と、加速器の設計の分岐
筐体の内部結線と、加速器の設計の分岐

効率は6.5倍になった ― それでも系統が詰まる

ここが本稿の中心になる。報じられ方と実際の数字が、最も食い違う場所である。

演算装置を収めた標準的な構成について、世代ごとの最大消費電力と演算性能を並べる。前々世代は6.5キロワットで5ペタフロップス。前世代は10.2キロワットで32ペタフロップス。現行世代は14.3キロワットで72ペタフロップスになる。

1台あたりの消費電力だけを見れば、6.5から14.3へ、およそ2.2倍に増えている。系統への負荷が増えたという話は、この数字から出てくる。

だが1ペタフロップスあたりに割り戻すと、逆の絵になる。前々世代が1.30キロワット、前世代が0.32キロワット、現行世代が0.20キロワット。電力の原単位は6.5分の1に改善している。前世代は前々世代に対し、電力が1.5倍で演算が7倍。現行世代は電力が2.2倍で演算が14.4倍。どちらの世代交代でも、演算の伸びが電力の伸びを大きく上回った。

系統が詰まっているのは、半導体の効率が悪化したからではない。効率は、工業製品としては異例の速さで改善している。それでも総量が増えるのは、単位あたりが安くなるほど使う量が増えるからだ。効率の改善が消費の減少ではなく増加を招く現象は、19世紀の石炭の議論から知られている。

この整理には、実務上の含みが2つある。1つは、より効率の良い半導体を待っても系統の逼迫は解けないということ。世代交代のたびに原単位は下がるが、1台あたりの消費と総設置台数は増える。もう1つは、電力を評価軸に置くなら、施設の総消費ではなく1ペタフロップスあたりで比べなければ、設備の良し悪しを判定できないということである。

電力の原単位は下がり、絶対量は上がる
電力の原単位は下がり、絶対量は上がる

詰まりを解く手立てを、効き目の順に並べる

制約を外す方向で、いま実際に動いているものを整理する。

最も地味で、最も広く効くのが許認可の処理である。施設と電力設備の建設には、建築、環境、用途地域、騒音などの許可が要り、地方、州、国の各段階で審査を通す必要がある。取材の場で繰り返し障害として挙がるのがここだと、原文の筆者も記している。設備の増強より前に、書類の処理速度が全体を縛っている。この工程を自動化する事業が成立しはじめているのは、そのためだ。

次が、系統を経由しない受電である。系統の増強を待てない場合、事業者は敷地の内側で電源を作る。ある事業者はインディアナ州の敷地について、太陽光の発電所を4か所と風力の発電所を建て、合計600メガワットを自前で賄う構成を採った。

中長期では、原子力と長時間の蓄電が焦点になる。原子力の利点は明確で、二酸化炭素を出さず、天候に左右されない出力が得られる。課題は、採算の取れる形でどう建てるかに集約される。蓄電のほうは、太陽光と風力が持つ出力の不安定さを埋める役割を担う。余っているときに貯め、足りないときに出す。この時間をどこまで延ばせるかが、再生可能電源をどこまで基幹に使えるかを決める。

冷却では、液体による方式が現行世代の前提になり、次の世代では機器ごと液体に浸す方式が視野に入っている。熱の出方が変わった以上、建屋の設計そのものが変わる。

曲線を延ばすときに、置いておくべき条件

施設が大きくなる話自体は新しくない。2001年に数メガワット、2010年代に50メガワット、2020年に120メガワットで巨大と呼ばれ、いまギガワットの単位になった。同じ見出しが数年ごとに繰り返されてきた。

新しいのは、密度と設計の思想である。個々のサーバーを部屋に並べるのではなく、施設全体を1つの計算機として設計する。半導体の集積度で稼げなくなったぶんを、距離を詰めることで取り返す。その結果として消費電力が増え、熱が増え、冷却の要求が上がった。

そして電力の原単位は、その間ずっと下がり続けている。上がっているのは総量だけである。この2つを分けずに議論すると、効率の改善を待てば解決するという誤った期待にも、効率が悪化しているという誤った診断にも、どちらにも転びうる。

1990年代の光ファイバーは、行き先の読みは正しく、時期の読みが7年ずれた。その7年のあいだ、地中のガラスは95パーセントが暗いままだった。それでも設備は残り、次の時代の土台になった。いまの建設競争の曲線を延ばすときに、この前例が置いておくべき条件を示している。

本記事は、AIデータセンターの構成要素を整理した原文の解説を出発点に、演算装置を収めた構成の世代別の消費電力と演算性能(Jon Peddie Research)、1990年代の光ファイバー敷設とその後の利用率(The Bubble Bubble)、施設の電力消費に関する各種の見通し、および集積地ごとの受電容量の調査を突き合わせて検証・構成した。1ペタフロップスあたりの電力の倍率、世代間の電力と演算の伸びの比、および1991年を1とした投資額の指数は、公表値から本稿が算出した。集積地の受電容量は2023年の調査値である。株価や資金調達など市場の数字は本稿の対象外とした。