日本企業は海外で稼ぐが、海外の企業は日本にあまり投資してこなかった。対日直接投資残高は2025年末で名目GDPの5.1%にとどまり、主要7か国の最下位にある。財務省とOECDの統計で数え方を3通りに変えても、順位は動かなかった。
日本は自国企業による海外での事業活動、つまり対外直接投資は活発だが、他国の企業による日本での事業活動である対内直接投資が非常に少ない国として知られてきた。対内直接投資の残高を国内総生産 (GDP) と比べると、日本は5%程度で推移し、他の主要先進国と比べて極端に低い。他の国は対外と対内の双方が相応の水準にあり、企業活動のグローバル化が双方向で進んでいる。日本は「対外純資産が世界一」と言われてきたが、それも対外に偏ったこの不均衡に支えられてきた面が大きい。
本稿は、財務省の本邦対外資産負債残高と国際収支統計、経済協力開発機構 (OECD) の直接投資統計を2026年9月21日に取得し、数字を1つずつ測り直した。5.1%という数字そのものは統計で確かめられる。ただしこれは、3つある数え方のうち最も小さく出るものだった。
対内直接投資残高のGDP比は、日本が2024年に5.18%で主要7か国の最下位だった
OECDの直接投資統計で、対内直接投資残高の対GDP比を主要7か国について並べた。2024年はカナダ81.94%、英国72.25%、米国39.87%、フランス31.25%、ドイツ26.54%、イタリア20.63%、日本5.18%である。
日本の比率は2005年に2.1%、2008年に4.0%、2020年に4.9%、2022年に5.3%で、2024年は5.2%だった。20年で2倍以上になったとはいえ、2%前後から5%前後へ上がっただけで、ほぼ横ばいと言ってよい。他の6か国は最も低いイタリアでも20%を超える。
OECDのデータを基にした別の集計は、2024年の値をカナダ81.4%、英国70.9%、米国56.1%、フランス30.6%、ドイツ26.5%、イタリア20.8%、日本5.1%としている。OECDの値と並べると、差は日本−0.08ポイント、ドイツ−0.04ポイント、イタリア+0.17ポイント、カナダ−0.54ポイント、フランス−0.65ポイント、英国−1.35ポイントで、GDPの改定などで説明できる幅に収まる。米国だけが+16.23ポイント離れている。米国の対内直接投資は、OECDが集計の基本とする簿価ではなく時価で評価すると大きく膨らむため、米国の値だけ時価の数字が混じった可能性がある。どの出所の数字を使っても、日本が7か国の最下位であることは変わらない。
5.1%は親子関係原則の数字で、資産負債原則なら8.79%、時価なら10.75%になる
直接投資の残高には、集計の原則が2つある。財務省の直接投資残高 (地域別・業種別) の注記によると、1つは関連会社から親会社への投資を、親会社による投資の回収として差し引く「親子関係原則」、もう1つは差し引かずにそのまま集計する「資産負債原則」である。OECDが国際比較に使う数字は前者にあたる。
違いが大きく出るのは、日本企業の海外子会社が日本の親会社に資金を貸したり出資したりする場合だ。資産負債原則では、これも海外から日本への直接投資として対内の側に数える。親子関係原則では、日本企業による対外直接投資から差し引き、対内には数えない。
財務省の親子関係原則による対内直接投資残高は、2021年末27兆5,389億円、2024年末32兆6,903億円、2025年末34兆54億円だった。同じ原則の対外直接投資残高は2025年末359兆9,783億円で、対内の10.59倍にあたる。一方、財務省が本邦対外資産負債残高で公表する資産負債原則の対内直接投資残高は、2024年末53兆4,790億円、2025年末58兆5,620億円で、1年で9.50%増えた。2つの原則の差は2025年末で24兆5,570億円ある。定義から見て、その多くは日本企業の海外子会社から日本の親会社に戻ってきた資金である。
財務省は参考値として、上場企業の株式を市場価格で評価し直した時価の推計も出している。2025年末の対内直接投資は時価で71兆6,160億円と簿価の1.22倍になり、対外は392兆5,980億円で1.02倍にとどまる。日本に投資した外国企業の持ち分は、日本株の値上がりで価値が膨らんだことになる。
名目GDP (季節調整済み年率の四半期平均) は2024年636.8兆円、2025年666.4兆円である。これで割ると、2025年の対GDP比は3通りに分かれる。
| 集計の方法 | 2025年末の残高 | 対GDP比 |
|---|---|---|
| 親子関係原則 | 34兆54億円 | 5.10% |
| 資産負債原則 | 58兆5,620億円 | 8.79% |
| 時価 (参考値) | 71兆6,160億円 | 10.75% |
2024年は親子関係原則5.13%、資産負債8.40%だった。広く引用される5%程度という数字は、3つのうち最も小さく出る親子関係原則の比率である。時価で測っても10.75%で、主要7か国で次に低いイタリアの20.63%の半分にとどかない。対外と対内の差も、資産負債原則で見ると対外384兆5,350億円に対して対内が58兆5,620億円で6.57倍、時価では5.48倍に縮むが、それでも5倍を超える。2005年末は対外46兆790億円・対内12兆3,770億円で3.72倍だったので、この20年で開きはむしろ広がった。
日本の対外直接投資はOECD加盟国で7番目、対外と対内の差1.82兆ドルは最大だった
対外と対内を並べると、日本の偏りはさらにはっきりする。OECDの2023年の直接投資残高 (親子関係原則) で、日本は対外2.042兆ドル、対内0.223兆ドルだった。対外は加盟国で7番目に多い。対外から対内を引いた差は1.82兆ドルで、2位のルクセンブルク1.111兆ドル、3位のドイツ0.94兆ドルを大きく上回り、比べた35か国で最も大きい。自国の企業が海外へ積極的に投資する一方で、他国の企業が日本にほとんど投資してこなかったことが、この差に表れている。
OECDのデータを基にした別の集計 (単位は兆ドル) は、2023年の対外・対内を次のように示している。米国が対外9.1・対内13.4で差マイナス4.3、オランダ4.7・3.8で差0.9、ルクセンブルク4.0・2.9で差1.1、カナダ2.6・1.8で差0.9、英国2.4・2.8で差マイナス0.4、ドイツ2.3・1.3で差1.0、日本2.0・0.2で差1.8である。続いてフランス1.6・1.0、スイス1.5・1.1、アイルランド1.4・1.4、韓国0.9・0.3、ベルギー0.8・0.6、スペイン0.7・1.0、オーストラリア0.7・0.8、イタリア0.6・0.5、スウェーデン0.6・0.4、オーストリア0.3・0.2、デンマーク0.3・0.2、ハンガリー0.3・0.3、ノルウェー0.2・0.2、フィンランド0.2・0.1、チリ0.1・0.3、ポルトガル0.1・0.2、チェコ0.1・0.2、トルコ0.1・0.2、ポーランド0.0・0.4、ギリシャ0.0・0.1、ニュージーランド0.0・0.1となる。エストニア、リトアニア、スロベニア、ラトビア、アイスランドは0.0・0.0、スロバキアとコスタリカは0.0・0.1だった。
本誌がOECDから取り直した数字は、米国を除けば小数第1位でほぼ一致する。米国はOECDの親子関係原則で対外9.120兆ドル・対内10.072兆ドル、差はマイナス0.952兆ドルで、対内13.4兆ドル・差マイナス4.3兆ドルとは合わない。対GDP比と同じく、米国の対内だけ時価で評価した数字が使われた可能性がある。いずれにしても、日本の差が最大という結論は変わらない。
対外純資産は561兆7,504億円で最高を更新したが、2025年末はドイツと中国に次ぐ3位だった
財務省によると、日本の対外純資産は2025年末に561兆7,504億円で、前年末から4.4%増えた。時事通信によれば7年連続で過去最高を更新した。ただし、日本は2023年末まで世界最大の純資産国だったが、2024年末にドイツに、2025年末に中国に抜かれた。2025年末はドイツ675兆5,374億円、中国636兆3,391億円に次ぐ3位である。
直接投資で見ると、対外の残高が対内を大きく上回る構造が、この純資産を押し上げてきた。「世界一」という評価は、海外で稼ぐ力の証しであると同時に、日本国内に外国企業の資本が入ってこなかったことの裏返しでもある。その世界一も、2025年末の時点ではもう当てはまらない。
直接投資の収益に占める再投資の割合は、2023年の53.8%から2025年に42.8%へ下がった
海外への直接投資から得た収益のうち、配当などとして日本に戻らず現地の子会社に残る分は、国際収支統計で再投資収益と呼ぶ。財務省の第一次所得収支によると、直接投資収益 (収支) は2023年に22兆5,443億円で、うち配当金・配分済支店収益が10兆3,031億円、再投資収益が12兆1,358億円だった。2024年は24兆6,552億円 (配当13兆1,728億円、再投資11兆4,320億円)、2025年は26兆2,050億円 (配当14兆9,844億円、再投資11兆2,150億円) である。
再投資収益の割合は2023年53.8%、2024年46.4%、2025年42.8%になる。対外直接投資からの収益の約半分が現地に留保されるという見方は、2023年には当てはまったが、その後は半分を下回った。配当として日本に戻る分は2023年から2025年に45.4%増えている。ここで使った数字は受取から支払を引いた収支で、対外と対内の収益をまとめて計算している点に注意がいる。
| 年 | 直接投資収益 | 配当金など | 再投資収益 | 再投資の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 22兆5,443億円 | 10兆3,031億円 | 12兆1,358億円 | 53.8% |
| 2024年 | 24兆6,552億円 | 13兆1,728億円 | 11兆4,320億円 | 46.4% |
| 2025年 | 26兆2,050億円 | 14兆9,844億円 | 11兆2,150億円 | 42.8% |
2030年に120兆円の目標には年15.43%の伸びが要るが、2025年の伸びは9.50%だった
政府は2025年6月の「対日直接投資促進プログラム2025」と「経済財政運営と改革の基本方針2025」で、2030年の対日直接投資残高の目標を100兆円から120兆円に引き上げ、2030年代前半のできるだけ早期に150兆円を目指すとした。目標の基になる残高は、ジェトロが2024年末の対日直接投資残高として示す53.3兆円と同じ、資産負債原則の数字である。
資産負債原則の対内直接投資残高は、2014年末の23兆7,480億円から2025年末の58兆5,620億円へ、年8.55%で増えてきた。2025年末から2030年に120兆円に届くには、年15.43%の伸びが要る。2025年の伸び9.50%が続いたとしても、2030年の残高は92.2兆円 (推定) にとどまる。
国内では、台湾積体電路製造 (TSMC) の熊本工場のように、海外の企業が日本に工場を建てる投資が増えてきた。外資の半導体投資の規模と、そこに投じられる補助金の割合は外資の半導体投資6兆6,500億円の内訳で分解した。こうした大型の工場投資は残高を押し上げるが、目標まで年15%を超える伸びを5年続けるには、工場の新設だけでなく、外国企業による日本企業の買収や出資が今の何倍にも増える必要がある。
対日直接投資のGDP比5.1%は、数え方の選び方で8.8%にも10.7%にもなる。ただしどの数え方でも主要7か国で最も低く、対外との差は35か国で最も大きいという結論は動かない。日本の企業が海外で稼いだ資金は、配当として国内に戻る割合を高めつつある。海外の企業が日本で事業を広げる流れがそれに見合うだけ太くならない限り、2030年の目標はもちろん、「対外純資産世界一」という評価の中身も変わらない。
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