世界の決済を担う大手7社のうち、日本発はJCBの1社だけである。JCBの年間取扱高53兆3,901億円をドルに直すと約3,544億ドルで、首位のビザの約40分の1にとどまる。ただし7社の数字は数え方が違う。

クレジットカードが普及した社会で、日本はどこに立っているのか。世界の決済の大きな部分を担う会社として、米国のビザ、マスターカード、ペイパル、アメリカン・エキスプレス、ストライプ、オランダのアディエン、日本のJCBの7社を並べた一覧が出回っている。一覧は、一握りの決済会社が世界の商取引の中心にいて、毎年何兆ドルもの支払いを処理し、何十億の人と企業をつないでいると説明する。本稿は、7社の数字を各社の年次報告書や会社の開示で確かめ、日本の位置を測り直す。

世界の決済大手7社で日本発はJCBだけ、取扱高はビザの約40分の1

一覧の数字は、ビザが決済額14.2兆ドル(2025年度)、取引2,575億件、マスターカードが取扱高10.6兆ドル(2025年)、取引1,755億件で、JCBは取扱高53.4兆円(2025年度)、会員約1億8,190万と並ぶ。

各社の開示と照らすと、マスターカードの年次報告書は2025年のブランド取扱高を10.6兆ドル(15%増)、処理件数を1,755億件としており、一覧と一致する。ビザの年次報告書の処理件数も2025年度(9月まで)で2,575億4,500万件と一致した。一方、ビザの年次報告書の決済額は13兆8,940億ドルで、一覧の14.2兆ドルより小さい。ビザは手数料の算定のため、年次報告書の決済額を6月までの12か月で集計しており、集計期間の違いとみられる。

JCBの会社概要によると、2025年度の年間取扱高は53兆3,901億円(国内外の事業の取扱額の合計、一部推定値を含む)、2026年3月末の会員数は1億8,192万である。2025年4月〜2026年3月の平均の相場(1ドル150.67円、米連邦準備制度の統計)でドルに直すと、取扱高は約3,544億ドルになる。ビザの14.2兆ドルはその40.1倍、年次報告書の13兆8,940億ドルでも39.2倍である。

7社の取扱高
7社の取扱高

図1 — 7社の2025年の取扱高をドルに直した値。色は何を数えた数字かを示す

7社の数字は集計の方法が違い、同じ支払いを2社が数えることもある

一覧は7社を1本の順位に並べるが、数えているものは4通りに分かれる。ビザとマスターカードは、自社のブランドが付いたカードで支払われた額を数える。ビザの年次報告書の決済額の内訳は、個人のクレジットが5兆6,040億ドル、デビットが6兆5,510億ドル、法人が1兆7,390億ドルで、米国が6兆7,880億ドル、米国外が7兆1,060億ドルだった。マスターカードは個人のクレジットが3兆8,780億ドル(全体の37%)、デビットとプリペイドが5兆3,490億ドル(50%)、法人が1兆4,050億ドル(13%)である。

ストライプ、ペイパル、アディエンは、店の代わりに支払いを受け付ける決済代行で、自社が処理した額を数える。ストライプの年次書簡によると、2025年の総決済額は約1.9兆ドルで、世界の国内総生産の約1.6%にあたる。ペイパルの年次報告書では、総決済額は1.79兆ドル(7%増)、決済件数は254億件(4%減)、利用者の口座は4億3,900万だった。アディエンの2025年の処理額は1兆3,943億ユーロ(一覧は1兆3,940億ユーロ、8%増、大口の1社を除くと21%増)、うち店頭が3,110億ユーロ(34%増)である。2025年の平均の相場(1ユーロ1.1306ドル)で直すと約1兆5,764億ドルになる。

アメリカン・エキスプレスは、自社が発行したカードの請求額を数える。年次報告書によると、2025年の請求額は1兆6,700億ドル、自社発行のカードは8,660万枚だった。このほか他社が発行した同社ブランドのカードが6,620万枚あり、その取扱額は2,272億ドルと別に示している。

1回のカード払いの数え方
1回のカード払いの数え方

図2 — 本稿の例。ビザのカードで決済代行を使う店に払うと、ビザと決済代行の両方がその額を数える

ビザのカードでストライプを使うネット店に支払えば、同じ額をビザは決済額に、ストライプは総決済額に数える。JCBの事業紹介によると、同社の加盟店事業は他の国際ブランドのカードも扱っており、JCBの取扱高に何が含まれるかも開示だけでは切り分けられない。7社の数字は足し合わせて世界の占有率にすることはできない(記者の見立て)。

国際ブランドどうしで比べると、JCBの決済網はビザの数%の規模

占有率を正しく比べられるのは、同じ立場の会社どうしである。JCBの事業紹介によると、同社は日本発で唯一の国際カードブランドで、ブランド、加盟店、カード発行、業務の受託の4つの事業を持つ。自らカードを発行し加盟店とも契約する点で、発行と加盟店の契約を銀行などに任せるビザやマスターカードとは形が違い、アメリカン・エキスプレスに近い。

規模の差は、取扱高以外の数字でも同じ向きに出る。ビザの年次報告書によると、決済に使えるカードなどの発行数は約50億、加盟店は1億7,500万か所を超え、現金の引き出しを含む総取扱高は約17兆ドルである。JCBの会員1億8,192万はビザの発行数の3.6%、加盟店の約7,200万店はビザの41%にあたる。ビザは年次報告書で、競合としてアメリカン・エキスプレスやJCBなどを挙げ、地域に集中する例として「日本のJCB」を挙げている。

JCBの2025年度の営業収益は4,662億円、営業利益は494億円、当期純利益は297億円で、従業員は4,472人である。1961年設立の非上場企業で、主要株主には従業員持株会や三菱UFJ銀行が並ぶ。加盟店の数ではビザの4割に届く一方、会員の数は4%に満たない。日本発の国際ブランドは、使える店は世界に広げたが、カードを持つ人の数で米国の2社との差が大きい(記者の見立て)。

日本のキャッシュレス決済は162.7兆円、JCBの取扱高が占めうるのは多く見ても4割

経済産業省が2026年3月31日に公表した統計によると、日本の2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%、決済額は162.7兆円だった。内訳は次の通りである。

決済手段 (2025年)決済額比率
クレジットカード134.6兆円82.7%
コード決済16.6兆円10.2%
電子マネー6.0兆円3.7%
デビットカード5.5兆円3.4%

国際比較の指標では46.3%で、政府は2030年に国内指標で65%、将来は80%を目指す。2025年の平均の相場(1ドル149.57円)で直すと、日本のキャッシュレス決済は約1兆878億ドル、うちクレジットカードは約8,999億ドルになる。日本全体のキャッシュレス決済額は、ペイパル1社の総決済額1.79兆ドルを下回る。

JCBの取扱高53兆3,901億円を日本のクレジットカード決済134.6兆円で割ると39.7%になる。JCBの数字は海外の取扱いを含み、年度も暦年とずれるため、これは上限の目安で、国内の実際の比率はこれより低い(推定)。日本はクレジットカードで年134.6兆円が動く市場だが、その支払いの多くは日本発ではない国際ブランドの決済網を通る(記者の見立て)。

日本は決済の大きな市場だが、決済網の担い手としては1社にとどまる

世界の決済大手7社で日本発はJCBだけで、年間取扱高はビザの約40分の1、会員の数ではビザの発行数の3.6%である。7社の数字は数え方が違い、足し合わせて占有率にはできないが、同じ国際ブランドどうしで比べても規模の差は変わらない。日本はクレジットカードで年134.6兆円、キャッシュレス決済全体で162.7兆円が動く市場でありながら、その支払いを通す国際ブランドの担い手としてはJCBの1社にとどまる。

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