宮古島の最大電力は3年で63,997kWから76,891kWへ20%増えた。沖縄電力はその晩のピークを新しい発電機でなく蓄電池12,000kWで埋め、発電設備の一覧に並べて数えている。本土の蓄電所とは別の物差しで読む必要がある。
沖縄電力が2025年7月30日に営業運転を始めた宮古第二発電所供給用蓄電池は、発表文の中でディーゼル発電機7台、ガスタービン発電機3台と並べて数えられ、宮古島系統の総発電容量は106,000kWになった。2021年11月の時点で同じ系統は11台の発電設備、99,500kWで供給を担っていた。4年で発電機が1台減り、蓄電池が1台分として加わった計算になる。発電機の代わりに蓄電池を数える島の物差しは、需給調整市場で稼ぐ本土の蓄電所を測る物差しとは別物で、蓄電池をどの数字で値付けするかがそこで分かれる。
沖縄電力は蓄電池12,000kWをディーゼル7台・ガスタービン3台と同じ列に数え、総発電容量を106,000kWとした
発表文の設備概要は、電池種類がリチウムイオン電池、定格出力12,000kW、定格容量48,000kWh、電池コンテナ20台 (製造は中国のゴーション・ハイテク)、パワーコンディショナー出力2,750kVA×5台 (富士電機製)、発注先はネクステムズである (沖縄電力、2025年7月30日、取得日2026年9月13日)。導入の目的は「宮古島系統における電力需要増および今後予定されている既設発電設備廃止後の供給力確保」と書かれ、蓄電池は「供給力対策としては当社初」と位置づけられている。
総発電容量106,000kWの内訳は、複数の発表文を突き合わせると復元できる。2024年6月17日の導入発表に添えられた宮古第二発電所の設備一覧は、1号機10,000kW (1983年2月運転開始)、2号機10,000kW (1990年6月)、3号機10,000kW (1994年5月)、4号機10,000kW (1997年6月)、5号機15,000kW (2014年4月)、6号機12,000kW (2021年10月)、7号機12,000kW (2021年10月) の7台、合計79,000kWを示す。有価証券報告書の内燃力発電所の一覧も、宮古第二の認可出力を79,000kWと記す (第54期、2026年3月31日現在)。ガスタービン3台は宮古発電所の1〜3号機で各5,000kW、総出力1.5万kWである。79,000kWと15,000kWを足した94,000kWに蓄電池の12,000kWを加えると106,000kWになり、発表文の数字と一致する。
2021年11月1日の発表は、6・7号機の運転開始で「合計11台の発電設備 (総設備容量99,500kW)」になったと書いていた。2025年7月の10台94,000kWとの差は1台5,500kWで、2010年時点に21,500kWあった旧宮古発電所のディーゼル機の最後の1台分に当たる (記者の計算)。6・7号機は川崎重工業の川崎-MAN 12V51/60DF型で、重油と天然ガスの両方を燃やせる二元燃料機関を事業用として国内で初めて採用した設備である。つまり宮古島の発電機は、老いた重油機を減らしながら新しい機関で置き換える途上にあり、その置き換えの列に今回、蓄電池が加わった。次に廃止される候補は1983年から1997年に運転を始めた1〜4号機の40,000kWで、発表文が繰り返す「既設発電設備廃止後の供給力確保」はこの4台を指すと読める (記者の見立て。沖縄電力の2026年度供給計画の概要には宮古島の廃止計画は載っていない)。
最大電力は14年で約54%増え、太陽光30,000kW超が発電機の担うピークを晩の4時間へ移した
宮古島市は沖縄本島の南西約300kmにあり、宮古島・池間島・来間島・大神島・伊良部島・下地島の6島、面積約204km2、世帯数約30,931世帯、人口55,490人 (2025年5月末) の系統である。最大電力は2024年度で76,891kWだった。同じ発表文の書式で2021年11月には63,997kW (2021年度)、世帯数約28,750世帯、人口55,488人と記されていた。人口がほぼ横ばいのまま最大電力が3年で20.1%増えた。2010年10月の発表では「宮古島の系統需要は最大で約50,000kW」、世帯数約23,000・人口約55,000であり、14年で約54%の増加になる。人口の変わらない島で需要を押し上げているのは、発表文が挙げる観光客数と世帯数の増加である。
需要の増え方より、蓄電池の設計を決めたのは太陽光の入り方だった。2024年6月17日の発表は、家庭などに置かれた太陽光 (固定価格買取制度) の連系増加によって「当社発電設備が担う需要のピークは晩 (18時〜22時) の限られた時間に発生している」と説明する。宮古島のエリア需要のピーク自体は13時〜14時にあるが、その時間は太陽光の出力も上がるため、発電機の稼働は抑えられる。沖縄電力の事業計画は、宮古島に30,000kWを超える太陽光が接続されていると記す。最大電力76,891kWの系統で、昼のピークの4割近い規模の太陽光が発電機の仕事を昼から晩へ押し出している。
蓄電池の定格は、この晩の4時間から逆算されている。定格出力12,000kWは「曇天などで太陽光が発電しなかった場合でも日中のエリア需要のピークを賄える供給力」として、放電可能容量は「晩ピークの4時間を賄えるよう定格出力の4時間放電可能な量」として12,000kW×4h=48,000kWhに決められた。運用は、日中にディーゼル発電機と太陽光から充電し、晩のピークに放電する。発電機との比較でも「環境性はもとより、経済性や運用性を含めて優位性が見込める」とされ、当初2027年の運転開始予定を「急激な需要の伸びが想定される」として2025年5月へ前倒しした。実際の営業運転開始は2025年7月30日で、計画に対して2か月遅れた。計画時にパワーコンディショナー出力2,590kVA×5台とされていた仕様は、完成時に2,750kVA×5台へ変わっている。
同じ島の蓄電池は2010年にはNAS電池4,000kWで再エネの変動を平らにし、2025年には供給力として置かれた
宮古島に蓄電池が置かれたのは今回が初めてではない。2010年10月15日、沖縄電力は資源エネルギー庁の離島独立型系統新エネルギー導入実証事業として「宮古島メガソーラー実証研究設備」の設置を終えた。太陽光4,000kWに対し、系統安定化装置としてナトリウム硫黄電池 (NAS電池) 4,000kWとリチウムイオン電池200kWhを組み合わせ、2014年3月まで実証を行った。試験項目は「太陽光発電の急峻な出力変動を平滑化するための制御機能」「太陽光発電と蓄電池との組合せによる周波数調整機能」で、当時の太陽光の導入比率は最大需要の8%だった。
15年前の蓄電池は、太陽光の揺れを吸う装置として発電機の隣に置かれ、供給力には数えられなかった。2025年の蓄電池は、太陽光が昼を賄うようになった結果として空いた晩の4時間を埋める供給力として置かれ、発電機の列に数えられた。同じ島で、蓄電池の役割が「再エネの相棒」から「発電機の代替」へ移ったことが、2つの発表文の書き方の違いに出ている。来間島 (宮古島市) では2022年1月に太陽光と蓄電池だけで非常時に自立供給するマイクログリッドも構築されており、沖縄電力・宮古島未来エネルギー・ネクステムズが参加した。宮古島は、蓄電池の役割が段階を追って変わる過程を1つの系統で見せている。
有価証券報告書の充電電力量は年4百万kWhで、48,000kWhの蓄電池が毎日満充電で回る量ではない
蓄電池が「市場で稼ぐ設備」なら、毎日充放電を繰り返して電力量を売る。「供給力」なら、必要な晩に放電できる状態を保つことが仕事で、動いた電力量は少なくてよい。どちらの使われ方かは、沖縄電力の有価証券報告書の供給実績から読める。第53期 (2024年4月〜2025年3月) の「蓄電池の充電電力量」は△3百万kWh (前年同期比167.1%)、第54期 (2025年4月〜2026年3月) は△4百万kWh (同119.8%) である。宮古の蓄電池は第54期のうち2025年7月30日から2026年3月31日までの約8か月動いていた。
48,000kWhの蓄電池を毎日満充電にすれば、8か月 (244日) で約11.7百万kWhの充電が要る。全社の充電電力量の増加分は、四捨五入を考慮しても1百万kWhに満たない。宮古の蓄電池だけの数字ではなく、実証設備や来間島の蓄電池も含む全社の値である点を割り引いても、宮古の蓄電池が毎日満充電で回っていないことは動かない (記者の見立て)。晩のピークに備えて置かれ、必要な日に必要な分だけ動く。この動き方は、需給調整市場の入札に日々応じて収益を積む本土の蓄電所とは逆で、設備の値打ちを「動かした電力量」でなく「置き換えた供給力」で測る根拠になる。
有価証券報告書の設備計画表には、この設備が「宮古第二発電所供給用蓄電池、燃料種別 蓄電池、出力1.4万kW」として載っている (第53期)。発表文の定格出力12,000kWと一致しない1.4万kWは、パワーコンディショナー2,750kVA×5台=13,750kVAを万kW単位で丸めた数字と読める (記者の見立て)。設備の一覧に燃料種別「蓄電池」として発電機と同じ表に並ぶこと自体が、この会社が蓄電池をどう数えているかを示している。
離島の供給は年204億円の差額を制度で埋めており、蓄電池の値打ちは市場収益でなく置き換える発電機の費用で決まる
宮古島を含む離島の電気は、本島より高い費用で作られている。沖縄電力の事業計画 (2023〜2027年度) は、離島供給費用を5年で1,371億円 (年274億円)、離島供給収益を674億円 (年135億円) と見込み、差額の離島ユニバーサル費用を約1,021億円 (年約204億円) と記す。離島ユニバーサルサービスに必要なコストとして697億円という数字も同じ文書にある。この差額は送配電事業の費用として全国の託送料金の仕組みで埋められる制度になっており、離島の発電機を安い設備に置き換えるほど、埋めるべき差額が減る。
沖縄電力にとって蓄電池の経済性の比較相手は、需給調整市場の落札単価ではなく、重油を燃やすディーゼル機の燃料費と更新費である。第54期の重油の払出量は208,096kl (第53期200,933kl)、燃料費は第52期の94,426百万円から第53期の84,585百万円へ減り、うち燃料油費は27,305百万円から21,076百万円へ落ちた。第53期の電気事業の設備投資額は41,574百万円で、自己資金・社債・借入金で充てるとある。第54期の販売電力量は7,206百万kWh、営業利益は92億90百万円 (26.9%増)、有利子負債は2026年3月末で3,202億円である。蓄電池12,000kWはこの規模の会社の設備計画の一部であり、発電機7台・ガスタービン3台の更新順を1つ後ろへずらす装置として扱われている。
本土の蓄電所の収益の型は、本サイトの系統用蓄電所41社ランキングの記事で読み解いた通り、需給調整市場の落札と上限価格に左右される。宮古島の蓄電池にはその収益がない代わりに、置き換える発電機の費用という下限がある。投資家が蓄電池を持つ電力会社を読むときは、その蓄電池がどちらの型かを先に決める必要がある。市場型なら稼働と落札の数字を追い、供給力型なら廃止する発電機の容量と燃料費を追う。宮古島の設備は後者で、蓄電池の値打ちが有価証券報告書の燃料費と設備投資の欄に出る。
台帳は6設備・新規7社を足して48社になり、「蓄電所」と名乗らない設備は見出しの掃引から漏れる
本サイトが転記している系統用蓄電所に名前が出る上場企業の台帳は、送電網に直接つないだ大型の蓄電池のうち、稼働中の設備に一次ソースで名前が出る上場企業を蓄電容量の多い順に並べる。家庭用と自家消費用は入れない。稼働中とは商業運転か電力市場での取引開始を一次ソースで確認できたもので、受電開始や系統連系だけでは数えず、共同事業は出資者と事業者の各社に設備の全量を按分せず計上し、容量が非公表の設備は合算に入れない。2026年9月6日時点の41社版は出典55件を根拠に組まれていたが、電力会社が発電所の構内に置く大型蓄電池を1つの分類としてまるごと取りこぼしていた。9月12日時点の48社版で、その分類から宮古島の設備が入った。
取りこぼした理由は名前にある。沖縄電力の呼び方は「宮古第二発電所供給用蓄電池」で、発表文の題名にも本文にも「系統用蓄電所」という語が出てこない。発表の見出しを日々眺めて拾う集め方では、この設備は掛からない。集計者はこの点を自ら記している。
| 順位 | 企業 (証券コード) | 稼働件数 | 蓄電容量 |
|---|---|---|---|
| 1 | オリックス (8591) * | 1件 | 113MWh |
| 1 | 関西電力 (9503) * | 1件 | 113MWh |
| 3 | ENEOSホールディングス (5020) | 1件 | 88MWh |
| 4 | サーラコーポレーション (2734) | 2件 | 77.12MWh |
| 5 | 東邦ガス (9533) * | 1件 | 69.6MWh |
| 6 | 四国電力 (9507) | 2件 | 65.77MWh |
| 7 | 北海道電力 (9509) | 1件 | 51MWh |
| 8 | レノバ (9519) | 2件 | 48MWh+非公表分 |
| 8 | 出光興産 (5019) | 1件 | 48MWh |
| 8 | 長瀬産業 (8012) | 1件 | 48MWh |
| 8 | 沖縄電力 (9511) | 1件 | 48MWh |
上位11社 (2026年9月12日時点、個人集計「蓄電池おじさん調べ」。*は運転開始が事業者の事前告知ベース)。沖縄電力の48MWhは、出光興産・レノバ・長瀬産業が姫路蓄電所で計上する48MWhと同じ8位に並ぶ。
41社から48社への差分は、本サイトの前回の台帳と今回の一覧を突き合わせると6設備・新規7社に分解できる。新規の7社は北海道電力・沖縄電力・三菱電機・中部電力・東急不動産・アイモバイル・西日本鉄道で、容量が増えた既存の3社は四国電力 (9507、35.8MWh→65.77MWh)、九州電力 (9508、4.2MWh→34.17MWh)、芙蓉総合リース (8424、7.834MWh→37.804MWh) である。この3社と三菱電機の増加分はいずれも北海道石狩市蓄電所29,970kWhの加算で、同蓄電所は九州電力・四国電力・芙蓉総合リース・三菱電機・青木あすなろ建設・WWBが出資する北海道クリーンエネルギー蓄電合同会社が2026年9月10日に商業運転開始を発表した。中部電力の6.096MWhはグループ会社シーエナジーが2026年3月に運転を始めた泉北蓄電所 (出力±1,995kW、コンテナ型2,032kWh×3台) で、東急不動産の4.9MWhは2025年1月に運転を始めたリエネ東松山蓄電所 (2MW) である。東急不動産は全国で340MWの開発を進め、2026年4月には大手7社と特別高圧6物件・174MW・総事業費約300億円の共同事業を組んだ。伊藤忠商事の23MWhと東京センチュリーの3件目は、大阪ガスネットワークの千里供給所に置かれた千里蓄電所 (定格出力11MW、定格容量23MWh、2025年8月20日に商業運転開始を発表) で、これは前回から変わらない。
非公表扱いの2社には、社外に数字がある。西日本鉄道と自然電力の合同会社が福岡県宇美町の早見車庫の遊休地に置いた設備は、日本経済新聞が出力1,920kW・容量4,659kWhと報じ、2024年6月11日から稼働している。アイモバイルの埼玉県比企郡蓄電所は自社発表で2MW/8MWh (2025年7月運転開始目標) である。台帳はいずれも「容量非公表」として合算に入れていない。稼働後の容量が会社の一次ソースで確かめられないものは数字を載せないという規約を、集計者が自分の数字にも当てはめているためで、台帳の数字が小さめに出る方向の保守性である。逆に、7位の北海道電力51MWhには対応する設備が出典60件のどこにも示されておらず、本サイトは未確認のまま台帳の値を転記している。48社のうち容量が合算に乗るのは42社で、非公表の6社 (クラフティア・アイモバイル・多摩川ホールディングス・シーラホールディングス・西日本鉄道・JR九州) には順位がない。
宮古島の蓄電池は、この台帳の中で唯一、電力会社が自社の発電所の構内に供給力として置いた設備である。他の47社の設備の大半は、合同会社や事業会社が市場で充放電して稼ぐために建てた。同じ「稼働中の系統直結の大型蓄電池」という規約に収まりながら、値打ちを測る物差しは2つに分かれる。本土でも古い火力が退くにつれて、蓄電池を発電機の列に数える電力会社は増える。そのとき台帳に入ってくる設備の名前には「蓄電所」が付かず、発表文の見出しには「供給力」が付く。
沖縄電力の宮古島の蓄電池12,000kWは、需給調整市場で稼ぐ設備ではなく、最大電力76,891kWの島でディーゼル発電機の代わりに数えられる供給力である。投資家がこの種の蓄電池を読むべき数字は市場の落札単価ではなく、置き換える発電機の容量と燃料費のほうにある。
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