サーバーなどへの米国の投資が2026年4〜6月期に住宅を抜いたのは、物価を除いた額の上だけだった。データセンターの新設については、ニューヨーク州が法律の成立を待たずに、大規模施設の許可を行政命令で止めていた。

米国で、コンピューターやサーバーを含む情報処理機器への投資が、住宅投資を上回った。米商務省経済分析局の国内総生産の統計で、2026年4〜6月期の実質額は年率で情報処理機器が7,521億ドル、住宅が7,480億ドルとなり、差は41億ドル、わずか0.5%程度だった。予測市場では、年内にどこかの州がデータセンターの新設を止める法律を作る確率が46%で売買されている。前者は投資の勢いを、後者はその勢いを止めうる規制を示す。本稿は、この2つを統計と州の記録で確かめた。

情報処理機器の投資は2026年4〜6月期に初めて住宅を上回り、データセンター建設額とは別の数字である

まず、何と何が比べられているかを確かめる。上回ったのは「データセンターの建設額」ではない。コンピューター、サーバー、周辺機器、通信機器などをまとめた「情報処理機器」への民間の投資である。住宅投資も住宅の売買総額ではなく、新築や改修にかかった額を国民経済計算の決まりで数えたものだ。「米国が住宅よりデータセンターに多くの資金を入れた」と読み替えると、実態を見誤る。

実質額 (物価の変動を除いた額、2017年の価格で連鎖) を四半期ごとに並べると、次のようになる。単位は十億ドルで、季節調整済みの年率である。

四半期情報処理機器住宅
2024年1〜3月498.259796.175
2024年4〜6月511.309792.174
2024年7〜9月529.365782.472
2024年10〜12月530.206790.685
2025年1〜3月598.794788.779
2025年4〜6月615.578778.53
2025年7〜9月628.661764.262
2025年10〜12月680.171760.993
2026年1〜3月739.735745.659
2026年4〜6月752.114748.029

情報処理機器は2年余りで1.51倍になり、住宅は6.0%減った。情報処理機器が住宅を上回ったのは、2026年4〜6月期が初めてである。

前年同期比では情報処理機器が22.2%増え、住宅が3.9%減った。一方が急に増え、もう一方が縮んだことで、大小が入れ替わった。実質の国内総生産の伸びへの寄与は、2026年1〜3月期に情報処理機器が年率0.77ポイント、住宅がマイナス0.30ポイント、4〜6月期はそれぞれ0.16ポイントと0.05ポイントだった。

名目の金額では住宅がなお1.49倍あり、実質の差41億ドルは1回の改定で入れ替わる幅

同じ期を、その時点の金額 (名目) で並べると景色が変わる。2026年4〜6月期の名目の投資額は、情報処理機器が7,948億9,000万ドル、住宅が1兆1,856億8,400万ドルで、住宅がなお1.49倍、差は3,907億9,400万ドルある。前年同期の名目は情報処理機器6,065億1,800万ドル、住宅1兆1,969億1,000万ドルで、伸び率は31.1%増と0.9%減になる。

情報処理機器と住宅投資:実質では逆転、名目では住宅が1.49倍
情報処理機器と住宅投資:実質では逆転、名目では住宅が1.49倍

違いを生んでいるのは物価である。名目を実質で割った物価の水準 (2017年を100とする) は、住宅が158.5、情報処理機器が105.7だった。住宅投資の物価は2017年から58.5%上がり、実質額はその分だけ小さく出る。情報処理機器の物価も前年から7.3%上がっており、うち名目で情報処理機器の50.4%を占めるコンピューター・周辺機器は、115.0と前年の103.7から10.9%上昇した。コンピューター・周辺機器は2026年4〜6月期に名目で4,006億2,900万ドルと前期より4.28%増えたが、実質では3,484億3,000万ドルと2.16%減った。値上がりのため、支出が増えても量は減っている。米商務省経済分析局は、連鎖方式の実質額は内訳を足しても合計に一致しないと注記しており、内訳どうしの大小の比較にも同じ限りがある。

差の小ささにも注意がいる。2026年4〜6月期の実質の差は、7月30日の速報では61億9,800万ドル (情報処理機器7,546億4,800万ドル、住宅7,484億5,000万ドル) だったが、8月26日の2次推計で40億8,500万ドルに縮んだ。1〜3月期は2次推計の時点で差がマイナス12億7,700万ドルとほぼ並んでいたのが、3次推計でマイナス59億2,400万ドルに開いている。2025年以降の各期の改定の幅は、最大で情報処理機器が78億3,000万ドル、住宅が年次改定を含めて108億5,600万ドルあった。住宅の0.55%にあたる今回の差は、次の推計1回で消えてもおかしくない大きさである。

住宅ローン金利は前年より0.38ポイント低く、住宅投資を縮めたのは金利だけではない

伸びの差そのものは本物である。その理由として挙がるのが、借り入れへの依存の違いだ。住宅は借り入れで建てるため金利の影響を受けやすく、手元に現金の多い大手のテクノロジー企業はAIの開発競争を理由に投資を続けられる。この説明に立てば、米国の成長の源は住宅と家計から少数の企業のAI投資へ傾いていることになる。

ただ金利の数字は、この説明の半分しか裏づけない。フレディマックが集計する30年固定の住宅ローン金利は、四半期平均で2025年4〜6月の6.79%から2026年1〜3月に6.11%、4〜6月に6.41%へ下がり、前年同期より0.38ポイント低かった。7〜9月は途中までで6.65%に戻っている。金利が前年より下がった四半期に、住宅の実質投資は3.9%減った。住宅の物価が前年から3.1%上がったことを合わせると、名目ではほぼ横ばいで、量が減った分を値上がりが埋めている。記者の見立てでは、住宅を抑えているのは金利の水準より、高止まりした価格と建設費のほうが大きい。

反対側の企業の投資は、会社の開示でも裏づけられる。本誌がAI向け半導体の出荷の予測を検算した記事で確かめたとおり、アマゾンアルファベット、メタ、マイクロソフトの4社の設備投資は2026年1〜6月に前年同期の1.84倍になった。この投資が収益に結びつけば先行投資として報われ、結びつかなければ過剰な設備と投資の削減が表に出る。この数字だけでは、どちらとも決められない。

ニューヨーク州は法律を待たず、行政命令でデータセンターの新設の許可を止めた

伸びの上限を決めるのは、資金より電力と、建てる場所の許認可になりつつある。データセンターは大量の電力と水、冷却の設備、送電網への接続を要する。データセンターの新設をめぐって最も先に動いたのがニューヨーク州である。

州議会は2026年6月4日、データセンター開発法案 (上院 S10642、下院 A11560) を上下両院で可決した。上院の採決は賛成43・反対17だった。法案は、ピーク時の電力需要が20メガワット以上の施設を「大規模データセンター」とし、施行から1年は州の環境保全局が許可を出さないと定める。州上院の法案記録では、状態は9月21日時点で「上下両院を通過」のままで、知事へ送付された記録は無い。

データセンター新設の停止:州の動きと予測市場
データセンター新設の停止:州の動きと予測市場

ホークル知事は法案に署名せず、7月14日に行政命令第62号を出した。50メガワット以上を使うデータセンターの建設や拡張について、州の環境保全局は裁量で出す許可の審査を保留する。期限は、州の公益事業局が包括的な環境影響評価の最終報告を出すまでで、終わりの日付は決まっていない。製造、研究 (量子計算や生命医学を含む)、教育、医療を主な用途とする施設は対象から外れる。命令は理由として、2026年5月時点で州の送電網への接続待ちに約12ギガワットのデータセンターの需要が並び、2025年だけで8ギガワットを超える分が加わったことを挙げている。

法案と命令は対象の大きさが違う。法案は20メガワット以上を1年止め、命令は50メガワット以上を報告の完成まで止める。法案が成立しないままでも、大規模な施設の許可は7月から実際に止まっている。

法制化の確率46%は州法だけを数え、メイン州の拒否権は1つの地元計画をめぐって出た

46%という確率は、予測市場ポリマーケットの契約「年末までに、どこかの州がデータセンターの一時停止を法律にするか」の価格である。9月21日の「はい」の価格は45.75%だった。決着の条件は州法の成立に限られ、議会の可決と知事の署名など、州の手続きで法律になったものだけを数える。拒否されて発効しない法案は含まない。ニューヨーク州の行政命令は、この条件に当たらない。契約は7月8日に作られ、行政命令の6日前から売買されている。売買額は累計1万6,376ドルで、参加者の少ない市場である。

つまり、この46%は規制が広がるかどうかではなく、法律という形式が年内に整うかどうかの見込みである。ニューヨーク州では、法案が知事へ送付されて署名されるかどうかで決着する。

メイン州では、4月24日にミルズ知事が法案 LD 307 に拒否権を使った。20メガワット以上のデータセンターを2027年11月1日まで止める内容で、成立していれば全米で最初の州法になっていた。知事は拒否の声明で、電気料金の利用者を守り送電網の安定を保つという目的には賛成し、一時停止も適切だとしたうえで、ジェイ町で進む5億5,000万ドルのデータセンター再開発計画を除外していないことを理由に挙げた。建設で800人超、常勤で100人以上の雇用を見込む計画で、知事は「除外があれば署名した」と述べている。止めるかどうかではなく、どこを例外にするかで法案が倒れた。

日本から米国への重電機器は28.6%増え、伸びたのは変圧器ではなく発電機と電動機

AI向けの設備は半導体だけでなく、変圧器、電線、発電設備、空調と冷却、建設設備を必要とし、日本企業にも中長期の需要が及ぶ。ただ「AI関連」という看板では判断できず、確かめる点は米国向けの売上、受注残、価格への転嫁、設備を増やした後の採算の4つである。

このうち米国向けの動きは、財務省の貿易統計で確かめられる。日本から米国への重電機器の輸出は、1〜7月の合計で次のように推移した。

米国向け (1〜7月)2024年2025年2026年2026年の前年比
重電機器の全体2,758.9億円2,795.7億円3,595.8億円(+28.6%)
発電機123.9億円81.9億円242.9億円(+196.6%)
電動機919.3億円834.0億円1,092.5億円(+31.0%)
変圧器26.8億円55.5億円17.7億円(−68.1%)

重電機器は800.1億円増え、そのうち発電機が20.1%、電動機が32.3%を占めた。発電機は前年の2.97倍になっている。一方で変圧器の米国向けは17.7億円と小さく、前年から68.1%減った。変圧器の輸出は大型の案件で月ごとに大きく振れ、2025年は3月と5月に集中していた。記者の見立てでは、変圧器は日本からの輸出で米国の需要に応える品目になっておらず、統計の上で伸びているのは発電機と電動機である。企業ごとの受注残や採算は、この統計からは読めない。

米国の情報処理機器への投資が住宅を上回ったのは物価を除いた額の上のことで、金額ではなお住宅が1.49倍あり、41億ドルの差は次の改定で入れ替わりうる。確かなのは伸びの差であり、その伸びを抑えにかかっているのは資金ではなく州の許認可である。ニューヨーク州では法律の成立を待たずに、行政命令で大規模なデータセンターの許可がすでに止まっている。

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