東証が進めるTOPIXの見直しで、構成銘柄は1,637から987へ絞られる。ところが下位の650銘柄を合計しても、指数に占める重みは1.56%にすぎない。指数はほとんど動かないまま、痛みだけが小型の銘柄に集まる。

市場区分の再編から4年半、東証が進めてきたTOPIXの見直しは、銘柄を絞り込む段階に入る。QUICKが8月までのデータで試算した最終の銘柄数は987で、現在の1,600余りから4割減る。見直しの段取りを示した図も、第2段階の完了時を980銘柄程度としており、試算とほぼ重なる。日本マクドナルドホールディングスやタイミーなど35銘柄は、逆に新しく入ると見込まれている。この入れ替えが指数と個別の銘柄に何をもたらすのかを、東証が公表しているウエイトと選定ルールで確かめた。確認したのは2026年9月20日である。

外れる650銘柄を全部足しても、指数の1.56%にしかならない

東証が公表する構成銘柄別のウエイト (2026年7月31日基準) をたどると、TOPIXの構成銘柄は1,637で、ウエイトの合計は99.9996%になる。日本経済新聞が伝える「1,600余り」と一致する。

この1,637銘柄をウエイトの大きい順に並べ、上から987銘柄を残すと何が起きるか。残る987銘柄の合計は98.4430%、外れる650銘柄の合計は1.5566%である。銘柄数では39.7%が消えるのに、指数の重みでは1.6%しか動かない。987番目にあたるのは極洋 (1301) で、ウエイトは0.0048%である。なお東証のファクトシートは8月31日時点の構成銘柄数を1,636としており、7月末から1銘柄減っている。上場廃止による目減りは見直しとは別に進んでいる。

TOPIXのウエイトは上位に偏り、下位650銘柄の合計は1.56%にとどまる
TOPIXのウエイトは上位に偏り、下位650銘柄の合計は1.56%にとどまる

偏りは規模別の区分にそのまま出ている。TOPIX Core30の31銘柄が42.274%、Large70の68銘柄が26.113%、Mid400の393銘柄が24.614%を占め、Small 1の484銘柄は5.094%、Small 2の661銘柄は1.904%にとどまる。上位10銘柄だけで23.28%、上位100銘柄で70.11%、上位500銘柄で93.68%に達する。ウエイトが最も大きいのは三菱UFJフィナンシャル・グループの3.97%、次いでトヨタ自動車の2.70%、三井住友フィナンシャルグループの2.62%である。外れる650銘柄は、Small 2の661銘柄とほぼ重なる規模になる。

指数の連続性が保たれるという東証の説明は、この数字の上では成り立っている。見直しの目的について東証は、連続性を確保しつつ市場代表性と投資対象としての機能性を高めることだと述べている。銘柄数が4割減っても指数の水準がほとんど動かないなら、TOPIXに連動する運用は続けられる。

東証が示した残る条件は、累積97%以内と回転率0.14以上の2つだけ

では、どの銘柄が残るのか。東証は次期TOPIXの継続基準を2つの数字で示している。年間売買代金回転率が0.14以上であること、浮動株時価総額の累積比率が上位97%以内であることだ。市場区分は条件に入っていない。プライムにいても外れ、グロースにいても入る。新TOPIXはプライムと同じではない、というのはこの意味である。母集団は内国株式のプライム1,556、スタンダード1,555、グロース596の計3,707銘柄まで広がる。

2つの条件はどちらも定義が細かい。年間売買代金回転率は、定期入替の基準日が属する月より前の直近12か月について、月次の回転率を合計したものである。月次の回転率は、日次の東証の売買立会での売買代金の中央値に営業日数を掛け、月末最終営業日の浮動株時価総額で割って求める。売買代金の平均ではなく中央値を使うため、1日だけ極端に商いがふくらんだ銘柄は救われない。浮動株時価総額の累積比率のほうは、整理銘柄と特別注意銘柄を除き、回転率の条件を満たした銘柄群の中で、浮動株時価総額の大きい順に積み上げた額を、その銘柄群の合計で割った値である。つまり回転率の条件を通らなければ、規模の大小を比べる土俵にすら乗れない。

ここで物差しが変わっている点に注意がいる。第1段階でウエイトを引き下げる対象を決めたのは、流通株式時価総額が100億円未満かどうかという基準だった。流通株式時価総額は上場を維持できるかどうかを見るための数字で、指数の計算に使う浮動株時価総額とは別物である。第2段階は指数側の物差しに統一され、そこへ売買の活発さが加わった。

表1 現行と次期のTOPIXの違い

区分現行次期
母集団プライムとスタンダードの一部全市場区分 (プライム・スタンダード・グロース)
選定の物差し市場区分と流通株式時価総額浮動株時価総額の累積比率と年間売買代金回転率
継続の条件累積97%以内、回転率0.14以上
定期入替年1回 (10月最終営業日、2026年10月以降)
ウエイトの上限10%10% (変更なし)

出所: 東証「TOPIXの見直し」の第1段階と第2段階の説明から作成

この「上位97%」の線を現在の構成銘柄だけに当てると、残るのは764銘柄で、873銘柄が外れる計算になる。外れる873銘柄の内訳はSmall 1が231、Small 2が642である。QUICKの試算987との差223は、スタンダードとグロースから新しく入る銘柄と、母集団が全市場区分へ広がることで説明がつく。母集団が広がれば累積の分母も増え、97%の線に入る銘柄は増えるからだ。ここは記者の試算で、回転率の条件は織り込んでいない。

新しく入る35銘柄はスタンダード23社とグロース12社で、いずれも今はTOPIXにない

日本経済新聞が挙げる35銘柄を東証の上場銘柄一覧で1件ずつ引くと、スタンダードが23社、グロースが12社だった。35銘柄の銘柄コードを構成銘柄別ウエイトの一覧に当てたところ、該当は0件で、いずれも現在のTOPIXには入っていない。

表2 新しく入ると見込まれる35銘柄 (浮動株時価総額は億円)

銘柄コード市場浮動株時価総額
1日本マクドナルドホールディングス2702スタンダード6,917
2フェローテック6890スタンダード4,378
3ナカニシ7716スタンダード1,758
4セリア2782スタンダード1,755
5フクダ電子6960スタンダード1,565
6上村工業4966スタンダード1,532
7東映アニメーション4816スタンダード1,520
8沖縄セルラー電話9436スタンダード1,497
9GO581Aグロース1,459
10ジーエヌアイグループ2160グロース1,373
11トライアルホールディングス141Aグロース1,346
12ワークマン7564スタンダード1,271
13ヨネックス7906スタンダード1,264
14パワーエックス485Aグロース1,151
15精工技研6834スタンダード1,141
16千代田化工建設6366スタンダード1,099
17日本精機7287スタンダード1,069
18MTG7806グロース1,002
19タイミー215Aグロース989
20ヱスビー食品2805スタンダード930
21santec Holdings6777スタンダード919
22アストロスケールホールディングス186Aグロース919
23オンコリスバイオファーマ4588グロース912
24フリー4478グロース906
25日本電技1723スタンダード862
26QDレーザ6613グロース796
27中央自動車工業8117スタンダード784
28ティアフォー593Aグロース761
29Synspective290Aグロース745
30伊勢化学工業4107スタンダード696
31Jトラスト8508スタンダード671
32AIメカテック6227スタンダード671
33テクノ菱和1965スタンダード669
34西川ゴム工業5161スタンダード649
35サン電子6736スタンダード645

出所: 浮動株時価総額と銘柄の並びはQUICKの試算 (8月の平均値)。銘柄コードと市場区分は東証の上場銘柄一覧で記者が照合

35銘柄の浮動株時価総額を合計すると4兆6,621億円になる。ただし中身は平らではない。首位の日本マクドナルドホールディングスが6,917億円で全体の14.8%を占め、2位のフェローテックを加えた2社で24.2%に達する。3位以下は1,758億円以下に収まり、1,000億円に届かない銘柄が17社と半数近い。最小のサン電子645億円は、首位の10.7分の1である。

新しく入る35銘柄の浮動株時価総額と市場区分
新しく入る35銘柄の浮動株時価総額と市場区分

顔ぶれを見ると、この見直しが何を拾うのかが分かる。スタンダードには、千代田化工建設やヱスビー食品、沖縄セルラー電話のように、事業の歴史が長く商いも薄くない会社がいる。市場区分の再編でプライムを選ばなかった会社が、区分を理由に指数から外れていた状態が解消される。グロースの12社は様相が違い、GO、トライアルホールディングス、パワーエックス、タイミー、アストロスケールホールディングス、ティアフォー、Synspectiveの7社は銘柄コードに英字を含む。英数字の銘柄コードは2024年1月から使われており、上場してまだ日が浅い会社が指数に入る道が開いたことを示している。

外れる側には1社あたり平均26.3億円の売りが向かい、東証はそれを8回に分ける

指数がほとんど動かないことと、個々の銘柄が無傷であることは別である。東証によれば、TOPIXを投資対象とするETFと年金信託運用等の連動運用資産は約110兆円 (2024年3月末時点) にのぼる。外れる650銘柄の合計ウエイト1.5566%をこの110兆円に掛けると1兆7,123億円になる。650で割れば1社あたり平均26.3億円だ。浮動株時価総額が数百億円の会社にとって、これは小さくない。

だから東証は、外す作業を一度に行わない。初回の定期入替は2026年10月で、ここで継続採用されなかった銘柄は移行措置銘柄と呼ばれ、四半期ごと8段階に分けてウエイトを引き下げられる。2026年10月から数えて8回目は2028年7月にあたる。第2段階の完了時が2028年7月とされるのは、この最後の引き下げを指している。一方で東証は2回目の定期入替を2028年10月としており、両者は別の時点である。引き下げが終わった3か月後に、次の入れ替えが来る。

市場区分の再編から次期TOPIXまでの日程
市場区分の再編から次期TOPIXまでの日程

同じやり方は第1段階でも使われた。2022年4月1日の構成銘柄は市場区分に関わらず残したうえで、流通株式時価総額が100億円未満の銘柄を段階的な引き下げの対象とし、2022年10月末から2025年1月末まで四半期ごと10段階で構成比率を下げた。10段階で2年3か月、今回は8段階で2年と、期間はやや短い。

2027年10月の再評価が、「企業の競争を促す」の中身になる

段階的な引き下げには出口がある。東証は2027年10月に再評価を行い、継続基準を満たした銘柄については引き下げを止めるとしている。初回で外れても、そこから1年のあいだに浮動株時価総額と売買代金回転率を条件まで戻せば、指数に残れる。

第1段階にも同じ仕掛けがあった。東証は2023年10月6日に再評価の結果を公表しており、判定と再評価の過程を多段にすることで、上場会社が流通株式時価総額を高める取り組みを反映できる枠組みを目指したと説明している。見出しに掲げられた「企業の競争を促す」は、この再評価の1年を指していると読める。会社にとっては、政策保有株の解消や自己株式の取得で浮動株を増やす、株主数や商いを増やす、といった具体的な作業の期限が2027年10月に置かれたことになる。

ここで効いてくるのが、回転率の条件が中央値で測られる点である。一時的に商いを集めても中央値は動きにくい。日々の売買が細いまま規模だけ大きい銘柄は、累積97%の土俵に乗れない。逆に規模が小さくても毎日きちんと売買がある銘柄は残る。流動性を重視するという言葉は、この2つの条件の組み合わせとして具体化されている。

自分の持ち株がどちら側かは、2つの数字を順に確かめれば分かる

投資家の側から見ると、確かめる順番は東証の条件と同じである。まず日々の売買代金の中央値が細っていないか、次に浮動株時価総額が構成銘柄の下位に沈んでいないか。市場区分がプライムであることは、もう何の保証にもならない。現在の構成銘柄のうちSmall 2に区分される661銘柄は、合計しても指数の1.904%である。この層にいる銘柄は、初回の入替で移行措置銘柄になる可能性を織り込んでおく必要がある。

逆に、今回入ると見込まれる35銘柄のように、スタンダードやグロースにいながら浮動株時価総額が600億円を超え、商いが続いている銘柄には、これまでなかった買いが入る。国内の指数に連動する資金がどこへ向かうかという話は、系統の空きと電力需要を突き合わせた記事で扱ったような設備投資の流れとは別の、市場の仕組みそのものが生む動きである。新規上場の記録は注目IPOの一覧でも追っている。

銘柄数が4割減っても指数は1.6%しか動かない。この非対称こそが今回の見直しの設計であり、痛みも恩恵も、指数ではなく個別の銘柄の側に現れる。

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