2030年に足りないとされる電力のうち、送電網の外で動く自家発電は1ワットも数えられていない。米国で発表された自家発電の計画は約90GWあるが、2026年半ばに動いているのは約2GWで、年末でも3GW前後にとどまる見込みである。

世界のデータセンターが必要とする電力は、2026年に送電網が供給できる量を上回り始めた。台湾の調査会社トレンドフォースは2026年9月16日、データセンターの電力需要が2026年に161ギガワット (GW、1GWは100万キロワット) と前年より約31%増え、2030年には490.7GWに達するとの見通しを示した。ほかの電力需要をすべて満たしたうえで送電網がデータセンターに供給できる電力は2030年に222.6GWで、差し引き268GWが足りない。不足の6割以上は米国で生じ、米国の不足は2030年までに170GWを超えるという。

ただし同社は、この268GWが実際の不足と同じではないことも併せて説明している。データセンターは送電網のほかに、事業者が敷地内に置く自家発電からも電力を得るが、その分は送電網の供給力に数えないため、計算上の不足は実際より大きく出る。実際の不足につながるのは、送電網への接続と送配電設備の建設の遅れである。本稿は、この2つの区別を国際エネルギー機関 (IEA)、米ローレンス・バークレー国立研究所、米国の送電網運用機関の資料で確かめる。268GWのうち投資判断に関わるのは、2028年から表に出る米国の送電網の整備の遅れと、発表約90GWに対して約2GWしか動いていない自家発電がどの速さで増えるかである。

2026年の電力需要161GWのうちAIサーバーは約53.8GWで、伸びの大半はこの1区分から出る

トレンドフォースが集計する電力需要は、汎用サーバー、AIサーバー、そのほかのIT機器、冷却や給電などIT機器以外の設備の4つに分かれる。設置された設備が必要とする電力の合計であり、実際に使った電力量とは別の数字である。2024年の100.5GWから2025年に122.9GW、2026年に161.0GW、2027年に211.1GWへ増え、前年比の伸び率は15.2%、22.3%、31.0%、31.1%と高まってきた。2024年の伸び率15.2%から逆算すると、2023年は約87.2GWだった (記者の計算)。2027年も、クラウド大手の設備投資の拡大とサーバー出荷の好調が続くことを前提に、30%以上の伸びが続くとみる。

表1 世界のデータセンターの電力需要 (単位 GW、AIサーバーの値は比率から本誌が計算)

電力需要前年比AIサーバー比率AIサーバー
2023年 (推計)約87.2
2024年100.5+15.2%
2025年122.9+22.3%25%近く約30.7
2026年 (予測)161.0+31.0%33.4%約53.8
2027年 (予測)211.1+31.1%40%超84.4超

出所: トレンドフォース (2026年9月16日)。2023年は2024年の伸び率から逆算。

増加分は1つの区分に集中している。AIサーバーの比率は2025年の25%近くから2026年に33.4%前後へ上がり、2027年には40%を超える見込みだ。比率を全体に掛けると、AIサーバーの電力需要は2025年の約30.7GWから2026年に約53.8GWへ約75%増え、2027年は84.4GW超と57%以上増える (記者の計算)。AIサーバー以外は2025年の約92.2GWから2026年の約107.2GWへ約16%の増加にとどまり、全体の31%増は、AIサーバーの75%増とそれ以外の16%増が合わさった結果である (記者の計算)。汎用サーバーの比率は以前の約40%から2027年に25.6%へ下がるが、電力需要そのものは2027年に約54.0GWとなる。2024年の比率が約40%だったとすれば約40.2GWで、3年で約34%増える計算になり、下がるのは比率であって電力需要ではない (記者の計算)。

データセンターの電力需要は2027年に211.1GW、AIサーバーが4割を超える
データセンターの電力需要は2027年に211.1GW、AIサーバーが4割を超える

IEAの分析もこの見方と一致する。2025年4月に公表したエネルギーとAIに関する報告書によると、画像処理半導体 (GPU) などを搭載したAI向けサーバーの消費電力量は標準シナリオで年30%増え、2030年までの世界のデータセンターの消費電力量の増加分のほぼ半分を占める。増加の主因はAIサーバーだとするトレンドフォースの説明は、消費電力量の面からも確かめられる。

GWで示す電力需要は消費電力量と別の数字で、IEAの実績と比べた稼働率は45〜47%になる

GWで示す電力需要と、テラワット時 (TWh、1TWhは10億キロワット時) で示す消費電力量を混同すると、不足の大きさを見誤る。IEAによると、世界のデータセンターの消費電力量は2024年に約415TWhで世界の電力消費の約1.5%、2025年は約485TWhで前年より17%増えた。AI向けのデータセンターに限ると2025年は50%増えている。一方、トレンドフォースの電力需要を1年間休まず使い続けたとすると、2024年は100.5GW×8,760時間で約880TWh、2025年は122.9GW×8,760時間で約1,077TWhになる。IEAの実績をこれで割ると、稼働率は2024年が47.1%、2025年が45.0%である (記者の計算)。設備が必要とする電力の半分弱しか、平均では使われていない。

この稼働率は設備の使われ方から説明できる。米ローレンス・バークレー国立研究所が2024年12月に公表した米国のデータセンターの電力消費の推計は、AIサーバーの稼働時間を学習用で年間の75〜85%、推論用で37.5〜42.5%と仮定している。推論用のサーバーは利用の増減に応じて空き時間が長くなり、学習用も冷却や電源に余裕を持たせているため、定格の電力を使い切ることはない。同じ推計によると、米国のデータセンターの消費電力量は2023年に176TWhで米国全体の4.4%を占め、2028年には325〜580TWh、全体の6.7〜12.0%に達する。幅が2倍近くあるのは、AIサーバーの出荷台数と稼働時間の仮定によって結果が大きく変わるためである。

電力需要を1年間使い続けた場合の電力量と、実際の消費電力量
電力需要を1年間使い続けた場合の電力量と、実際の消費電力量

2030年について同じ計算をすると、トレンドフォースの見通しとIEAの見通しには大きな開きが出る。IEAの標準シナリオでは、2030年の世界のデータセンターの消費電力量は約945TWhで2024年の2倍、世界の電力消費の3%弱である。2024年から2030年の伸びは年約15%で、米国は2024年より約240TWh (130%増) 増え、中国と米国で世界の増加分の8割近くを占める。トレンドフォースの490.7GWを稼働率45%で動かすと年約1,934TWhになり、IEAの標準シナリオの約2倍に相当する。逆にIEAの945TWhを490.7GWで割ると、稼働率は22.0%まで下がる (記者の計算)。490.7GWは、運転中の設備が実際に使う電力というより、事業者が確保を目指している電力に近い数字である (記者の見立て)。268GWの不足は、事業者が確保を目指す電力と、送電網が供給できる電力との差として読む必要がある。

冷却や給電の設備も同時に増えるため、800ボルトの直流で変換の回数を減らす給電方式が2027年に本格化する

トレンドフォースによると、施設の電力効率が改善したことでIT機器の消費電力あたりの負荷は下がった。それでもAIサーバーを中心にIT機器の導入が速く、冷却や給電などIT機器以外の設備が必要とする電力も同時に増えるため、データセンターは高電圧直流給電 (HVDC) の採用を計画し始めたという。IEAによると、現在のデータセンターの電力消費のうちサーバーが約60%を占め、冷却は効率の高い大規模データセンターで約7%、効率の低い企業内の施設では30%超を占める。効率の高い施設でも、サーバーが増えれば冷却と給電の設備はそれに応じて増える。

具体例が、エヌビディアが2025年5月20日に公表した800ボルトの直流給電である。送電網から受けた13.8キロボルトの交流を施設の入り口で一度だけ800ボルトの直流に変換し、途中で繰り返していた交流と直流の変換を省く。同社によると、全体の電力効率は最大5%改善し、同じ太さの電線で85%多い電力を送ることができ、銅の使用量は415ボルトの交流に比べて45%減る。電源装置の故障が減るため、保守費用は最大70%下がるという。本格的な生産は、1台あたり1メガワット級のラック「カイバー」を投入する2027年に合わせて始まる。協力企業には半導体のインフィニオン、ロームルネサスエレクトロニクス、電源のデルタ電子とライトン、電気設備のイートン、シュナイダーエレクトリック、バーティブが名を連ねる。トレンドフォースのいう高電圧直流給電の計画は、この2027年の量産に向けた各社の動きと重なる。給電機器の市場と各社の位置づけはデータセンター向け電源の上位25社を扱った記事で整理した。

2030年の不足268GWは送電網が供給できる222.6GWと電力需要490.7GWの差で、自家発電は数えられていない

トレンドフォースの試算では、2025年までは送電網の供給力がデータセンターの電力需要の伸びに追いついていたが、2026年から両者の差が開き始め、2028年以降に目立って広がる。2030年の電力需要490.7GWは、2027年の211.1GWから年平均32.5%で増えた水準にあたる (記者の計算)。送電網が供給できる222.6GWは、電力需要の45.4%にすぎない (記者の計算)。

2030年の不足268GWは、送電網が供給できる電力と電力需要の差
2030年の不足268GWは、送電網が供給できる電力と電力需要の差

同社が分けた2つは、数字の性格が異なる。1つ目は事業者の自家発電で、送電網の供給力に含めないため、計算上の不足はその分だけ実際より大きく出る。2つ目は送電網への接続と送配電設備の建設の遅れで、こちらは実際の電力不足につながる。IEAも同じ問題を指摘しており、送電網の制約によって、2030年までに建設が予定されるデータセンターの約20%が遅れるおそれがあるとみている。IEAが2026年に公表した報告書は、2030年までにデータセンターの敷地内に設ける天然ガス発電が15〜27GW、蓄電池が20〜25GWに達する可能性があるとした。米国の開発事業者は送電網への接続に時間がかかるため敷地内のガス発電の計画を進めているが、事業者の多くは送電網への接続を望んでいるとも記している。

自家発電がどこまで進んでいるかは、米国の実態から分かる。米調査会社クリーンビューが許認可の書類や人工衛星の観測をもとに集計したところ、米国で自家発電を備えるデータセンターの計画は59件、合計約90GWで、計画中の米国のデータセンター全体の約25%にあたる。このうち92% (約82GW) は2025年初め以降に発表された。しかし稼働しているのは約2GWにとどまる。米xAIがテネシー州メンフィス近郊のデータセンター「コロッサス」の第1期と第2期に置くガスタービン1,498MWが大半を占め、残りは3件で約500MWである。2026年末でも稼働は2.8〜3.2GWの見込みにとどまる。発表済みの約90GWのうち動いているのは約2%で (記者の計算)、発電機器はキャタピラーが33%、ブルームエナジーが14%を占め、立地は5つの州に83%が集まり、テキサス州が最も多い。発表と稼働のこの開きがどこまで縮まるかで、計算上の不足が実際にどれだけ埋まるかが決まる。自家発電の採算と燃料電池の供給網については、自家発電と燃料電池を扱った記事で取り上げた。

データセンターへの投資の勢いは衰えていない。IEAの2026年4月16日の発表によると、米IT大手5社の2025年の設備投資は4,000億ドルを超え、2026年はさらに75%増える見込みである。データセンター事業者が小型モジュール炉の開発企業と結んだ条件付きの電力購入契約は、2024年末の25GWから45GWへ増えた。原子力発電は送電網を通じて供給されるため自家発電のように計算の外には出ないが、運転開始は2030年より後になる (記者の見立て)。

米国の不足170GW超は、接続の申請約380GWに対して1年間の承認が約2.2GWという送電網側の実績と重なる

トレンドフォースは、データセンターの設置が最も多い米国について、2028年までは事業者の自家発電と既存の施設が需要のかなりの部分を担い、送電網への接続を予定する案件はほぼ計画どおりに送電が始まるとみる。2028年からは送電網の整備の遅れが目立ち始め、不足を広げる主な原因になる。米国のデータセンターの電力の不足は2030年までに170GWを超え、世界の不足268GWの63%以上を占める (記者の計算)。自家発電の拡大と送電網の整備によってこの不足が縮まるかどうかは、今後の推移を見る必要があるとしている。

送電網側の実績を見ると、電力需要の数字には、まだ確定していない計画が多く含まれていることが分かる。テキサス州の送電網を運用するテキサス電力信頼度協議会 (ERCOT) に寄せられた大口需要の接続申請は、2024年末の63GWから2025年11月に226GWへほぼ4倍に増えた。約77%がデータセンターで、2030年までの接続を目指している。2026年3月13日の同協議会の作業部会では、接続待ちは約238,000MWに達し、まだ集計に入っていない新規の申請137件・約140,000MWを加えると約380,000MWになると報告された。これに対し、直近12か月に送電開始を承認されたのは約2,168MW、接続に向けた検討を承認されたのは約5,878MWである。送電開始の承認は接続待ちの0.9%にあたる (記者の計算)。テキサス1州の申請だけで、トレンドフォースが示す2026年の世界の電力需要161GWの2倍を超えている。

米東部の送電網を運用するPJMが2026年1月に公表した需要予測は、逆の面から同じことを示している。夏の最大需要は2036年に222,106MWと10年で65,733MW増え、年3.6%の伸びになる。2046年には253,077MWと、20年で96,704MW増える。長期の伸びの主因はデータセンターだが、2032年までの予測は2025年の予測より低く、2026年を2,564MW (1.6%)、2028年を4,414MW (2.6%)、2031年を1,630MW (0.8%) 引き下げた。電気自動車と景気の見通しを見直したことに加え、大口需要の数え方を改めたためである。近い年については電力の供給契約や建設の確約がある「確定」した案件だけを数え、先の年の案件は「未確定」として不確実な分を差し引く。データセンターの申請のうち、送電網の運用機関が計画に織り込むのは確定した分に限られる。トレンドフォースのいう送電網が供給できる電力は確定した分に近く、ERCOTの接続待ちは電力需要の側に近い (記者の見立て)。

表2 米国の送電網側の実績

指標数値時点
ERCOT 大口需要の申請63GW→226GW2024年末→2025年11月
ERCOT 接続待ち (未集計を含む)約380,000MW2026年3月
ERCOT 12か月の送電開始承認約2,168MW2026年3月
PJM 夏の最大需要の10年増分65,733MW2036年
PJM 2028年予測の引き下げ4,414MW (2.6%)2026年1月
発電所の接続待ち約2,290GW2024年末

出所: ERCOT (2025年11月の報道、2026年3月13日の作業部会)、PJM (2026年1月)、米ローレンス・バークレー国立研究所 (2025年12月15日)。

遅れの長さは、発電所の接続待ちから分かる。米ローレンス・バークレー国立研究所が2025年12月に公表した年次調査によると、米国で送電網への接続を待つ発電所と蓄電設備は2024年末で約2,290GW (太陽光956GW、蓄電890GW、天然ガス136GW) ある。2024年に運転を始めた案件が申請から運転開始までにかかった期間の中央値は55か月で、2008年の22か月、2015年の36か月から延びている。2000〜2019年に申請された案件のうち2024年末までに運転に至ったのは件数で19%、容量で13%にとどまり、2024年には700GW超の申請が取り下げられた。データセンターを送電網につなぐには、需要側の接続に加えて、その電力を供給する発電所の接続も同じ審査を通る必要がある。2028年から遅れが目立つというトレンドフォースの見方は、この4年半という期間と、2025年以降に申請が急増した時期を重ねると説明がつく (記者の見立て)。日本の送電網と接続の手続きは事情が異なり、日本のAI基盤を5つの層で整理した記事送電網につながない選択肢を日本で検討した記事で扱った。

268GWは、送電網の運用機関が確定分として数える電力と、事業者が確保を目指す電力との差である。このうち自家発電で補われる分は計算に入っておらず、米国では発表約90GWに対して稼働は約2GWの段階にある。実際の不足として表れるのは2028年以降の送電網の整備の遅れであり、テキサス州で1年間に送電開始を承認された約2.2GWと、申請から運転開始までの中央値55か月が、その遅れの現状を示している。

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