DMPのDi1(エッジAI向けSoC) Di1 edge AI SoC
ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)が設計した、カメラ機器の中でAIの推論を行うSoC(1チップにまとめたシステムLSI)。自社のNPU(AI演算回路)とステレオカメラの距離計測回路を載せた。画像処理回路は台湾のアイキャッチ・テクノロジー(iCatch Technology)の技術を使う。2025年5月19日に発表した。製造は台湾に委託している。量産品は顧客の量産日程に合わせて出荷すると、2026年5月に説明した。
詳細解説
- 発表
- 2025年5月19日に発表し、台湾の展示会「コンピューテックス台北2025」で初公開した dmprof.com
- 事業の決定
- 2025年2月13日の取締役会で次世代エッジAI半導体の開発・製造・販売を新事業とすることを決めた。販売の開始は2026年1月の予定と発表した dmprof.com
- 開発と量産の準備
- 2026年3月期に量産対応の評価を終え、開発と量産準備を完了した。DMPは最初の試作品が設計どおり動いたこと(一発完動)を成果に挙げる dmprof.com
- 量産品の出荷
- 2026年5月の決算説明会の質疑で、量産品の出荷体制は整っており、出荷はインドの監視カメラメーカー、スパーシュCCTV(Sparsh CCTV)など顧客の量産日程に合わせて始まると説明した dmprof.com
- 販売名
- 日本ではDMPがDi1として売り、日本国外ではアイキャッチ・テクノロジーがV9の名で同じ製品を売る dmprof.com
- 想定用途
- ドローン、産業用ロボット、先進運転支援システム(ADAS)・ドライバー監視、監視カメラ、自律走行ロボット(AMR)、スマートファクトリー dmprof.com
- 海外の提携
- 2026年4月にスパーシュCCTVと基本合意書を、4月28日にインドのドローンメーカー、アイデアフォージ(ideaForge)と戦略的な覚書を結んだ。いずれも法的な拘束力はない dmprof.com
- 国内の検証
- DMPは2026年7月30日、JR東海が東海道新幹線の5駅のホームで行う検証に、Di1を搭載したAIカメラを提供すると発表した dmprof.com
- 評価の広がり
- 開発キットを評価中の企業は40社以上。量産チップ向けのソフトウエア開発キット(SDK)を約50社の顧客・協業先に配った dmprof.com
🏭 製造工場
この製品を作る工場と、それぞれの役割。会社の発表・有価証券報告書・官公庁の資料で確かめた拠点だけを載せた。
| 工場 | 所在地 | 役割 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|
| 製造の委託先(社名は公表されていない) | 台湾 | チップの製造。DMPは2025年11月の決算説明会の質疑で「製造は台湾」と答えた | dmprof.com | |
| DMP本社 | 東京都中野区 | 設計・評価・ソフトウエア開発。DMPは工場を持たず、大規模集積回路(LSI)の生産は半導体メーカーやモジュールメーカーに委託する | dmprof.com |
⚙️ 技術・仕組み
どう動くか。方式・構造・制御・材料を、会社の技術資料と特許・論文で確かめた範囲で書いた。
- NPU(AI演算回路)
- DMPが自社で設計した4TOPS(毎秒4兆回の演算)のNPU。4ビット浮動小数点(FP4)を回路で扱い、DMPは「エッジAI半導体で世界初」とする(会社主張、2025年時点の自社調べ) dmprof.com
- FP4の効果
- 16ビット浮動小数点(FP16)と比べ処理が20%以上速く、モデルの大きさを70%近く、メモリーの使用量を40%以上減らせると山本達夫会長兼社長が説明した(2025年11月、会社発表) dmprof.com
- 学習と推論の分担
- エヌビディア製GPU(画像処理半導体)で学習したモデルを、精度の低下を抑えてFP4に変換し、機器の側で推論させる設計。ビジョン・トランスフォーマー(ViT)にも対応する dmprof.com
- ステレオビジョン処理エンジン
- 左右のカメラの視差から距離を求める処理を回路にした。カメラ8台を2台1組のステレオカメラ4組としてつなぎ、4方向360度の障害物を検知できる dmprof.com
- ISP(画像信号処理回路)
- AIによるノイズ除去、HDR(明暗差の大きい場面の合成)、明るさの変化だけをとらえるイベントベースのセンサーに対応するISPを載せた dmprof.com
- ISPの技術の出どころ
- ISPはアイキャッチの画像処理基盤「ThetaEye AI Imaging Platform」の技術を使う dmprof.com
- 生成AIの実行
- Di1のボード1枚、2ギガバイトのDRAMで、大規模言語モデル(LLM)を含む8つのAIモデルを同時に動かす実演を2026年11月の展示会で行うと発表した dmprof.com
- 開発環境
- AIモデルの共通形式ONNXに準拠し、対応する演算子は115種類。物体検出のYOLOシリーズなどの学習済みモデル集(Model Zoo)を付ける dmprof.com
- セキュリティー
- セキュアブート、AES暗号、ハッシュ関数のSHA-256/512、楕円曲線署名ECDSA(P-256/P-384)、真性乱数生成器、1回だけ書き込めるメモリー(OTP、4キロビット)を載せる dmprof.com
主要諸元
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| CPU | アームのCortex-A53を4個、最大1ギガヘルツ | dmprof.com |
| NPU | 4TOPS(毎秒4兆回の演算)。浮動小数点のFP16・FP8・FP4、整数のINT8・INT4に対応 | dmprof.com |
| ステレオの距離計測の処理 | 最大毎秒9,000万画素。実環境での奥行き精度は±1%(会社発表) | dmprof.com |
| ISPの処理速度 | 最大毎秒4億8,000万画素。4K・毎秒60コマの映像のノイズ除去に対応 | dmprof.com |
| カメラ入力 | 最大8チャネル(MIPI D-PHYは最大毎秒2.5ギガビット、sLVDS・HiSPiは最大毎秒2.0ギガビット) | dmprof.com |
| 映像の圧縮 | H.264とH.265。最大毎秒6億画素の符号化・復号 | dmprof.com |
| グラフィックス | 最大500メガヘルツの2DベクターグラフィックスOpenVG 1.1。最大4096×4096画素 | dmprof.com |
| 外部接続 | USB3.2 Gen1、ギガビットイーサネット、車載ネットワークのCAN、SD、組み込み用の記憶媒体eMMC、HDMIなど。DRAMは最大1ギガヘルツ・最大16ギガビット | dmprof.com |
| パッケージ | HSBGA-433、15×15×1.6ミリ | dmprof.com |
| 動作温度 | 下限0度・零下20度・零下40度、上限70度・85度・105度の組み合わせ | dmprof.com |
| 比較の実測(会社発表) | ステレオ処理でエヌビディアのJetson Orin NX(16ギガバイト)より3.7倍速く、消費電力は約83%少ない。電力当たり性能は22倍以上 | dmprof.com |
🔩 各部品と部品メーカー
部品は諸元表と発表で存在を確かめたものを並べ、メーカーは会社か部品メーカーの発表、有価証券報告書、分解調査の報道で供給元を確かめられたときだけ社名を書いた。確かめられない部品は「公表されていない」。載っていない会社は「関与していない」ではなく「公表資料で確かめられていない」。確度 A は会社の一次資料、B は報道。
| 部品 | 品名・型式 | メーカー | 銘柄 | 国・製造拠点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|---|
| NPU(AI演算回路) | DMP独自のNPU(4TOPS) | ディジタルメディアプロフェッショナル 自社設計 |
3652 | 日本 公表されていない |
会社の製品ページ A |
| ISP(画像信号処理回路) | ThetaEye AI Imaging PlatformのISP | アイキャッチ・テクノロジー 台湾・新竹市 |
— | 台湾 公表されていない |
会社の発表(協業先としてISPの技術を提供) A |
| ステレオビジョン処理エンジン | 3D Ranging Engine | ディジタルメディアプロフェッショナル 自社設計 |
3652 | 日本 公表されていない |
会社の発表 A |
| CPUコア | Cortex-A53(4コア) 米ナスダック上場 |
アーム 設計資産の供給元 |
— | 英国 公表されていない |
会社の製品ページの諸元表 A |
| ウエハーの製造(前工程) | 公表されていない 製造の委託先と回路線幅は公表されていない |
公表されていない 製造は台湾 |
— | 台湾 台湾 |
2025年11月の決算説明会の質疑 A |
🔗 部品製造サプライチェーン
材料から部品・組み立て・販売までを、上流から下流の順に並べた。
- 1設計DMPがNPU・ステレオエンジン・全体の統合を設計し、アイキャッチがISPの技術を提供する。2024年9月30日に、基本契約のほか、ASIC(特定用途向け半導体)の開発、SoCの販売、IP(回路の設計資産)のライセンス、SDKのライセンスの各契約を結んだ企業: ディジタルメディアプロフェッショナル、アイキャッチ・テクノロジー
- 2製造台湾で製造する。委託先の社名は公表されていない企業: 公表されていない
- 3販売(日本)DMPがDi1として販売し技術の窓口を担う企業: ディジタルメディアプロフェッショナル
- 4販売(日本国外)アイキャッチがV9の名で台湾・韓国などに売る。両社は売上を分け合う方式をとる(2026年5月の質疑)企業: アイキャッチ・テクノロジー
🏗️ 製造ライン
工場の中でこの製品がどう作られるか。工程の順に、ラインの構成・設備・自動化・検査・生産能力を、会社の発表と工場見学の記録で確かめた範囲で書いた。
- 1前工程・後工程公表されていない。DMPは台湾で製造すると説明し、工場名・回路線幅・組み立てと検査の委託先を開示していない設備・企業: 公表されていない
- 2量産対応の評価量産対応レベルの評価を2026年3月期に終えた設備・企業: ディジタルメディアプロフェッショナル
💴 販売価格
| 型番・グレード | 税込価格 (円) | 時点 | 出所 |
|---|---|---|---|
| Di1(チップ単体) | 公表されていない(個別の見積もり) | 2026-11-07 | dmprof.com |
| Di1 Development Kit(参考) | 希望小売価格5万円(税別)。税込みの額は公表されていない | 2025-09-24 | dmprof.com |
🛒 購入方法
| 経路 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 直接の商談(日本) | DMPのテクノロジー製品事業部が問い合わせを受ける | dmprof.com |
| アイキャッチ(日本国外) | V9の名でアイキャッチが販売する | dmprof.com |
| 開発キット | 評価用の開発キットはレスターエレクトロニクスのネット通販で扱う | dmprof.com |
🛠️ アフターサービス・保守サービス
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 開発の支援 | SDK、ボード支援パッケージ(リアルタイムOSのRTOS・Linux)、サンプルコード、データシート、回路図、プログラムの接続仕様(API)の説明書を提供する | dmprof.com |
| 保証期間・供給期間 | 公表されていない | dmprof.com |
🌏 海外輸出
| 仕向け地 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 台湾・韓国など | アイキャッチがV9として販売する | dmprof.com |
| インド | スパーシュCCTVの監視カメラ、アイデアフォージの垂直離着陸型ドローンへの搭載に向けた開発を進める | dmprof.com |
| 輸出管理 | 外為法や米国の輸出管理規則の対象かどうかは公表されていない | dmprof.com |
📈 販売の実績
| 期間 | 指標 | 値 | 単位 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | Di1の売上高 | 公表されていない(製品事業の売上高22億1,800万円の内数。開発キットなども含む) | 円 | dmprof.com | |
| 目標(会社発表) | スパーシュCCTVのカメラ向けの台数 | 初年度5万台、2年目10万台、3年目数十万台 | 台 | 受注・生産計画ではない | dmprof.com |
| 2030年3月期(会社目標) | エッジAI半導体事業の売上高 | 30億円規模 | 円 | 中期ビジョン | dmprof.com |
💰 金額
| 項目 | 値 | 備考 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 開発費(2026年3月期) | 3億100万円を研究開発費に計上 | dmprof.com | |
| 開発費の当初計画(2025年2月) | 2025年3月期に50万ドル、2026年3月期に190万ドルを計上し、残る100万ドルは販売開始後に償却する計画 | dmprof.com | |
| 2027年3月期の関連投資 | 1億円程度。顧客の用途に合わせた開発と、販売する国の規格への対応が中心(2026年6月の株主総会の回答) | dmprof.com |
解析 — 部品・製造・販売の特徴
Di1はRS1に続き、DMPが自社のIP(回路の設計資産)を核に設計したSoCで、2026年3月期に量産準備を終えた。DMPは2026年3月期に開発費3億100万円を研究開発費に計上した。売上は顧客の量産日程しだいで、2026年5月の質疑では売上の計上は早ければ2027年3月期からとし、予想に大きな量は入れていないと説明した。FP4に対応するNPUとステレオの距離計測を1チップにまとめた点を売りにする。他社品との比較の数値は、どれもDMP自身の計測や会社の資料による。製造は台湾で、委託先の社名と回路線幅は公表されていない。日本国外はアイキャッチがV9の名で売り、両社は売上を分け合う方式をとる。インドの2社との合意に法的な拘束力はなく、スパーシュ向けの5万台は目標の数字だ。
公表されていないこと
- 製造の委託先(ファウンドリー)、回路線幅、組み立てと検査の委託先
- チップ単体の価格と、アイキャッチとの売上の分け方
- 量産品の出荷を始めた時期と出荷数
- 輸出管理の規制の対象かどうか
出所
- Di1 製品ページ (2026-11-07)
- Di1発表のニュースリリース (2025-05-19)
- 新たな事業の開始に関するお知らせ (2025-02-13)
- 有価証券報告書(第24期) (2026-06-22)
- 事業計画及び成長可能性に関する事項 (2026-06-22)
- 2026年3月期第2四半期決算説明会の書き起こし (2025-11-13)
- 2026年3月期決算説明会の書き起こし (2026-05-19)
- 第24回定時株主総会 質疑応答 (2026-07-02)
- Japan Drone 2026 出展のニュースリリース (2026-05-25)
- Di1 Development Kit 受注開始のニュースリリース (2025-09-22)
- EdgeTech+ 2026 出展のニュースリリース (2026-11-04)
- スパーシュCCTVとの基本合意 (2026-04-09)
- 東海道新幹線ホームの検証への協力 (2026-07-30)
出所との照合日: 2026年11月7日。数字は出所の書類のまま。株価・時価総額は扱わない。
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