株価の3分の1は「これから作る価値」で、その長さは倍率に埋もれて議論されない。2026年の米国の研究を要点ごとに検算し、EDINETで日本の上場企業の数字に置き換えた。ROICが資本コストへ戻る速さは業種より会社ごとに決まる。

マイケル・モーブッサンはモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのカウンターポイント・グローバルで調査部門を率い、1993年からコロンビア大学ビジネススクールの非常勤教授、複雑系研究のサンタフェ研究所では理事会の名誉会長を務める。「The Investing Mind」「The Success Equation」「Think Twice」「More Than You Know」の著者で、アルフレッド・ラパポートとの共著「Expectations Investing」で株価から市場の期待を逆算する方法を広めた。2026年4月、同僚のダン・キャラハンと69ページの報告「Competitive Advantage Period: The Neglected Value Driver」を出し、1997年に自身が書いた同名の論文を29年ぶりに訂した。本稿はその要旨を6枚分すべて抽出し、報告の主張を米国証券取引委員会 (SEC) の提出書類で確かめたうえで、金融庁のEDINETに蓄積した日本企業の有価証券報告書で「日本ではどうか」を数える。

超過収益の「長さ」が見過ごされてきた理由

企業が価値を生むのは、投下資本利益率 (ROIC) が資本コスト (k) を上回るときである。この「超過収益」には幅と長さがあり、幅は ROIC − k、長さは超過収益が競争で削られるまでの年数で、報告はこの年数を競争優位期間 (CAP) と呼ぶ。経営者も投資家も競争優位の重要性は認めるが、その持続期間を数える道具は乏しい。株式投資家は圧倒的に株価倍率に頼り、PER や EV/EBITDA は成長・利益率・リスク・CAP を1つの数字にまとめてしまい、どの変数が株価を動かしているかを見えなくする。割引キャッシュフロー (DCF) を使う場合でも、継続価値 (ターミナルバリュー、予測期間の後に残る価値) の前提が根拠なく置かれる。報告の要点は、価値創造は超過収益の大きさだけでなく、それをどれだけ長く保てるかに依存し、その長さは株価から逆算できる、という1点にある。

競争優位期間 (CAP) とは何か ― 資本コストを上回る収益率が続く年数
競争優位期間 (CAP) とは何か ― 資本コストを上回る収益率が続く年数

図1は報告の概念図を描き直したものである。ROIC の軌道は立ち上がりで振れ、しばらく k を上回る水準で推移し、CAP が尽きると点線のように k へ収束する。多くの企業で市場が織り込む CAP は5〜20年の範囲にあり、この年数を意識せずに倍率で売買することは、最も大きな価値の変数を見ずに投資することにあたる。

株価の3分の1は成長機会の価値である

評価の原則は、資産の価値がリスクを調整した将来キャッシュフローの割引現在価値に等しいことである。ミラーとモジリアーニは1961年に「現在の利益と将来の投資機会」の枠組みで企業価値を2つに分けた。1つは既存資産が定常状態で生む価値で、税引後営業利益 (NOPAT) を k で割った額。もう1つは成長機会の現在価値 (PVGO) で、新規投資 I が ROIC − k の超過収益を CAP 年にわたり生むときの価値である。式にすると、価値 = NOPAT ÷ k + I × (ROIC − k) × CAP ÷ [k(1 + k)] となり、右辺の第2項が PVGO にあたる。成長が価値を生むのは ROIC が k を上回るときだけで、ROIC が k を下回る成長は投資するほど価値を損なう。

企業価値の2層 ― 定常状態の価値と成長機会の現在価値 (PVGO)
企業価値の2層 ― 定常状態の価値と成長機会の現在価値 (PVGO)

報告は S&P500 の1961〜2025年の株価をこの2層に分け、平均で3分の2が定常状態の価値、3分の1が PVGO だったと示す。PVGO が株価に占める比率が低い局面ほど、その後10年の株式収益率は平均を上回った。証券会社の調査部門 (セルサイド) の実務では倍率が主流で、DCF の利用が増えるのは2009年のように利益がマイナスになり倍率が使えない局面に限られる。もう1つの実証は、ROIC のばらつきが業種間より業種内の方が一貫して大きいことで、業種平均の倍率で個別企業を評価するとこの差が消える。

米国の実額で幅を確かめる。マイクロソフトの2026年6月期 10-K (SEC EDGAR の XBRL) は営業利益1,552億3,700万ドル、実効税率19.4%で、本誌計算の NOPAT は1,251億ドル、株主資本と長期債務から現金・短期投資を引いた投下資本は4,058億ドル、ROIC は30.8%になる。エヌビディアの2026年1月期は営業利益1,303億8,700万ドル、実効税率15.1%、NOPAT 1,107億ドル、投下資本1,552億ドルで ROIC は71.3%である。幅が極端に大きい企業では、価値のほぼすべてが「その幅が何年続くか」で決まる。

差別化が費用優位に勝つ ― 戦略の系譜と価値の幅

ROIC と k の正の差がなぜ続くかを理解するには、評価を競争戦略と組み合わせる必要がある。戦略論は産業組織論の「構造・行動・成果」モデルとポーターの5つの力から出発し、企業内部の資源に注目する資源ベース論へ移り、ブランデンバーガーとスチュアートが顧客の支払意思額・価格・費用・供給者が受け入れる最低価格の4つで価値創造を1つの枠組みにまとめた。企業が創る価値は価格と費用の差だけで、消費者余剰と供給者余剰は市場での位置を決めるが企業の取り分ではない。長期の優位は、競合よりこの幅を広げ続けられるかで決まる。

戦略の枠組みと堀の構造 ― 価値の幅は「支払意思額 − 費用」で決まる
戦略の枠組みと堀の構造 ― 価値の幅は「支払意思額 − 費用」で決まる

報告はデュポン分解で ROIC を NOPAT 利益率と投下資本回転率の積に分け、1970〜2024年に ROIC 上位2割を10年連続で維持した企業の中央値を全体平均と比べた。NOPAT 利益率は2.8倍、回転率は1.4倍で、持続する超過収益の主因は差別化による高い利益率であり、費用効率の寄与はその半分にとどまる。クリステンセンの破壊的イノベーションは、安価で単純な代替品を新しい事業モデルで持ち込み、既存企業の CAP を縮める力として位置づけられる。

上場企業の寿命は平均11.7年、100社のうち生き残りは18社

標準的な DCF は企業が永遠に成長すると仮定するが、米国上場企業の実証はそれを否定する。ベッセンバインダーのデータベース (1926〜2025年) で上場企業の平均上場期間は11.7年、中央値は6.8年である。1976〜2019年に上場した約1万3,800社を追うと、2019年にも上場を維持していたのは18%、M&A で吸収されたのが43%、上場廃止や破綻が39%で、100社のうち82社が消えた。上場企業の70%は 新規上場時の株価に見合う利益を生涯で上げられず、その一方で0.7%の企業が1926〜2025年の株主の富の純増額91兆ドルの75%超を生んだ。企業の消滅率は生物の死亡率と同じく指数関数の曲線を描く。

企業の寿命と超過収益の減衰 ― 平均上場期間11.7年、中央値6.8年
企業の寿命と超過収益の減衰 ― 平均上場期間11.7年、中央値6.8年

競争は経済的な収益率を平均へ押し戻す。高い ROIC が k へ減衰する速さが減衰率 f で、ROIC(t+1) − k = (1 − f) × [ROIC(t) − k] と書ける。報告の集計では生活必需品が f = 0.10 と最も遅く、情報技術が0.20、公益とエネルギーが0.29〜0.30と最も速い。本誌計算では、f = 0.10 の超過収益の半減期は約6.6年、f = 0.20 で3.1年、f = 0.30 で1.9年になる。新古典派経済学は急速な平均回帰を予測するが、ROIC の5年相関係数は1970年代の0.45から1990年代の0.31へ下がったあと、2000年以降は約0.37へ戻った。規制による参入障壁、独自ソフトウェア、規模の経済、そして売上高100億ドル超の超大手企業の台頭が持続性を引き上げている。情報技術業種の業種全体を合算した ROIC は19%で、中央値の10.8%と大きく離れており、平均を押し上げているのは少数の超大手である。

キャッシュフローの符号で段階を決める

評価法は企業のライフサイクルの段階に合わせる必要があり、企業年齢で段階を代用すると誤る。ビクトリア・ディキンソンは2011年に、営業・投資・財務の3つのキャッシュフローの符号の組み合わせで企業を導入・成長・成熟・淘汰・衰退の5段階に分ける方法を示した。米国の1971〜2024年のデータでは成長が36.4%、成熟が31.8%、衰退が16.9%、導入が8.7%、淘汰が6.2%で、成長と成熟を合わせた約68%が、予測期間に CAP を置く標準的な DCF の対象になる。段階別の ROIC は導入▲2.9%、成長+10.5%、成熟+11.1%、淘汰+3.6%、衰退▲13.0%である。

企業のライフサイクル ― 年齢ではなくキャッシュフローの符号で段階を決める (ディキンソン)
企業のライフサイクル ― 年齢ではなくキャッシュフローの符号で段階を決める (ディキンソン)

3年間の推移では導入段階の29%が成長へ移る一方、衰退段階の29%が動的能力 (ダイナミック・ケイパビリティ) によって成長へ戻る。アップルの1997年から2001年への転換がその例である。導入段階の企業はリアルオプションの束と顧客1人あたりの採算 (顧客生涯価値と獲得費用) で、衰退段階はマイナス成長のゴードンモデルか撤退オプションで評価する。1990〜2024年の超過収益は成熟段階の株式が年率9.7%、シャープレシオ0.71で全段階の最良だった。

継続価値の二者択一をなくす減衰モデル

予測期間を区切る DCF では継続価値が企業価値の70%以上を占めるのが普通である。伝統的なゴードン成長モデルや永続価値モデルは、超過収益が永遠に続くか即座に消えるかの二者択一を投資家に迫る。デイビッド・ホランドの減衰モデルは、業種の実証的な減衰率で超過収益を毎年減らし、この隙間を埋める。報告の例では、新規投資の ROIC 15%、k 7%、長期成長2.5%のとき、継続価値は減衰なしで1,898.1、平均的な f = 0.20 で1,526.8、完全減衰の単純な永続価値で1,464.3になる。本誌計算で減衰なしと完全減衰の差は29.6%、f = 0.20 は完全減衰より4.3%高いだけで、「永遠の堀」を置くことがどれだけ価値を膨らませるかが分かる。新規投資の ROIC が k と等しい均衡では、ゴードン成長モデル・バリュードライバー式・永続価値・減衰の4式は同じ価値を返す。継続価値の差は、新規投資の ROIC が k をどれだけ、いつまで上回るかだけから生まれる。

継続価値と市場が織り込む CAP ― 減衰を入れると価値は2〜3割動く
継続価値と市場が織り込む CAP ― 減衰を入れると価値は2〜3割動く

市場予想の価値要因に減衰モデルを組み合わせ、現在の株価と一致する予測期間の長さを求める。その年数が「市場が織り込む競争優位期間」である。報告のマイクロソフトの例は、市場予想の価値要因、WACC 9.1%、長期成長2.5%、情報技術の減衰率0.20を株価約370ドル (2026年3月) に当て、市場が織り込む CAP を17〜18年と割り出した。売上高・費用・資本の3つの起点が、数量・価格・規模という価値要因を経て、成長・利益率・投資の3つの経営変数に結びつく「期待の構造」が、この逆算を支える。

日本の340社で利益率の持続性を測る

報告の実証は米国株だが、日本の投資家にとっての問いは「日本の上場企業で超過収益はどれだけ続くか」である。本誌は EDINET の有価証券報告書から機械抽出した連結売上高と営業利益 (2022〜2026年3月期、約560社) で、営業利益率の持続性を測った。投下資本を全社で揃えられないため ROIC ではなく利益率を使ったが、報告が「持続する優位の主因は利益率」と示した以上、代理として筋は通る。

日本企業の営業利益率はどれだけ持続するか ― 有価証券報告書 (EDINET) 340〜430社の実測
日本企業の営業利益率はどれだけ持続するか ― 有価証券報告書 (EDINET) 340〜430社の実測

2022年3月期と2026年3月期の両方が取れる340社で、営業利益率の相関係数は0.645だった。3年 (2023→2026年、364社) では0.824、2年 (2022→2024年、430社) では0.720、2024→2026年 (371社) では0.816である。2022年3月期に上位2割 (68社) だった企業のうち45社 (66%) は4年後も上位2割に残り、上位2割の平均利益率は24.1%から21.6%へ下がり、下位2割は▲2.1%から7.6%へ戻った。平均回帰は両端で起きるが、上位の3分の2は残る。業種別では情報・通信 (24社) 0.91、ガラス・土石 (8社) 0.93、化学 (28社) 0.89、電気機器 (40社) 0.83 が高く、米国の情報技術と生活必需品にあたる低い減衰の側にある。食料品 (16社) の▲0.01 と陸運 (25社) の▲0.24 は米国の生活必需品と逆で、標本が小さく、感染症からの回復期を含むため再検証を要する。

会社ごとの動きは業種平均より大きい。オービックは60.5%から65.7%、日本取引所グループは54.3%から58.5%、ディスコは36.1%から42.3%へ上げた。キーエンスは55.4%から51.0%、信越化学は32.6%から24.7%、SMC は31.3%から22.6%へ下げた。任天堂は35.0%から15.6%、エムスリーは45.7%から20.9%へ落ち、4年で利益率が半分以下になった。報告の「利益率2.8倍」の結論は日本でも同じ形になり、上位に残った企業は装置・ソフトウェア・取引所の独占という差別化の側にいる。全体平均は9.0%から10.8%へ上がっており、日本企業の利益率は水準を上げながら上位のばらつきを縮めた。

6社の PVGO を有価証券報告書から割り出す

ミラー=モジリアーニの2層を日本の個別企業に当てる。時価総額は有価証券報告書に記載された期末の株価収益率に純利益を掛けて求め、NOPAT は営業利益に (1 − 0.3) を掛け、定常状態の価値は NOPAT ÷ k とした。k は無リスク金利3% (財務省の10年国債利回り2.97%) に5%を上乗せした8%を本誌の仮定として置き、7%と9%の感応度も添えた。保有現金は定常状態の価値に加えると PVGO がさらに小さくなる方向に働くため、別掲した。

日本の6社で PVGO を割り出す ― 有価証券報告書の株価収益率 (期末) と営業利益から
日本の6社で PVGO を割り出す ― 有価証券報告書の株価収益率 (期末) と営業利益から

キーエンス (6861) は2026年3月期の純利益4,452億円、期末 PER 32.19倍で時価総額14.33兆円、NOPAT 4,170億円、定常状態の価値5.21兆円、PVGO 9.12兆円で時価総額の64%にあたる。東京エレクトロン (8035) は17.05兆円のうち PVGO 11.58兆円で68%、ファナック (6954) は4.95兆円のうち3.34兆円で67%、信越化学 (4063) は11.77兆円のうち6.21兆円で53%、レーザーテック (6920、2025年6月期) は1.75兆円のうち0.68兆円で39%、トヨタ自動車 (7203) は41.17兆円のうち8.22兆円で20%である。PVGO を NOPAT で割ると、キーエンス21.9年、東京エレクトロン26.5年、ファナック26.0年、信越化学14.0年、レーザーテック7.9年、トヨタ3.1年になる。S&P500 の長期平均が3分の1であるのに対し、日本の装置・部品の優良企業は5〜7割が「これから作る価値」で、その大きさは現在の NOPAT の20年分を超える。

この20年分をどう読むかが本稿の核心である。情報技術の減衰率0.20を当てはめると超過収益の半減期は3.1年で、20年分の成長価値を正当化するには半減期の6倍を超える期間にわたり新しい堀を作り続ける必要がある。有価証券報告書の3つのキャッシュフローの符号は、レーザーテックまでの5社がいずれも営業CF正・投資CF負・財務CF負の「成熟」段階を示す。成熟段階の株式は米国では1990〜2024年に最良の超過収益を出したが、その条件は市場が織り込む CAP が実際の CAP より短いことである。日本の5社は逆に、市場が織り込む年数が半減期に比べて長い。

株価から年数を逆算する手順 ― 減衰モデルの式と二分探索

市場が織り込む CAP を自分で解く手順を、技術解説として式に落とす。状態方程式は ROIC(t) = k + (ROIC₀ − k)(1 − f)^t、成長率 g(t) = 再投資率(t) × ROIC(t)、NOPAT(t) = NOPAT(t−1)(1 + g(t−1))、自由キャッシュフロー FCF(t) = NOPAT(t)(1 − 再投資率(t)) である。予測期間 T 年の価値は PV(T) = Σ FCF(t)/(1+k)^t、継続価値は TV(T) = FCF(T+1)/(k − g∞) ÷ (1+k)^T で、モデル価値 V(T) = PV(T) + TV(T) + 現金 − 有利子負債 となる。ROIC₀ > k のとき V(T) は T の単調増加関数なので、時価総額 M に対して V(T) = M を満たす T は二分探索で解ける。区間 [0, 60年] から始め、V(T) < M なら下限を、そうでなければ上限を T に置き換え、幅が0.01年を切るまで繰り返す。

市場が織り込む CAP を解くアルゴリズム ― 減衰モデルの式と二分探索
市場が織り込む CAP を解くアルゴリズム ― 減衰モデルの式と二分探索

入力の取り方が精度を決める。EDINET の XBRL からは営業利益・純資産・総資産・設備投資・研究開発費・3つのキャッシュフロー・期末 PER が機械的に取れ、SEC の companyfacts API からは OperatingIncomeLoss、IncomeTaxExpenseBenefit、StockholdersEquity、LongTermDebt、現金の各要素で NOPAT と投下資本が作れる。財務省の法人企業統計 (e-Stat) が示す全産業の売上高営業利益率7.4% (2026年4〜6月期) は、利益率が最終的に回帰する業種平均の目安になる。無リスク金利は財務省の国債金利情報で置く。V(T) が60年でも M に届かない場合、市場は f より緩い減衰か、より高い ROIC₀ を織り込んでいる。数値が出ないこと自体が、前提を疑うべきだという情報である。

この手順は生成AIの解析機能で一連の処理として自動化できる。XBRL の取得、NOPAT と投下資本の計算、二分探索までは機械が速くする。一方で f と ROIC₀ をどう置くかは人が決める前提であり、投資判断の中身は「どの堀が何年持つか」という戦略の問いのまま残る。AI が変えるのは計算の速さで、問いの質ではない。

投資家が使う順番

報告と日本のデータを合わせると、使う順番は4つになる。1つ目に ROIC と k の差を実額で出し、キャッシュフローの符号で段階を確かめる。導入や衰退の企業にはこの手順を使わない。2つ目に業種の減衰率と会社ごとの持続性を見る。日本では情報・通信、化学、電気機器の利益率の相関が0.8〜0.9と高く、任天堂エムスリーのように業種の中で1社だけ急減する例がある。3つ目に PVGO の比率と、PVGO を NOPAT で割った年数を、減衰率から出る半減期と比べる。20年分を織り込む株に対しては、半減期3年の6倍の期間にわたり堀を作り続ける根拠を求める。4つ目に、市場が織り込む CAP と戦略分析で見立てる CAP の差を探す。東証が2026年4月28日に示した「経営資源の適切な配分」の要請も、企業側にこの差を埋める説明を求めるものである。

確かめられなかったこと

モルガン・スタンレーの報告PDFは本誌の取得環境から403で読めず、数値は同社の公開ページ (4月、69ページ、5〜20年、68%、9.7%、0.71)、エドワード・コナードの要約 (11.7年、6.8年、18社対82社、減衰率0.10〜0.30と平均0.21、IT の19%対10.8%) と、6ページの要旨に拠った。ベッセンバインダーの「0.7%の企業が91兆ドルの75%超」は要旨の記載で、本人の論文は2025年版の「上位4%が純利得のすべて」で照合した。日本の持続性は投下資本が全社で揃わないため ROIC ではなく営業利益率で測り、業種の標本が8〜40社と小さい。6社の PVGO は期末 PER に基づくため決算期末時点の値で、現在の株価とは異なる。k = 8% は本誌の仮定である。e-Stat の法人企業統計の年度別集計は本稿では利益率の水準確認 (7.4%) に限って使い、業種別の減衰率の推計には用いなかった。米セントルイス連銀の FRED は9月3日から6日にかけて接続できず、米国債利回りは報告の WACC 9.1% の前提をそのまま使った。

次に見る日付

日本企業の有価証券報告書は6月下旬に揃うため、2027年3月期の利益率の持続性と PVGO は2027年6月に更新できる。マイクロソフトの次の10-K は2027年7月、エヌビディアは2027年2月で、ROIC の幅がどれだけ縮むかが減衰率の実測になる。東証の「資本コストや株価を意識した経営」の開示企業一覧は四半期ごとに更新され、企業が自ら置く資本コストと ROIC の差が読める。報告が見過ごされてきたと指摘した変数は年数であり、年数は毎年1つずつしか確かめられない。