トークンとは
読み: とーくん Token AI計算資源・大規模モデルの用語
トークンは、生成AIの言語モデルが文章を処理するときの単位である。1文字、語の一部、語全体、句読点のいずれも1トークンになり得る。区切り方はモデルごとに違い、同じ文でもモデルが変わればトークン数が変わる。APIの利用料金も、一度に扱える文章の長さの上限も、トークン数で決まる。
Postation 編集部 ・ 2026年10月13日 更新
トークンの意味 — 文字数とも語数とも違う単位
言語モデルは、文章をそのまま読むわけではない。まず文章を細かい断片に分け、断片ごとに、モデルが持つトークンの一覧 (語彙) の番号に置き換えてから計算する。この断片がトークンで、文章をトークンに分ける仕組みをトークナイザーと呼ぶ。
米オープンAIは、トークンを「モデルが文章を処理する単位」と説明し、1文字、語の一部、語全体、句読点のいずれにもなるとしている。空白の有無も区切り方に影響するという。米アンソロピックも、トークンは語、語の一部、1文字のいずれかに当たり、場合によってはバイト (8ビットを1組にしたデータの単位) にもなると説明している。
トークン数は、文字数とも語数とも必ずしも一致しない。オープンAIによると、トークン数はモデルや符号化の方式で変わり、同じ内容でも言語によって異なる。同じ会社のモデルでも、世代が替わるとトークン数が変わることがある。アンソロピックによると、クロード4.7以降のモデルが使う新しいトークナイザーでは、同じ文章のトークン数が以前より約30%増える。
モデルは入力されたトークンの並びを読み、次に来る候補ごとに確率を計算して1つを選ぶ。選んだトークンを入力の末尾に加え、さらに次の1トークンを選ぶ。文章はこの繰り返しで1トークンずつ生成される。この方式を自己回帰生成と呼ぶ。
1トークンは何文字か — 英語の目安と、日本語でトークン数が変わる例
各社は英語について目安を示している。オープンAIは、英語では1トークンが約4文字、単語にして約4分の3語に当たり、100トークンは約75語になるとしている。米グーグルは、ジェミニでは1トークンが約4文字、100トークンが英語の約60〜80語に当たるとしている。アンソロピックは、クロード4.7より前のモデルでは1トークンが英語の約3.5文字に当たったとしている。
| 会社 | 英語の目安 | 日本語の目安 |
|---|---|---|
| オープンAI | 1トークンは約4文字・約4分の3語。100トークンは約75語 | 示していない (英語以外では文字数との関係が異なると注記) |
| グーグル (ジェミニ) | 1トークンは約4文字。100トークンは約60〜80語 | 示していない |
| アンソロピック (クロード) | クロード4.7より前のモデルで1トークンは約3.5文字。4.7以降は同じ文でトークン数が約30%多い | 示していない (モデルと言語で変わると注記) |
(出所: 各社のトークンの説明ページ。2026年10月13日時点)
日本語については、3社ともトークンの説明ページで、1文字が何トークンになるかの目安を示していない。手がかりになるのは、トークナイザーを日本語向けに変えた例だ。AI開発のELYZA (イライザ) によると、米メタの言語モデル「Llama 2」は語彙に日本語が少ないため、同じ内容を表すのに日本語は英語より多くのトークンを要した。同社は日本語の語彙を1万3,042個追加し、同じ日本語の文章に要するトークン数を従来の約55%に抑えた。トークン数が減った分を推論の速度に換算すると、約1.8倍に当たるという。
オープンAIも、2024年5月に公開したGPT-4oで新しいトークナイザーを採用した。同社が示した日本語の例文では、トークン数が従来の37から26に減った。英語の例文は27から24への減少で、減少率は日本語のほうが大きかった。料金はトークン数に応じて決まるため、同じ単価なら、トークン数が少ないほど同じ文章を安く処理できる。
区切り方の起源 — 語の一部を単位にした2つの論文
いまの言語モデルの多くは、語をさらに細かく分けた「サブワード」をトークンにしている。サブワードをニューラル機械翻訳の単位にする方法を示したのが、英エディンバラ大学の研究者3人の論文だ。2015年8月に論文の公開サイトarXivに掲載され、2016年に計算言語学の国際学会ACLで採択された。論文は、ニューラルネットワークを使う翻訳モデルの語彙は通常3万〜5万語に限られる一方、翻訳では語彙にない語が次々に出てくると指摘した。そこで研究者らは、まれな語や未知の語をサブワードの組み合わせで表すことにした。
論文が使ったのは、BPE (バイト対符号化) と呼ぶ手法である。もとは1994年に発表されたデータ圧縮の手法で、データの中で最も多く現れる2バイトの組を、使われていない1バイトに置き換える作業を繰り返す。論文はこれを、バイトの代わりに文字や文字列の組を1つにまとめる方法に作り替えた。よく出る組み合わせほど1つのトークンにまとまり、まれな語は細かいトークンに分かれる。アンソロピックも、長いトークンは学習と推論の効率を高め、短いトークンはまれな語や学習で出合わなかった語を扱えるようにすると説明している。
空白で語を区切らない日本語のような言語でも使えるようにしたのが、グーグルの工藤拓氏らが2018年に発表したSentencePiece (センテンスピース) である。論文によると、それまでのツールは主に空白で語を区切る欧州の言語向けに作られており、日本語や韓国語、中国語では、あらかじめ別のツールで文章を単語に区切る必要があった。SentencePieceは、区切りを入れていない文章から直接学習でき、特定の言語に依存しない。空白も専用の記号に置き換え、ほかの文字と同じように扱う。論文は英語と日本語の間の機械翻訳で検証し、区切りを入れない文章から学習しても同等の精度が得られることを確かめた。
料金と扱える長さはトークンで決まる — 入力と出力で単価に差
生成AIのAPIの料金は、使ったトークンの数に応じて決まる。単価は100万トークンあたりで示され、入力と出力で異なる。アンソロピックの料金表では、出力の単価は入力の5倍だ。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| クロード・オーパス5.5 | 4ドル | 20ドル |
| クロード・ソネット5.5 | 2ドル | 10ドル |
(100万トークンあたりの基本料金。出所: アンソロピックの料金ページ、2026年10月13日時点。料金は改定されることがある)
単価だけでは費用を比べられない。オープンAIは、100万トークンあたりの単価が安くても、支払う総額が少なくなるとは限らないと注意を促している。モデルによって同じ文章の区切り方が違い、出力する量も違うためだ。回答を出す前に考える過程で生じるトークン (推論トークン) も、回答には表示されないが、出力として料金がかかる。繰り返し使う入力をあらかじめ保存しておく機能 (キャッシュ) を使うと、その入力には別の単価が付くこともある。
一度に扱える文章の長さ (コンテキストウィンドウ) も、トークンの数で決まる。アンソロピックによると、オーパス5.5とソネット5.5が一度に扱える長さは100万トークンで、1回に出力できるのは最大12万8,000トークンだ。同社は、扱うトークンが増えると、正確さや前の内容を思い出す力が落ちるとも説明している。グーグルのジェミニは、文章以外のデータもトークンに換算する。縦横とも384ピクセル以下の画像は258トークン、動画は通常の処理で1秒あたり263トークン、音声は1秒あたり32トークンだ。
トークンが収益に変わる仕組みは、体系解説の「収益化の構造」の章で取り上げた。AIエージェントが使うトークンの多くが、読んだ内容の読み直しに費やされている実例は、エージェントのトークン費用を検証した記事で扱った。トークンから電力に至るAI投資の流れは、「AI投資の地図」の記事にまとめた。
ほかの分野のトークンとの違い — 暗号資産と認可
トークンという語は、AI以外の分野でも使われる。インターネットで「トークン」を検索すると、AIと暗号資産の情報が混ざって表示されることがある。意味はまったく違う。
| 分野 | 何を指すか | 定義の出所 |
|---|---|---|
| 生成AI | 言語モデルが文章を処理する単位。料金や扱える長さの上限もこの数で決まる | 各社の説明 |
| 暗号資産・電子記録移転権利 | 電子的な記録で移転できる財産的価値や権利 (株式・社債をトークンにしたものは電子記録移転権利に含まれない) | 資金決済法 (暗号資産)、金融商品取引法 (電子記録移転権利) |
| 認可 (OAuth) | 保護されたデータやサービスを使うための資格情報 (アクセストークン)。利用者の許可を受け、アプリ (クライアント) に発行される | OAuth 2.0の仕様 (RFC 6749) |
暗号資産の分野でいうトークンは、電子的に記録され、ネットワークを通じて移転できる価値を指すことが多い。資金決済法は、不特定の者との支払いや売買に使え、電子的に移転できる財産的価値を「暗号資産」と定めている。信託受益権やファンドの持ち分などの権利を電子的な記録で移転できるようにしたものは、金融商品取引法が「電子記録移転権利」と定めている。株式や社債をトークンにしたものは、この電子記録移転権利には含まれない。資産や権利を電子的な記録で表すことをトークン化と呼ぶ。米証券保管振替機関 (DTCC) による株式と米国債のトークン化は、別の記事で扱った。
OAuth 2.0は、利用者の許可を受けたアプリが、別のサービスに保管されたデータを使うための仕組みである。その仕様は、アクセストークンを、保護されたデータやサービスを利用するための資格情報と定め、アプリに与えられた認可を表す文字列だとしている。使える範囲と有効期間はトークンごとに決まる。AIのトークンとは、名前が同じだけで関係はない。
トークンのよくある質問
AIのトークンとは何か
生成AIの言語モデルが文章を処理する単位。区切り方はモデルごとに違い、同じ文でもモデルが替わればトークン数が変わる。APIの料金や一度に扱える文章の長さも、トークンの数で決まる。
日本語の1文字は何トークンか
オープンAI、グーグル、アンソロピックはいずれも、トークンの説明ページで日本語の目安を示していない。トークン数はモデルと言語で変わり、トークナイザーの違いでも大きく変わる。ELYZAは日本語の語彙を足して、同じ文章のトークン数を約55%に減らした。オープンAIのGPT-4oでは、日本語の例文が37トークンから26トークンに減った。
トークンと文字数の違いは
トークンの数は、文字数とも語数とも必ずしも一致しない。英語ではオープンAIとグーグルが1トークンを約4文字と示しているが、トークン数はモデルや符号化の方式、言語によって変わる。
AIのトークンと暗号資産のトークンは同じものか
別のものである。AIのトークンは文章を処理する単位で、暗号資産のトークンは電子的な記録で移転できる価値や権利を指す。日本の法律では、資金決済法が暗号資産を、金融商品取引法が電子記録移転権利を定めている。株式や社債をトークンにしたものは、電子記録移転権利に含まれない。
出典: オープンAIのヘルプセンター「トークンの理解と数え方」(2026年10月13日に確認)、アンソロピックの用語集「トークン」(2026年10月13日に確認)、アンソロピックの料金ページ (2026年10月13日に確認)、グーグルのジェミニAPIの解説「トークンを理解して数える」(2026年9月23日更新)、センリッチほか「サブワード単位によるまれな語のニューラル機械翻訳」(2015年)、工藤・リチャードソン「SentencePiece:ニューラル文章処理のための、簡単で言語に依存しないサブワード分割・復元ツール」(2018年)、オープンAI「GPT-4oが登場」(2024年5月13日)、ELYZAの公式ブログ (2023年8月29日)、資金決済に関する法律第2条 (e-Gov法令検索)、金融商品取引法第2条 (e-Gov法令検索)、OAuth 2.0の仕様 (RFC 6749、2012年10月)
3段で深く知る — 基礎・高級・投資家視点
1行の定義から、体系解説の該当箇所へそのまま降りられる。抜粋は体系解説でこの語が出てくる箇所から引いた。続きはリンク先にある。
第II部 仕組み ② AIの仕組み — なぜ次の1語が当たるのか
前章で見たとおり、AIの正体は掛け算と足し算の堆積である。ではその演算は何を計算しているのか。 本章は言葉が数値になり、文脈が行列になり、確率から1語が選ばれて戻ってくるまでを追う。 ここを押さえると、後章のトークン原価・KVキャッシュ・MoEの経済性が、比喩ではなく物理として読める。 1トークンが出るまでの処理の流れ 入力文をトークンに分け、埋め込みと位置情報を与え、Transformerブロックを繰り返し通し、ロジットから確率を計算して1トークンを選び、それを末尾に足して再び戻る自己回帰の流れ。KVキャッシュは繰り返しのたびに再利用され、増え続ける。 入力文「AIの仕組みを教えて」 ① トークン化 AI の 仕組 みを 教えて 単語ではなく統計で決めた切れ目 ② 埋め込み + 位置情報 数百〜数千次元のベクトル列 ③ Transformerブロック × N層 注意機構 (全トークン対の…
第III部 経済 ④ 収益化の構造 — トークンはどう金に変わるか
モデル提供社の収益は大きく個人購読 (月額定額) と企業向けトークン従量課金 (API) の2本柱で、 これに大企業向けの専用容量契約が加わる。価格を決める変数は有効パラメータ量・文脈長・速度の3つに集約される。 4.1 個人購読 — 定額制は「保険」の商売である 月額20ドル前後の購読は、軽い利用者の払い過ぎが重い利用者の原価を補助する保険型の収益構造である。 提供側は利用上限・混雑時制限で重利用者の原価を抑え、全体で粗利を成立させる。 解約率が低く売上が読めるため、資本市場はAPI売上より購読売上を高く評価する傾向がある。 4.2 トークン従量課金 — 価格表の読み方 API価格は「入力100万トークンあたり / 出力100万トークンあたり」で表示される。 出力が入力の約5倍高いのは気まぐれではなく、入力の読込 (プリフィル) は一括並列で安く処理できるのに対し、 出力の生成 (デコー…
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