後工程とは
読み: こうこうてい Back-end Process 半導体の用語
後工程は、半導体の製造のうち、回路をつくり終えたウエハーを切り分けてチップにし、パッケージに組み立て、検査して製品に仕上げる工程である。内閣府の報告書は、ウエハーを切断するダイシングから先を一般に後工程と呼ぶと説明している。英語では back-end process などと呼ぶ。
Postation 編集部 ・ 2026年10月13日 更新
後工程の意味 — ダイシングから先が後工程
半導体の製造は、大きく前工程と後工程に分かれる。前工程は、シリコンウエハー上にトランジスタや配線をつくる工程である。内閣府の地域課題分析レポート (2024年夏号) によると、ウエハー上に回路と電極をつくり、検査で良品と不良品を見分けるところまでを一般に前工程と呼ぶ。
後工程はその先である。同レポートによると、後工程ではウエハーを切断してチップにし、チップを固定して外部とつなぎ、パッケージに収めて成形し、試験と検査を経て製品に仕上げる。同レポートは後工程を、①ダイシング、②ボンディング、③モールディング、④最終検査の4つに分けている。
日本半導体製造装置協会は、後工程を組み立てと検査の2つに分けている。組み立ては、ウエハーをチップに切り分けて金属の枠 (リードフレーム) に固定し、チップとリードフレームを金線などで結び、樹脂やセラミックのパッケージに封入する工程である。検査の工程では、温度と電圧の負荷をかける試験 (バーンイン) や電気特性と外観の検査を行い、製品名などを印字する。
後工程の主な流れ — ワイヤーボンディングからフリップチップへ
後工程の中身は、チップと外部をどうつなぐかで変わる。ラピダスの技術解説によると、かつてはチップと外部を細い金属線で結ぶワイヤーボンディングが使われていたが、現在は、チップの表面にバンプと呼ぶ突起状の接続端子を設けるフリップチップ実装が主流になっている。
| 工程 | 何をするか |
|---|---|
| バンプ形成 | ウエハーの状態のまま、チップの表面に突起状の接続端子をつくる (フリップチップ実装の場合) |
| ダイシング | ダイヤモンドの刃などでウエハーを切り、チップを1つずつ取り出す |
| ボンディング (接合) | チップを基板やリードフレームに固定し、金属線やバンプで外部とつなぐ |
| アンダーフィル充填 | バンプでつないだチップと基板の隙間を樹脂で埋める (フリップチップ実装の場合) |
| モールディング (封止) | チップを傷や衝撃から守るため、樹脂で覆う |
| 最終検査 | バーンインなどの信頼性試験と電気特性の検査で良品を選び出す |
(出所: 内閣府の地域課題分析レポート、日本半導体製造装置協会、ラピダスの技術解説。順序は方式や製品で異なる)
後工程を専門に請け負う会社はOSAT (Outsourced Semiconductor Assembly and Test の略。半導体の組み立てと検査の受託会社) と呼ばれる。ラピダスの技術解説によると、自社で後工程を行うメーカーもあるが、OSATが担う場合が多い。台湾のOSATが進める値上げは関連記事で取り上げた。
後工程では、複数のチップを1つのパッケージにまとめる先端パッケージングの開発も進む。ラピダスは2024年10月、北海道千歳市のセイコーエプソンの事業所内に、後工程の研究開発拠点「ラピダス・チップレット・ソリューションズ (RCS)」を設けると発表した。クリーンルームは約9,000平方メートルで、シリコン製の中間基板 (インターポーザ) や再配線層、チップ同士を直接つなぐハイブリッド接合などの試作ラインを置く。拠点は2026年4月に本格稼働した。代表的な先端パッケージングである台湾積体電路製造 (TSMC) の「CoWoS」は、用語解説「CoWoSとは」で説明した。
後工程とBEOLの違い — 英語名に back-end と付いても配線は前工程
後工程を英語で調べると、似た語のBEOL (back-end-of-line) に行き当たる。名前は似ているが、指す範囲は違う。
| 用語 | 何をする工程か | 前工程か後工程か |
|---|---|---|
| FEOL (front-end-of-line) | トランジスタなど、電気の流れを制御する素子をつくる | 前工程 |
| BEOL (back-end-of-line) | 素子同士の間や、チップの外とつなぐ部分まで、電力と信号を送る配線をつくる | 前工程 |
| 後工程 (back-end process) | ウエハーをチップに切り分け、組み立て、検査して製品にする | 後工程 |
(出所: JEDECの用語集、日本半導体製造装置協会、内閣府の地域課題分析レポート、ラピダスの技術解説)
表のBEOLの定義は、米国の半導体の標準化団体JEDECの用語集による。BEOLはウエハーの上で行う作業なので、前工程に含まれる。日本半導体製造装置協会も、配線用の金属膜をつくる作業を前工程に含めている。BEOLは前工程の後半、後工程はウエハーを切り分けた後と覚えると混同しにくい。
ラピダスの英語版の技術解説は、製造を front-end と back-end の工程に分け、後工程を back-end process と書いている。前工程の説明は用語解説「前工程とは」にある。
後工程と日本企業 — 削る・切る装置は9割超、ボンディング装置は最大でも2割強
後工程の装置と材料では、日本企業のシェアが高いものが多い。経済産業省が野村総合研究所に委託した調査 (2022年度、数値は2021年) は、日本に本社を置く企業のシェアを合計して示している。
ウエハーを薄く削るバックグラインダは99.9%、切り分けるダイシング装置は97.9%と、ほぼすべてを日本企業が占める。一方、チップを固定したり接続したりするボンディング装置は、ダイボンディング装置が22.4%、フリップチップボンディング装置が19.8%、ワイヤーボンディング装置が8.7%にとどまる。調査は、日本は後工程で市場の50%を占める有力な装置を持つ一方、残る半分を占めるボンディング装置では海外に後れを取っていると指摘している。
材料でも、ウエハーを削る工程や切る工程で使うテープは日本企業のシェアが9割を超える。
| 主な材料 | 日本企業のシェア |
|---|---|
| バックグラインドテープ | 96.1% |
| ダイシングテープ | 94.4% |
| ダイボンディングフィルム | 84.1% |
| 半導体封止材 | 58.3% |
| ボンディングワイヤー | 53.1% |
| はんだボール | 43.0% |
(2021年。調査に載る材料から抜粋。出所: 経済産業省の委託調査 (野村総合研究所)。同調査は富士経済と富士キメラ総研の資料による)
個々の企業も、後工程での自社の強みを説明している。精密加工装置大手のディスコは、ダイシングソーやグラインダなど「切る・削る・磨く」装置を手がける。樹脂封止装置のTOWAは統合報告書のトップメッセージで、樹脂成形の技術で後工程に事業の基盤を築いたとし、AI向けのメモリーでは同社の装置のシェアが100%になったと説明している。東京精密は会社案内で、半導体製造装置の部門が、同社の区分でいうウエハー製造、テスト、後工程の分野で世界のトップシェアを確立したと説明している。半導体試験装置 (テスター) のアドバンテストは、1985年にこの市場で世界シェア1位になったとしている。
経済産業省は2026年に改訂した半導体・デジタル産業戦略で、後工程の製造と、後工程で使うパッケージ基板や封止材などの部素材を、先端品と従来品の双方を支える基盤と位置づけた。国内の後工程拠点について、中長期的な再編・統合も含めて検討するとしている。
工程ごとの日本企業の位置づけは体系解説の「主要企業の比較」の章で、後工程の詳細は体系解説の第II部「作る」の後工程の節で扱った。四角いパネル状の基板を使う次世代の実装と日本の装置メーカーは、TSMCのCoPoSの記事で取り上げた。
後工程のよくある質問
後工程とは何か
半導体の製造のうち、回路をつくり終えたウエハーを切り分けてチップにし、組み立て、検査して製品に仕上げる工程。内閣府の報告書は、ダイシング以降を一般に後工程と呼ぶと説明している。
後工程は英語で何というか
back-end process などと呼ぶ。後工程を専門に請け負う会社はOSAT (半導体の組み立てと検査の受託会社) と呼ばれる。
前工程と後工程の違いは
前工程はウエハーの上にトランジスタと配線をつくる工程で、後工程はそのウエハーを切り分けてチップにし、パッケージに組み立てて検査する工程である。配線をつくるBEOLは英語名に back-end を含むが、前工程の一部である。
後工程で日本企業が強い分野は
経済産業省の委託調査 (2021年の値) では、バックグラインダの99.9%、ダイシング装置の97.9%を日本企業が占める。材料でもバックグラインドテープやダイシングテープなどで、日本企業のシェアが高い。一方、チップを固定・接続するボンディング装置のシェアは最大でも2割強にとどまる。
出典: 内閣府「地域課題分析レポート (2024年夏号)」第1章、日本半導体製造装置協会「半導体製造工程」(2026年10月13日に確認)、ラピダス 技術解説「半導体後工程を解説」(2025年11月28日)、ラピダス 技術解説の英語版 (2026年10月13日に確認)、JEDEC 用語集「BEOL」(2026年10月13日に確認)、JEDEC 用語集「FEOL」(2026年10月13日に確認)、経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」(2026年改訂)、経済産業省の委託調査「令和4年度重要技術管理体制強化事業 (半導体製造後工程及び実装工程に係る重要技術動向調査) 報告書」(野村総合研究所)、ラピダスの発表 (2024年10月3日、後工程の研究開発拠点RCSの開設)、ラピダスの発表 (2026年4月11日、RCSの本格稼働)、ディスコ 投資家情報「事業分野」(2026年10月13日に確認)、TOWA 統合報告書2025、東京精密 会社案内 (2026年10月13日に確認)、アドバンテスト 統合報告書2025
3段で深く知る — 基礎・高級・投資家視点
1行の定義から、体系解説の該当箇所へそのまま降りられる。抜粋は体系解説でこの語が出てくる箇所から引いた。続きはリンク先にある。
第II部 作る 3.8 後工程 — 供給の上限を決めているのは露光装置ではない
ここまでは円板の上に回路を作る前工程を扱ってきた。だが円板は製品ではない。 切り分け、固定し、配線をつなぎ、樹脂で覆って初めて出荷できる。この一連を 後工程 と呼ぶ。 長らく労働集約的な下流工程と見なされてきたが、AI 用演算器の供給制約が実際に発生しているのは、 露光ではなく後工程の先端実装である。演算器と高帯域メモリを1つの土台に載せる工程の容量が世界的に不足し、 前工程に余力があっても出荷できない状態が続いた。 表を縦に読むと、日本勢が前工程よりも後工程で強い位置を占めていることがわかる。 切り分け装置は世界の約8割、封止材料は過半、検査装置と接合材料でも上位にある。 前工程の露光装置では不在に近い日本が、後工程では代替の効かない担い手になっている。 微細化の物差しから外れた領域ほど、日本の持ち分が残っているという構図は、 前節のパワー半導体・光半導体と同じ形をしている。
第III部 設計する ④ 基盤構成 (アーキテクチャ)
…チップ設計とは別の道具立てだが、後工程が主戦場になった現在、両者の境界は薄れつつある。 5.2 5つの領域と主な供給者 — 一覧を資本関係まで含めて読む 供給者は総合ツール大手3社 (シノプシス・ケイデンス・シーメンスEDA) と、領域ごとの専業に分かれる。 ただし独立企業として名前が並ぶ会社の一部は、既に他社の傘下にある。名前の数と意思決定の数は違う — この読み替えが投資でも地政学でも効く。 領域 大手3社の製品 専業・独立系 資本関係の注記 アナログ・高周波・電力・MEMS ケイデンス (Virtuoso) ジーダット (日本)、シルバコ、キーサイト (PathWave ADS)、アンシス、コベンター アンシスは2025年7月シノプシス傘下。コベンターはラムリサーチ傘下 論理・回路シミュレーション / 検証 シノプシス (VCS・PrimeSim)、ケイデンス (Xcelium・Sp…
第V部 産業と勢力図 ⑨ 主要企業の比較 — 工程ごとに誰が立っているか
…ディスコは後工程で円板を切り分ける装置で世界の8割を占め、置き換えられる装置が他にない。 信越化学 + SUMCO でシリコンウエハ世界 60% を寡占。 9.4 設計専業 (ファブレス) の比較 9.5 先端の世代が7ナノで止まる理由 — 4つそろわないと進めない 先端の世代は設計まではできても、製造の段で止まる。理由は輸出規制だけではない。 露光装置・感光材・設計ソフト・量産の作り込みの4つがそろって初めて動く構造で、どれか1つを自前で用意しても、残りが欠ければ歩留まりが出ない。 9.6 日本の半導体大手と研究機関 — どの層に立っているか
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