米証券大手の推計で、GB300まで前の世代と同額だったラック1台あたりの基板の搭載額は、VR200で2.4倍に増える。GPUを載せたトレーの中のケーブルを中央の基板に替えた世代にあたり、材料の銅箔と積層板はそれを上回って増える。
米モルガン・スタンレーの調査部門が、AIサーバーのラック1台あたりに使うプリント基板、その材料の銅張積層板、さらにその材料の銅箔の搭載額を、エヌビディア、AMD、グーグル、アマゾン・ドット・コムの4社について世代ごとに推計した。推計表は中国語の解説とともに出回っており、解説はエヌビディアの銅箔と銅張積層板の伸びが特に大きいとして、VR200がGB300に比べて銅箔で約204%、銅張積層板で180%、プリント基板で143%増えることを挙げる。銅張積層板は、ガラス繊維の布に樹脂をしみ込ませた板に銅箔を張った材料で、これに回路を形成して何枚も重ねたものがプリント基板になる。推計の元になった報告書は入手できておらず (未取得)、本稿は4枚の表の数字と各社の公表資料を突き合わせた (取得日2026年9月15日)。
表の数字を並べ直すと、エヌビディアのラック1台あたりのプリント基板の搭載額は、GB300の3万7,491ドルからVR300の15万4,377ドルへ2世代で4.1倍になり、材料の銅張積層板は5.3倍と基板を上回る (記者の計算)。増加の大半は、同社がトレーの中の配線を基板に置き換えたVR200の1世代で起き、その次の世代では銅箔の伸びが10%にとどまる。前の世代からの伸び率で見ると、銅箔を除いて最も大きいのはエヌビディアではなく、エヌビディアのラック規格を採用するアマゾンの「トレイニアム4」である。基板と材料の需要を見通すには、半導体の世代の数ではなく、各社がどの世代でラックの組み立て方を変えるかを追う必要がある。
エヌビディアのプリント基板はGB300まで前の世代と同額で、VR200で9万1,227ドルに増える
モルガン・スタンレーの推計では、エヌビディアのラック1台あたりの銅箔はGB300が1,697ドル、VR200が5,164ドル、VR300が5,705ドルである。銅張積層板は6,695ドル、1万8,750ドル、3万5,601ドル、プリント基板は3万7,491ドル、9万1,227ドル、15万4,377ドルと推計する。前の世代からの伸び率はGB300が銅箔15%、積層板1%、基板0%、VR200が204%、180%、143%、VR300が10%、90%、69%である。金額から計算し直すとVR200は204.3%、180.1%、143.3%、VR300は10.5%、89.9%、69.2%となり、表の伸び率と一致する (記者の計算)。
GB300の伸び率から前の世代のGB200を逆算すると、銅箔は約1,476ドル、銅張積層板は約6,629ドル、プリント基板は3万7,491ドルで、基板はGB300と同額になる (記者の計算)。エヌビディアの技術ブログ (2026年3月16日) によると、同社はGB200を載せたラック (GPU72個) を2024年に初めて出荷し、GB300を載せたラックを2025年に出荷した。後継の「ルービン」を載せたラックは量産に入っており、2026年後半に出荷する予定だという。推計表のVR200は、この出荷の順番からルービン世代のラックにあたるとみられる (記者の見立て)。
同じブログは、ルービン世代のラックに入るGPUトレーをブラックウェル世代から全面的に設計し直したと説明する。トレーの中央に置いた基板がケーブルに代わって部品同士をつなぎ、ケーブルもホースもファンも使わない。組み立て時間は約2時間から5分に短くなり、最大20倍速くなるという。同社はこの世代の標準ラックを、基板による接続を優先する設計と位置づけている。ラックにはGPU72個とCPU36個を載せたGPUトレー18枚と、スイッチを載せたトレー9枚が入り、部品の数は全体で130万個にのぼる。GPUトレー1枚には、CPUとGPUを1つの基板にまとめた部品 (1つ1万7,000部品) が2つ載る。
どちらの世代もGPUは72個なので、基板の搭載額をGPU1個あたりに直すと、GB300の521ドルがVR200で1,267ドルになる (記者の計算。モルガン・スタンレーがスイッチを載せたトレーなどを含めて推計したかは未確認)。一方で、ラックの背面でGPU同士をつなぐ部分には、長さの合計が3キロメートルを超える銅ケーブル5,000本を収めた交換用の部品が4つ残る。基板に置き換わったのはトレーの中の配線で、ラック全体からケーブルがなくなるわけではない。基板の搭載額が2.4倍になった世代と、トレーの中の配線を基板に置き換えた世代が重なることは確かめられるが、モルガン・スタンレーが伸びの理由をどう説明しているかは未取得である。
VR300では積層板が90%増える一方、銅箔は10%増にとどまる
GB300からVR300までの2世代で見ると、エヌビディアのラック1台あたりの銅箔は3.4倍、銅張積層板は5.3倍、プリント基板は4.1倍になる (記者の計算)。基板の搭載額に対する積層板の比率は、GB300の17.9%からVR200で20.6%、VR300で23.1%に上がる。基板メーカーは積層板を材料として購入するため、基板の価格に占める材料費の割合が世代ごとに高まる計算になる (記者の見立て。基板の金額に積層板の金額が含まれるかは推計表に記載がない)。
銅箔は積層板と違う動きをする。積層板の搭載額に対する銅箔の比率は、GB300の25.3%からVR200で27.5%に上がったあと、VR300で16.0%に下がる。銅箔の金額が積層板に含まれると仮定して積層板から銅箔を差し引くと、残りはVR200の1万3,586ドルからVR300の2万9,896ドルへ120%増える (記者の計算)。VR300の世代で積層板の金額を押し上げるのは銅箔ではなく、樹脂やガラス布、積層板の加工だと読み取れる (記者の見立て)。材料の品質等級の違いは、ルービン・ウルトラ向けのラックと積層板の等級を扱った記事で取り上げた。
VR300がどの構成のラックかは、推計表からは分からない (未確認)。技術ブログによると、次の「ルービン・ウルトラ」は、GPU72個のラック8台をつないでGPU576個を一体で動かす構成、「カイバー」と呼ぶ新しいラックにGPU144個を収める構成、1台に72個の構成の3種類で提供する。同社の公式ブログ (2025年10月13日) は、カイバーではGPUを載せた基板を本棚の本のように縦に並べて1つの筐体に18枚を収め、背面のスイッチの基板とはケーブルを使わずに中央の基板でつなぐと説明している。カイバーを前提にした推計なら、ラック1台に載るGPUの数が倍になるため、1台あたりの搭載額の伸びはGPU1個あたりの伸びより大きくなる (記者の見立て)。
AMD・グーグルも次の世代で積層板がプリント基板を上回って伸び、伸び率が最も大きいのはトレイニアム4
AMDについては、MI400系 (推計表の表記はMI4XX) のラック1台あたりの銅箔を9,610ドル、銅張積層板を2万99ドル、プリント基板を6万6,143ドル、MI500系を9,734ドル、3万7,268ドル、11万4,188ドルと推計する。伸び率は銅箔1%、積層板85%、基板73%である。AMDによると、同社のラック「ヘリオス」はGPUを4個ずつ載せたトレー18枚で計72個を収める (2026年7月23日発表)。同社は2025年11月11日の説明会でヘリオスを2026年7〜9月期に提供するとし、MI500系を載せる次のラックは2027年に投入するとした。GPU72個で割ったMI400系の基板の搭載額は919ドルで、同じ2026年に出荷が始まるエヌビディアVR200の1,267ドルより少ない (記者の計算)。一方、MI400系の銅箔は積層板の47.8%を占め、金額はVR200の5,164ドルの1.86倍にあたる。AMDだけ銅箔の比率が高い理由は推計表に記載がなく、確認できなかった (未確認)。
グーグルのTPUは、第7世代が銅箔1,783ドル、積層板6,550ドル、基板1万9,474ドル、第8世代が4,457ドル、1万3,009ドル、3万7,861ドル、第9世代が4,657ドル、3万2,288ドル、8万7,906ドルである。伸び率は第8世代が銅箔150%、積層板99%、基板94%、第9世代が4%、148%、132%となる。グーグルは第7世代の「アイアンウッド」を1ラックに64個載せると公表しており、第7世代の基板を64個で割ると1個あたり304ドルになる (記者の計算)。同社は2026年4月23日に第8世代の「TPU 8t」と「TPU 8i」の技術の詳細を公表したが、第9世代の構成は明らかにしていない。基板に対する積層板の比率は第7世代の33.6%から第8世代で34.4%、第9世代で36.7%に上がり、MI400系の30.4%からMI500系の32.6%に上がるAMDと同じ傾向を示す。
アマゾンのトレイニアムは、トレイニアム2が銅箔1,423ドル、積層板9,599ドル、基板2万4,500ドル、トレイニアム3が3,266ドル、1万218ドル、2万6,287ドル、トレイニアム4が6,855ドル、3万2,789ドル、8万4,770ドルである。伸び率はトレイニアム3が銅箔129%、積層板6%、基板7%、トレイニアム4が110%、221%、222%となる。トレイニアム3の銅箔の伸び率は金額から計算すると129.5%で、表の129%とは端数の処理が異なる (記者の計算)。基板に対する積層板の比率はトレイニアム2の39.2%、トレイニアム3の38.9%、トレイニアム4の38.7%とほぼ変わらない。
トレイニアム3からトレイニアム4への伸びは、エヌビディアのVR200の伸びを上回る。アマゾンは2025年12月に、1システムで最大144個をつなぐトレイニアム3を投入した。エヌビディアの技術ブログ (2025年12月2日) によると、アマゾンはトレイニアム4を、エヌビディアの第6世代の半導体同士をつなぐ技術と、ルービンと同じ標準ラックに合わせて設計し、ルービン世代のスイッチを載せたトレーで自社開発の半導体を最大72個つなぐ。トレイニアム4の基板の搭載額8万4,770ドルは、同じ標準ラックを使うVR200の9万1,227ドルの92.9%にあたる (記者の計算)。基板による接続を優先するラックに移る世代で基板の搭載額が急増する点で、トレイニアムはエヌビディアと同じ経過をたどる (記者の見立て)。
解説はエヌビディアの銅箔と積層板の伸びが特に大きいとするが、推計表で前の世代からの伸び率が最も大きいのは、銅箔こそエヌビディアVR200の204%だが、積層板はトレイニアム4の221%、基板も同じくトレイニアム4の222%である。エヌビディアが際立つのは銅箔の伸び率と基板の搭載額の大きさで、最後の世代の基板はエヌビディアの15万4,377ドルが、AMDの11万4,188ドル、グーグルの8万7,906ドル、アマゾンの8万4,770ドルを上回る。最初の世代から最後の世代までの倍率は、グーグルが銅箔2.6倍、積層板4.9倍、基板4.5倍、アマゾンが銅箔4.8倍、積層板3.4倍、基板3.5倍である (記者の計算)。
最後の世代では、銅箔の伸びがAMDで1%、グーグルで4%、エヌビディアで10%にとどまり、積層板はそれぞれ85%、148%、90%伸びて、基板の伸び (73%、132%、69%) を上回る。銅箔が110%伸びるアマゾンは、ラックの組み立て方を変える世代がトレイニアム4に当たるため、ほかの3社より1世代遅れて同じ段階にあると読み取れる (記者の見立て)。
AIサーバーのラック1台あたりの基板の搭載額は、半導体の世代ごとに少しずつ増えるのではなく、配線を基板に置き換える世代で階段状に増える。その次の世代で金額が増えるのは銅箔ではなく積層板で、前の世代からの伸び率が最も大きいのは、エヌビディアの標準ラックを採用するアマゾンの半導体である。
投資家向けの個別銘柄レポートと技術デューデリジェンスのご相談はこちら。データ・調査のご相談
💬 この記事へのコメント 0
まだコメントはありません
最初のコメントを投稿してみましょう!⚠️ エラーが発生しました