不動産開発投資が2割減る国で、日本の機械メーカーが20年先までの契約を結んだ。三菱電機が2026年5月に上海の昇降機合弁を延長した根拠は、4か月後の北京の記者会見が示した住宅設備の5年計画で裏づけられる。
三菱電機は2026年5月11日、上海電気集団との合弁会社である上海三菱電梯について、2026年12月に満了する契約を20年延長したと発表した。中国の不動産市場が縮んでいる最中の判断である。狙いは新しい建物ではない。日本経済新聞は、昇降機の新設需要が成熟するなかでも大幅な保守と更新の需要は見込めるという同社の読みを伝えている。その読みを裏づける数字が、9月に立て続けに公表された。
中古の取引面積が新築分譲を5,043万平方メートル上回った
国家統計局が2026年9月15日に公表した2026年1〜8月の集計で、新築分譲住宅の販売面積は4億9,880万平方メートル、前年同期比12.1%減だった。住宅だけを取り出すと13.0%減である。同じ期間の中古住宅の契約登録面積は5億4,923万平方メートルで10.6%増。中古が新築を5,043万平方メートル上回った。
この中古の面積について、統計局は住宅都市農村建設省の集計だと注記している。統計局が自ら数えた値ではなく、契約が登録された面積を建設省が積み上げたものである。
9月18日、国務院新聞弁公室の記者会見で、住宅都市農村建設省の不動産市場監督部門を率いる張雪涛氏は、中古住宅の取引比率が2020年の27%から2025年に46%へ上がり、2026年1〜8月は52%に達したと述べた。50%を超えたことが、市場がすでに建っている住宅ストックを中心に回る段階へ入った節目にあたるという説明である。中国政府はこれを、需給関係の重大な変化と並ぶ「2つの転換」の1つに位置づけた。建てる時代から、建っているものを活かす時代へ移ったという整理になる。
この52%が何を分母にした比率かは、公表値だけで確かめられる。5億4,923万を4億9,880万と5億4,923万の合計で割ると52.4%になり、会見で示された52%と一致する。戸数でも金額でもなく、面積で計算されている。
2025年の46%も同じ物差しで閉じる。1〜8月の新築が12.1%減なら前年同期は5億6,746万平方メートル、中古が10.6%増なら前年同期は4億9,659万平方メートルで、比率は46.7%になる。2つの年の比率が同一の定義で作られていることが、これで確認できる。
建てる側は販売よりも投資と資金の入口で速く縮んでいる
市場の重心が動いたのは、中古が伸びたからだけではない。同じ統計で2026年1〜8月の不動産開発投資は4兆7,979億元、前年同期比19.9%減だった。住宅は3兆7,017億元で19.7%減である。販売額の13.0%減に対して、投資の減り方はおよそ1.5倍の速さになる。
開発企業が実際に手にした資金は5兆893億元で21.0%減。内訳は国内の借入れが6,880億元で33.3%減、自己調達が1兆8,432億元で20.0%減、手付金と前受金が1兆6,037億元で14.8%減、個人向け住宅ローンが6,846億元で22.4%減だった。
手付金と前受金は、完成前の住宅を売って先に集める資金にあたる。この入口が細るほど、建てる事業は自己資金と銀行借入れで賄わなければならない。制度も同じ方向を向いている。住宅都市農村建設省と自然資源省、国家金融監督管理総局は2026年8月28日、新たに譲渡する土地と、譲渡済みで建設工事の計画許可を得ていない案件について、完成してから売る方式を優先するよう通知した。9月18日の会見でも、案件ごとの事業会社制、主取引銀行制、完成済み住宅の販売制の3つが基礎的な制度として挙げられている。完成前に売って資金を回す仕組みを、政策が意図して細らせている。
売れ残りも残ったままである。8月末に完成したまま売れていない面積は7億5,349万平方メートルで1.1%減にとどまり、うち完成から3年未満のものが5億4,819万平方メートル、4.2%減だった。1〜8月の販売ペースは月あたり6,235万平方メートルだから、在庫は12.1か月分に相当する。新築を建てる余地が需要側から戻ってくる局面ではない。主戦場は建てることから、流通させ、改修し、管理することへ移る。
5年計画が数えたのは、団地の数ではなく設備の台数である
同じ9月18日の会見で、住宅都市農村建設省都市管理監督局の張強局長は、2026年から2030年までの5年間に取り組む量を示した。全国で11万5,000か所の古い集合住宅団地の改造に新たに着手し、5,000か所で生活に必要な施設をそろえた地区の建設と改造を行い、住宅用エレベーターを57万5,000台更新・後付けする。あわせて古い街区と工場地区1,500か所の改造、都市緑地5万ヘクタールの整備も挙げた。
直前の5年間の実績と並べると、力のかけ方が変わったことがわかる。
| 区分 | 2021〜2025年の実績 | 2026〜2030年の計画 |
|---|---|---|
| 古い集合住宅団地の改造 | 24万か所超 | 11万5,000か所に着手 |
| 住宅用エレベーター | 後付け12万9,000台 | 更新と後付けで57万5,000台 |
| 恩恵を受けた住民 | 約1億1,000万人 | 公表なし |
| 高齢者・子育て関連施設 | 6万4,000か所を新設 | 生活施設をそろえた地区5,000か所 |
団地の数は24万か所超から11万5,000か所へ52.1%減る。一方でエレベーターは12万9,000台から57万5,000台へと4.46倍になる。ただしこの倍率をそのまま需要の伸びと読むことはできない。直前の5年間の12万9,000台は古い団地への後付けだけを数えた値で、今回の57万5,000台は住宅用エレベーターの更新と後付けを合わせた値である。範囲が違う。
数えられているのは、団地をいくつ直したかではなく、設備を何台入れ替えたかに移っている。それに合わせて、建設省は取り組む中身を課題と解決策の形で整理した。課題として挙がるのは、老朽化した住宅と古い集合住宅団地の安全確保、既存住宅の改修需要の拡大、高齢者向け改修と住環境の改善、スマート化と省エネルギー化の遅れ、そして建設から解体までを通した維持管理の仕組みの不足である。解決策は3つに分かれ、鑑定で撤去が必要と判定された最も危険度の高い等級の家屋は取り壊して建て替える一方、それ以外は部分改修と補修、局部的な性能向上でしのぐ。そのうえで、エレベーターの後付け、高齢者向け改修、スマート化、工場で作った部材を現場で組み立てる内装工法、建物管理サービスの品質向上という5つで住まいの質を引き上げる。古い住宅を壊して建て替える政策ではない。
57万5,000台は保有1,231万台の4.7%にすぎない
57万5,000台という台数は、単独では大きく見える。分母に当てると印象が変わる。
市場監督管理総局が2026年4月に公表した2025年の設備安全状況の報告によれば、2025年末のエレベーター保有台数は1,231万5,900台である。5年で57万5,000台を更新・後付けしても、保有台数の4.7%にしか届かない。
より厳しい比べ方がある。2024年末の保有台数は1,153万2,400台で、このうち使用開始から15年を超えたものが90万台に達していた。2024年のエレベーター事故は41件、死者は27人である。すでに15年を超えていた90万台に対して、5年分の57万5,000台は63.9%にとどまる。2026年から2030年の間には、2011年以降に設置された台数がさらに15年を迎える。計画は、更新期に入った設備の一部を公的資金で前倒しする規模にあたる。
保有台数そのものの増え方と比べると、差はさらに開く。2024年末の1,153万2,400台から2025年末の1,231万5,900台まで、1年で78万3,500台増えた。5年計画を年平均に直すと11万5,000台だから、保守の対象は計画が消化する量の6.8倍の速さで積み上がっている。国の計画が追いつく話ではなく、民間の保守と更新の市場が自律的に膨らむ構図である。
資金の裏づけも部分的である。住宅の老朽エレベーターの更新改造は2024年に超長期特別国債の支援対象へ入り、使用15年を超えたエレベーターを更新する場合は1台あたり15万元の補助が付く。57万5,000台すべてが対象になれば862億5,000万元になるが、補助は更新に限られ後付けは対象外だから、これは上限として読む数字にとどまる。残りは所有者と管理組合、そして建物管理サービスの側が負う。
日本の統計は同じ比率を30.5%とも40.4%とも数える
52%という水準を日本の読者が測るには、日本側の数字が要る。ここで物差しの問題が出る。
国土交通省が既存住宅販売量指数と住宅着工統計から作った系列では、戸建住宅とマンションを合わせた既存住宅の流通シェアは2023年に40.4%だった。既存住宅が31万9,000戸、新築住宅が47万戸で、31万9,000を78万9,000で割ると40.4%になる。2013年は30.8%で、10年で9.6ポイント上がった。同じ資料で戸建住宅だけを取り出すと、2013年の22.4%から2023年の30.5%へ8.1ポイントの上昇にとどまる。1つの国の1つの省庁の1つの資料の中で、対象の取り方だけで30.5%と40.4%が並ぶ。
中国の52%は面積で、しかも契約登録の面積である。日本の40.4%は戸数で、片方は指数からの推計である。水準をそのまま並べて比べることはできない。比べられるのは向きと速さになる。中国は2020年の27%から2026年1〜8月の52%まで6年で25ポイント動き、年あたり4.2ポイントの速さになる。日本は10年で9.6ポイント、年あたり0.96ポイントだった。桁が1つ違う。
速さの差が生まれる理由は、分子より分母にある。日本の既存住宅の比率が上がったのは、新築着工が細ったことによる面が大きい。中国は新築が12.1%減る一方で中古が10.6%増えており、分子と分母の両方が同時に動いている。
会見の4か月前に、20年分の契約が結ばれていた
三菱電機が上海三菱電梯の契約を20年延長したのは2026年5月11日で、北京の記者会見の4か月前にあたる。1987年から中国で昇降機事業を手がけてきた合弁会社で、満了予定だった契約を第三期として更改した。新設ではなく保守と更新に賭けた判断が、9月の57万5,000台という台数と、1,231万5,900台という保有台数で裏書きされた形になる。
住宅改修、スマートホーム、建物管理、点検と保守。次に伸びる先として並ぶ4つは、いずれも設備と役務の市場である。建てる事業とは、必要な資金の形も、回収の期間も、競う相手も違う。建てる側では中国勢が主役だったが、据え付けた設備の保守と更新では、その設備を作ったメーカーが有利な位置を持つ。中国のエレベーター市場で上位を占めてきたのは三菱電機の合弁のほか、日立製作所、コネ、シンドラー、オーチスといった外資系である。
日本の投資家が見る銘柄としては、三菱電機(6503)と日立製作所(6501)、昇降機専業のフジテック(6406)が中国の保有台数に直接ひもづく。住宅の改修という切り口では、住友不動産(8830)が既存住宅の柱と基礎を残して耐震と断熱を一棟単位で作り直す工法を1996年から手がけており、中国が課題に挙げた老朽化と省エネルギー化の遅れに対して、日本側にはすでに商品化された答えがある。大和ハウス工業(1925)が積み上げてきた工業化工法の系譜は、工場で作った部材を現場で組み立てる内装工法と地続きにある。
不動産開発そのものの側では、経営危機を経た中国恒大集団の一審判決が示したとおり、建てて売る事業の信用はまだ戻っていない。むしろ万科や龍湖集団が抱える建物管理の事業、資産を持たずに開発と管理を請け負う緑城管理のような形が、中古が過半を超えた市場に合う。中国勢と日本勢の位置関係は不動産企業データベースで確かめられる。日本の投資家が数えるべきなのは着工面積ではなく、保有台数と管理戸数になる、というのが本誌の見立てである。
三菱電機が20年という期間を選んだことの意味は、ここにある。保守と更新の事業は、設備の寿命という物理的な時計で動く。2025年末に1,231万5,900台あるエレベーターは、政策がどう変わっても15年から20年で更新期を迎える。中国の不動産で今後数えられる数字は、売れた面積ではなく、動き続けている設備の台数である。
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