この市場が「はい」と判定するのは、両社のどちらかが確定的で拘束力のある契約を公式に公表した時点である。この問いには「会社の公表」という副題が付いている。70%が測っているのは、合併そのものではなく、その一歩手前である。

投稿は米国の予測市場カルシーの画面を引用し、2028年より前に合併する確率が70%だと述べる。当サイトがカルシーの公開データから該当する市場を特定したところ、題は画面と同じ「テスラスペースXはいつ合併するか」だった。以下では、この市場が何で決着するのか、そして合併が実際に終わるまでに何が要るのかを、米証券取引委員会への提出書類から1つずつ確かめる。投稿は底値と目標の水準を具体的な金額で挙げているが、本誌は株価や目標株価そのものを扱わない方針のため、そこには立ち入らない。

この市場が決着するのは合併の成立ではなく、契約の公表である

決着の条件は次のとおりである。テスラまたはスペースXが、テスラによるスペースXの取得、スペースXによるテスラの取得、または支配権の移転、あるいは両社が同じ資本のもとにまとまる形での合併について、確定的で拘束力のある契約を公式に公表した場合、市場は「はい」で決着する。どちらが買う側になっても決着は変わらない。

補足の条件が、何をもって公表とみなすかを定めている。公表は会社の公式な経路を通らなければならない。報道発表、米証券取引委員会への提出書類、決算説明会、投資家向けの資料、認証済みの交流サイトへの投稿、そして会社が後から認めた報道向けの発言が該当する。最高経営責任者が公式な経路で述べた場合も含まれる。一方で、噂、憶測、未確認の報道、漏えいした情報、会社の確認がない第三者の発表、予備的な協議は該当しない。

市場が「はい」になるのは契約の公表であって、合併の完了ではない
市場が「はい」になるのは契約の公表であって、合併の完了ではない

この問いに付けられた副題は「会社の公表」である。同じ仕組みの別の市場では、補足に「取引は成立する必要がない」と明記されている。つまり70%が測っているのは、両社が1つの会社になることではなく、両社が合併すると約束した文書が世に出ることである。当サイトの見立てでは、投稿の「2028年より前に合併する確率」という読み方と、契約の公表を条件とするこの仕組みとの間には、隔たりがある。

決着の根拠にする情報源として最初に挙げられているのも米証券取引委員会である。合併の意思を判定するのに使われるのは、相場の値動きではなく提出書類だということになる。

11ある期限のうち、2つはすでに「いいえ」で確定した

この問いには、期限の違う市場が11並んでいる。2026年は8月1日、9月1日、10月1日、11月1日、12月1日。2027年は1月1日、2月1日、3月1日、4月1日、5月1日。そして最後が2028年1月1日で、画面の「2028年より前」はこれにあたる。

このうち2026年8月1日を期限とする市場と、9月1日を期限とする市場は、すでに「いいえ」で確定している。残る9つが取引されている。同じ問いを期限だけ変えて並べる形なので、期限が遠いほど値は高く出る。70%は、11のうち最も期限が遠いものにあたる。

開設の日付も押さえておく。2028年1月1日を期限とする市場が開いたのは2026年6月25日である。スペースXが最終目論見書を提出した6月12日の13日後、社債の発行を終えた6月26日の前日にあたる。今日2026年9月20日までは87日しかない。画面で選ばれている「全期間」の折れ線は、この87日分である。縦軸に目盛りが付いていないため、折れ線の各点がどの水準だったかは画像からは読み取れない。

なお、画面に出ている70%という値と1,295,129ドルという出来高は、カルシーの公開データでは価格と出来高の欄が空で返るため、当サイトでは裏を取れていない。市場そのものが実在し、直近の約定が2026年9月19日に記録されていることまでは確認できた。

ソーラーシティは契約から完了まで113日。残る468日の最後の113日では完了が間に合わない

投稿はマスク氏が以前にも同じ手を打ったとして、テスラによるソーラーシティの買収を挙げる。その手続きに何日かかったかには触れていないので、提出書類から数え直す。

テスラが買収の提案を公表したのは2016年6月21日である。翌22日の説明会の記録には、前日に提出書類と自社の投稿で提案を公表したと記されている。合併契約を結んだのは7月31日で、提案から40日後にあたる。テスラの取締役会は、マスク氏とアントニオ・グラシアス氏が決議に加わらない形でこれを決めた。

株式を対価とする合併には、新たに出す株式の登録届出が要る。テスラがこれを提出したのは8月31日で、契約から31日後である。その後9月19日、9月20日、9月29日、10月7日、10月11日と5回訂正した。臨時株主総会は11月17日で、登録届出から78日後である。合併が完了したのは11月21日で、総会の4日後だった。

ソーラーシティは契約から完了まで113日。そこから逆算すると期限は2027年9月10日
ソーラーシティは契約から完了まで113日。そこから逆算すると期限は2027年9月10日

合併契約から完了までは113日、提案の公表から数えれば153日である。これを2028年1月1日から逆算する。2028年より前に合併を終えるには、2027年9月10日までに契約が結ばれていなければならない。提案の公表から数えた153日で測れば、その日は2027年8月1日まで早まる。

市場の期限まで残るのは468日である。そのうち最後の113日は、契約が公表されて市場が「はい」で決着しても、合併の完了は2028年に入る。割合にすれば24.1%で、残り期間のおよそ4分の1にあたる。当サイトの見立てでは、投稿の読み方と市場の条件がずれるのはこの区間である。

113日という数字は下限として扱うのが妥当である。2016年の届出は9月19日から10月11日までに5回訂正されている。案件が大きいほど、この訂正のやり取りは増える方向にしか働かない。

2016年の投票では、マスク氏らが持つ21.2%は数えられなかった

投稿は「個人が投げ売る株にも必ず買い手がいる。その相手は誰か」と問いかける。2016年の投票の記録は、その問いとは別の角度から答えを示す。

承認には2つの条件があった。1つはナスダックの規則によるもので、総会で投じられた票の過半数が新株の発行に賛成することである。もう1つは合併契約によるもので、マスク氏、グラシアス氏、ジェフリー・ストラウベル氏とその関係者が保有しない株式の過半数の賛成が要るとされた。

基準日である2016年9月23日のテスラの発行済株式は149,792,626株だった。除外された当事者の分を差し引くと118,044,090株になる。差は31,748,536株で、全体の21.2%にあたる。テスラの側では、マスク氏の持ち株は数に入らなかった。

テスラとスペースXでは、この構図がより強く出る。目論見書によれば、上場後のマスク氏はスペースXの議決権の約82.4%を持つ。クラスA株は1株1票、クラスB株は1株10票で、スペースXはナスダックの規則でいう支配会社、つまり議決権の過半を1人が握る会社にあたる。目論見書は、企業統治の要件の一部について、適用の免除を受ける方針だと記している。買う側でも買われる側でも、同じ人物が両方の議決権の中心にいる。

カーソル買収が59日で済んだのは、新株が5.70%にとどまったからである

スペースXは上場後すでに1件の合併を終えている。2026年6月16日、スペースXと同社の完全子会社、そしてカーソルを運営するエニスフィアが合併契約を結んだ。効力が発生したのは8月14日で、契約から59日後である。カーソルはスペースXの完全子会社になった。

対価はスペースXのクラスA株389,289,254株だった。発行済6,824,641,355株に対して5.70%にあたる。ナスダックの規則では、新株の発行が発行済の20%に達すると株主の承認が要る。5.70%はその水準を下回るため、スペースX側の株主総会は開かれていない。59日で終えられた理由はここにある。

カーソル買収が59日で済んだのは、新株が5.70%で株主投票が要らなかったから
カーソル買収が59日で済んだのは、新株が5.70%で株主投票が要らなかったから

テスラとの合併ではこの道が使えない。テスラの発行済株式は2026年7月16日時点で3,949,547,394株である。その20%は789,909,479株になる。スペースXの発行済6,824,641,355株はその8.64倍で、仮に1対1で交換すればテスラは発行済の172.8%にあたる新株を出すことになる。株主の承認を避けられるのは、スペースXの1株に対してテスラ株0.1157株を下回る交換比率のときだけである。

投稿は「今回は規模がはるかに大きくなりうる」と書く。規模が大きいことは、手続きが軽くなる理由にはならない。むしろ逆で、カーソルのときに省けた総会が、テスラとの合併では両社で必要になる。

上場から3か月のスペースXは、株式で750億ドル、社債で250億ドルを集めた

投稿は値動きの奇妙さから話を起こすが、同じ3か月に会社が何をしたかは提出書類に残っている。

最終目論見書の提出は2026年6月12日、公開価格は1株135.00ドルだった。会社が売り出したのは555,555,555株で、掛け合わせると750億ドルになる。上場先はナスダックとナスダック・テキサスで、登記はテキサス州である。目論見書は手取り金の用途の1つとして人工知能の計算基盤の拡張を挙げている。スターリンクの契約者は1,030万に達する。

株式だけではない。6月22日に無担保の社債の募集を始め、23日に5本の発行条件が決まった。2031年満期の5.350%が70億ドル、2033年満期の5.650%が60億ドル、2036年満期の5.875%が60億ドル、2046年満期の6.600%が25億ドル、2056年満期の6.650%が35億ドルで、合計250億ドルである。6月26日に信託証書を結んで発行した。

手元の資金はこれで一変した。6月30日時点の現金及び現金同等物は935億2,200万ドルで、2025年12月31日の247億4,700万ドルから687億7,500万ドル増えている。4〜6月期の売上高は78億1,400万ドルで、前年同期の40億7,100万ドルから91.9%増えた。1〜6月では125億800万ドルで、前年同期の81億3,800万ドルから53.7%増えた。

投稿はスペースXxAI、スターリンク、テスラ、ロボット、自動運転、エネルギーを一体として語る。そのうち提出書類で裏が取れるのは、スペースXが人工知能の開発会社を株で買い、人工知能の計算基盤に資金を向けると書いていることまでである。テスラとの経営統合については、両社のいずれからも公表が出ていない。自動運転そのものの技術的な現状はテスラの自動運転はレベル2にとどまるで、商用車の受注の実像はテスラ・セミの受注5万台で扱った。会社の基礎的な事実はテスラの企業ページにまとめてある。

投稿が保存しておけと言うのは価格の水準だが、保存する価値があるのは日付のほうである。合併が2028年より前に終わるかどうかは、意思の強さではなく、2027年9月10日までに確定的な契約が結ばれるかどうかで決まる。そしてそれより後に出る公表は、市場では「はい」になっても、合併そのものは2028年に持ち越される。

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