2025年に最も稼いだブロックチェーンを並べた10行を、別の集計で1行ずつ照合した。7行は5.5%以内で再現できたが、数え方は行ごとに違った。首位のソラナが積み上げた13億ドルは、半分以上が手数料ではなかった。
暗号資産のチェーンを収益で並べた棒グラフは、どのチェーンが稼いでいるかを一目で示す。ただし「収益」という1語が何を数えたものかは、図の中に書かれていない。10本の棒を、無料で公開されているDefiLlamaの集計に当てて、1行ずつ確かめた。作業日は2026年9月20日で、図に合わせて2025年1月1日から12月26日までを集計した。
10行のうち7行は、別の集計で5.5%以内に再現できた
照合の結果を先に示す。単位は百万ドルである。
表1 図の値と、別の集計で再現した値
| 順 | チェーン | 図の値 | 再現した値 | 差 | 使った数え方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ソラナ | 1,300 | 1,358.1 | +4.5% | 手数料642.4+上乗せ分715.7 |
| 2 | ハイパーリキッド | 816 | 812.5 | −0.4% | 取引所が受け取る手数料777.1+35.4 |
| 3 | トロン | 608 | 574.5 | −5.5% | 利用者が払った手数料 |
| 4 | イーサリアム | 524 | 521.7 | −0.4% | 利用者が払った手数料 |
| 5 | BNBチェーン | 257 | 257.2 | +0.1% | 利用者が払った手数料 |
| 6 | edgeX | 169 | 170.9 | +1.1% | 取引所が受け取る手数料 |
| 7 | ベース | 76.4 | 77.1 | +0.9% | 利用者が払った手数料 |
| 8 | アクセラー | 56.9 | 0.2 | −99.6% | 手数料では再現できず |
| 9 | ビットテンソル | 33.4 | — | — | 突き合わせる数字がない |
| 10 | オプティミズム | 21.6 | 3.7 | −82.9% | 手数料では再現できず |
出所: 図の値はCryptoRankとArtemisの集計 (2025年12月26日時点)。再現した値はDefiLlamaの公開データから記者が集計 (2025年1月1日〜12月26日)
差が5.5%以内に収まったのは7行である。とくにイーサリアム、BNBチェーン、ベースの3行は誤差1%未満で、利用者が払った手数料の総額そのものだと確かめられた。図の数字が乱暴に作られているわけではない。10行を合計すると38億6,230万ドルになり、上位4行だけで32億4,800万ドル、全体の84.1%を占める。首位のソラナは10位のオプティミズムの60.2倍である。
再現に使った数え方は、支払総額・上乗せ分を含む額・取引所が受け取る手数料の3つに分かれた
問題は、7行をそろえるために使った数字が1種類ではなかったことだ。
DefiLlamaは、利用者が払った総額を手数料、そのうち運営側に残る分を収益として、別々に公表している。トロン、イーサリアム、BNBチェーン、ベースの4行は前者、つまり利用者が払った手数料と一致した。ソラナの1行は、手数料に上乗せ分を足すと一致した。ハイパーリキッドとedgeXの2行は、どちらでもなく、そのチェーンの上で動く取引所が受け取った手数料と一致した。ハイパーリキッドの土台のチェーンそのものの手数料は2025年で860万ドルしかなく、図の8億1,600万ドルの1%にも満たない。
どれか1つの数え方でそろえると、図は再現できない。運営側に残る分で見ると、ソラナの2025年は1億7,629万ドル、イーサリアムは2億8,545万ドル、BNBチェーンは2,589万ドルである。ソラナは図の13億ドルと7.4倍の開きが出る。逆に利用者の支払総額でそろえると、ハイパーリキッドは9億718万ドルになり、図の8億1,600万ドルを1割上回る。1本の棒グラフに並んでいる10本は、同じ定義で測った10本ではない。
ソラナの13億ドルは、半分以上が優先処理の上乗せ分だった
首位のソラナを調べると、この違いが最もはっきり出る。
チェーンとしての手数料は6億4,240万ドルで、これは4位のイーサリアムの5億2,170万ドルと同じ桁にとどまる。13億ドルまで積み上がるのは、Jitoが集計する上乗せ分7億1,570万ドルを足したときだ。この上乗せ分は、取引を先に処理してもらうために利用者が通常の手数料に加えて払うもので、取引を処理する側へ渡る。合計1,358.1百万ドルのうち52.7%がこれにあたる。
つまりソラナの首位は、チェーンの利用そのものよりも、混み合った場で順番を買う行動が支えていた。混雑が引けば上乗せ分は消える。実際にその通りになったことを、次の節の数字が示している。
同じ期間で測り直すと、2025年の首位は3位に落ちている
2026年がどうなったかは、予想する必要がない。すでに9か月近くが終わっているので、実測を同じ数え方で並べればよい。1月1日から9月20日までで、2025年と2026年をそろえた。
表2 同じ期間 (1月1日〜9月20日) で比べた2025年と2026年
| チェーン | 2025年 | 2026年 | 増減 | 数え方 |
|---|---|---|---|---|
| ハイパーリキッド | 562.2 | 438.0 | −22.1% | 取引所が受け取る手数料 |
| トロン | 469.0 | 241.9 | −48.4% | 利用者が払った手数料 |
| ソラナ | 1,258.4 | 202.7 | −83.9% | 手数料+上乗せ分 |
| イーサリアム | 436.1 | 117.2 | −73.1% | 利用者が払った手数料 |
| BNBチェーン | 148.1 | 112.7 | −23.9% | 利用者が払った手数料 |
| edgeX | 46.6 | 84.9 | +82.0% | 取引所が受け取る手数料 |
| ベース | 56.7 | 36.4 | −35.9% | 利用者が払った手数料 |
出所: DefiLlamaの公開データから記者が集計。単位は百万ドル
首位が入れ替わっている。ソラナは83.9%減って3位へ下がり、ハイパーリキッドが首位に立った。減少額の内訳をたどると、ソラナの1,055.7百万ドルの落ち込みのうち647.9百万ドル、61.4%は上乗せ分の消滅で説明がつく。上乗せ分は6億8,820万ドルから4,030万ドルへ94.1%減った。手数料だけを見た減り方は71.5%で、上乗せ分を含めた83.9%より穏やかである。
7つのうち6つが減り、増えたのはedgeXだけだった。上位10を合計すると、2025年の3,154.9百万ドルに対し2026年は1,851.6百万ドルで、41.3%減っている。オプティミズムの手数料は300万ドルから50万ドルへ細った。
同じ数え方で並べ直すと、図になかったチェーンが3つ上位に入る
もう1つ、図の10行には入っていないチェーンがある。
カントンの2025年の手数料は1億1,010万ドルで、6位のedgeXと7位のベースの間に収まる規模だった。それが2026年の1月1日から9月20日までで5億2,230万ドルに達し、同じ期間で並べれば首位になる。前年の同じ期間の3,590万ドルに対して14.5倍である。月ごとに見ると2025年8月の900万ドルから2026年2月の7,500万ドルまで伸び、直近も月5,000万ドル前後で続いており、一度きりの跳ね上がりではない。
ビットコインも図にない。2025年の手数料は1億6,790万ドルで、6位のedgeXの1億6,900万ドルとほぼ並ぶ。2026年は5,130万ドルまで63.8%減った。ロビンフッド・チェーンは2025年がゼロ、2026年が4,420万ドルである。
2026年の1月1日から9月20日までを同じ数え方で並べると、カントン522.3、ハイパーリキッド438.0、トロン241.9、ソラナ202.7、イーサリアム117.2、BNBチェーン112.7、edgeX 84.9、ビットコイン51.3、ロビンフッド・チェーン44.2、ベース36.4となる。この10のうち3つは、2025年の図に載っていなかった。
再現できなかった3行は、分からないまま残した
残る3行については、再現できなかったことをそのまま書く。
アクセラーの5,690万ドルは、DefiLlamaの手数料20万ドルとの間に280倍の開きがある。ビットテンソルには突き合わせる数字がなく、照合そのものができない。オプティミズムの2,160万ドルも、370万ドルとは5.8倍離れている。この3行が何を数えたものかは確かめられなかった。一致しない以上、どちらが正しいとも書けない。順位表の下位3行は、上位7行とは性質の違う数字だとだけ言える。
数字を突き合わせるときに効いたのは、図に小さく入っていた日付だった。図は2025年12月26日時点で、暦年の締めではない。5日分の差を無視して暦年と比べると、トロンやビットコインで数%のずれが出る。集計表を検算するなら、まず基準日を合わせる。
順位表を投資の材料にするなら、行ごとに数え方を確かめる
この検算から投資家が持ち帰れるのは、順位そのものではなく確かめ方である。収益と書かれた列を見たら、それが利用者の支払総額なのか、運営側に残る分なのか、その上で動く取引所が受け取る手数料なのかを1行ずつ確かめる。数え方がそろっていない表で上下を比べても、事業の優劣は分からない。
チェーンの手数料が2026年に4割減った事実は、この分野の設備と人がどこへ向かうかにも関わる。暗号資産の採掘から出た会社が計算資源の貸し出しへ移っている流れは、データセンターの区分に並ぶ8社を登録簿で照合した記事で扱った。稼ぎ手が細れば、設備は別の用途を探す。計算資源そのものが担保や与信の材料になり始めている状況は、計算資源の貸し借りと資金調達を追った記事にまとめた。
1つの棒グラフの10本は、同じ尺度で並んでいるように見えて、3通りの数え方で測られていた。順位を読む前に、行ごとの中身を確かめるほうが早い。
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