AIクラウドを中心に51社を8つに区分した一覧を、SECの登録簿に1件ずつ当てた。一番下の区分に並ぶ会社の4分の3は、暗号資産の採掘から出ていた。当局の分類も決算の中身も、まだ区分の名前に追いついていない。
企業を区分に分けた一覧は、業界の見取り図として読まれる。どの区分のどの会社を持つか、という順で銘柄が選ばれていく。ところが今回の一覧を1件ずつSECの登録簿に当てると、区分の名前と、会社が実際に提出している書類の中身が、2年ほどずれていた。ずれは一番下の区分に集まり、しかもそれ以外の区分でも同じことが起きていた。照合したのは2026年9月20日である。
一覧は51社を8つに区分し、同じ出所の図より3つ多い
一覧は8つの区分に51件を並べ、サムスンを除く50件に銘柄コードを付けている。区分ごとの数はAIクラウドが5、ハイパースケーラー (自前で巨大なクラウドを抱える大手) が5、利用企業が10、半導体が10、ネットワーク機器が5、サーバーが3、電力設備が5、データセンターが8である。最も多いのは利用企業と半導体で、次がデータセンターの8社になる。
同じ出所から出ている図は、これを3段28社で描く。上に顧客15社、真ん中にAIクラウド6社、下に供給側7社を置き、AIクラウドから顧客へ3本の実線と1本の点線、供給側からAIクラウドへ2本の上向きの矢印を引く。点線は利用企業へ向かう1本だけで、図の注記は「ハイパースケーラーと推論クラウドは顧客でも競合でもありうる」と断っている。同じ図に金額を入れて読み直した結果は、真ん中の3社が受け取った資金と設備に投じた資金を並べた記事で扱った。
一覧の区分が多いのは、ネットワーク機器・サーバー・電力設備の3つを新たに設けているからだ。この3区分に13社が入る。逆に、図にあって一覧にないまとまりもある。オープンAIやアンソロピックが並ぶAI開発企業と、推論に特化したクラウドで、いずれも未上場の会社が中心である。図の真ん中にいた6社のうち、一覧に残ったのはコアウィーブ、ネビウス、IRENの3社だけで、エヌスケール、クルーソー、ラムダは落ちた。代わりに入ったのがスペースXとシャロンAIである。つまりこの一覧は、業界の見取り図ではなく、銘柄コードで買える会社だけを集めた地図として作られている。
データセンターの区分に並ぶ8社のうち6社は、暗号資産の採掘から社名を変えて来た
一番下の区分の8社をSECの登録簿に当てると、デジタル・リアルティとアプライド・デジタルを除く6社が、暗号資産の採掘を本業として育った会社だった。社名の履歴がそれを残している。
表1 データセンターの区分に並ぶ8社の旧社名 (SEC登録簿)
| 会社 | 旧社名の履歴 |
|---|---|
| ライオット・プラットフォームズ | ライオット・ブロックチェーン (2017年)、バイオプティクス (2016年)、ヴェナクシス (2012年)、アスペンバイオ・ファーマ (2005年) |
| サイファー・デジタル | サイファー・マイニング (2021年4月〜2026年2月)、グッドワークス・アクイジション (2020年) |
| コア・サイエンティフィック | 買収目的会社として2021年1月に登録 |
| アプライド・デジタル | アプライド・ブロックチェーン (2021年)、アプライド・サイエンス・プロダクツ (2011年)、航空安全の技術会社 (2002年) |
| テラウルフ | アイコニクス (2002年)、クロマライン (1999年) |
| クリーンスパーク | ストラテアン (2014年)、スマートデータ (2008年) |
| ハット8 | なし (2023年2月に登録) |
| デジタル・リアルティ | なし |
ライオットの履歴がいちばん長い。2002年に医薬の会社として登録され、2005年にアスペンバイオ・ファーマ、2012年にヴェナクシス、2016年にバイオプティクスと名を変えた後、2017年10月に暗号資産へ移ってライオット・ブロックチェーンになり、2023年に暗号資産の色を薄めてライオット・プラットフォームズになった。看板の掛け替えは5回に及ぶ。テラウルフの前身は印刷用の製版材料を手がける会社で、アプライド・デジタルの前身をさかのぼると航空安全の技術会社に行き着く。
掛け替えが最も新しいのはサイファーである。SECの登録名は2026年2月23日にサイファー・マイニングからサイファー・デジタルへ変わった。社名から採掘の語が消えたことになる。この会社もさかのぼれば買収目的会社で、2020年に登録されている。コア・サイエンティフィックも同じく買収目的会社から出た。
SECの業種分類は、その6社に1社を加えた7社を今も金融サービス業のままにしている
業種分類コードは、SECが提出書類を仕分けるために各社へ割り当てている番号である。データセンターの区分の8社のうち、サイファー、クリーンスパーク、コア・サイエンティフィック、ハット8、ライオット、テラウルフの6社には6199「金融サービス」が付いたままになっている。暗号資産を扱う会社に当てられてきた番号で、データセンターを指す番号ではない。
6199が付いているのはこの6社だけではない。一覧のAIクラウドの区分にいるIRENにも同じ番号が付く。豪州で設立されたこの会社は、2021年の登録時はアイリス・エナジーという名前で、やはり採掘から出ている。一覧の51社のうち7社が、SECの登録上は金融サービス業として扱われている。
例外の2社は筋が通っている。デジタル・リアルティは6798「不動産投資信託」で、データセンターを不動産として持つ会社だから不動産の番号が付く。アプライド・デジタルは7374「計算処理・データ作成サービス」で、これは区分の名前と合う。
分類のずれは一番下の区分だけの話でもない。アマゾンには今も5961「カタログ・通信販売」が付いている。一方で半導体の区分の9社は全社が3674「半導体および関連装置」で一致し、ネットワーク機器の区分のクレドとアステラ・ラボにも同じ3674が付く。この2社は一覧ではネットワーク機器だが、SECの登録上は半導体である。逆に同じ区分のアリスタ・ネットワークスは3576「コンピューター通信機器」で、利用企業の区分のパロアルトネットワークスには3577「コンピューター周辺機器」が付く。電力設備の区分に至っては、クアンタ・サービシズの1731「電気工事」、ブルーム・エナジーの3620、GEベルノバの3600、イートンの3590、ヴァーティブの3679と、5社が5つの番号に分かれる。番号と名前がそろう区分と、そろわない区分がある。
社名が変わっても決算は追いつかず、ライオットは直近四半期も売上高の65.3%が採掘だった
分類は当局の都合だとしても、決算の中身は会社の実態である。米国の会計基準には暗号資産の採掘による売上を表す科目があり、これを使っている2社なら割合が分かる。
ライオットの2025年12月期は、売上高6億4,743万ドルのうち採掘が5億7,628万ドルで、89.0%を占めた。割合は2023年12月期の67.3%、2024年12月期の85.2%と上がり続けた末の数字である。2026年に入って向きが変わり、4〜6月期は売上高1億7,424万ドルに対し採掘が1億1,374万ドルで65.3%まで下がった。下がったとはいえ、なお3分の2が採掘である。
サイファーの2025年12月期は、売上高2億2,394万ドルのうち採掘が1億9,958万ドルで89.1%だった。割合は2023年12月期に99.6%、2024年12月期にはほぼ100%だった。ここで社名の変更日を思い出したい。採掘の語が社名から消えたのは2026年2月23日で、その2か月ほど前に締めた期の売上高の9割は採掘である。看板と決算のあいだには、ちょうど1期ぶんのずれがある。
掛け替えに伴う落ち込みも数字に出ている。コア・サイエンティフィックの2025年12月期の売上高は3億1,902万ドルで、前年の5億1,067万ドルから37.5%減った。この区分で直近の通期に減収となったのはこの1社だけである。採掘をやめて計算資源の貸し出しへ移る途中では、先に採掘の売上高が消え、後から新しい売上高が立つ。同社も2026年に入ってからは1〜3月期1億1,524万ドル、4〜6月期1億6,420万ドルと戻している。ほかは伸びており、クリーンスパークは前期の2.02倍、アプライド・デジタルは2.67倍になった。一つ上のAIクラウドの区分でも、コアウィーブが2.68倍、IRENが1.41倍に増えている。市場全体が縮んでいるわけではなく、採掘から移る会社だけが途中で一度落ち込む。
なお、残る4社は採掘と受託運用の内訳をこの科目で開示していないため、割合は出していない。サイファーの2026年1〜3月期には、売上高3,484万ドルに対して採掘の額が3,521万ドルと、売上高をわずかに上回る値が入っている。付随する控除が別の行に置かれていると読めるため、この四半期は割合の計算に使わない。示せるのはライオットとサイファーの通期に限られる。
区分の売上高の3分の2は、AIブームの前からあるデジタル・リアルティ1社が稼ぐ
8社を直近の通期でそろえて足すと、データセンターの区分の売上高は90億8,429万ドルになる。内訳の偏りは大きい。
表2 データセンターの区分に並ぶ8社の直近通期の売上高
| 会社 | 売上高 (百万ドル) | 区分に占める割合 |
|---|---|---|
| デジタル・リアルティ | 6,112.69 | 67.3% |
| クリーンスパーク | 766.31 | 8.4% |
| ライオット・プラットフォームズ | 647.44 | 7.1% |
| アプライド・デジタル | 611.31 | 6.7% |
| コア・サイエンティフィック | 319.02 | 3.5% |
| ハット8 | 235.12 | 2.6% |
| サイファー・デジタル | 223.94 | 2.5% |
| テラウルフ | 168.46 | 1.9% |
| 合計 | 9,084.29 | 100.0% |
出所: SECに提出された財務データ。デジタル・リアルティ、コア・サイエンティフィック、ライオット、サイファー、テラウルフ、ハット8は2025年12月期、クリーンスパークは2025年9月期、アプライド・デジタルは2026年5月期
3分の2を占めるデジタル・リアルティは、AIブームが来る前からデータセンターを不動産として貸してきた会社である。採掘から出た6社を全部足しても23億6,029万ドルで、区分の26.0%にとどまる。一つ上のAIクラウドの区分にいるコアウィーブ1社の2025年12月期の売上高51億3,100万ドルは、この6社の合計の2.17倍にあたる。
同じ区分に並んでいても、規模は一桁違い、収益の出どころも違う。「データセンター」という1語でくくられた8社を同じ物差しで並べると、実際には3種類の会社が入っている。不動産として貸す会社が1社、採掘から移りつつある会社が6社、最初から計算資源の受託で育った会社が1社である。
看板の掛け替えは上の区分でも起きており、2026年に2社が新たに買えるようになった
掛け替えは一番下の区分に限らない。AIクラウドの区分のコアウィーブは、2019年の登録時の名前をアトランティック・クリプトといった。やはり暗号資産から出ている。同じ区分のネビウスの旧社名はヤンデックスで、ロシアで検索を手がけた会社が事業を切り離した後の姿である。電力設備の区分のヴァーティブも、2018年に買収目的会社として登録された後に今の名前になった。
そしてこの一覧の新しさは、2026年に米国市場へ出てきたばかりの2社を反映している点にある。
スペースXは2026年5月20日に登録届出書を出し、6月10日に上場を申請、6月11日に届け出が効力を持ち、6月12日に目論見書を提出した。売り出したのはクラス A 普通株5億5,555万5,555株で、売り出し総額は749億9,999万9,925ドルにのぼる。引受手数料5億ドルを引いた手取りは744億9,999万9,925ドルで、引受会社にはさらに8,333万3,333株を追加で買い取る権利が付く。上場先はナスダックとナスダック・テキサスである。
一覧がこの会社を宇宙ではなくAIクラウドの区分に置いているのには理由がある。スペースXは2026年2月2日付でxAIを取得しており、目論見書は報告セグメントを宇宙、通信、AIの3つとしている。AIのセグメントにはAIの計算基盤とGrok、そしてXが含まれる。主力のデータセンターはテネシー州メンフィスのコロッサスで、コロッサス2はメンフィスとミシシッピ州サウスヘイブンの施設からなり、ギガワット級のAI学習用クラスターの一部と説明されている。さらに目論見書は、宇宙空間でのAI処理を、太陽光で電力をまかない宇宙環境で冷却する人工衛星群としてのデータセンターと定義し、早ければ2028年に打ち上げを始めるとしている。再使用ロケットと衛星の量産により、数百万機になりうる衛星群を展開できると書き、太陽同期軌道の衛星なら推論のように電力を多く使う処理を地上より大きな規模と効率で担えると考えるとしている。
もっとも、この事業はまだ費用が先に立つ。2026年1〜3月期のセグメント営業損益は、通信が11億8,800万ドルの黒字である一方、宇宙は6億6,200万ドルの赤字、AIは24億6,900万ドルの赤字だった。AIのセグメントの減価償却費だけで14億9,300万ドルにのぼる。目論見書自身が、地上のデータセンターを広げ宇宙空間のデータセンターを打ち上げるまでには複数年の投資期間を見込むと断っている。
もう1社はSKハイニックスである。2026年6月24日に登録届出書を提出し、7月9日に上場の申請と効力発生、7月10日に目論見書を出した。米国預託証券1億7,790万口を売り出し、1口が普通株の10分の1にあたるので普通株1,779万株に相当する。売り出し総額は265億710万ドル、引受手数料2億5,754万5,830ドルを引いた手取りは262億4,955万4,170ドルで、受け渡しは7月14日だった。上場先はナスダック・グローバルセレクト市場で、韓国取引所コスピ市場には銘柄コード000660で上場を続ける。同じ半導体の区分でサムスンだけ銘柄コードが付いていないのは、米国に預託証券を出していないからである。SKハイニックスに銘柄コードが付いたのは、この2か月前までは同じ状態だったところが変わったためだ。新規上場の記録は注目IPOの一覧でも追っている。
スペースXが1回の売り出しで集めた749億9,999万9,925ドルは、データセンターの区分に並ぶ8社の直近通期の売上高の合計90億8,429万ドルの8.26倍にあたる。区分が下から上へ積み上がっているようでいて、資金の集まり方はその順番に従っていない。
一覧が新たに設けた3区分のうち2つは、日本の上場企業が担う分野でもある
一覧の51社に日本の上場企業は1社も入っていない。同じ出所の図28社にも1社もない。これは日本企業がこの分野にいないという意味ではなく、一覧が米国市場で買える会社に限って作られているためである。
一覧が図に足した3区分のうち、電力設備とネットワーク機器は、日本の上場企業が同じ役割を担っている分野でもある。電力設備の区分に並ぶのは、燃料電池のブルーム・エナジー、データセンターの電源と冷却のヴァーティブ、配電のイートン、発電設備のGEベルノバ、送電工事のクアンタ・サービシズである。日本で同じ役割を持つのは日立製作所 (6501)、富士電機 (6504)、明電舎 (6508) にあたる。ネットワーク機器の区分でルメンタムとコヒレントが担う光の部品は、古河電気工業 (5801) とフジクラ (5803) の領域と重なる。データセンターの電力が実際にどこで詰まるかは、系統の空きと電力需要を突き合わせた記事で扱った。
区分の名前で銘柄を選ぶとき、確かめる先は区分ではない。SECの業種分類は6社を金融サービス業のまま置き、社名は決算より1期先に変わり、売り出しで集まる資金は区分の順番を無視する。読むべきは提出書類の中身であって、一覧の見出しではない。
投資家向けの個別銘柄レポートと技術デューデリジェンスのご相談はこちらからお寄せください。
💬 この記事へのコメント 0
まだコメントはありません
最初のコメントを投稿してみましょう!⚠️ エラーが発生しました