商流の真ん中に置かれた3社が直近の通期に受け取ったのは、合わせて63億6,800万ドルだった。同じ期に設備へ投じたのは173億7,300万ドルで、受け取った額の2.73倍にあたる。足りない分は外から借りるほかない。

AIクラウドを商流の真ん中に置いた図が広まっている。上に顧客としてAI開発企業、ハイパースケーラー、推論クラウド、一般企業の4つの区分、真ん中にコアウィーブ、ネビウス、IREN、Nscale、Crusoe、Lambdaの6社、下に供給側として半導体3社とデータセンター事業者4社を並べ、計28社で構成される。添えられた投稿は「誰に資金が入るか」を問い、エヌビディアGPUを供給して計算資源の要にいること、マイクロンSKハイニックスHBMを供給すること、真ん中の3社がGPUと電力とネットワークとソフトウェアを組み合わせて貸し出せる計算資源にしていることを説明する。本稿はこの「誰に資金が入るか」を、米証券取引委員会に提出された各社の書類で確かめる。取得日は2026年9月19日である。

商流に置かれた28社と、資金の向き
商流に置かれた28社と、資金の向き

エヌビディアは売上高の2.8%しか設備に使わず、営業キャッシュフローは1,027億ドル

供給側から確かめる。エヌビディアの2026年1月期は、売上高2,159億3,800万ドル、売上原価624億7,500万ドルで、粗利は1,534億6,300万ドル、粗利率は71.1%だった。営業キャッシュフローは1,027億1,800万ドルである。

この会社が同じ期に設備へ投じたのは60億4,200万ドルで、売上高の2.8%にすぎない。GPUの製造を外部の工場に委ねているため、売上が増えても自前の設備が比例して増えない。売上高は2024年1月期の609億2,200万ドルから2025年1月期1,304億9,700万ドル、2026年1月期2,159億3,800万ドルへと2年で3.5倍になったが、設備投資は10億6,900万ドルから2025年1月期32億3,600万ドル、2026年1月期60億4,200万ドルへの増加にとどまる。

同じ供給側でも、マイクロンは成り立ちが違う。2025年8月期の売上高は373億7,800万ドル、粗利148億7,300万ドルで粗利率は39.8%、営業キャッシュフローは175億2,500万ドルだった。設備投資は158億5,700万ドルで、売上高の42.4%にあたる。HBMを自社の工場で作るため、需要が増えれば設備を増やすほかない。SKハイニックスは韓国上場で米証券取引委員会への提出書類が無く、同じ物差しでは比べられなかった。

真ん中の3社は受け取った63億ドルに対し、173億ドルを設備に投じた

真ん中に置かれた6社のうち、通期の提出書類があるのはコアウィーブ、ネビウス、IRENの3社である。Nscale、Crusoe、Lambdaは非上場で実額を確認できなかった。

表1 真ん中の3社の直近の通期 (単位は億ドル)

企業決算期売上高設備投資設備投資÷売上高
コアウィーブ2025年12月期51.31103.092.01倍
ネビウス2025年12月期5.3040.667.67倍
IREN2026年6月期7.0729.984.24倍
3社の合計63.68173.732.73倍

出所: 米証券取引委員会に提出された財務データ。倍率は記者が計算

コアウィーブの売上高は2023年の2億2,900万ドルから2024年19億1,500万ドル、2025年51億3,100万ドルへ伸びた。だが設備投資は同じ期間に29億4,300万ドル、87億0,200万ドル、103億0,900万ドルで、3年とも売上高を上回っている。ネビウスの設備投資は2024年の8億0,700万ドルから2025年に40億6,600万ドルへ5.0倍になり、売上高5億3,000万ドルの7.67倍に達した。IRENは2026年6月期に売上高7億0,700万ドルに対し29億9,800万ドルを投じている。

受け取った売上高と、同じ期に設備へ投じた額
受け取った売上高と、同じ期に設備へ投じた額

記者の見立てでは、この数字が「真ん中」という言葉の意味を変える。真ん中の層は資金が集まる場所ではなく、資金が通り抜ける場所である。顧客から受け取った売上は、GPUを買い、電力設備を整え、建物を借りるための支出として、同じ期のうちに供給側へ出ていく。3社とも営業キャッシュフローは黒字で、それぞれ30億5,800万ドル、3億8,500万ドル、21億ドル、合わせて55億4,300万ドルだった。これでは173億7,300万ドルの設備投資を賄えない。足りない分は外部からの資金に頼るほかない。

データセンター事業者の側も、建設の途中にある会社は同じ形になる。コア・サイエンティフィックは2025年12月期に売上高3億1,900万ドルに対し設備投資7億2,900万ドルで2.29倍、アプライド・デジタルは2025年5月期に売上高1億4,400万ドルに対し6億8,200万ドルで4.74倍だった。同社の設備投資は2026年5月期に28億6,600万ドルへ増えているが、同じ期の売上高がまだ提出書類に無いため比率は出していない。一方で設備が出来上がっているエクイニクスは、2025年12月期の売上高92億1,700万ドルに対し設備投資43億1,100万ドルで46.8%に収まり、営業キャッシュフロー39億1,100万ドルの範囲に近い。デジタル・リアルティは売上高61億1,300万ドル、営業キャッシュフロー24億1,200万ドルだが、設備投資は不動産投資信託に固有の科目で計上されており、同じ物差しでは取れなかった。

「顧客であり競合」の3社は自前で2,770億ドル、真ん中の3社はその6.3%

図は、ハイパースケーラーと推論クラウドが顧客でも競合でもありうると注記する。この二面性の大きさを、設備投資の額で測る。

アルファベットの2025年12月期は売上高4,028億3,600万ドル、設備投資914億4,700万ドル、営業キャッシュフロー1,647億1,300万ドルだった。マイクロソフトの2026年6月期は売上高3,318億3,900万ドル、設備投資1,159億4,800万ドル、営業キャッシュフロー1,829億3,500万ドル。メタの2025年12月期は売上高2,009億6,600万ドル、設備投資696億9,100万ドル、営業キャッシュフロー1,158億ドルである。3社とも設備投資が営業キャッシュフローの内側に収まっており、外から借りずに建てられる。

表2 顧客側の直近の通期 (単位は億ドル)

企業決算期売上高設備投資設備投資÷売上高
アルファベット2025年12月期4,028.36914.4722.7%
マイクロソフト2026年6月期3,318.391,159.4834.9%
メタ2025年12月期2,009.66696.9134.7%
ショッピファイ2025年12月期115.560.260.2%
クラウドストライク2026年1月期48.123.026.3%

出所: 米証券取引委員会に提出された財務データ。比率は記者が計算

ハイパースケーラー3社の設備投資は合わせて2,770億8,600万ドルになる。真ん中の3社の設備投資173億7,300万ドルは、その6.3%にあたる。顧客が自前で建てている規模の16分の1ほどの大きさで建てていることになる。

真ん中の3社の設備投資と、顧客が自前で建てている額
真ん中の3社の設備投資と、顧客が自前で建てている額

マイクロソフトの設備投資は2023年6月期の281億0,700万ドルから、2024年6月期444億7,700万ドル、2025年6月期645億5,100万ドル、2026年6月期1,159億4,800万ドルへと4.1倍になった。自前の建設を緩めた様子はない。

顧客であり競合でもあるという注記は、この数字の上では「主に競合で、供給が足りないときだけ顧客」と読める。真ん中の3社にとっての需要は、相手が自前の建設で追いつけない期間に生じる差であり、その差の大きさは相手の建設の進み方で決まる。AIデータセンターの資金調達の仕組みは負債4兆ドルの内訳を追った記事で扱った。

企業向けが点線なのは、借りる側がまだ設備を持たないからだ

図では、真ん中から上の3つの区分へは実線、一般企業へは点線で矢印が引かれている。企業への需要はこれから広がるという見方が添えられており、点線はその見込みを表している。

提出書類はこの点線を裏づける。企業の例として挙がるショッピファイの2025年12月期の設備投資は0億2,600万ドルで、売上高115億5,600万ドルの0.2%にすぎない。クラウドストライクは2026年1月期に3億0,200万ドルで、売上高48億1,200万ドルの6.3%である。両社を合わせた3億2,800万ドルは、真ん中の3社の設備投資173億7,300万ドルの1.9%にとどまる。

この小ささは、企業が計算資源を使っていないことを意味しない。自前で持たないからこそ借りる側に回る。記者の見立てでは、点線が実線になるかどうかは、企業が使う推論の量が、AI開発企業の学習需要の波に左右されない規模まで積み上がるかどうかで決まる。開発企業側の需要は急に伸びうるが、同じ理由で急に止まりうる。今週、開発の速度を落とすべきだという主張がAI開発大手の経営陣から相次いだことは、その振れ幅の大きさを示す出来事でもあった。

図の一番下にもう1段あり、そこに日本企業がいる

この商流の図に日本企業は1社も載っていない。ただし一番下は半導体とデータセンター事業者で止まっており、その半導体を作る装置はさらに下の段にある。

マイクロンが2025年8月期に投じた設備投資158億5,700万ドルは、そのかなりの部分が製造装置の購入にあたる。日本半導体製造装置協会が2026年7月2日に公表した需要予測によれば、日本製半導体製造装置の販売高は2025年度の5兆1,986億円から2026年度は26%増の6兆5,502億円になる見通しで、同協会はこの上方修正の理由に、AIサーバー向け先端ロジックの旺盛な投資と、HBMを中心としたDRAM投資の大幅増加を挙げている。

表3 図の下にある日本企業 (2026年3月期・決算短信)

企業売上高前期比営業利益前期比
東京エレクトロン (8035)2兆4,435億3,300万円+0.5%6,249億3,600万円−10.4%
アドバンテスト (6857)1兆1,286億1,000万円+44.7%4,991億2,000万円+118.8%

出所: 各社の決算短信

伸び方の差が、同じ装置でも立つ位置の違いを映す。アドバンテストの2026年3月期は売上高が44.7%増、営業利益が118.8%増と2.2倍になった。同社が担う検査の工程は、HBMのように何層も積んだ製品ほど回数が増える。一方の東京エレクトロンは売上高がほぼ横ばいで、営業利益は1割以上減った。前工程の装置は先端ロジックとDRAMの両方に効くが、投資の山が来る時期は製品ごとに違う。

図が描いた3つの段のうち、資金が残るのは供給側である。そして供給側のさらに下に、日本企業が並ぶ段がある。半導体の供給網で日本企業がどの位置にいるかは対米投資の半導体工場を検算した記事で、AI設備の需要が国内の物価と政策金利へ届く道筋は原油と日米の利上げを検算した記事で扱った。

誰に資金が入るかという問いに、提出書類ははっきり答えている。商流の真ん中に置かれた3社は、受け取った63億6,800万ドルの2.73倍にあたる173億7,300万ドルを、同じ期に設備へ投じた。真ん中とは、資金が集まる場所ではなく、資金が最も速く通り抜ける場所だった。

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